著者
伊藤 義郎 田邉 里枝 磯部 浩已
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

短パルスレーザー加工における累積照射パルス数の影響について,高繰返し短パルスレーザーを光源とする高速度ビデオ撮影法,高速度レーザーストロボスコピックビデオ撮影法を開発,これによる可視化,解析を行った.加工屑の堆積挙動や粒子状の加工屑の間欠的な排出などの観察に成功した.パルスエネルギーやレーザー走査速度によって加工形状だけではなく,加工屑の形状や堆積挙動、堆積範囲などが変化した。加工パラメーターの影響の解明には,さらに系統的な研究が必要である.さらに,この手法を液中でのレーザー誘起衝撃現象におけるキャビテーションバブルの寄与や,液中での金属ナノ粒子生成現象の解明に応用する事が出来た.
著者
瀬戸 宏 飯塚 容 田村 容子
出版者
摂南大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1.文明戯は辛亥革命前後に上海を中心に栄えた演劇である。1913年から15年にかけて上海の新聞『申報』に掲載された文明戯の劇評等100編を整理し、瀬戸宏の個人サイト上で公表した。2.文明戯の研究をおこなった。研究内容は、文明戯と映画の関係、文明戯と伝統演劇の関係、文明戯と中華人民共和国建国後の通俗話劇との関係、文明戯が描いた朝鮮の形象、文明戯の重要演目であるシェイクスピア作品の受容史などである。
著者
青山 義之 武井 雄一 須田 真史
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった.
著者
原口 庄輔 岡崎 正男 佐々木 冠 時崎 久夫 田中 伸一 寺尾 康 上田 功 米田 信子 小松 雅彦 西山 國雄 白石 英才 三間 英樹 田端 敏幸 本間 猛 深澤 はるか
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、今まで一見すると混沌した状況にあった音韻類型に関する諸問題について、帰納的接近法、演繹的接近法、相関関係からの接近法、という三つの方法論により、新たな知見を得ることを目的としたものである。研究期間中に、三つの方法論により次の研究成果が上がった。(1)個別言語の具体的な音韻現象に関する新たな一般性の発見、(2)最適性理論における制約に関する新たな提案、(3)語の韻律構造と文の語順の相関関係の明確化。これらの知見は、すべて、新しい音韻類型確立に貢献するものである。
著者
岡崎 文明 一ノ瀬 正樹 小浜 善信 伊集院 利明 谷 徹 榊原 哲也 杉田 正樹 日下部 吉信 須藤 訓任 赤井 清晃 柏端 達也 塩路 憲一 古田 智久 三浦 要 菊地 伸二
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の課題は<西洋古代から現代に至る二千六百年に及ぶ哲学史の統一的理解・再構築は可能か?>である。我々は共同研究を通じて再構築は可能であると結論することができた。これは「実存的歴史観」(vde.渡邊二郎『歴史の哲学-現代の思想的状況-』講談社、1999)によって支えられる。その具体的な姿は本研究グループの各メンバーによって各に示される。研究代表者の見解を要約すれば、西洋哲学史には2伝統、即ち古代ギリシア哲学(=ヘレニズム=善の優位性の思想)の伝統と西洋中世以降の哲学(=ヘブライズム=存在の優位性の思想)の伝統とが存存する。両伝統における「万有の根源の解釈」は根本的に異なる。しかし両者は新プラトン主義(原型)の第2段階「存在者-生命-知性」(三一)を或る仕方で共有することによって相互影響を受け、中世以降に新たな思想を生む。その結果、中世では存在論が、近世では認識論が、現代では生命論、新たな認識論と存在論がそれぞれ中心となった新しい哲学生まれる。中世から現代に至る諸哲学は1セットとして、ギリシア哲学に対峙し得る。その内容は下記の研究成果に示される。我々の研究成果の一部はまず第1の共同研究成果論文集『西洋哲学史の再構築に向けて』(1999)に示される。この外にもメンバー21人の各の研究論文等においても示される。その成果総数は学術論文209本、國内外の学会・研究会口頭発表87回、図書(単著)9冊である。更に平成15年中に第2の共同研究成果論文集『西洋哲学史観と時代区分』を公刊しようとしている。続く第3の共同論文集『現代の哲学-二千六百年の視野において-』は平成15年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)に申請中である。さらに第4の共同論文集『西洋哲学史再構築試論』も平成16年度科究費(研究成果公開促進費)に申請する予定である。以上が研究成果概要である。
著者
久保田 裕子 メータセート ナムティップ 平松 秀樹
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本とタイ国の関係が緊密化した明治期から現代に至るまでの日本近代文学に関して、タイ国を描いた文学テクストの調査・収集を行った。収集した文学テクストを基盤として、両国の歴史的関係性を示すタイ国内で刊行された日本語雑誌などの同時代資料と照合し、タイ国をめぐる文化表象が構築される過程を明らかにした。三島由紀夫、村上春樹などの日本近代文学のテクストを分析し、そこに描かれたタイ国の表象分析を行った。
著者
李 佑眞
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究ではRC造建築物の外装塗料が様々な環境条件により劣化し、RC造建築物の中性化現象が起きることを考慮した有限要素の構成モデルを設定し、様々な環境条件に露出された建築物の外装塗料の劣化挙動を有限要素解析による予測を可能とすることを目的とし、実環境と近い実験環境でRC造建築物の外装塗料の劣化を促進させ、その劣化による中性化抑制効果の変化を実験的に検証した後、その結果を用いて外装塗料を施したRC造建築物の有限要素構成則を構築し、より正確な解析及び劣化挙動評価を行った。本研究での特徴は実環境を再現することで紫外線、凍結融解作用による劣化を受ける建築物の外装塗料に対して促進試験を定量的に行い、促進試験と実環境の関係を解明することが可能になったと考えられる。なお、これまでの研究は実環境での劣化を実験的に様々な促進試験を行い、また、実際複合的に起きている実環境での劣化を個別的劣化と考えている結果となっており、その結果を用いて持続可能なRC造建築物の耐久設計をすることができなかった。しかし、本研究の結果により様々な劣化に対し、RC造建築物の外装塗料の挙動を明らかになり、補修や補強の時期を正確に決めることが可能になると考えられる。また、RC造建築物のLCCも計画の段階から低減することができると判断される。
著者
岡田 由香 大林 陽子 緒方 京 神谷 摂子 志村 千鶴子 高橋 弘子
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

看護系大学を拠点に地域と連携し、未就園児とその養護者を対象とした子育て支援事業を通して、子育て支援ネットワークを確立し、継続的な子育て支援活動を定着させるシステムの構築に取り組んだ。結果、大学-行政-地域という子育て支援ネットワークによる子育て家族への支援、学生への生きた教育現場の提供について成果を確認することができ、看護系大学の特色を活かした子育て支援活動のシステムを機能させる事業へと継続された。
著者
塩田 洋 江口 洋 四宮 加容
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼疾患の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。本研究は角膜ヘルペスに対し水溶性でかつ安全な治療薬の開発を試みた。1)DNAポリメレース遺伝子発現の抑制を狙いDNAポリメレースを規定する遺伝子配列をよく検索し、HSVに特徴的な21塩基配列の部を選択し、二本鎖RNA (dsRNA)を合成した。これは21塩基対からなるsiRNAであり、理論的にはDNAポリメレース遺伝子発現を抑制する。角膜ヘルペス感染防止実験として、兎角膜にHSVを接種し1時間後から、A群はsiRNA点眼液を、B群は対象として溶解液を点眼し、HSV接種48時間後の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも樹枝状潰瘍を形成し、siRNA点眼液には感染防止効果は認められなかった。次に角膜ヘルペス治療実験として、兎角膜にHSVを接種し48時間後から、C群はsiRNA点眼液を、D群は対象として溶解液を点眼した。5日間の治療後に両群の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも地図状潰瘍を形成しており、siRNA点眼液に治療効果は認められなかった。2) carbocyclic oxetanocin G (C. OXT-G)点眼液の治療効果我々が開発中のC. OXT-G点眼液と欧米で市販されているtrifluorothymidine (TFT)点眼液との治療効果を比較した。兎角膜にHSVを接種し樹枝状潰瘍の出来た48時間後から0.1%C. OXT-G点眼液群、1%TFT点眼液群と生理食塩水点眼群に分け4日間治療した。その結果、C. OXT-G点眼液とTFT点眼液は同等の優れた治療効果を示した。研究中のC. OXT-Gは、角膜ヘルペスの新しい水溶性治療薬になり得るものと判断した。
著者
森 健策 藤原 道隆 末永 康仁 末永 康仁 北坂 孝幸 目加田 慶人 三澤 一成
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では大規模仮想化人体データベースを構築し、それを基に医用画像の認識理解を行うことで、診断や治療を融合的に支援する手法を検討する。特に、大規模仮想化人体データベースに基づいた新しい医用画像認識理解手法について取り組む。本研究では、600例程度の仮想化人体データベースを構築した。また、仮想化人体データベースを利用して、臓器形状の差異を画像クラスタリングを利用して分類し、その結果を用いて腹部CT像から主要臓器を認識理解する手法を実現した。さらに、その結果を内視鏡手術の診断治療支援に利用する方法を検討した。
著者
安田 一郎 羽角 博康 小松 幸生 西岡 純 渡辺 豊 中塚 武 伊藤 幸彦 建部 洋晶 勝又 勝郎 中村 知裕 広江 豊 長船 哲史 田中 祐希 池谷 透 西川 悠 友定 彰
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

千島列島やアリューシャン列島海峡域において、中深層に及ぶ通常の数千倍の乱流鉛直混合の存在を、観測によって実証した。この大きな潮汐鉛直混合は、鉄や栄養塩等の物質循環を通じて、親潮など北太平洋亜寒帯海域の海洋生態系に大きな影響を与える。さらにその潮汐混合が18.6年周期で変動することによって生じる海洋変動が、日本東方海面水温とアリューシャン低気圧等の大気海洋相互作用を通じて増幅し、太平洋規模の気候・海洋の約20年変動に影響することが、観測・モデルの両面から明らかとなった。
著者
覚道 健治 清水谷 公成 四井 資隆
出版者
大阪歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

まず,in vitroの実験として,滑膜由来の培養細胞に対し生体におけるブラキシズムに類似したメカニカルストレスを与え,解析できる実験システムを開発した.それは,ラットの顎関節滑膜から初代培養により得た細胞を単層培養にて増殖させ,コラーゲンスキャホールドの中にコラーゲンゲルを併用して三次元培養組織を作製した.次に,顎関節解放手術の際に得られた滑膜組織からヒト滑膜由来培養細胞で同様に三次元培養組織を作製し,独自に開発した繰り返し圧縮刺激装置を用いて,生体におけるブラキシズムに類似した圧縮負荷ストレスを与えた.5日間負荷刺激後,三次元培養組織を回収し,細胞動態およびアポトーシス誘導を組織学的観察,炎症性サイトカインの遺伝子発現をRT-PCR法,タンパク発現をウェスタンブロッティング,ザイモグラフィ等の手法を用いて検索した。結果,過剰負荷想定の圧縮刺激により,MMP-1,MMP-3,IL-6,IL-8などの炎症性サイトカインのmRNA発現,タンパク発現の上昇が認められた.さらに,刺激直後,1時間後,6時間後の遺伝子発現の時間推移を調べた.その結果,サイトカインの種類により圧縮負荷刺激後の発現パターンが異なることが明らかになった.in vivoの実験として,ボランティアによる正常者の噛みしめ時の脳内賦活部位の解析をfunctional MRI(f-MRI)を使用して行った.その結果,噛みしめ時に賦活化される部位を特定することができた.さらに,噛みしめ時の不快症状が脳のどの部位で感知されているかどうかを調べるため,噛みしめのタスクに加え,浸潤麻酔および伝達麻酔を行い,歯根膜からの感覚を遮断し,その上で噛みしめ時のf-MRIを撮影,解析を行った.結果,片側の感覚遮断により,反対側の一次体性感覚野および運動野に賦活化が認められた.また両側の感覚遮断を行うことにより,脳の両側の体性感覚野および運動野の賦活領域の拡大がみられた.このことにより噛みしめ時の歯根膜からの感覚刺激が賦活化する脳の領域が明らかになった.
著者
滝口 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

従来の音声認識システムでは,背景雑音や残響の影響を抑圧するために,ユーザはマイクロフォンの前で(マイクスイッチを押してから),音声入力を行なう必要がある.そのような音声認識装置では,音声を使うメリットの一つである"ハンズフリー"なインターフェースを提供しているとは言えない.本研究課題では,マイクスイッチレスな音声認識の実現を目指し,雑音に頑健な音声特徴量抽出法,雑音除去手法,音源方向推定の研究を行い,その有効性を示した.
著者
篠原 渉
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マレーシア・キナバル山のマレーホウビシダに含まれる、形態形質と細胞学的形質で区別できる4個のサイトタイプ(「2倍体・有性生殖・大型」、「3倍体・無配生殖・標準型」、「3倍体・無配生殖・大型」、「4倍体・無配生殖・大型」)間の生育環境の差異を明らかにした。さらに遺伝的解析により、「3倍体・無配生殖・大型」が「2倍体・有性生殖・大型」と「3倍体・無配生殖・小型」の交雑起源であることを明らかにした。
著者
矢田部 龍一 岡村 未対 ネトラ バンダリー 長谷川 修一 森脇 亮 鳥居 謙一
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究より得られた主な成果として, 1)ネパール国カトマンズ盆地における微動観測による地震時地盤の応答解析と2)中央ネパール低ヒマラヤ地域における地すべりマッピングとハザード解析が挙げられる。また,研究期間中に3回のセミナーを通してヒマラヤン地域を代表するネパール国の小中学校における防災教育の展開について様々な議論を行い,昨年5月にネパール政府文部省と教育局との会談を実施し,今後ネパールの小中学校における防災教育のカリキュラム化と学校を中心とした地域社会における防災教育の展開について十分に認識されてきました。防災教育と地域協力に関しても,ヒマラヤ地域を代表する南アジア地域協力連合(SAARC)を通して活動展開する目的で,各国の防災研究者や関係機関,特にSAARC防災センター(SDMC)との連携も進めており,近い将来豪雨や地震等による自然災害に対する共同研究活動や防災教育の実施が期待できる。
著者
小玉 徹
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

工業化からポスト工業化時代への移行は、中心市街地のアメニティ向上にむけた都市再生を促すとともに、空間的な社会的排除という問題を生起させる。本研究は、労働市場政策と住宅政策について、アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダの比較検討から、都市における社会的排除への対応を類型化した。これにより日本の置かれている問題状況を明らかにし、社会的包摂を組み込んだあるべき都市再生のあり方を提示した。
著者
須貝 俊彦 鳴橋 竜太郎 大上 隆史 松島 紘子 三枝 芳江 本多 啓太 佐々木 俊法 丹羽 雄一 石原 武志 岩崎 英二郎 木本 健太郎 守屋 則孝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

関東平野の綾瀬川断層、濃尾平野の養老断層を主な対象として、地形、表層地質調査を行い、とくに河川による土砂移動プロセスと活断層の活動との関係に着目して、伏在変動地形の識別と伏在活断層の活動性評価を目的として研究を進めた。その結果、綾瀬川断層では、最終氷期の海面低下期に形成された埋没段丘面群と沖積層基底礫層の堆積面(埋没谷底面)において、明瞭な断層上下変位が見出され、その平均上下変位速度は約0.5 mm/年と見積もられた。養老断層では地震動による土石流発生と沖積錐の成長が繰り返され、断層崖を埋積してきたことなどが明らかになった。同時に平野の地震性沈降が、コアのEC、粒度、全有機炭素/窒素、帯磁率等の分析によって検出可能であることが示され、そのタイミングが^<14C>年代測定値によって与えられた。
著者
田上 耕司
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

完全2次再結晶化させた焼結タングステン細線中のバブルを走査型電子顕微鏡により観察した。粒界上には平均で23nmの径のバブルが10^<13>m^<-2>の高密度で存在する一方で、粒内のバブルの面密度は粒界の約5%にしか過ぎなかった。また、2次再結晶粒の形態を定量化し、それらの変化が高温クリープにどのような影響を及ぼすかについて調べた。粒の形態を粒形状に関するパラメーターの1つf_1で代表させることにより定量的に表すことができた。そして、粒の最適なインターロック状態にある組織を「粒界面積の急激な増加を示さない最小のアスペクト比を有する粒の形態」と定義し、その状態f^0_1からのズレ指数ΔI(=f_1-f^0_1)によって高温クリープを特徴付けることができた。変形機構図中のベキ乗則クリープ領域は粒が最適にインターロックされている状態のΔI=0で最も狭く、それからズレるにつれて拡大した。そして、同領域の変形は粒界すべりによって強く影響を受け、ΔI>0ではΔIが増加するにつれてさらに粒界キャビテーションによる影響が加わると考えられた。これらの研究成果については平成9〜10年度研究実績報告書の研究発表欄に示す論文にて公表した通りである。このように線材中に軸方向に並んで数多く存在するバブルは2次再結晶粒形状の制御という重要な役目を果たしており、高温での強度はバブルの分散状態こよって決定される粒の形態によって最も強く影響を受けることが分かった。従って、粒内のバブルによる変形応力への直接的な寄与、つまりバブルによる非熱成分的硬化は粒形態の変化のために隠されてしまうので、現在粒形態の寄与分の分離方法に付いて検討中である。
著者
前田 良三
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.ルートヴィヒ・クラーゲスの比喩論・言語論における美的身体性とメディアの問題:クラーゲスの『リズムの本質』が端的に示しているように、彼のリズム論は都市生活の機械的・無機的なタクト(拍子)に対するアンチテーゼとして構想されているが、それと同時に、19世紀的な個的・主観的身体性を超克する契機としての集団的リズムの発見という点において、複製技術的メディアによって可視化されたリズムの表象と通底している。2.ゲオルゲ派のメディア戦略と複製技術による自己演出:ゲオルゲの美的自己演出の戦略は、逆説的にも大都会的・技術メディア的な知覚が支配的になったヴァイマル期の視覚文化を前提としている。大衆文化とエリート文化がいわば同一平面上に並列的に展示され、「触覚的」(リーグル、ベンヤミン)な知覚の対象とされるとき、ゲオルゲ派の美学は自らの詩的世界のみならず、詩人としての社会的存在をも図(大衆文化)に対する文様=ゲシュタルトとして示そうとするものであり、この点においてすぐれて20世紀的といえる。3.伝統主義美学とメッセージの暗号技術:伝統主義者の美学において唐突に復活する「形式」という主題は、非大衆的メッセージ伝達形式として詩というメディアをあらたに発見する。そこでは日常的コミュニケーションに対する暗号として詩が表象されている。4.保守的文学者集団と技術者集団の男性同盟的組織原理:ゲオルゲ派にもっとも典型的に見られる男性同盟的かつカリスマ指導者+弟子という組織構造は、反近代主義的・宗教的な背景を有するが、同時に専門家集団としての技術者集団とその排他性・内的規律といった点で共通性をもつ。