著者
夏堀 摂
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.23-33, 2003-07-31 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
5

本稿では,障害児の親がになわされてきた「親役割」を明らかにし,見直すための作業の端緒として,「親の障害受容」を1つの鍵概念とし,現代日本における「障害受容」論の2つの主要な流れである「共同療育者」論と「認識変容」論について検討した.前者は親が「共同療育者」としての役割を果たすために,後者は障害児の「代弁者」となるための「認識変容」として,「受容」を位置づけるものである.これらの検討を通じて,それぞれの研究のなかに埋め込まれた「望ましい」とされる親像が専門家や研究者によって描かれ,メッセージとして発信されてきたことが明らかになった.
著者
矢内 真理子 ヤナイ マリコ Yanai Mariko
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Social science review (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.121, pp.55-79, 2017-05

論文(Article)本研究は,福島第一原子力発電所事故に関する週刊誌の報道における,言説の作られ方を明らかにすることを目的とする。日本の代表的な週刊誌である『週刊文春』『週刊新潮』『週刊現代』の3誌の2011年3月の記事を対象に,批判的ディスコース分析(CDA)をはじめとした,語用論の分野に基づいた分析方法を用いた。週刊誌が他媒体をどのような視点で捉え,報じているのかを分析することによって,週刊誌が他のメディアをどのように評価し、どのように原発事故に関する新たな「現実」を作り出そうとしているのかを明らかにした。This study aims to reveal how discourse was created in weekly magazine reports on the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Disaster. Analytical methods based in the field of pragmatics, including Critical Discourse Analysis (CDA), were used to study articles published in March 2011 in three of Japan's biggest weekly magazines: Shukan Bunshun, Shukan Shincho, and Shukan Gendai. By examining how these magazines viewed other forms of media and made their reports, this study explains how weekly magazines attempt to create new "realities" about the nuclear disaster, the methods they employ in trying to influence readers, how they view other forms of media, and what type of medium these weekly magazines are trying to present themselves as in the first place.
著者
田中 恭子 會田 千重 平野 誠
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.19-24, 2006-01-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

いわゆる動く重症心身障害児 (者) 病棟における, 強度行動障害を有する例の医学的背景と薬物療法の現状について調査した. 状態像としては「走れる」, かつ最重度の精神遅滞がある青年で, 自閉症の合併例が多かった.薬物療法では抗精神病薬や抗てんかん薬の使用が多かった. 行動障害が重度なほど多剤併用になりやすく, 自閉症合併例では有意に薬剤使用量が多かった. 薬剤使用量が多い行動障害は粗暴性であった. 非定型抗精神病薬などの新薬の使用が約15%の症例でみられた.有効な薬物治療の構築のためには, 標的症状に照準を合わせた前方視的な効果判定と評価が必要であり, 対象者の生活の質に注意すべきと考えられる.
著者
四方 由美 大谷 奈緒子 北出 真紀恵 小川 祐喜子 福田 朋実 Yumi SHIKATA Naoko OTANI Makie KITADE Yukiko OGAWA Tomomi FUKUDA 宮崎公立大学人文学部 東洋大学 東海学園大学 東洋大学 宮崎公立大学 Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities Toyo University Tokaigakuen University Toyo University Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.79-92, 2019-03-08

本稿は、宮崎公立大学人文学部紀要第25巻第1号に掲載の「犯罪報道の共起ネットワーク分析(1)」(以下、前稿)に続き、犯罪報道分析を行い、その結果をジェンダーの視点から考察したものである。週刊誌報道を対象にKHコーダーを用いて頻出語句を抽出した上で、共起ネットワーク分析を行い、事件報道において何がどのように関連付けて伝えられているのか、数量的かつ体系的にとらえることを試みた。犯罪事件の報道において女性被害者、およびその関係者の伝えられ方について特徴を導出することができた。
著者
吉村 真司 松岡 淳
出版者
愛媛大学農学部
巻号頁・発行日
vol.57, pp.55-64, 2012 (Released:2013-08-02)

本稿における第一の課題は,山羊放牧と和牛放牧のコストを比較分析することである。第二の課題は,山羊放牧普及に向けての課題と推進体制のあり方を検討することである。農家への聞き取り調査結果と先行研究のデータを利用して,山羊放牧と和牛放牧におけるコストの比較分析を行った結果,経費,労働時間のいずれも,山羊放牧の方が少ないことが明らかとなった。山羊放牧の普及に向けては,放牧管理や病気予防の技術のマニュアル化や,山羊への家畜共済の適用が必要と考えられる。
著者
蓑輪 顕量 林 隆嗣 今水 寛 越川 房子 佐久間 秀範 熊野 宏昭
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2018-06-29

仏教分野は文献を中心に、止観の実践と理論とがどのように形成されたか、実践に伴う負の反応にどう対処したのかを明らかにし、また心理学、脳科学(認知行動科学)との接点を探る。脳科学分野では瞑想時の脳活動を熟練者、中級者を対象に計測し、瞑想時の脳活動を計測し、予想される負の側面について、注意機能に与える影響を検証する。心理学分野ではマインドフルネス瞑想のグループ療法の参加者を対象にランダム化比較試験を実施し、媒介変数の絞り込み、意図通りに進まない場合の対処法、有害事象の有無について検討する。さらに初学者に止と観の瞑想の順番を変えて実習させた場合に生じる問題点、およびその対処方法について検討する。
著者
上野 真祐子 野﨑 淳夫 二科 妃里 一條 佑介 成田 泰章
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成25年度大会(長野)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.73-76, 2013 (Released:2017-11-18)

開放型燃焼器具は熱と共に排ガスを室内にもたらすため、燃焼過程において多種多様な汚染物質を室内に放散する。そのため、在来よりその危険性に鑑み、数多くの研究が成されてきた。本研究では、広く使用されている最近の開放型燃焼器具の汚染物質発生量を定量的に明らかにすることを目的とした。今回の実験では器具のVOCs発生量とアルデヒド類発生量は定常燃焼時に比較して、点火時と消火時に増大するという知見を得られた。また、器具非使用時にもある種のVOCやアルデヒドが発生しており、各物質の器具発生量を明らかにした。
著者
平野 勉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.485-488, 2017-07-30 (Released:2017-07-30)
参考文献数
6
著者
小松 仁美
雑誌
総合福祉研究 = Social welfare research bulletin (ISSN:18818315)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.143-155, 2019-03-31

メキシコ市ではホームレスが貧困問題の一つとして喫緊の課題となっている.2011-2012年に全体の半数以上を占めた18-40歳の若中年層ホームレスに着目すると,彼・彼女らは1990年代に大量のストリートチルドレンとなった層と重なる.新たにストリートチルドレンとなる子どもが大幅に減少した一方で,路上において成人年齢に達し,その後も路上生活を継続する元ストリートチルドレンのホームレスが相当数に達している.彼・彼女らは,支援の不十分さと成人年齢を境にした打ち切り,麻薬の蔓延,成人後の限定的な支援など複合的要因により路上に居続けることとなった.また,彼・彼女らは初等教育開始前後にストリートチルドレンとなったために低学歴であり,そのために社会復帰がより困難となっている.本稿では,ストリートチルドレンから若中年層ホームレスになった層への支援においては,長期の定住・就学支援が重要となる点を示唆した.
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.479, 2009-09-11

8月30日の衆院選で民主党が圧勝し、同党を中心とする政権の誕生が確実となった。民主党はマニフェスト(政権公約)で、無駄や不要不急な事業を排除して、4年間に公共事業費を1.3兆円削減することをうたっている。建設業界にも大きな影響が出そうだ。 民主党は480議席のうち、絶対安定多数の269議席を大幅に超える308議席を獲得して第一党に躍進した。
著者
西村 実
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.242-247, 1993-06-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
7
被引用文献数
5 6

北海道農業試験場の水稲作では1986年には早生品種, 1987年には中晩生品種を中心として障害不稔が多発し, これらの品種において食味の低下が認められた. 障害不稔と食味低下の因果関係を調べるために, 両年次において普通水田および長期冷水掛流し水田に栽培した13~31品種・系統の白米についてアミロースおよびたんぱく含量ならびに官能試験による食味を調べた. 不稔発生の顕著な品種・系統は官能試験による食味が通常の評価より低く, たんぱく含量も高かった. これらの品種・系統は不稔発生が軽微な品種に比べてアミロース含量が低く, 食味低下とアミロース含量とは関係が小さいものと考えられた. 長期冷水掛流し法に基づく低温処理により人為的に不稔を発生させるといずれの品種・系統においてもたんぱく含量が増加した. しかも低温ストレスが大きく, 不稔程度が大きい場合ほどたんぱく含量は高い傾向にあった. このように障害不稔多発による食味低下の主因はたんぱく含量の増大とみられ, これは出穂前に貯えられた稲体窒素が出穂後の稔実粒に分配される場合, 稔実粒数が少ないほど1粒当たりの窒素分配量が多くなり, その結果たんぱく含量が増大することによるものと考えられた. 今後の良食味育種の基本としては穂ばらみ期耐冷性の強化が欠かせないものと考える.
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通経済大学論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.p46-54, 1986-12

札幌周辺域で,キレハイヌガラシ(Rorippa sylvestris)を共通の食草とする同所性モンシロチョウ属の2種,モンシロチョウとエゾスジグロシロチョウとは,1日当りの1雌産卵数を決定する要因が異なっている。モンシロチョウは,気温や日射が極端に悪い条件でない限り,産卵数は日齢によって決められていて,気象条件の影響を受けない。このため,このチョウは,生理的限界に近い多数の卵を産むことができる。一方,エゾスジグロシロチョウの産卵は,気象条件,特に気温と日射時間によって大きく影響される。このため,1雌が一生の間に産み出す卵数は,その生理的限界をかなり下回ることが予想される。両種ともに,開けた,環境的に不安定な場所を生息地としているが、産卵数に関しては,モンシロチョウの方が,安定多数を保つ機構を備えていることを示唆している。
著者
小谷野 錦子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.6, pp.125-126, 1990

最近,OA化が進むと同時に,一般事務職の仕事は電子メディア上の情報を利用する機会が増え,忙しくかつ難しくなった。これからは,特に情報処理専門でない者も,個人で,あるいは,会社で蓄積されている電子メディア上のデータや情報を利用できなければならない。今後,情報活用に必要な知識と技能とは具体的には,ワープロ,データの加工と管理,通信,データベースと情報検索等が中心であることを述べる。
著者
森本 和寿
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
no.67, pp.123-136, 2021

本稿は、ライティング教育はどのような視点から、どのように分類できるかという問題意識の下、米国におけるジェームズ・バーリンとリチャード・ファルカーソンの分類に着目し、ライティング教育の理論的な分析枠組みを描くことを試みた。先行研究において見落とされていた1980年代のバーリンの研究成果を検討することで、ファルカーソンの分析枠組みを修正し、より妥当な枠組みを提供することを目指した。本稿では、価値論/認識論、教授学、評価の3つの観点と現代的伝統修辞学、認知主義、表現主義、批判的/文化研究、手続き的修辞学という5つの立場で構成される新しい分析枠組みを提示した。これにより、①認知主義のポリティクスへの分析視角が保障される、②「プロセス」概念を教授学に組み込むことで分析視角が明瞭になる、③価値論・認識論に関わる論点と評価論に関わる論点を個別に検討できるという改善が得られた。
著者
宮原 正 下條 貞友 豊原 敬三 今井 健郎 宮島 真之 本田 英比古 亀谷 雅洋 大関 正弘 小勝 順
出版者
The Japanese Society of Clinical Pharmacology and Therapeutics
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.357-365, 1985-06-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
19
被引用文献数
4 4

A phase I study of EST, a newly synthesized specific thiol protease inhibitor developed as a drug for muscular dystrophy, was performed in healthy adult male volunteers to investigate its safety and pharmacokinetics. EST was administered orally in single doses of 100 mg during fasting, or of 100 mg or 200 mg after a meal. The following results were obtained.The clinical tests and observation of the subjective and objective signs and symptomsfound no change due to EST.EST was detected as E-64-c (effective form of EST) in serum and urine after oral administration. The absorption of EST was slower when administered after a meal than during fasting. The AUC (area under the serum concentration curve) and urinary excretion rate were greater following administration after a meal, which indicates a tendency to better bioavailability of EST.As for the comparison of 100 mg and 200 mg administration after a meal, a distinct dosedependency was observed in the serum concentration and urinary excretion.
著者
原田 謙 杉澤 秀博 柴田 博
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.350-358, 2009

<p> 本研究は,シルバー人材センターの退会に関連する要因を明らかにすることを目的とした.データは,全国279センターの現会員と退会者の男女,合計5,553人から得た.</p><p> 分析の結果,第一に「仕事仲間」および「発注者側の態度・対応」に関する満足度が高い者ほど,シルバー人材センターを退会する傾向が低かった.一方,「配分金」や「就業体制」に関する満足度は,退会とは有意な関連がみられなかった.第二に,センターで事務職の仕事を希望する者は,その他の仕事を希望する者に比べて退会する傾向が2倍以上であった.この影響は男性および三大都市圏において顕著であり,センターが受注する仕事と会員が希望する仕事のミスマッチの問題が示唆された.第三に,センター以外のところで就業している日数が多い者ほど,退会する傾向が高かった.この影響は,男性および地方圏において顕著であり,再就職活動の一環としてセンターに関与している高齢者の存在を示唆していた.</p>