著者
山口 亮子
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

国内で親が子を連れ去った場合は、人身保護手続きや審判前の保全処分によるが、日本の子の奪取事件の手続きと効果は、ハーグ条約案件とは異なり、子を即座に元の状態に戻す制度ではない。本研究では、その違いと日本の親権法における問題点を明らかにした。次に、アメリカにおける、他方親の同意のない無断転居を制限する立法と裁判基準等を検討し、子の奪取防止と親子の交流確保に有効であることを示し、ドメスティック・バイオレンス事件の手続きと保護について調査した。これらの研究により、子の奪取問題は単なる家庭の私事ではなく、国家が対策すべき課題であり、国家の家族への一定の介入が必要であることを示した。
著者
伊藤 直樹 花輪 壽彦 及川 哲郎
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、社会的ストレスで誘発されるマウスのネガティブ思考に対する香蘇散の改善効果は観察されなかったものの、うつ様行動に対して香蘇散は抑制効果を発揮し、その作用メカニズムに脳内炎症抑制作用が深く関与することを明らかにした。また、うつの再発防止に香蘇散が有効である可能性も示された。これらの成果は、社会的ストレスによるうつの発症や再発における香蘇散の有用性を示唆するものであり、またこの研究を通して脳内炎症がうつの病態に深く関与することが検証され、今後の創薬研究に役立てられることが期待できる。
著者
八田 一
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

キラヤサポニンは、南米に自生するバラ科の常緑樹シャボンの木(Quillaja Saponaria Mol.)の樹皮に含まれるトリテルペノイドサポニンである。欧米諸国では、古くからノンアルコール飲料やシェイク飲料の起泡剤として利用され、その食品添加物としての安全性が認められている。本研究は、起泡剤や乳化剤(食品添加物)として世界中で利用されているキラヤサポニン抽出物(QS)の人に対する新しい生理作用(自然免疫活性化機能)を明らかにすることを目的とし、QSを哺乳類(マウスおよびヒト)へ経口的に投与し、その自然免疫活性化機能を検討した。マウスのマクロファージ株化細胞系で、QSの貧食能活性化濃度は細胞毒性濃度の1/4000倍であった。また、QS経口投与(0.5mg/Kg体重/日)24時間後のマウス脾臓および腹腔滲出液から分離したマクロファージの走化性や貧食活性が2〜7倍に向上した。さらに、QS経口投与24時間後のマウスに対する大腸菌の腹腔感染実験の結果では、無投与群の感染5日目の生存率0%に対して、QS投与(0.5mg/Kg体重)群が60%と有意に高かった。最後に、QS配合飲料を試作してボランティア試験を実施した。その結果、ヒトに対してもQSの摂取量0.5mg/Kg体重/日、1週間の摂取で、抹消血マクロファージの走化性は10-15倍、貧食性は3-5倍に活性化された。また、血液検査の結果、肝機能への影響やIgGおよびIgEの上昇は見られず、またCRP等の炎症マーカーやIL-1αやTNF-αの変動はなかった。今後、より大規模のボランティア試験での検討や、その活性化のメカニズムの研究などが必要であるが、将来、QSが配合された加工食品を摂取し、感染症のみならず種々の疾病に対する抵抗力(自然免疫力)を高めることの可能性が示された。
著者
寺本 英 日高 敏隆 河合 雅雄 川那部 浩哉 伊藤 嘉昭 松田 博嗣
出版者
京都大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1986

昭和58〜60年度の3年間におよぶ本特定研究の研究成果は下に述べるとおりであるが、本年度はそれらの研究成果をもとに国際シンポジウム「生物の適応戦略と社会構造」が計画され、この分野で活躍する外国の専門研究者17名の参加を得て実施された。本シンポジウムはいろいろな動物群あるいは数理モデル等の各分野の専門家が一同に会して動物の社会構造や社会行動についての諸問題を議論したユニークなものであり、本特定研究の研究成果に国際的な評価を与えるものとなった。シンポジウムの内容は特定研究の研究成果を含め英文報告書として取りまとめられた。また、それとは別に「生物の社会構造」と題する和文の啓蒙書も出版されている。3年間の本特定研究の研究成果は次のとおりである。昆虫における真社会性の進化、昆虫および甲殻類の交尾戦略・繁殖戦略の研究では、野外調査を主体に、特に南西諸島での本格的な調査とともにいくつかの事実の発見があり繁殖戦略・社会構造の理論の発展を得た。脊椎動物では魚類,鳥類,哺乳類を中心に調査研究が組織的に遂行され、交尾・育児・採餌行動と社会構造の詳細な比較検討が行なわれた。霊長類についてはニホンザルの調査を中心に、新しい調査方法によって採餌戦略・繁殖戦略によるサル社会の分析がなされ、個体群維持機構に関する事実が見い出された。ヒトに関する研究は旧来の伝統的風習や制度の残る沖縄や東北の僻地社会で重点的な調査が行なわれ貴重な資料が集収された。またそれに基づく社会構造と生存戦略の分析をとおしてヒト社会の特徴が抽出された。これらの広い研究対象で明らかにされてきた種々の動物行動の適応戦略的視点からみた統一的理論および社会構造形成モデル理論の探求が個体群動態論と適応戦略論の融合した理論として世界に先がけて精力的に行なわれた。
著者
藤野 寛
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、初期『思想の科学』の活動の意義を明らかにすることを目的の一つとし、そのため、この雑誌の創刊同人にインタビューし、解釈上の疑問を直接ぶつけるという具体的課題を抱えて出発した。しかし、過去二年間に都留重人氏と鶴見和子氏が亡くなり、残るは、鶴見俊輔氏と武田清子氏になってしまった。私は、お二人にインタビューを申し込み、鶴見氏からは快諾をいただいた(残念ながら、武田氏には受けていただけなかった)。鶴見氏へのインタビューは、岩波書店の『思想』誌の賛同を得て共同企画として実現した。鶴見俊輔とアメリカ哲学を結ぶものといえば、プラグマティズムを連想するのが定番となっているが、戦後の出発の時点で氏の仕事を規定していたのは、むしろ論理実証主義的問題意識だったのではないか。具体的に、日本語の改良、ベイシック・イングリッシュをモデルとする基礎日本語というアイデアや、表意文字としての漢字を減らし日本語表記をローマ字化しようとする意図が見て取れるが、その志向は時とともに放棄されていったように見える。何故か、どのような経緯だったのか。鶴見氏のアメリカ合衆国に対する姿勢は、共感に支えられるものだったと考えられるが、その姿勢は、日本の戦後啓蒙の陣営にあって特異なもので、そのことが、鶴見氏の活動に困難をもたらすことがあったのではないか。その基本的「親米」の姿勢は、どのように一貫しまた変化したのか。インタビューは、以上のような問いをめぐって繰り広げられ、熱い回答を得ることができた。『思想』誌は2008年8月号を「鶴見俊輔」特集にあてることになり、私も「「言葉の力」をめぐる考察」を寄せることになっているが、この論考は、今回の研究の現時点での総括である。「現時点での」という但し書きが付くのは、「第二次世界大戦直後の言語表現/言語批判」という論考の副題が、同時に次の研究課題を示すものともなっているからである。
著者
伊丹 健一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2019-04-23

本研究では、ナノメートルサイズの炭素物質(ナノカーボン)を構造的に純粋な「分子」として設計・合成するとともに、それらを基盤とした構造体を構築することで、構造が精密に定まった未踏のナノカーボンを創製する。従来のナノカーボン科学が抱える「混合物問題」に根本的な解決策を提示し、「分子ナノカーボン科学」という新分野の確立と日本発のカーボン・イノベーションをめざす。
著者
門脇 むつみ
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、江戸時代中期の画家・伊藤若冲(1716~1800)について、禅宗との深い関わりに注目し若冲の画業と生涯のより確かな把握を目指すものである。若冲に関しては多くの研究が蓄積されているが未だ解明すべき課題は多い。禅宗との関わりはその大きな鍵と考えられる。本研究は若冲作品に認められる同時代の禅僧による賛の読解の集積を踏まえて画像を検討し個々の作品を読み解くとともに、直接交際があったとみなせる禅僧との関係やその詩文集の考察を徹底し、若冲と禅宗との関わりを考察する。また、画賛講読の研究会を通じて美術史の若手研究者の画賛読解能力の養成をはかることも目的としている。
著者
門松 健治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

免疫グログリン(Ig)スーパーファミリーに属する膜糖蛋白ベイシジン(Bsg)は細胞外に2つのIgドメインを有する。そのノックアウトマウスを作製して解析すると1)着床期での多数の死亡2)生後1ヶ月以内の間質性肺炎による死亡3)精子形成不全、卵成熟不全、着床不全による両性の不妊4)記憶学習能力の著しい低下が明らかになった。そこで本研究では1)精子形成におけるBsgの役割の解明2)Bsgのホモオリゴマーの形成機序とその生理的意義の解明3)Bsgと相同性を持つエンビジンとのクロストークの可能性の3点に目的を絞って解析を進めた。Bsgノックアウトマウスでは第1減数分裂のメタフエーズで精子形成が止まる結果無精子症になることが判明した。セルトリ細胞と精娘細胞間で通常見られない型のectoplasmic specializationが見られBsgがこの形成に関与する可能性が示唆された。Bsgのホモオリゴマー形成はシス型の(つまり同一細胞表面上の)ものであり、それにはN末側のIgドメインが重要であることが判明した。Bsgとエンビジンとのオリゴマー形成は見ることができなかった。Bsgノックアウトマウスの解析は網膜まで及びelectroretinogramと組織学的解析の結果、桿体細胞、錐体細胞両者の機能ともBsgノックアウトマウスではほとんど消失し、加齢に伴って廃用性萎縮がおこった。色素上皮にBsgの発現が強いことからこの部位でのBsgの機能が視細胞の生存あるいは維持に必要であると考えられた。以上をまとめると本研究はBsgの機能発現に関わる二とが予想されるホモオリゴマー形成機構の一部を解明し、また新たな機能発現の場として網膜をクローズアップしたといえる。今後その作用機構のさらなる解明のためにはBsg細胞内ドメインの結合蛋白の同定、Bsg受容体の同定が急務となると考える。
著者
島田 昌一 近藤 誠 中村 雪子 小山 佳久
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

嗅覚障害の1つに嗅覚過敏がある。自分にとって有害、危険、つらい状況に遭遇すると、周囲のにおいとそのネガティブな体験が関連づけられて記憶、条件づけされる。そして、その状況からいち早く回避するため、そのにおいに対する感受性が高くなり嗅覚過敏になると同時に、そのにおいに対して強い嫌悪感をいだくようになる。本研究では嗅覚過敏を研究するため、確実な嗅覚過敏モデルの作成方法の確立とその治療薬の開発を試みた。微量のにおい物質をマウスに飲水させることによりマウスは口腔内で揮発する微量のにおい分子を感知する。その後にマウスの腹腔にLiCl溶液を注射することにより、マウスの嗅覚過敏・嫌悪学習モデルを確立した。
著者
桂 紹隆
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、インド仏教論理学を代表する二人の巨匠、ディグナーガとダルマキールティの「認識論的論理学」の体系を、存在論・認識論・論理学・言語哲学という4つの視点から総合的に対比し、両者の相違点を明らかにすることによって、紀元後5世紀末から7世紀にかけて生じた仏教論理学の歴史的な展開を解明することにあった。過去4年間のディグナーガ研究の主眼の一つは、彼の漢訳でしか現存しない、初期の論理学書『因明正理門論』の詳細な解説を付した英訳を完成することにあった。その際、新発見のジネーンドラブッディの『集量論複注』の梵文写本を最大限利用することを試みた。しかし、この目的を達成するためには『複注』の批判的校訂本をまず完成するべきであるという結論に達して、前半部分の英訳・解説は完成しているものの、公表はさらに先に延ばすこととした。一方、新資料を用いて、ディグナーガ論理学の重要な術語を解明する論文を2篇発表した。すなわち、「喩例」と「主張」「同類群」「異類群」に関してである。ダルマキールティに関しては、彼の存在論を論じる論文を公表した。また、彼の主著『プラマーナ・ヴァールティカ』第三章「直接知覚章」の冒頭部分をマノーラタナンディンの逐語的な注釈とともに訳出し、ダルマキールティ認識論研究の資料として提示した。他に、彼の「修道論」「他心存在論証」「自性の概念」に関する論文3篇も完成したが、まだ公刊されていない。以上が、過去4年間の研究の概要である。既に公刊された論文の大部分を報告書として冊子にまとめた。今後の課題としては、先に述べたジネードラブッディ『複注』の校訂作業を継続して行っていく予定である。その結果、ディグナーガとダルマキールティの認識論・論理学の差異性がより正確に、より鮮明に明らかになることであろう。
著者
細井 義夫 漆原 佑介 橋本 拓磨
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

Muse細胞を用いて、① 正常組織の放射線障害を軽減するための研究と、② 低酸素で成り立つ幹細胞ニッチによる放射線抵抗性や多分化能の原因を解明し、癌幹細胞等での放射線抵抗性の克服に役立てると共に、Muse細胞の多分化能を高めて正常組織の放射線障害の治療に役立てるための研究を行なう。具体的には、放射線照射後に静注したMuse細胞が、骨髄幹細胞、小腸腺窩細胞、肺胞上皮細胞、皮膚上皮細胞に分化するかどうかを明らかにする。放射線感受性に関してはDNA2本鎖切断修復関連遺伝子、多分化能に関してはFbx15、Nanog、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycなどの遺伝子の発現と活性について調べる。
著者
太田 成男 上村 尚美 ウォルフ アレクサンダー 西槙 貴代美 一宮 治美 横田 隆
出版者
日本医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

放射線によって ヒドロキシルラジカルが生じ、それがトリッガーとなってラジカル連鎖反応を生じさせ、主に細胞膜において細胞障害をあたえることが知られている。低濃度の水素は、ラジカル反応誘発剤による細胞障害も抑制したので、水素は少量でも脂質ラジカルを抑制することにより連鎖反応を抑制して細胞を保護することを明らかにした。さらに、低い水素濃度でも、細胞膜の脂質過酸化を抑制することを明らかにした。本研究では、放射線障害を水素が抑制する可能性を示唆し、その分子機構の一端を明らかにしたが、それをそのまま社会に適用するためには不十分である。
著者
松島 綱治 橋本 真一 倉知 慎 上羽 悟史 阿部 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

伝子発現解析の結果からケモカイン受容体CXCR3に着目したところ、CD8陽性T細胞の活性化直後のリンパ組織内局在をCXCR3が制御することで、その後の免疫記憶CD8陽性T細胞の形成に影響を及ぼしていることが明らかになった。また、メモリー細胞において、CTLに特徴的なサイトカインやケモカインなどの遺伝子群の顕著な発現量上昇、細胞老化と関連深いリボゾーム蛋白類の発現量低下とを認めた。さらに一次メモリーと比較して、二次メモリーCTLではNK細胞特異的遺伝子の発現量上昇が認められ、老化メモリーCTLの特徴となることを明らかにした。
著者
武部 真理子 服部 瑞樹
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

全身性炎症反応症候群(SIRS)に対するアスタキサンチンの効果を調べるために、5-FU誘導腸炎モデルマウスおよびヒト結腸癌細胞由来の細胞株であるCaco-2 、HCT116を用いた実験を行った。5-FU誘発性腸炎モデルにおいて、アスタキサンチンが炎症性サイトカインの発現を抑制する作用およびアポトーシスを抑制する作用があることが明らかになった。しかし、細胞実験においてはアスタキサンチンの炎症性サイトカイン発現抑制作用は顕著ではなく、抗酸化作用が主たる効果として確認された。腸炎モデルにおいて、アスタキサンチンの抗酸化作用が直接アポトーシスを抑制している可能性が示唆された。
著者
武田 佐知子 脇田 修 脇田 晴子 高島 幸次 松浦 清 竹居 明男
出版者
大阪外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究会では平成14年〜17年の四カ年通して、聖徳太子信仰・天神信仰それぞれの歴史通貫的比較研究を行い、両者が何故に永く信仰の対象たりえたかを探ってきた。聖徳太子、菅原道真の両者はともに実在した歴史上の人物であり、しかも俗人の立場でありながら信仰の対象となってきた。また、時代を超えて長らく、現代に至るまで、上下を通じた諸階層の篤い信仰を得てきたという共通項がある。本研究会では十三回にわたる研究会を通し、各専門分野の研究者から太子信仰・天神信仰に関わる美術史的、文学史的、そして宗教史、芸能史的研究報告をいただいた。研究会ではこれらの報告を中心に、時代のニーズとともに変化する信仰の形態や、それに付随するイメージの付与、そして宗派や地域を越えて多面的に利用されるそれぞれの信仰の進化形について、活発な討論が行われた。また、六回の巡見を通して、巡見先各地での庶民の生活の中に定着した太子信仰、天神信仰を見ていくとともに、各地の歴史とそれらの信仰がどのように融合し、変容してきたのかを探った。注目すべきは、各地の真宗布教に付随して広がった太子・天神信仰であるが、この研究に関しては、高島氏・濱岡氏による考察が研究報告集に納められている。これらの研究会・巡見を経て、天神画像の蒐集し、新たな天神画像について検討を行った。最後に、まとめられた研究報告集では、当初からの課題であった「信仰の複合化」と「宗教的国際性」、そして「信仰の庶民受容」についての様々な論考を研究協力者に執筆いただいている。加えて、研究代表者である武田は、俗的権威の最高峰である天皇をも超越する神威、権威を持った聖徳太子・天神の新たな共通項を見いだし、今後の両信仰の研究に於いての新しい視点を切り開くことに成功した。
著者
茂里 康 上垣 浩一 絹見 朋也 稲垣 英利
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究計画が採択された直後の2018年の5月に、産総研から和歌山県立医科大学に異動した。その頃はモリアオガエルの産卵期であり、泡巣の採取時期であったが好機を逃したため、開始が数か月遅れた。しかし、2019年の春から初夏にかけての泡巣及び成体メスの採取時期は、順調に実験が進展した。その結果、泡巣の生体分子の精製・LC-MSによる解析。均一精製を行ったタンパク質分子のエドマン分解によるN末端配列解析の実施。泡巣を精製せずに、還元アルキル化・プロテアーゼによる切断・プロテオーム解析を行った。同時に並行して、モリアオガエル成体メスの輸卵管(産卵前後)及びコントロール組織として皮膚の発現遺伝子の次世代シーケンサーによるRNA-Seq解析を行なった。LC-MS・エドマン分析・プロテオーム解析・次世代シーケンサーのデータをマッチングする事により、約40種類の泡巣のタンパク質成分の分子同定ができた。血球系や酸化ストレスに関与するタンパク質分子が単離できている。またミトコンドリアのDNA配列は、生物の分子進化を考える上で、重要な遺伝子情報である。次世代シーケンサーを用いて、これまで未報告であったモリアオガエルのミトコンドリアDNA配列の解読を行った。現在アノテーションを実施し、全長の配列解読を継続実施している。また台湾には、泡巣を産生するアオガエル科は少なくとも5種類、R. arvalis, R. aurantiventris, R. moltrechti, R. prasinatus, R. taipeianus、が生息している。その内4種類は台湾の法律により保護されているが、台北市立動物園・両生爬虫類館で飼育・保護されている。台北市立動物園の研究者とメール等で共同研究の実施に合意した。またプロテオーム解析に関しても、長庚大学(台湾・桃園市)の研究者と共同研究に合意している。春には台北市立動物園・長庚大学を訪問予定であったが、新型コロナの一件で訪問を延期している。
著者
吉村 治正 正司 哲朗 渋谷 泰秀 渡部 諭 小久保 温 佐々木 てる 増田 真也
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

内閣府世論調査では、実際の生活実感と乖離する調査結果が現れることが少なくない。本課題では、これが調査実施過程の技術的な不足による非標本誤差の大きさによると考え、実験的な社会調査の実施を通じて、その影響を測定した。主たる知見は①人口構成の変化以上のペースで回答者が高齢者にシフトしている、②難易度が高い質問が多く最小限化行動が生じている、③複数回答方式を多用したために順序効果が顕著に表れている、④「わからない」を抑制することで中間回答が過大に表れている、といった点で集計結果に偏りを生んでいる可能性が高いことが指摘された。