著者
佐藤 錬太郎 弓巾 和順 近藤 浩之 水上 雅晴 室谷 邦行 末岡 実 山際 明利 名畑 嘉則 小幡 敏行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

国際的な学術動向を踏まえた上で研究交流を推進し、国内外の研究者と協力関係を構築した。最終年度には、中国の科挙学会「中華炎黄文化研究会科挙文化専業委員会」及び台湾国家科学委員会研究計画「清代經典詮釋方法與理論的轉向」の協力を得て、2009年8月に北海道大学において、「科挙と中華伝統文化」を主題とする科挙学国際シンポジウムを開催し、国内10名国外20名の科挙研究者を招聘し、科挙学の最新の研究成果を発表した。
著者
加藤 太一郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「光る虫」といえば「ホタル」とすぐに連想できるほど、我々にとってホタルは身近で、かつ心が惹きつけられる存在である。このようにホタルルシフェラーゼといえば発光反応を触媒する酵素だと思われがちであるが、実は立体選択的なチオエステル化という、もう一つの触媒活性があることを発見した。例えば構造中に1つの不斉点を有するケトプロフェンを基質とした場合、ヘイケボタル由来ルシフェラーゼはR体を優先的にチオエステル体へと変換する。本研究では、本酵素がどのように基質の不斉を識別しているのかを明らかにするために、ホタルルシフェラーゼを用いたチオエステル化反応の詳細な機構解析やMDシミュレーション、および結晶構造解析を試み、その理由の一端を明らかにすることができた。
著者
柴山 潔 平田 博章
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究では,・従来のプロセッサから見たコンピュータ間通信性能がローカルメモリへのアクセス性能とほぼ同等になる(メモリアクセス性能と通信性能が拮抗する);・ネットワークのトポロジやその中での情報処理主体の地理的位置に広域的な通信性能が影響されない;の2つの仮定のもとに,地球規模のコンピュータネットワークに超多数個散在する情報処理主体要素(これを本研究では,「プロセッサによる処理だけではなくメモリアクセスや通信までを含めた情報処理主体」という意味で「情報体」と呼ぶ)のハードウェア/ソフトウェア・トレードオフについて考察した.具体的には,次の2つの知見を研究成果として得た.(a)プロセッサから見たメモリアクセスと他のコンピュータ/プロセッサとの通信とを論理的に等価に扱い得る情報処理主体要素(情報体)の処理モデルの構築;(b)共有メモリによる通信とメッセージ交換による通信との物理的な区別が無くなることに伴う情報体のアーキテクチャ(ハードウェア/ソフトウェア・トレードオフ)の設計;
著者
杉惠 頼寧 岡村 敏之 藤原 章正 張 峻屹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は,交通行動のダイナミック分析手法を交通機関の選好意識(以下SPと略す)の分析に適用し,その時間的な変化の構造を明らかにすることである.クロスセクションモデルを改良したダイナミックモデルを構築し,その有効性を明らかにする.さらに,時系列モデルを適用し,TDM施策が実施された後に通勤交通の時刻選択行動が安定するまでの時系列過程を予測するモデルを構築する.3年間の研究によって次のような成果が得られた.1.SPダイナミックモデルの構築これまで我々の研究室で蓄積してきた広島の新交通システム(19994年8月開業)に対するSPデータ(1987,88,90,93,94年)とRPデータ(1994,97年)の合計7時点パネルデータを用いる.これによって,SPデータを用いて予測した新交通システム開業後の選択結果を評価し,SPモデルの信頼性,改善点を明らかにした.2.TDM導入効果の時系列分析時間分散型TDM施策であるフレックスタイム制度と時差出金制度を導入した後の施策対象者および非施策対象者の行動変化について分析した.まず,1996年に広島市内で導入されたフレックスタイム制度に関して,導入後2回(1996,97年)のパネル調査データと導入後1年間の出勤管理データを用いて時系列分析を行い,行動の調整過程と安定過程が存在することを示した.次に,1999年に松江市で実施された時差出勤社会実験前後の観測交通量データを用いて,時差出勤の導入に対する交通渋滞の反応遅れについて分析した.本研究の主要な成果は,1)SPダイナミックモデルを構築し,その有効性を示したこと,2)TDM施策に対する住民の交通行動には反応遅れが生じ,それらを考慮した時系列モデルの適用の重要性を示したことである.今後は本研究で開発した需要予測モデルを多様な交通政策に適用し,より広範な視点からその適用可能性を検討する予定である.
著者
杉惠 頼寧 塚井 誠人 奥村 誠 藤原 章正 POLAK John JONES Peter
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的はアクティビティ・アプローチの考え方を基礎として、調査法、行動モデリング、政策評価に関する問題点を明らかにし、改善を加えることにより新しい都市交通計画手法の開発を行うものであり、2年間の共同研究によって次のような成果が得られた。1.平日買物行動を考慮した週末買物活動発生モデルの開発週末買物活動を対象に1週間の買物活動データを用いて、個人の買物行動特性を把握すると同時に、平日買物頻度と週末買物活動発生の同時決定モデルを提案した。宇都宮市の1週間にわたる活動日誌調査で得られた買物活動のデータを用いて実証分析をした結果、同時決定モデルの妥当性を確認できた。2.交通調査における回答者インセンティブの費用便益分析交通調査において、細かな行動や意識などを含む複雑な調査が増え、精度や回答率低くなることが問題となり、効率的な調査方法の開発が求められている。本研究では、インセンティブ(謝礼)をつけるという方法をとりあげ、その効果を定量化し、一定の精度を得るために最も費用の小さいインセンティブの水準を考察した。3.観光周遊行動を分析するためのNested PCLモデルの開発観光周遊行動における目的地及び経路の選択肢は互いに独立とは言えない。そこで本研究は、観光周遊の目的地及び経路選択行動を予測するためにNested PCLモデルを提案した。ケーススタディの結果、同モデルは観光需要予測に有効であることが示された。4.SP調査における所要時間の信頼性を表現する手法の改善本研究は、運行サービスの定時制に関する鉄道利用者の評価を分析したものである。定時制が旅行者によって高く価値付けられていることがわかった。従来の研究では、必ずしもそうでないと説もあった。この違いは、従来の方法では、SP調査で用いられている所要時間の定時制の表現方法がうまくなされていないためであることがわかった。
著者
林 真由美
出版者
愛知医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2008

地域の知的障がい者施設の職員を対象に、生活支援に関する冊子(教材)の送付と研修会の実施により、職員の支援行動の変化を調査した。冊子は全国の施設調査の結果に基づき作成した改訂版冊子を使用した。冊子を用いた行動変化は、既に生活支援に取り組む施設に効果は低かったが、支援を実施していない施設では取り組み状況は有意に増加した。また、多くの生活支援に取り組む施設では、冊子より研修会実施による効果が高かった。
著者
川口 太郎 中澤 高志 佐藤 英人
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

高齢化がすすむ大都市圏の郊外住宅地の持続可能性を住民特性の面から検討し,内郊の「街なか化」する住宅地,外郊の「地元化」する住宅地,アッパーミドルの「孤立化」する住宅地を見出した。また,第二世代の居住地選択は,働き方や家族の在り方が多様化するなかで,単線的・画一的にとらえることが難しくなったものの,そのなかで実家との関係性が選択に際して大きな位置を占めていることが明らかになった。
著者
田村 亨
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は,(1)海岸平野での地中レーダー探査,(2)更新統下総層群木下層での露頭調査,(3)成果発表,を行った。(1)地中レーダー探査は,宮城県仙台平野と千葉県九十九里浜平野の沖積層を対象に行った。今年度は前年度も使用したPulseEkko100の地中レーダーシステムに加え,Noggin plusシステムをレンテルで導入した。このシステムは探査深度が劣るものの高周波のアンテナを扱えるため,より高分解能な探査ができる。仙台では宮城県若林区荒浜周辺の農道九十九里浜では山武郡九十九里町および山武市の農道において探査を行い,両地域の探査記録の比較を行った。レーダー探査記録中に認められる侵食面は,ストームによる海浜侵食海浜時の海浜断面形を表すが,九十九里浜と仙台で特徴が異なり,また分布する深度も異なることがわかった。これは両者間の勾配の違い(仙台が1/10に対し,九十九里浜が1/30)に起因する,ストーム時の海浜侵食プロセろの違いを反映していると考えられる。(2)露頭調査は,千葉県香取市小見川の崖に露出する更新統下総層群木下層の海浜堆積物に対して,露頭における近傍からの観察を行った結果,下部外浜堆積物中に平衡状態の海浜断面形に対応すると考えられる,無堆積不連続面を認定した。この面は生痕が集中することが特徴である。以上今年度および前年度の取り組みから得られた成果は,海浜の地層記録がち過去の地形惰報(堆積・平衡・侵食時の勾配)を解読するための手がかりとなる。(3)得られた成果の一部である,九十九里浜の地中レーダー記録の特徴についての論文を国際学術誌MarineGeologyで発表し,またアメリカ地質学会年会でポスター発表した。
著者
花田 英輔 工藤 孝人
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マイクロ波治療器などの医療機器が発する電磁界を明らかにするとともに、医療機器使用環境としての電源と接地が不適切な場合に起こり得る現象を明らかにした。同時に電磁界の測定により医療機器の使用状況と使用電源の接地の状態を把握する機器を試作した。また医療現場においても無線LANを安全に使用可能であることを示し、その導入手順の草案を作成した。この他、医療現場の電磁環境改善を実施した。電磁界伝搬シミュレーションの精度向上を図った。
著者
吾郷 眞一 柳原 正治 野田 進 中窪 裕也
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

国際労働法の分野においてある程度市民権を持ちつつある「企業の社会的責任」(CSR)が実定法として機能する余地はあるのかどうか、という問題意識を出発点とし、国際公法と国内労働法の二つの観点から実態を分析し、帰納的手法を用いてCSRの法的位置づけを行った。国際公法の視点からソフトローの一つとして、あるいはまた実定法を補完するものとして一定の役割を果たすと同時に危険性もはらむものであることがわかった。
著者
西野 仁
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

6校の中学生から4,536場面、5校の高校生から4,470場面の日常生活経験標本が収集できた。1、学校週5日制の実施で中学生の日常生活経験とゆとり感は変化したか?同じ公立中学校の同じ学年から、完全学校週5日制実施前の2000年と実施後の2003年に、同じ方法で収集したデータの比較。中学生の日常生活経験は、活動では外出と部活動が、場所ではレジャー・スポーツ・レクリエーション施設、学校施設が、同伴者では友人、先生が有意に増加した以外は大きな変化は認められなかった。また、気分は平日、休日ともに、制度実施前よりネガティブな方向へ変化し、「ゆとり感」は増加してはいなかった。2、学校週5日制を以前から実施していた高校では生徒の日常生活経験とゆとり感は変化したか?完全学校週5日制をすでに導入していた同じ私立高校の同じ学年から、新学習指導要領移行前の1996年と移行後の2003年に、同じ方法で収集したデータの比較。高校生の日常生活経験は、活動では学習行動が減り、アルバイト、生活維持行動が増えた。場所は、学校・その他の学習施設が減り、自宅、レジャー・スポーツ・レクリエーション施設、アルバイト先が増えた。同伴者では家族が増加、友人は減少、先生は増加した。気分は、制度導入前よりポジティブな方向へ大きく改善され、「ゆとり感」も有意に増加した。3、ゆとりを感じる経験とは?「ゆとり」の構造化に向けての分析中学生、高校生ともゆとりを感じやすい経験はテレビ・ラジオの視聴、睡眠うたた寝、娯楽、テレビゲーム、食事、音楽活動、外出、スポーツなど多岐にわたるが、実際にゆとりを多く感じている経験はテレビ・ラジオの視聴や食事、睡眠・うたた寝などであった。「ゆとり感」と「気分」に正の相関がみとめられること、「ゆとり感」に日内リズムと週間リズムのパターンが存在することが再確認できた。
著者
成 玖美
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

今年度は昨年度までの研究をもとに2本の論文を発表した上で、新たに在日韓国・朝鮮人女性の生涯学習課題について考察をおこなった。発表論文では、EU統合の流れの中で議論されてきた「社会的排除と包摂」の視点に学びつつ、現在の在日韓国・朝鮮人の状況を「シティズンシップからの排除」と捉えて、それを乗り越える「包摂」像を在日韓国・朝鮮人NPO実践の中から描き出した。具体的には、先進的在日韓国・朝鮮人NPO実践の中で志向されているのは、単なる日本国家への直接的包摂ではなく、東アジアへの自己解放/東アジア共同体への包摂、という回路を採る歴史的かつ創造的戦略の姿であると論じた。また別稿においては、在日韓国・朝鮮人が東アジア共同体構想に寄せる期待を論じた上で、それが新たな民族主義に回収されないようなあり方を模索する必要について触れた。一方、今年度からは在日韓国・朝鮮人女性のキャリア形成や生涯学習課題についての研究も開始した。昨今の生涯学習課題としてキャリア形成の課題が注目されているが、みずからが在日韓国・朝鮮人であることが、キャリア選択などにどのような影響を与えているのかについて検討した。また先行研究において、在日韓国・朝鮮人女性は民族的マイノリティであるというホスト社会からの差別に加え、在日韓国・朝鮮人の家父長制社会の中での女性差別という、二重の差別=「複合差別」状況にあるといわれてきたが、この「複合差別」は現在では多数派を占める日本人男性と結婚した在日女性にも当然、やや姿を変えて現出すると考えられる。女性のライフコース選択に及ぼすエスニシティとジェンダーの作用に着目し、複合的葛藤の中から立ち上がる学習課題の様相について、引き続き研究を重ねていきたい。
著者
南雲 道彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

高強度鋼の遅れ破壊が環境変動によって促進されることをプリストレスドコンクリート(PC)鋼棒について明らかにした。環境因子として荷重及び水素添加ポテンシャルを取り上げ、最大荷重あるいは電解電流値を一定にして変動させた。環境変動の効果は、低歪み速度の引張り試験と定荷重の遅れ破壊試験の両方で確認した。環境変動の効果は水素の吸収速度や吸収量には影響を与えず、荷重変動の効果が試料表面の保護被膜の破壊によるとする従来の考えでは説明出来ない。水素添加ポテンシャル変動の場合も水素の吸収及び放出速度の解析から水素の拡散速度を求め、水素添加ポテンシャル変動の効果は受けないことを示した。環境変動の効果を水素の存在状態から調べるために、鋼中に吸収された水素の加熱放出特性を測定した。約100℃に放出ピークを持つ弱くトラップされている水素には、塑性変形に伴なって増加する水素と、もとの組織中の析出物などにトラップされている水素とがある。塑性変形跡に200℃での低温で回復処理を与えた試料に水素を吸蔵させて放出特性を調べることにより、塑性変形に伴なって増加する水素のトラップサイトは点欠陥であり、昇温過程で点欠陥が消滅するために水素が放出されることを明らかにした。荷重変動の効果は、回復処理で消滅する点欠陥密度を増加させることにあることを見出した。これらの結果から、水素脆性の機構は塑性変形によって導入される点欠陥を安定化してその密度を増加させるためであり、環境変動はこの効果を強調するものであるという新しい考えを提出した。
著者
児玉 年央
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

腸管出血性大腸菌感染症の臨床症状では、炎症反応が低いという特徴を有する。しかしながら、その機構は全く明らかにされいない。これまでの解析結果により、この炎症抑制作用は3 型分泌装置(Type III secretion system; TTSS)依存的であり、さらに未知のエフェクターが寄与している可能性が示唆されている。本研究では、3型分泌装置依存的サイトカイン産生抑制機構に寄与するエフェクターの同定を試みた。
著者
兵藤 友博 梶 雅範 岡本 正志 中村 邦光 松原 洋子 永田 英治 東 徹 杉山 滋郎 高橋 哲郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は基本的に、2003年度から始まる、高等学校の理科教育への科学史の本格的導入にあたって、これまでの科学史の成果をどのようにしたら生かせるかにあるが、その研究成果報告書の概要は以下の通りである。第一に、科学史研究関連の文献・資料の調査・調達をおこなうと共に、科学史教育の意味について論じた先行研究の分析を行ない、それらの中から高等学校の理科教育に適用しうるタイトルをピックアップし整理した。第二に、高等学校の理科教育における科学史の導入、その教材化の望ましいあり方について検討すると共に、個別教材の位置づけを検討し、それらの構成のあり方、理科教育における科学史教育の目標などについて検討した、より具体的にいえば、科学的発見の歴史的道筋、科学的認識の継承・発展のあり方・科学法則・概念の形成の実際、科学実験・観測手段のあり様とその時代的制約、あるいは理論的考察や実験、観察に見られる手法、またそれらの理科学習への導入のあり方について、個別的かつ包括的な検討をおこなった。また、個別科学史教材に関わって、科学の方法の果たした役割、科学思想との関連などについて検討した。第三に、その上で、新科目「理科基礎」を含む高等学校の理科教育を射程に入れた科学史の教材化の開発研究をおこなった。具体的には、物理学史系、化学史系、生物学史系、天文学史。地学史系の個別科学史分野別にトピック項目を設定し、ケース・スタディ的にその具体化をおこなった。本研究プロジェクトが掲げた当初の目標を達成した。これらの成果について、最終的に冊子として印刷し、広くその成果を普及することにしている。
著者
長橋 純男
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

首都圏の如き中枢機能都市圏においては集中の度合が益々増大傾向にある。地震災害の様相は時代による社会変化の影響を強く受け、人口減少や少子高齢化による人口構成の変化、都市構成の変化等により、都市は時代がもたらす新たな地震災害を生む可能性がある。したがって、都市の地震脆弱性評価や被害想定に当たっては、現在の都市の実態を対象とした被害想定ばかりでなく、未来都市の動向を予測した被害想定が肝要である。そこで本研究は、以下の手順によって、25年後の日本の未来都市の動態を推定し、都市の地震災害脆弱性評価が現代社会と未来社会とではどの様に変容するものであるのかを定量的に予測する手法の開発を試みたものである。(1)人的危険及び建築物被害等の直接被害、帰宅困難やライフライン被害による生活支障等の間接被害を対象として、都市の地震脆弱性に関わる諸要因を過去の被害地震の実態から抽出した。(2)主成分分析により、上記各要因の地震被害に対する影響度を定量的に評価する。(3)各要因を用いた地震脆弱性評価手法を作成し、その妥当性を実被害事例によって証した。(4)これら各要因について、現代から25年後への変容動態を、各種統計項目のデータの性質や動態傾向を考慮した線形回帰・重回帰分析等の手法を用いて定量的に推定した。(5)日本の3大都市圏を対象に、25年後の未来都市の地震脆弱性を評価するとともに、その地域特性について考察した。(6)中枢機能都市としての東京湾岸域における具体的な地震危険度評価として、京葉臨海中部地区の石油タンクを対象に、イベントツリー解析による被害予測の試みを提案した。(7)地震脆弱性評価の前提である地震ハザードマップの作成に関連して、地震動の位相特性を考慮した強震動予測手法に関する一連の研究を更に発展させ、併せて、その研究成果を免震構造の応答性状に関する一連の研究に活用する。
著者
飯国 芳明 岩崎 貢三 櫻井 克年
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.山地酪農の「塾畑化」の経営学的考察:経営の立ち上げ期にはシバ草地の「熟畑化」が伴わないため,濃厚飼料(購入飼料)に大きく依存した経営を強いられる。しかも この時期には牛の馴化の遅れによって搾乳量や乳脂肪の低下が起こるために収入が低下する。また,借入金返済の資金繰り等の問題も重複して現れる。このため,造成後3年から4年目までは通常の経営主体では維持できない水準にまで収益が低下することが明らかとなった。今後一層の普及をはかるためには「芝草地活用肉用牛放牧促進事業」型の数年にわたるシバ草地に対する政策的支援(補助体系)が不可欠である。また,今回の研究を通じて家畜を扱う有機農業の場合には「熟畑化」ばかりでなく,家畜の「馴化」の重要性も明らかになった。今後は「馴化」のプロセスについても学際的な研究を行う必要があると考えられた。2.山地酪農の「熟畑化」の土壌学的考察:高知県南国市の斉藤牧場において,造成10年後の新しい草地と25年後の古い草地を比較することによって以下の知見を得た。古い草地では表層・下層ともに,肥沃度および団粒構造の発達による保水性・透水性の向上が顕著であった。一方,新しい草地の表層での肥沃度の向上は下層にまでは及んでいないことに加えて,牛糞由来の有機物添加の履歴が短く表層での排水性がやや不良であった。低分子有機酸の蓄積量は排水性の不良な新しい草地の表層で最も多かった。新しい造成地の荷電ゼロ点が低いのは,非晶物質が少なく有機物や酸性の強い粘土が多いためであることがわかった。ただし,数十年後には低肥沃度でもバランスのとれた安定した草地へと変化するものと考えられた。また,草地内・外の水を分析した結果,系外よりも系内が,また古い草地よりも新しい草地のほうが溶存イオンの量が多くpHも高かった。しかしながら新しい草地においても,日本シバ利用の山地酪農は水系の富栄養化を引き起こしておらず,環境保全型畜産業であるといえよう。
著者
大柿 久美子 吉川 邦夫 石川 本雄 藤野 貴康
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

平成17年度にモニターとして募集した現在子育て中の母親達を対象にエネルギー環境教育を行ない、その前後約3週間ずつ計6週間にわたって、それぞれのモニター家庭において次の記録を依頼した。(1)毎日朝または就寝前のどちらかを各自で選択し、1日1回ほぼ同時刻に、電力、ガス、水道のメータを記録する、(2)ごみ収集日には搬出前に焼却ごみの重量を計測する、(3)家族の一人ひとりについて、家にいなかった時間と睡眠により活動しなかった時間を記録する、(4)来客についても来た時刻、帰った時刻、睡眠時間帯を記録する、(5)使用した暖房器具類を記録する、(6)その他エネルギー消費量等に大きく影響する出来事を記録する、という内容で、協力を得ることが出来た。本年度は、これらの記録に気象データを加えたものを用いて、エネルギー消費量がエネルギー環境教育以降どのように変化したかを数値的に解析することで、教育効果が人の行動にどのような変化をもたらしたか評価を行なった。特に電力消費量について、エネルギー環境教育を実施する前3週間の毎日の電力消費量をそれぞれのモニター家庭における生活のパラメータと気象データを説明変数として重回帰分析を行い、その結果得られた回帰係数を用いてエネルギー環境学習会以後の電力消費量を予測し、実測値との残差を求めることで、教育が電力消費量にどのような変化を与えたかを数値的化した。また、教育効果が有意な行動変化をもたらすことが確認された事を受けて、エネルギー環境教育を個人の生活の中だけでなく、社会構造の変革につなげることが重要であると考え、知識社会への変革を持続可能な社会を実現するDriving Forceとすることが出来たと仮定し、一次エネルギー供給量、最終エネルギー消費量、二酸化炭素排出量の将来予測計算を行なった。この計算にはAim-Trendモデル(国立環境研究所)を用いた。本年度の研究成果として、20名のうち8名のモニター家庭で教育効果が電力消費量の減少という行動変化として確認された。データ数の多さに依存しなくても丁寧な分析を行なうことができれば、教育がもたらした行動の変化を数値的に得られることが示され、今後教育のあり方などに関して定量的な議論が行なえる事を示した。エネルギー環境教育を個人生活の中だけでなく、社会構造の変革につなげることが持続可能な社会の形成につながる。その環境負荷低減効果を知識社会モデルに基づいて試算した。
著者
堀内 孝次
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

山間山地地域を対象とした現地栽培調査から、作物栽培の生産基盤である地力維持方式として、対象全域で堆肥など多様な有機肥料に加えて化学肥料が補完的に施用されている。他方、"緑肥、野草、わら"の利用には地域差が存在しており、これらの地域特殊性は経営耕地規模や耕地の地形条件が大きく影響している。また、土壌の地力維持として微生物資材を用いることで有機性廃棄物である生ゴミ堆肥素材等の施用効果が高まった。
著者
江口 徹 佐々木 節 杉本 茂樹 白水 徹也 高柳 匡 向山 信治 細道 和夫
出版者
京都大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2007

宇宙の創成やブラックホールは現代物理学の最大の謎である。これらの謎に挑戦する学際的、先進的な研究を日本の超弦理論と宇宙論分野の研究者が協力して行なった。ブラックホールの量子状態、インフレーション宇宙における非ガウス的揺らぎの生成、ゆらぎのスペクトルのスケール不変性等について非常に興味のある結果が得られた。また、合宿形態の勉強会を持つ事により、素粒子、宇宙論料分野の研究者の連携が強まった。