著者
井出 達也
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.1315-1323, 1990-11-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

原発性胆汁性肝硬変症(PBC)における高IgM血症の成因を検討した.Monomer型IgMの増加はなく,血中総IgM値はpolymer型IgM値と正の相関を示した.血中secretory IgM (sIgM) levelの増加も認めたが,血中総IgM値と強い相関はなく,疾患特異性もなかった.肝内門脈域浸潤細胞ではIgM保有細胞が有意に多かった.電顕によるKupffer細胞の観察では病初期からの貪食能低下の所見が得られた.IgMクラス抗Lipid A抗体はPBCで最も増加していた.以上より,高IgM血症を来たす原因として,monomer型IgMの関与は否定的で,胆管破壊に伴うsIgMの排泄障害によるとも考えられなかった.血中IgMの産生部位としては肝局所が重要であり,Kupffer細胞の機能異常に伴う腸管内細菌性抗原の処理能の低下が,細菌性抗原に対する抗Lipid A抗体をはじめとしたIgMクラスの抗体産生を誘導していることが示唆され,このことが高IgM血症の一因を成すと考えられた.
著者
吉村 歩 山崎 古都子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.587, pp.65-71, 2005-01-30 (Released:2017-02-11)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

The purpose of this study is to. examine the distribution of the Tsumairi and the Hirairi through the analysis of thatched house in Shiga prefecture. The result are as follows: (1) Tsumairi is distributed especially in northern area. (2) The north-south axis of roof and the south door are related to Tsumairi style. (3) Tsumairi is highly related to the weather conditions, especially snow which is much influenced from Lake Biwa. (4) The difference of the roof maintenance management between the northern area and the southern area is found. (5) The correlation with the custom in the heavy snow area and the distribution of Tsumairi area is identified.
著者
針谷 正祥
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.379-388, 2004 (Released:2005-02-22)
参考文献数
48
被引用文献数
1

CD40およびCD154はそれぞれTNF受容体スーパーファミリー,TNFスーパーファミリーに属する分子であり,多くの研究結果が自己免疫疾患の病態形成におけるCD40-CD154相互作用の重要性を示している.CD154は主に活性化T細胞に発現し,B細胞のみならず幅広い細胞に発現するCD40と結合して,自己免疫疾患における抗原提示・トレランス・抗体産生・組織障害などに関与する可能性が示されている.膠原病の中では,特に全身性エリテマトーデス(SLE)あるいは関節リウマチ(RA)におけるCD40-CD154相互作用の研究が最も精力的に進められてきた.本稿では,SLE, RA,炎症性筋疾患,強皮症,抗リン脂質抗体症候群の病態形成におけるCD40-CD154相互作用の関与について基礎・臨床の両面からこれまでの報告を俯瞰すると共に,CD40-CD154阻害療法の臨床試験結果についても取り上げた.モデル動物でのCD40-CD154阻害療法は優れた治療効果を示し,新薬開発の標的分子として注目を集めている.しかし,現時点では有効性と安全性を両立するCD40-CD154阻害薬はいまだ開発されておらず,今後の研究の進展が強く期待される.
著者
古澤 直人
出版者
法政大学経済学部学会
雑誌
経済志林 = 経済志林 (ISSN:00229741)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.339-380, 2013-03-15

This paper considers factors in the Heiji Disturbance and the circumstances of a nine-day incident through an examination of the theory of Mr. Syousuke KAWACHI (河内祥輔). The conclusions are as follows.(1) The situation in aristocratic circles after the Hougen Disturbance was not stable.(2) The confrontation between a direct Imperial government group and a cloister government group began from the time of GOSHIRAKAWA’s (後白河) abdication from the throne.(3) Mr. KOUCHI pointed out the motives of the original Crown Prince in the lead-up to the nine-day incident, but there are no historical records that can establish the truth about “GOSHIRAKAWA’s intentions.”(4) It was not a “fire due to negligence” but “arson” in the case of the SANJOUDONO (三条殿) fire during the nine-day incident. Retired emperors were moved to the Imperial Palace because of the “arson”, and the SHINZEI (信西) family’s influence was eliminated at the same time.(5) Evidence of GOSHIRAKAWA’s hatred of SHINZEI is thin.(6) The joint conspiracy to exclude the SHINZEI family continued until February 20th the following year.(7) There was no theory that clearly drew a connection in the rebel forces from NOBUYORI (信頼) to GOSHIRAKAWA. (8) The SHINZEI family’s isolation is due to the fact that the main characters in the nine-day incident were anti-SHINZEI groups. (9) The account of the incident was re-written 25 or 26 days afterwards, but this was not done to conceal GOSHIRAKAWA’s intentions but to water down the extent of TUNEMUNE (経宗) and KOREKATA’s (惟方) participation.
著者
玉川 和子 櫛田 壽恵 四方 幸子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.49-61, 2002-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15

カトマンズ近郊の農村地区の食生活を料理の特徴と料理組合わせ評価を中心に研究してきた。(1)食形態は1日2回の食事と,2回の軽食で構成されている。(2)食品の摂取状況は1日に米322gと,その他の穀類142gで,穀類の30%をその他の穀類が占めている。また総穀類の摂取量が多くなるほど,その他の穀類の摂取割合が増えていた。(3)主食は,米,とうもろこし,小麦粉が中心であった。主食は毎食必ず摂っていて,その内容はめし,チューラ,ロティ,ディドであった。さらに両地区ともめしが80%であった。軽食はミルクティにパン,チューラ,とうもろこし(粒および粉)であった。また軽食に関しては両地区の差は大きく,C村はパンが多く,B村はロティが多くみられた。(4)副食はカレー,ダルスープ,アチャールといった固定的な料理の組合せパターンを示している。しかし料理が毎食3品揃っている世帯は16%しかない。カレーの喫食状況はタルカリとサーグで95%を占め,肉を用いたマスは殆どない。カレーは殆どの世帯で毎食食べている。ダルスープは3日間のうち1回も食べていない世帯が17.9%で平均では3日間で3~4回であり,アチャールはダルスープより比較的よく食べられていた。これらの傾向は季節による料理の組み合わせは変わらない。料理に用いられる野菜の種類が変わるだけであった。60(60)カトマンズ近郊の農村地区の食生活調査(第1報)(5)(食事)料理組合わせ評価と,(軽食)料理組合わせ評価との関係を見ると,食事の組合わせ評価の低いものは軽食評価が低い傾向を示したが,B村では食事評価点が高い低いに関わらず,軽食評価が低く,軽食は常に簡単にすませていることがわかる。(6)(食事)料理組合わせ評価点の値が高い低いに関わらず,エネルギーおよびたんぱく質の摂取量は変わらない。これは動たん比が低いことからも判るように,穀類を中心とする食事内容が原因である。しかし評価点が高くなるほど食品数が増加し,微量栄養素の摂取量に影響すると考える。(7)米と豆,野菜を中心とする文化の中でカレー,ダルスープ,アチャールという伝統的な食事パターンを守り,できるだけ食品数を多く摂取することが,栄養のバランスを改善することにっながり,常にミルクティーを飲む習慣を大切にすることが,少しでも動たん比を上げることになる。
著者
東山 禎夫 向瀬 慎一 浅野 和俊
出版者
Japan Society for Snow Engineering
雑誌
日本雪工学会誌 (ISSN:09133526)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.16-25, 1998-01-01 (Released:2009-05-29)
参考文献数
9

A removal method of snow accumulated on a photovoltaic (PV) array installed at a pantiled roof was examined using a model house in 1994/1995 winter season. The photovoltaic array with a rate of 1kW consists of ten PV panels and each panel was individually heated by injecting do current from a dc power supply. The roof surface around the array was covered with the electrically-heated roof tiles. When snow slides down from the panels and the temperature at the under surface of the panel rises to 3 degrees, the heating circuit automatically turns off and the system for generating electric power turns on. Snow on the photovoltaic array and the pantiled roof usually slides down within 3 to 4 hours after heating. The snow sliding system works effectively in assistance of sunshine. After snow sliding, the photovoltaic array can generate electricity in a sunny day, although the gained energy is less than whole energy to snow removal. Since the generated power is considerably reduced owing to the existence of a little snow lump on the array, snow should be removed clearly.
著者
森 星豪 岩井 彌 篠田 博之 森村 潔 芝池 正子
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57, 2005

オフィス照明において作業者の集中力を高めかつ省エネルキ゛ー化が期待できる照明方法にタスク&アンヒ゛エント(以下、T&A)照明があるが、単に周辺のアンヒ゛エント照明の照度を下げただけでは室内の印象が暗く陰鬱に感じられ、明るさ感が低下するという問題があった。省エネルキ゛ーに貢献するT&A照明の普及には省エネルキ゛ーだけではなく快適性との両立が必要であり、そのためには明るさ感の低下を必要最小限に抑える技術の開発が不可欠となる。本稿では本照明方法を実現する照明機器の試作機を開発し、オフィス空間を想定した実験室に設置し(スハ゜ークル照明とタスク照明に関してはLEDを使用)、視環境評価実験を実施した。<BR>実験結果よりLED利用T&A照明にて従来アンヒ゛エント照明と同等レヘ゛ルの視環境を実現できることが分かったが、今回の実験条件では両者の総消費電力がほぼ同等であった。しかし、今回用いたLEDの発光効率は約30lm/Wであり、発光効率が4倍になると20%の消費電力を削減できることより、今回開発したT&A照明は近い将来(2011年にLEDの発光効率が120lm/Wになると予測)、省エネルキ゛ーと快適性との両立が図れる照明方法として期待することができる。今後はよりサイス゛の大きなオフィス空間にてさらなる実用化検討を行う。
著者
歸家 令果
出版者
東京都立大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
巻号頁・発行日
2020

超短パルスレーザー場中で希ガス原子と高速電子線を衝突させ、角度分解飛行時間型電子分析器を用いて散乱電子のエネルギーと散乱角度分布を計測します。散乱電子の強度分布を解析することによって、標的原子と入射電子との相互作用ポテンシャルによって生じる散乱電子のゼプト秒の遅延時間を決定し、ゼプト秒科学を開拓します。
著者
岩本 さき 笠井 新一郎 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 塩見 将志 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-32, 2001-03-31

平成11年度より,香川県坂出市では,1歳6ヶ月児健診で未通過だった子どもの発達状況のフォローを一つの目的として,保健婦と言語聴覚士による2歳児を対象とした発達相談(以下,2歳児相談)を行っている.しかし,実施に際して,評価時間の短さや,子どもの語彙発達を評価する指標がない点が問題として挙げられた.そこで,2歳児相談時にスクリーニングとして使用できる語彙チェックリストを作成することを目的とし,2歳児の語彙発達の現状を明らかにするための調査研究を行った.調査の対象者は,香川県坂出市内の全保育所(12施設)に所属する1歳11ヶ月から2歳11ヶ月の子どもの保護者であり,161名であった.調査においては,名詞・代名詞・抽象語・動詞・形容詞・形容動詞・副詞・感動詞を含む,全語彙数452個のチェックリストを,調査用紙として用いた.分析を加えた結果,2歳児相談でスクリーニングの指標となる平均語彙数は,2歳0ヶ月児で183.9語,2歳6ヶ月児で288.7語であった.また,2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月にかけて350語を超えており,グラフはほぼ横這い状態を示した.これらの結果から,今回用いたチェックリストの適用範囲は2歳9ヶ月以前と考察された.
著者
田中 誠也 磯田 弦 桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

近年,新たな観光資源としてアニメ作品の背景として利用された地点をめぐる「アニメ聖地巡礼」が注目を集め,ファンに呼応する形で地域も様々な施策を行っている.本報告では,SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の1つであるツイッターの位置情報付きの投稿データを用いて,アニメ聖地と認められている地域内で巡礼者がどのような地点を訪れているのかを,時系列に見ていくことで地域の施策の動きと聖地巡礼者の動きの関係性を分析していく.
著者
林 初美 工藤 典代 笹村 佳美
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.53-58, 1997 (Released:2012-09-24)
参考文献数
5

Deaf children were tested by means of PVT (Picture Vocabulary Test) and WIPPSI or WISC-R, then the relation between speech development and hearing level was discussed. The age of 22 children at the test ranged from 4 years to 13 years. Their average hearing level ranged from 37 dB to 71 dB. Their PIQ (performed IQ) was within the normal range. Results of PVT were almost related to that of VIQ (Verbal IQ), but there was no evident relation between the results of PVT or VIQ and hearing level. Some of the children with mild hearing impairment showed poorer development of their vocabulary and verbalism than expected. We considered that the development of vocabulary and verbalism was affected by several factors besides their hearing level.
著者
白田 由香利 橋本 隆子 チャクラボルティ バサビ
出版者
学習院大学経済学会
雑誌
学習院大学経済論集 (ISSN:00163953)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.31-41, 2016-07

ベイズ推論は,文書のトピック分析を始め,画像のパターン認識のほか,画像を用いた服装コーディネイト推薦,買い物履歴情報からの消費パターン分析など,広い分野で活用されている。本稿では,ベイズ推論の手法を大学ブランドイメージ分析に適用する。我々は,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の代表的アルゴリズムであるギブズサンプラーの実装により,シンプルトピックモデルによるベイズ推論のクラスタリングの過程を可視化するツールを開発した。このツールにより,大学ブランドイメージという共通の知識を共有するデータを対象として,クラスタリングのマルコフ連鎖の変動のようすを可視化する。このような手法のポイントは,共有する知識に基づく分析事例を示し,その事例からその背景にある数学的手法を連想させ,理解させる,ことである。このMCMC における定常状態の連鎖プロセスにおいては,ある大学が2 つのクラスの間を頻繁に行き来するなどの興味深い変動が見られた。こうした可視化により,クラスタリングのツールをただ使って結果を出すだけではなく,その背景にあるギブズサンプラー,シンプルトピックモデル,などの数学プロセスを理解することが可能となる。そうした数学プロセスの理解は,的確な分析に必須であるので,こうした数学教育はベイズ推論において重要と考える。
著者
平川 雅彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.47-52, 2017

&emsp;自動車に搭載する自転車認識技術を特許情報から解析する。特許情報の課題と解決手段を記述している文章を抽出し、トピック分析を行った。分析にはLDA法を用い特徴キーワード群を抽出する。信号灯、道路種別などの複合語は抽出できなく、このため、形態素3-gramの頻度で解析した。その結果、衝突の可能性などの特徴語を把握できるようになった。また、特許間の距離は潜在的意味解析により3次元の図形表示し、最も正確な位置関係のものを選定した。<br>今後は、解析精度をさらに向上できる手法を検討する。
著者
杉本 裕司
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.17-40, 1997-03-20

本論考は、日本人の道徳性の発達の仕方とその可能性を、認知発達論と深層心理学との「対話」によって検討することを目的としており、その際前者としては主としてL・コールバーグの主張を、そして後者としては河合隼雄(ユング派)の主張を引き合いに出し、考究の対象とすることにしたい。
著者
大橋 和典 小坪 遊 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.107-113, 2003-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
1 6

近畿地方から発見され,新種記載されたミツユビナミハダニの発生分布および越冬能力を調査した.本種は,大阪府,京都府,兵庫県および東京都で発生が確認され,主にイヌホオズキを利用していた.冬期でも全てのステージが活動していたことから非休眠性種である考えられたが,冬期に生存している個体の割合は低く,本種は熱帯または亜熱帯に起源する侵入種であると考えられた.しかし,本種は2001 年に発見されてから少なくとも2 度の越冬に成功しており,すでに分布の拡大を始めているものと思われた.