著者
塚原 康子
出版者
東京芸術大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.戦後の変化の前提となる戦前の軍楽隊と宮内省楽部の活動状況を調査した。(1)明治初年に創設された陸海軍の軍楽隊は、明治後期には独自の教育システムを作り上げ、大正・昭和期には管弦楽(明治末から導入)を通して東京音楽学校や当時の楽壇と関係を深めた。太平洋戦争末期に大幅な増員がなされたため、戦後には異例に多くの人材が軍から民間に転ずる結果となった。このうち海軍軍楽隊については、海軍歴史保存会編『海軍史』別巻「軍楽隊史」にまとめた。(2)明治7年から雅楽と西洋音楽を兼修した宮内省楽師は教育や管弦楽演奏などを通じて楽壇と交流し、大正・昭和期には楽家(世襲の雅楽専業家系)出身者にも西洋音楽に専心する者が現れた。2.戦後の音楽活動に関する聞き取り調査(海軍軍楽隊出身者4名、宮内省楽部出身者2名)を行った。(1)軍楽隊出身者は、戦争直後には進駐軍相手のバンド、最盛期にあった映画音楽の制作などに引く手あまたの時期があった。しかし、占領の解除、世相の鎮静化に伴ってこうした一時的な需要は急速に縮小し、その後は、オ-ケストラやジャズ・バンドで活動する者、音楽大学や初等中等学校の教員として活動する者(戦後の学校や民間での吹奏楽の普及に貢献した)、東京消防庁音楽隊・警視庁音楽隊・自衛隊の各音楽隊などに入隊した者、など音楽的適応力により分化した。(2)楽部定員は50名から25名に半減し、雅楽の演奏形態などに直接の影響が生じた。昭和21年には、昭和10年代に楽師となった当時20-30代の若い楽師のほとんどが楽部をやめ、民間での雅楽の指導・普及、オ-ケストラなどの西洋音楽楽壇へ転身した。この結果、戦死した人々と併せてこの世代の雅楽伝承者が欠落し、これまで楽家を中心に旧来の伝承形態を保ってきた雅楽界は、新しい事態を迎えることになった。今後、さらに聞き取り調査を重ね、その結果を来年度の『東京芸術大学紀要』に発表する予定である。
著者
伊藤 毅志
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、5五将棋と呼ばれる小路盤の将棋を題材に知識を直観的に記述できるシステムKIDS (Knowledge Intuitive Description System)を構築した。現在のところ、システムは完成し、実用に足るレベルに到達した。ユーザの直観的知識記述が可能で、ユーザが記述した知識ファイル通りに、自動的に対局できるシステムが構成され、ユーザの期待通りの指し手が生成されることが確認された。電気通信大学において、5五将棋の大会を数回開催し、5五将棋に関心を持つプレーヤーが増え、KIDSをネット上で公開することにより、KIDSを用いた大会も行われた。
著者
神岡 太郎
出版者
一橋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

2003年度における研究は以下の(1)(2)(3)(4)に要約できる。(1)画像データを利用した知識、情報共有の仕組みが分散して活動し、そこで得られる情報を他のユーザが情報や知識として利用できることは有意義である。本研究では、そのような情報として画像情報も利用できるようにし、ユーザの意思決定に利用できるサイトを開発している。現在、ビジネス場面ではないが、スポーツコミュニティの中で、その仕組みを実験している過程である。(2)類似画像検索の利用携帯端末を利用して画像情報へアクセスできることは、ビジネス・ユーザにとってもコンシューマ・ユーザにとっても有用である。利用可能な画像情報をキーに、新たな情報を検索する仕組みがあると便利である。このような仕組みは近年Eコマースにおいても注目されつつあり、そのような基礎研究として類似画像検索を応用した実験サイトを用いた実験を行った(論文「類似画像検索を用いた目的地決定支援システム」にて発表)(3)位置情報をコンテクストとして利用したサービス問題解決をする上で、ユーザがおかれたコンテクストに合った情報が入手できることが望ましい。ここではGPS機能を備えた携帯端末に対して、ユーザが音声で必要な情報を求めると、それに対してユーザの位置に応じた適切な情報が音声によって利用できる仕組みを開発した。その成果については現在、論文誌に投稿中である。(4)モバイルビジネスを担う方々とのインタビューモバルビジネス現場の第一線で活躍されている方々とのインタビューが行われた。次の方々が対象で、データは現在整理中である。榎啓一取締役(NTTドコモ)、島田大三課長代理(JR東海)、高橋誠部長(KDDI)、荒川亨社長(アクセス)、高瀬明執行役員(J-Phone)、小野茂教授(大妻女子大社会情報学部・元NEC)、小川善美社長(インデックス)、杉野文則社長(BeMap)。
著者
石田 憲治 嶺田 拓也 粟生田 忠雄 田村 孝浩 日鷹 一雅 谷本 岳 小出水 規行 若杉 晃介 栗田 英治 芦田 敏文
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

水田における魚類や水生昆虫などの生物の行動特性と水田及び周辺の植生や土壌、水利条件などの環境特性、さらには水田の水環境にかかわる社会条件から生物多様性向上要因を分析した。その結果、(1)生物多様性向上に有効な湿地環境復元に水田冬期湛水が有効であること、(2)初期湛水深、湛水田の配置、湛水期間の工夫で現行の利水条件下でも湛水可能面積の拡大が可能であること、(3)一部の水生昆虫では冬期湛水より通年湛水場所を確保する水管理が重要であること、などを明らかにした。
著者
栗原 純 所澤 潤 中田 敏夫 松永 正義 木下 尚子 松田 京子 丸川 哲史 松金 公正
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本統治期から戦後の中華民国期の転換期における台湾社会の変容について、日本統治時代に日本語教育を受けた世代を中心に口述歴史の方法に基づいて研究した。この時期は、文献史料が大変限られており、研究が困難な時期であるが、それを補うことを意図した。調査の対象者には、植民地において医学部などの高等教育を受けた方、戦時中は上海に在住し戦後台湾に帰還した方、兵士として太平洋の孤島に赴いた方、台湾総督府の高官、あるいは戦後の政治的弾圧の被害者、マラリアなど伝染病対策の責任者などが含まれ、その結果、歴史研究に資する証言が多く得られた。
著者
中谷 英明 江島 惠教
出版者
神戸学院大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

1.パーリデータベースの構築研究代表者と分担者は、Association for Pali Text Inputting(=APTI,代表江島恵教(本研究分担者))の活動を通じて、データ入力と、校正作業を継続した。APTI会員は本年10名増加して36名に達した.本年度実績は下記のとおり.(1)校了テキスト:Udana,Thera-theri-gatha.(2)校正中テキスト:Cullaniddesa,Petakopadesa, Dhammasangani.(3)入力テキストKhuddakapatha,Mahaniddesa,Patisambhidamagga,Buddhavamsa,Milin-dapanha,Vibhanga,Paramatthajotika II,Atthasalini.2.データベース作成マニュアル4種のマニュアルを作成した.(1)「APTIへの誘い」(2)「RECOGINITA PLUS使用法」,(3)「OCRデータ処理手順」,(4)「インド学研究とコンピュータ利用」.3.サンスクリットデータ処理システムほぼ完成した.4.研究用プログラムの開発と研究韻律分析プログラムは高島淳助教授(東京外国語大学)の協力によってほぼ完成した.これを利用した研究論文1篇を発表した.(裏面「研究発表」参照)
著者
大橋 弘
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

規制緩和が引き金となり航空会社間の国際的な競争が激しさを増すなか、航空会社による合併・連携(アライアンス)件数が急増している。航空産業において活発化する合併・連携の活動が、航空サービスやその料金体系に与える影響について知見を深めることは、今後も着実な需要増加が見込まれる航空産業を理解する上で、重要な課題である。企業による合併・連携に関しては、これまで産業組織論の分野を中心に数多くの理論的研究がなされてきたが、実証的な研究についてはその多くは産業間(inter-industry)の比較に基づくものであり、理論的な研究が関心を寄せてきた特定の産業(intra-industry)における企業合併に着目した実証研究は未だ揺籃期にある。本研究では、2001年における日本航空(以下、JAL)と日本エアシステム(以下、JAS)との合併事案を取り上げ、その合併が国内航空市場の競争状態にどのような影響を与えたのかについて構造推定手法を用いて分析を行った。まず航空需要については、1996年7月から2005年10月までのデータ期間において、O(起点)-D(終点)ベースのデータを用いて離散選択モデルを用いて推定を行った。航空需要を推計する際には、新幹線を含む鉄道との競合関係も考慮している。需要関数の説明変数のうち、価格およびフライト数については、内生性の問題があることを考慮して、操作変数を用いた一般モーメント法により推定を行った。航空サービス供給については、旅客数(有償座席数)の決定だけでなく、フライト数の決定も各航空会社は行うと考えて、モデルを構築した。推定結果は、需要・供給関数ともデータとの当てはまりは良いことがわかった。この推定値を用いて、本研究では、もし2001年にJAL-JAS合併がなされていなければ、日本の国内航空市場はどのような産業構造になっていたかという点である。本分析の結果、合併により当該合併企業の市場支配力が大きく上昇していることが見て取れた。
著者
砂岡 和子 保坂 敏子 砂岡 和子 敬松
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本語と中国語による対面異文化交流時に発生する障害の解決支援を目的に、ミス・コミュニケーション・コーパスを構築し、会議参加者が相互にコメントを付加できる異文化交流ビデオ教学プラットホームを開発した。話者の各種属性による言語・非言語要素、および対話における協調・非協調などの要因から討論シーンが検索可能となる。
著者
太郎丸 博
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

2007年に実施された郵送調査とインターネット調査のデータセットを使い、いくつかの変数に関してそれぞれの分布をより正確と思われるデータと比較した。まず年齢について2006年11月の人口推計と比較すると、郵送もインターネット調査も15~19歳のサンプルが少ない。特にインターネット調査のほうが歪みが大きい。しかし、その他の年齢に関してはむしろ、インターネット調査のほうが歪みが小さかった。また性別に関してもインターネット調査のほうが歪みが小さい。最終学歴に関しては、郵送もインターネットも、女性の高学歴サンプルが過大に含まれ、中卒男女のサンプルが過小に含まれていた。また、インターネット調査に関しては男性高学歴者も過大に含まれていた。さらに、結婚時の理想の働き方を女性に対して尋ねた質問項目のゆがみを、出生動向基本調査と比較することで検討した。その結果、郵送調査では18~24歳で就業継続希望者が過小に含まれており、25~29歳で中断希望者が過大に含まれていた。インターネット調査は、出生動向基本調査と大差ない分布であった。この理想の働き方と、本人の従業上の地位などの変数との関連の仕方を対数線形モデルやロジスティック回帰分析で比較したが、インターネット調査と郵送調査で有意な違いは見いだせなかった。このような分析結果を総合すると、インターネット調査を行う場合、年齢、性別、学歴という3変数に関しては、クォータ法を使ってあらかじめ割り当てておくことが必要である。今回の分析では、無職と非正規雇用を意図的に過大にサンプリングしたので職種がどのように歪むかはわからなかった。いずれにせよ、分布が既知の重要な変数に関してはできるだけ細かく割り当てを行うことが、インターネット調査の代表性を高める上で重要であることが分かった。また、1変数の分布だけを見れば、若干の歪みが見られるものの、変数間の関連の強さに関しては有意な違いが見られず、一定の有効性があると考えられる。
著者
松村 多美恵 菅井 勝雄 (1984) 本田 敏明 菅井 勝雄 新妻 陸利 馬場 道夫
出版者
茨城大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

今回の研究は、IRE-【I】(Ibaraki Daigaku Response Environment-【I】)、IRE-【II】に続くIRE-【III】の開発に関するものである。最終年度である昭和61年度は、昭和59年度および昭和60年度に開発されたタッチスクリーン式コンピュータディスプレイ装置を用いて、実用化に向け、本格的な実験を行うとともに、本システムによる学習効果を実証するため、教材とされた生活単元学習としての「宿泊学習」での実際の宿泊場面や授業場面における児童の行動をビデオに記録し、分析した。具体的には、(1)F養護学校小学部における「宿泊学習」の事前と事後にプログラム学習(ことばと動画の対応、および次の行動の予測の動画選択)を実施した結果、学習成積の改善が見られるとともに、反応時間に関しても、反応時間が短かくなり、標準偏差も小さくなった。(2)児童の宿泊場面における行動を17項目の児童に対する質問調査、25項目のVTR反復視聴分析、および担任教師による21項目の行動評価によって検討した結果、多くの場面で自律性の向上が見られた。(3)実験群と統制群を設定し、実験群にみるプログラム学習を実施したところ、実験群において、生活単元学習としての「宿泊学習」の第1回の授業場面の行動がすぐれていた。すなわち、発語や指さしをしながら積極的に授業に参加している行動が、統制群より統計的に有意に多かった。以上の結果により、本システムの有効性が認められた。従来の視聴覚的方法であれば、宿泊学習のビデオを事前に視聴して、その効果を調査するという方法をとったであろうが、本システムは、場面を分解整理した上、児童自らが、タッチスクリーンに反応し、選択視聴するという方法をとり、児童の大きな興味を引いたように思われる。本結果の一部は、日本教育工学会(1986)において発表された。
著者
横山 美江
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,多胎児の身体発育・発達過程を縦断的に調査し,単胎児との比較から身体発育・発達過程の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果,三つ子と単胎児における体重の発育差は,出生時が最も大きく(40%以上の発育差),最初の 1 年で急激に減少するものの,学齢期においても三つ子は単胎児よりも体重が軽いことが明らかとなった。さらに,身長に関しても,出生時に最も差が認められ,最初の 1 年でその差は急激に減少するものの,学齢期においても身長が低いことが判明した。
著者
山口 亨 増田 士郎
出版者
東京都立科学技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近年、情報通信技術の急速な進展に伴い、情報インフラストラクチャ整備が進められている。しかし、膨大な情報量に対応する強力で拡張性の高い情報インフラ整備が進み、日々の生活でその恩恵を得る人が増える一方で、病院や家庭内の高齢者・機能障害者(以下、情報弱者と呼ぶ)に代表される、情報技術から疎外され、その恩恵を十分得られていない情報弱者と呼ばれる人々との格差が相対的に進んでいるのも現状である。少子高齢化社会への深刻な進展の中、こうした情報弱者は益々増加するという警鐘が鳴り響く。こうした社会的背景の中、情報バリアフリー・ナチュラルインターフェイスを備え人間を空間的にサポートする人間中心型都市空間の構築は急務である。本研究(人間安心化ネットワーク形成機構と人間性志向分散感覚知能システム)では、情報インフラの整備された都市空間に生活する情報弱者やその他の人々を支援する知的インターフェイスを想定する。情報弱者やその他の人々への日常時の物理的サポートを、携帯情報端末(PDA)による福祉情報や防犯情報の相互伝達と、オントロジー(人間同士のコミュニケーションに見られる共通基盤の工学的表現)を用いた人間意図の共有を可能にするネットワークインテリジェンスにより行い、防犯サイバー都市の実現、更に、福祉防犯PDAを利用したサイバー都市との連携による安全なヒューマン連携型モビリティシステムの実現を目指す。この際、以下の1)、2)、3)について実現し、さらには、1)、2)、3)を統合した全体システムの構築の研究を進めてきた。1)都市情報をPDAにより集め再構成するサイバー都市と情報再構成機構の研究2)構成により得た情報をナチュラルに利用者へ伝える情報バリアフリー・ナチュラルインターフェイスの研究3)再構成情報を用い、利用者を安全に誘導する人間中心型ヒューメインビークルの研究以上の課題の実施により、人間安心化ネットワーク形成機構と人間性志向分散感覚知能システムの実現の成果を得た。
著者
長谷川 正 松川 正樹 鎌田 正裕 新田 英雄 犀川 政稔 真山 茂樹 長谷川 秀夫 原田 和雄 中西 史 松川 正樹 長谷川 秀夫 新田 英雄 鴨川 仁 小川 治雄 前田 優 犀川 政稔 吉野 正巳 真山 茂樹 原田 和雄 中西 史 土橋 一仁 西浦 慎吾 鎌田 正裕
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

理科の実験・観察を児童・生徒に印象づけるための動的実験・観察教材として,室内用を29件,野外用を3 件開発した.そして,それらを授業実施するため,教師,児童・生徒,保護者,地域のボランティアと大学教員や学芸員,学生としての院生と学部生からなる室内型と野外型の支援システムを構築した.さらに,学生・院生の科学コミュニケーターとしての意識を高めための,支援システムを活用した科学コミュニケーター育成プログラムの開発を試みた.
著者
松本 曜
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

今年は,研究の最後の年度として,研究成果のまとめと発表に重点を置いた.大きな研究課題の一つとして掲げたのは「二つの単語が反義語と感じられるのはどういうときか」という問いであった.これに関しては,「方向性の対立と肯定・否定の対立という二つの認知的な対立のいずれかが感じられるときである」という答えを得た.この立場から反義語の再分類を行い,従来の分類(相補性や関係性に基づくもの)よりも有意義な分類ができることが示された.また,もう一つの課題である「反義語らしさを決めている要因は何か」という問いに関しては,「方向性と肯定・否定性が語の意味に顕著な形で含まれているかどうかによる」,という答えを得た.この点に関しては,日本語と英語における実験を行うことによって検証することができた.具体的には,語の意味の中に反対方向の方向性がはっきりと含まれていると感じられる単語ペアほど,また,肯定的か否定的かがはっきりしている単語ペアほど,意味が反対であると判断される度合いが高いことが示された.これらの成果は,学会発表論文と雑誌論文,さらには未発表の論文にまとめた.また,関連する問題を多く含む類義性に関する論文も雑誌に出版した.研究の過程で作った反義性に関する文献リストなどの資料はwebpageに公開している.
著者
中村 政隆 伊藤 元己 川合 慧 佐久間 雅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

複数の種(taxon)の遺伝子の塩基列もしくはアミノ酸列をデータとして、そこから系統樹(phylogenetic tree)を構築するアルゴリズムは、距離行列法と、与えられたデータのもとでの各二分木のコストを定義してコスト最小の二分木を求める、という2つのタイプに大別できる。距離行列法(Pairwise Distance Method)としては、UPGMA/WPGMA法(実用にはあまり用いられてない)、及び近隣結合法(Neighbour Joining Method, NJ法)などが知られている。それに対して、初期解から局所探索、つまり受刑探索を繰り返して最適器を求めるときの目的関数の取り方として、最小二乗法、最小進化法、最大節約法(Parsimony)、最尤法(Maximum Likelihood Method)などが知られている。一般に組み合わせ最適化の理論では、これらの樹形探索のような局所探索を繰り返すときには、適当なメタヒューリスティックアルゴリズムを使うとより効率的なアルゴリズムが得られることが知られている。実際には、組み合わせ最適化の分野でメタヒューリスティックアルゴリズムの名の下に以下の3つが知られている(1)遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)(2)タブー探索(Tabu Search)(3)進化的アルゴリズムこれらの戦略を系統樹アルゴリズムの樹形探索の部分に適用し、シミュレーションを繰り返してみた結果、タブー探索がもっとも効果的であるという知見を得た。
著者
金本 伊津子
出版者
平安女学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

平成15年度は、平成13年-14年度にブラジルで行ったフィールドワークの研究成果の口頭発表を以下の二つの学会にて行った。1.2003年7月(5日〜12日)、イタリア(フィレンッエ)で行われたXV International Congress of Anthropological and Ethnological Scienceの国際会議で研究発表を行う。発表論文のタイトルは、"Those Abandoned Twice-Aging and Ethnicity of Japanese Elderly in Brazil"である。この発表においては、ブラジルの日系老人の老いが、きわめて日本・日本文化との緊密な係わり合い(例えば、日本の年金の受給の有無や家族の日本への出稼ぎ、あるいは、言語や文化的活動など)の中で展開されている社会的・文化的状況についての報告を行った。2.2003年9月23日、東京(中央大学)で行われた第一回日本オーラル・ヒストリー学会設立大会における交流分科会「移民とエスニック・ストーリー」のパネリストとして研究発表を行う。発表論文のタイトルは、「オーラル・ヒストリーにみる日系ブラジル人の老い」である。この発表においては、移民の歴史資料としてのオーラル・ヒストリーの重要性を再確認するとともに、データの収集ならびに保存などの方法論を中心に議論を展開した。また、国際協力事業団の業務委託を受けたサンパウロ日伯援護協会が2003年1月から9月にかけて行われた「ブラジル日系社会高齢者実態調査(要介護者老人実態調査)」の専門家チームに加わり調査協力するとともに、報告書(日系社会高齢者実態調査委員会編「ブラジル日系社会高齢者実態調査(要介護者老人実態調査)」サンパウロ日伯援護協会発行2003年))の執筆・監修を行った。
著者
小巻 泰之 地主 敏樹 竹田 陽介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,2つのデータベースを新規に作成し,以下のような分析結果を得た.1)ドル円為替レートの予測に関するサーベイ・データ(世界経済情報サービスによる「為替レート予測レポート」(以下,WEISサーベイ))2)1980年代後半の外国為替市場の相場状況に関する新聞報道(日本経済新聞,日経金融新聞)を基に,為替介入(以下,観測介入)と通貨当局者の発言(以下,口先介入)1)為替相場の市場参加者の期待形成について日本での従来の先行研究の多くが利用してきた「国際金融情報センター(JCIF)」のサーベイ・データではなく,世界経済情報サービス(ワイス)によるサーベイ)を用いると,必ずしもJCIFサーベイから得られる結果が追認される訳ではない.2つのサーベイの結果の違いは,その作成方法が電話などによるアンケート調査なのか,各人の予測形成の段階で他者の情報に影響されることにあると考えられるが,市場への影響を考慮する場合,利用するデータ属性の違いも考慮すべきであることが示される.2)為替介入の効果為替介入の市場への影響については,データが開示された1991年7月以降については分析が可能であるものの,それ以前の介入動向の影響について十分な分析は難しい.そこで,外国為替相場の場況に関する新聞報道(日本経済新聞,日経金融新聞)ベースの情報を収集し,加えて当時の市場コンセンサスについても,日次ベースにて,1980年から2000年まで21年(約7700日分)のデータ(全133系列)の収集を行い,データベースを作成した.これにより,1980年代後半の為替介入の影響をみると,東京市場で伝えられた介入情報は多いにも関わらず,その効果は当局の意図とは異なり,一方向の大きな変動を引き起こすことが示される.この中で,為替市場へ影響を与えたとみられるのは,為替介入,経済指標及び経済指標に関する市場の予測(コンセンサスともいうべきもの)などの定量的な情報だけでなく,通貨当局者の発言,市場での噂など質的な情報も大きな影響を与えていると考えられる.
著者
中西 久味
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、唐末から北宋の慶暦年間(1041-1048)ころまでの仏教の動向について、儒教との交渉から考察したものである。具体的には、北宋時代に仏教の立場から儒教を摂取し儒仏一致を説いたとされている、天台宗山外派の智円『閑居編』および禅宗雲門宗の契嵩『鐸津文集』『來註輔教編』を取りあげた。ただし前者の智円では、それほど体系的な議論が展開されていないため、主として契嵩の護法思想について考察した。契嵩の議論も首尾一貫しているわけではないが、第一に仏教は勧善によって「治政」に寄与すること、第二に仏教は「性命の深奥」を示して死生の超越へと導くことを説き、この二点によって仏教の擁護をはかっていることを指摘した。また、その議論は「心」「道」「教」を軸として展開されていることを点検した。さらに契嵩の背景となっている思想について探究し、仏教については、一心法界や三界唯心を説く中唐の澄観・宗密系統の華厳教学の影響を受けていることを指摘した。これは五代の呉越の地域に天台宗とともに盛んであった仏教である。一方、儒教については、その根本的な思想を中庸・皇極などの中道と捉えているが、これは隋の王通『中説』、および、その阮逸註に依拠していることについて考察した。また当時湖州杭州一帯に広まっていた胡〓などの儒教が反映されている可能性を指摘したが、この儒教はやがて勃興する二程子の道学と関連する。後世の模範となった契嵩の護法論は、呉越の地域に継承されていた仏教と、同じくこの地域で胎動しつつあった儒教との出会いによって生まれたものと考えられる。
著者
藤井 博英 宇佐美 覚 牟田 能子 入江 良平 大和田 猛 清水 健史 伊藤 治幸 藤田 あけみ 大山 博史
出版者
日本赤十字秋田看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は、民間信仰の「イタコ」を利用した自死遺族のグリーフワークを促進する要素を明確にすることを研究目的とした。「イタコ」を利用した対象者群と、利用しなかった対象者群の半構造化面接の結果を質的に分析し、それぞれに6つの因子が導出された。「イタコ」を利用した遺族は全てソーシャルサポートを受けておらず、「イタコ」を利用し、語ることによる心の浄化と、故人との内的な対話を通した相互理解や赦しの獲得がグリーフワークの促進要素として見いだされた。
著者
耒代 誠仁
出版者
桜美林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

古代木簡デジタルアーカイブをターゲットとした知的情報検索の実現に向けた研究を行った。パターン認識技術、画像処理技術、ペン・ユーザインタフェース技術を用いた破損字形検索技術を実現することで、解読が困難となった字形の類例検索を実現した。また、検索技術を含む古代木簡解読支援システム「Mokkanshop」の開発と一般公開を行った。このソフトウェアは古代木簡デジタルアーカイブ「木簡字典」と連動し、利用者に実用的な情報検索を提供する。