著者
古賀 崇之
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.33, 2010 (Released:2011-01-15)

【目的】 内側広筋は膝関節の保護や支持性,膝蓋骨の外側偏位を防止する役割があるとされている.しかし内側広筋は筋萎縮を生じやすく,回復しにくい筋といわれている.これに対し,大内転筋の筋活動を伴う股関節内転運動を行なうことで,内側広筋の筋活動を高めることができるとされている. そこで本研究では,スクワット動作においても大内転筋の筋活動を伴う股関節内転運動をすることで,内側広筋の筋活動を高めることができるかを検討することを目的とした.【方法】 対象者は健常男性7名とし,筋電図計はメデイエリアサポート社製のKm-818MTを使用した.測定肢は利き足とし,被験筋は内側広筋・外側広筋・大腿直筋・大内転筋の4つの筋とした.測定肢位は,スクワット肢位とし,この肢位を3秒間保つスクワット動作と,スクワット肢位にて両膝関節でボールを3秒間挟む動作(以下ボール動作)を行い,各動作の積分値を算出した.また徒手筋力検査の肢位にて各筋の最大随意収縮(以下MVC)の積分値を算出した.各筋のMVCの積分値を100%とし,各動作での各筋の積分値で除した%MVCを算出し,記録した.【結果】1.内側広筋と大内転筋の相関はr=0.45となり正の相関を示した.(p<0.05)2.内側広筋と大腿直筋の相関はr=0.05となりほとんど相関を示さなかった.(p<0.05)3.ボール動作における内側広筋の%MVCがスクワット動作より優位に高値を示した.(p<0.05)【考察】 内側広筋と大内転筋は正の相関を示し,大内転筋の筋活動が高まることで,内側広筋の筋活動が高まるということがわかった.河上らの報告によると内側広筋と大内転筋は筋連結をしている.そのため大内転筋が収縮することにより,内側広筋が伸張されることが考えられる.Edmanらの研究によると等尺性収縮中のカエルの筋線維に伸張を与え,その長さに保持すると,伸張前の張力より大きな張力が維持されることを示している.このことを「伸張による収縮増強効果」と呼んでいる. 以上のことより,大内転筋が収縮することで,筋連結により内側広筋は伸張され,内側広筋には「伸張による収縮増強効果」が生じた.この効果により内側広筋の筋活動が高まり,結果として内側広筋と大内転筋には正の相関を示したものと考えた. 河上らの報告による内側広筋と大腿直筋にも筋連結が見られる.しかし内側広筋と大腿直筋はほとんど相関を示さなかった.このことから,ただ筋連結をしているだけでは筋活動を高めることはできず,筋連結している筋同士の筋線維方向が一致していることが重要だと考えられる. 最後に,ボール動作における内側広筋の%MVCがスクワット動作より優位に高値を示したことから,立位動作においても大内転筋の筋活動を伴う股関節内転運動をすることで,内側広筋の筋活動を高めることが可能ということがわかった.
著者
長谷川 幹子 小林 道太郎
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.10-21, 2019-07-15 (Released:2019-12-25)
参考文献数
58
被引用文献数
1

看護師は、苦悩を抱える患者にかかわらなくてはならないが、その関わり方を考えるにあたって必要となる、「患者の苦悩」の概念の明確化は十分行われていない。本研究の目的は、「患者の苦悩」の概念について、概念分析の手法によって先行要件、属性、帰結を明らかにし、定義を明確化することである。Walker & Avantの手法を参考に、データベースから抽出された文献および関連書籍の36件を対象として分析を行った。その結果、7つの定義属性、7つの先行要件、5つの帰結が見出された。「患者の苦悩」は「全人的で自己の存在そのものに関わるものとして主観的に経験される、不快な感情や情動を伴うコントロール不可能で複雑な耐え難い体験」と定義された。また類似概念の苦痛と比較を行った。本研究の結果は、今後、苦悩する患者に対する看護師の関わり方を考えるため、またそのために必要な調査研究を計画し実行するための基礎となる。
著者
Yasunaga YOSHIKAWA Masami MORIMATSU Kazuhiko OCHIAI Toshina ISHIGURO-OONUMA Ryo MORIOKA Kento OKUDA Koichi ORINO
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.21-0006, (Released:2021-03-16)
被引用文献数
2

Mammary tumors are the most common tumors in women and non-spayed female dogs. One of the reasons for mammary tumors is mutations of the tumor suppressor gene, BRCA2. BRCA2 participates in homologous recombination repair by interacting with the RAD51 recombinase. BRCA2 has two RAD51-binding domains, consisting of BRC repeats and the C-terminal RAD51-binding domain, respectively. Although several studies have addressed the function of the C-terminal RAD51-binding domain of human BRCA2, the amino acid sequences required for the RAD51-interaction activity remain unclear. In this study, the C-terminal RAD51-binding domains of canine and human BRCA2 were compared; the canine domain displayed a weaker interaction with RAD51. This difference was attributed to the C-terminal portion of the domain via a comparison between canine and human domains. Furthermore, peptides shorter than those previously reported displayed RAD51-interacting activity, and a core motif of this domain consisting of 25 amino acids was identified. Since a mutation (S3323N) was reported in the core motif of this domain, the effect of this mutation was evaluated. The mutant exhibited similar RAD51-binding activity as that of the wild-type protein, suggesting that the mutation was functionally neutral. These data suggested that the C-terminal portion of the BRCA2 C-terminal RAD51-binding domain influenced its RAD51-interaction activity, and a minimum core motif of 25 amino acids was identified in this domain. These data may help clarify BRCA2 function, as well as the tumorigenic effects of BRCA2 mutation.
著者
稲垣 俊介 和田 裕一 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.089-092, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

対人依存欲求が高校生のインターネット(以下,ネット)利用の性差に及ぼす影響ついて検討した.ネット利用に関する項目として,ネットの利用時間やその利用内容,例えばLINE のトーク数やグループ数,Twitter のツイート数やアカウント数,ゲームの利用時間,さらにネット依存傾向の高低を調査対象とし,それらと対人依存欲求との関連を検討した.その結果,女子はネット利用と対人依存欲求に関連がみられたが,男子は特にその関連がみられなかった.これらの知見から,ネットでコミュニケーションを取る相手への態度や向き合い方に男女間で質的な違いがみられることが,高校生のネット利用やネット依存傾向の性差につながっている可能性が示唆された.
著者
松原 聰
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.35-37, 2020 (Released:2020-05-02)

日本新産鉱物情報(2018年)以降,2019年12月末までに確認された日本産新鉱物および新産鉱物,その他について紹介する.太字は少なくとも化学的,結晶学的性質が明らかにされたもので,信頼度が高い.
著者
野澤 謙
出版者
Japanese Society of Equine Science
雑誌
Japanese Journal of Equine Science (ISSN:09171967)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-18, 1992-09-30 (Released:2011-02-23)
参考文献数
103
被引用文献数
15 16

ウマの家畜化は,他種家畜のそれと同様,漸進的な過程として理解しなければならないが,BC3,000年前後に,東南欧の草原地帯を舞台にして,この過程は大きく進展したと考えられる。この家畜化中心地から東に向う家畜馬伝播の過程,特に蒙古馬成立に至るまでに,Przewalsky野生馬から遺伝子が流入した可能性がないとは言えない。 東亜と日本の在来馬の源流は疑いもなく中国在来馬であるが,中国在来馬には体型を異にした蒙古系馬と西南山地馬の2大類型があり,これらに,西域経由で導入されたアラブ・ペルシア系馬種が多かれ少なかれ遺伝的影響を与えている。中国在来馬の2大類型間の系統的関係については,それらの間の遺伝学的比較調査をおこなうことによって明らかにされよう。「2大類型」と言われてはいるが,西南山地馬が蒙古系馬が単に山地環境での駄載と輓用を主とする用役に適応して生じた矮小化型に過ぎない可能性もないとは言えない。 大陸部,島嶼部を問わず東南アジアの広域に分布する小型在来馬が,中国西南山地馬の系統につらなることに疑問の余地はいまのところない。この地域の現在の産馬は,植民地化の歴史のなかで,西欧系馬種の遺伝的影響を多少とも蒙っていると考えられる。 東北アジア,すなわち韓国や日本の諸在来馬種は主に蒙古系馬の系統につらなると考えられる。韓国済州島馬成立の歴史はこれを示唆しており,この馬種の成立の初期以来,小型化して現在に至っているという可能性がある。日本在来馬のうち南西諸島の小型在来馬が中国西南山地馬に由来するとの説については,この説が,縄文・弥生両期に,南西諸島を含む日本に馬産があったという推測に根拠を置いているところから見て,疑いなきを得ない。最近の考古学的発掘が,日本における馬産が古墳期以降に始まったことを物語っているとすれば,古墳期に朝鮮半島を経由して種々の文物を受け入れるなかで,蒙古系馬が輸入され馬産が始まったと推測する方がより合理的であろう。その場合,南西諸島の小型在来馬はもと本土より南下し,小型化したものと考えられる。ただし,この点については,遺跡から出土した馬骨の生存年代を化学的方法によって明らかにしたデータが蓄積するのを待って最終的判断を下すべきである。
著者
石原 豊一 胡 青
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.3_275-3_284, 2020 (Released:2020-07-24)
参考文献数
20

The Chinese Baseball Association (CBA) established the China National Baseball League (CNBL) as the new top league to replace the Chinese Baseball League (CBL) in 2019. At the opening game in August, a strategic partnership agreement was signed between the Major League Baseball (MLB) and the CNBL. In this new league, four of the six teams who were affiliated with the former league of CBL participated, each team had a regular season of 18 games, and the playoffs between the top two teams were held in a best-of-five series. The former league CBL was established in 2002 by selecting top teams from existing local teams with the aim of strengthening the national team for the 2008 Beijing Olympics. The domestic league matches and the overseas expeditions by the national team selected from each team have boosted the competitiveness of top-level players, resulting in victories over Taiwan, one of Asia’s powerhouses, in the Beijing Olympics and next year’s World Baseball Classic. However, the CBL was forced to reduce its scale after the Beijing Olympics, as baseball was dropped from the Olympics. After several season cancellations, the CBL eventually folded after the 2018 season. A national team has not shown any outstanding performances on the international stage since the 2009 WBC. Under such circumstances, the launch of the new league, the CNBL, was suddenly announced in 2019. The CBA has announced that it is positioning this league as a professional league. In this paper, we review the history of baseball in China and its research history. Then we examine the influence of sports policy in China on the management of the former top league and illustrate the current condition of the newly launched league, the CNBL, in 2019. This will show the direction of the sustainability of the new professional baseball league in China.
著者
樫下 達也
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.1-12, 2015 (Released:2017-03-22)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本稿は, 戦後の教育用楽器の生産確保, およびその品質保証がどのように行なわれたのかを, 文部省と商工省 (1949年に通商産業省に改組), 大蔵省の各官庁と楽器産業界の動句に着目し, 明らかにしたものである。戦後, 器楽教育が全国規模で行われることになると, 文部省と楽器産業界は商工省に働きかけて楽器の資材を獲得し, 大蔵省からは楽器の物品税免税措置を得た。楽器が「教育用品」としての公益性を獲得することにより, 終戦直後の物資不足に喘ぐ楽器産業界は復興と発展の道筋を得た。また, 文部省は教育用楽器の品質を保証するために製品規格の制定と部品の標準化を進めた。部品の標準化は, 廉価でありながら品質が維持された製品を大量生産することを可能にした。戦後器楽教育の実施方針が打ち出された当初から, 楽器産業界は行政側の様々な施策のもとに発展し, 恵まれた物的環境をわが国の音楽教育の場にもたらしたのである。
著者
高瀬 翔
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.253-258, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
4
被引用文献数
3
著者
青地 克頼 今木 雅英 松本 和興 棚田 成紀
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.111-114, 2000-05-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
14

A case control study was conducted on the relationship between the serum Magnesium content(related to Magnesium that is relatively readily obtained from the body)and life-style related diseases(e.g., hypertension, heart diseases, diabetes mellitus, and liver diseases)among individuals who were employed at a large plant. The serum Magnesium content was significantly low in the group with a systolic pressure of 180 mmHg. No statistically significant difference was noted between the groups with a diastolic pressure below and above 95 mmHg. A comparison of the serum Magnesium contents between patients with is chemic heart diseases, diabetes mellitus, or hepatic diseases and the control indicated no statistically significant difference. Actually the serum Magnesium content of the control tended to be higher.
著者
仲泊 聡
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.7-17, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
38

本稿では、視覚皮質の機能局在と日常生活動作の関係について述べる。まず、網膜から脳までの視覚伝達経路における神経回路について紹介する。その中で、脳における視覚の本質に対して異なる選択性をもつ、網膜神経節細胞のサブタイプ、視覚皮質の網膜部位再現と視覚経路について述べる。次に、我々の行った視覚障害者の日常生活動作の様々な局面に関してのアンケート調査から、1)対象認知、2)空間認知、3)精神への影響、4)眼球運動反射、5)順応と恒常性の5つの事柄が、QOV(視覚の質)に必要な本質であることについて述べる。そして、最後にこれらの5つの視覚の本質が、網膜神経節細胞のサブタイプに端を発する視覚皮質の局在に深い関係があるということについて論じる。
著者
吉岡 大樹 河野 祐輔 福田 富滋余 碇 秀樹 國崎 忠臣
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.301-304, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
16

【目的】モルヒネ投与により, 排便コントロールが困難な患者に対してミソプロストールを投与したところ, 排便状態の改善が得られた症例を経験した. 【症例】70歳代, 男性, 膀胱がん術後再発, 右骨盤転移. 右骨盤の疼痛に対して, 放射線治療および硫酸モルヒネ徐放剤の投与で安静時の疼痛緩和が得られた. モルヒネ投与による排便困難と腹部膨満の症状があり, 複数の緩下剤を併用投与しても高度便秘と水様便を交互に繰り返すという状態が続いていた. ミソプロストール800μg/日を投与したところ, 定期的な自力排便がみられるなどの排便状態の改善が得られた. 【考察】ミソプロストールは小腸の蠕動運動を亢進させ, 水およびナトリウムの吸収を阻害する. 本症例は, この作用機序により排便状態の改善が得られたと考えられる. ミソプロストールはオピオイド投与による難治性の便秘に対する治療薬の選択肢の1つとして有用であると考える. Palliat Care Res 2008:3(1);301-304
著者
藤原 裕弥 岩永 誠
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-12, 1999-09-30 (Released:2009-04-07)
参考文献数
28

Attentional bias to threatening information has been considered to be one of the cognitive features of anxiety mood. Although Bower's associative network theory (1981, 1991) has been used to explain attentional bias, Bower's theory is insufficient to explain the maintenance of anxiety mood. The present study aimed to investigate whether activation of a network was maintained by emotional words acquired through attentional bias. Thirty-four undergraduates who served as participants were induced into a positive mood (Positive Condition) or a negative mood (Negative Condition) through music induction and the Velten induction method. Results of a dot-probe task revealed that reaction time to probes following negative words was faster than to probes following neutral words in the Negative Condition, while reaction time to probes following positive words was not significantly different from reaction time to that of neutral words in the Positive Condition. Further, attentional bias was observed only in the negative condition. Subjective mood judgement results revealed that only negative mood was maintained in the Negative Condition. These results suggest that selective attention to threatening information can maintain a negative mood.
著者
吉田 聡子 若竹 崇雅 白須 賢
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.66-73, 2014-05-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
43

Several parasitic plants in Orobanchaceae, such as Striga and Orobanche, cause devastating damage on agriculture worldwide. However, the molecular mechanisms of plant parasitism remain poorly understood. Orobanchaceae include species in a different range of parasitism, i.e. facultative and obligate parasites. Facultative parasites complete their life cycle without host plants, while obligate parasites are not able to survive without hosts in a natural condition. Although both parasites respond to quinone signals to develop infectious organs called haustoria, their shapes are distinct. Their responses to germination stimulants are also different. We are conducting genome and transcriptome analyses of an obligate parasite Striga asiatica and a facultative parasite Phtheirospermum japonicum to identify genes responsible for plant parasitism. A transformation protocol of P. japonicum was also established and used for functional characterization of parasitic plant genes.
著者
秋田 幸彦 高橋 里美 西山 桂
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.53-58, 2018 (Released:2018-04-07)
参考文献数
6

平成20年の学習指導要領改訂により、中学校第1学年理科「身の回りの物質」の単元で、全く新しい単元として代表的なプラスチックの学習が導入された。教科書でもプラスチックの取り扱いは様々であり、性質を調べるための実験方法にも違いが見られた。そこで本研究では、プラスチックの性質と用途を結びつけることのできる実験方法として、曲げやすさ、割れやすさ、薬品耐性、熱耐性に注目した実験を提案した。また、実験を取り入れた指導計画を作成し、授業実践を行ったところ、教科書をもとにした実験方法に比べ、生徒の理解度が高くなった。
著者
小澤 春香 佐藤 慎也 玉木 宏史 黒川 純
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0975, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】臨床的に下肢筋力強化や足底への荷重刺激,下肢伸展共同運動からの分離運動として患者にブリッジ動作を指導する機会が多い。その際にセラバンドやボールを用い外転筋群・内転筋群の選択的な収縮を図ることも多い。先行研究においてブリッジ動作時の股関節外転角度や膝関節屈曲角度の違いによる筋活動を比較した報告は多いが,内外転筋群への抵抗を加えたブリッジ動作の報告は少ない。そこで本研究では外転の抵抗を加えない通常のブリッジ動作と,外転・内転方向への抵抗を加えたブリッジ動作の中殿筋・大殿筋・内転筋群の筋活動を測定し,各ブリッジ動作が各筋に及ぼす影響を検討することである。【方法】健常成人男性17名(平均年齢25.9±2.9歳,平均身長170.9±5.3cm,平均体重65.5±9.7kg)を対象とし,測定肢位は上肢を胸の前で組み,股関節内外転中間位,膝関節屈曲130°からのブリッジ動作とし,股関節屈伸0°にて5秒静止を3回測定した。ブリッジ動作は無抵抗下でのブリッジ(ノーマル),外転等尺性収縮を加えたブリッジ(外転ブリッジ),内転等尺性収縮したブリッジ(内転ブリッジ)とした。股関節内外転等尺性収縮はハンドヘルドダイナモメーターと自家製固定装置を用い,最大等尺性収縮を基準として100%(max),50%,25%とした。測定方法は,表面筋電計マイオトレースを用い中殿筋・大殿筋・内転筋群の3筋を導出筋とした。ダニエルズのMMT5を基準として正規化し%MVCとした。測定区間は等尺性収縮5秒間のうち中間3秒間とし,3回の平均値を用い,各筋の%MVCを各ブリッジ動作で比較検討した。統計処理は,一元配置分散分析の後にTukeyの多重比較を用い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】研究の開始に当たり当院の倫理委員会の承認を得た(承認番号2013023)。また被験者には研究の意義・目的について十分に説明し,同意を得た後に実施した。【結果】中殿筋では,ノーマルで11.2±6.0%,外転ブリッジmax(外転max)で92.3±47.1%,外転ブリッジ50%(外転50%)で33.6±12.6%,外転ブリッジ25%(外転25%)で21.2±10.5%,内転ブリッジmax(内転max)で14.8±8.0%,内転ブリッジ50%(内転50%)で9.1±5.9%,内転ブリッジ25%(内転25%)で7.9±4.2%であった。外転max・外転50%ではノーマルより有意に高く,さらに外転maxは外転50%より有意に高かった。外転maxは他の全ての課題より有意に高かった。大殿筋ではノーマルで14.9±8.8%,外転maxで78.6±44.5%,外転50%で24.8±11.9%,外転25%で19.1±12.0%,内転maxで19.6±15.4%,内転50%で11.1±8.4%,内転25%で9.6±6.5%であった。外転maxは他の全ての課題より有意に高かった。内転筋では,ノーマルで12.9±5.8%,外転maxで9.7±5.9%,外転50%で1.8±0.9%,外転25%で3.2±2.5%,内転maxで60.8±19.6%,内転50%で26.3±12.2%,内転25%で15.0±7.0%であった。内転max・内転50%では他の全ての課題より有意に高く,さらに内転maxは内転50%より有意に高かった。【考察】ブリッジ動作において,外転方向へ等尺性収縮を最大努力で実施すると,通常のブリッジ動作よりも大殿筋をさらに活動させることができるが,最大努力の50%以下の抵抗では大殿筋の筋活動に変化はみられない。中殿筋・内転筋群は50%で筋活動が増加し,最大努力によってさらに筋活動は増加する。股関節内外転方向への抵抗を加えたブリッジ動作でさらに中殿筋・内転筋群を選択的に活動させるには,内外転方向への等尺性収縮を50%以上で実施する必要がある。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から,ブリッジ運動を行う際は,目的とした筋に合わせて抵抗の種類・負荷量を変えることで,より効率的に筋活動を増加させることができると考える。
著者
井上 和男
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.23-29, 2021-03-20 (Released:2021-03-22)
参考文献数
9

筆者はへき地で医師としてのキャリアを始めた.その経験から,日々の臨床現場で湧き上がる疑問や仮説について取り組むPractice based researchを実践し,提唱している.今回,本学会編集委員会より投稿依頼をいただいた.熟慮した結果,プライマリ・ケアで研究をする意義,そしてその研究成果を出すために必要なことについて書くことにした.常日頃から,プライマリ・ケアでの研究について興味を持つ若手は多いものの,なかなか前に進めず経験を積めないということを感じていた.実際にそのような悩みを相談されたこともある.そこでまず,現場での研究をしていくことが楽しくかつ最も良い自己研鑽につながってきたという経験を述べた.次に,そのために大切だと思っている二つのことについて実際の経験を基に書き連ねた.その一つは,キャリアの早期から研究に取り組む意義であり,若手の方々に伝えたいことである.もう一つは,より重要であるが次世代が良い環境で研究を実践するには指導者はどうすれば良いのかである.若手を指導する立場にある,あるいは将来なるであろう中堅の方々に考えていただく,その一助になればと考えている.
著者
中桐 裕子 栗田 治
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.83-105, 2004 (Released:2017-06-27)
参考文献数
12
被引用文献数
1 9

本研究では, ある商品やファッション, その他の嗜好が一瞬にして人々の間に広まり, その後短期間のうちに忘れ去られてしまうといった社会的なブームに着目し, この現象をモデル化して解析する.ある特定のブームに参加する顧客の状態を「ブーム前」, 「ブーム」, 「ブーム後」, 「定着」の4つに分割した上で, 状態を変化させる顧客の数が直前の状態にある顧客数に比例すると仮定して線形微分方程式モデルを作成し, ブーム前後の定着顧客数比やブームのピーク時刻など諸特性値を算出した.このモデルは, 我が国における「即席めん消費ブーム」, 「焼酎ブーム」や「サッカーブーム」時の実データを説明するのに有効であると結論付けられ, モデルによってブーム特性の地域差やブームによる定着顧客数の増加について定量的に説明することができた.本研究で提案したモデルは非常に簡便・単純であり, モデル拡張による適用範囲の拡大などが望める.