著者
川又 基人 菅沼 悠介 土井 浩一郎 澤柿 教伸
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2019年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.186, 2019 (Released:2019-03-30)

近年では, 航空レーザー測量を基にした高解像度の数値標高モデル(Digital Elevation Model: DEM)により微地形の特徴の抽出が容易になり,これまで以上に詳細な地形判読が可能となってきた。しかし,南極などの人為的アクセスが極めて厳しい地域では, 日本国内で用いられているような航空レーザー測量は難しく,衛星データによって得られるDEMは解像度約30−10 m程度のものである。このようなDEMは数kmスケールの地形は判読可能だが,それよりも小ス ケールの判読は難しい。 そこで本研究では,微細な氷河地形の判読を目的に,SfM 多視点ステレオ写真測量(SfM/MVS)技術を南極地域観測隊によって撮影された空中写真に適用することで,高解像度のDEM およびオルソ画像を作成した。 SfM/MVS処理の結果,1.4 m メッシュの DEM と地上画素寸法 70 cm のオルソ画像 の作成に成功した。新たに作成したDEMは,国土地理院作成の既存DEMで確認された急傾斜地点でのデータの抜けなども確認されず,詳細な起伏が表現されている。新たに作成したDEMの精度に関して,現地でのGNSS測量結果4点との較差(平均平方二乗誤差)を調べた結果,高さ方向に2.77 mとなった。しかし,今回作成したDEMの端では海水面に±10 m 程度の誤差が確認された。これは SfM/MVSに特徴的なドーム状の歪みに起因するものと考えられる。 今後は海岸線での高さの整合性の取り方といった絶対精度向上のための工夫する必要があるものの,今回作成したDEMは既存のDEM からは判読できなかった解像度 (数 10 m スケール)の氷河地形を読み取ることができ,地形判読や地形解析をはじめ,極域における地形発達史に関する教育・アウトリーチ面でも有効に活用できるだろう。
著者
辻野 次郎丸
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.407-412, 2016-05-05 (Released:2016-05-05)
参考文献数
13
出版者
信州医学会
雑誌
信州医学雑誌 (ISSN:00373826)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.351-373, 2013-10-10 (Released:2013-10-29)

1 0 0 0 OA 8.線維筋痛症

著者
西海 正彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1937-1942, 1999-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

線維筋痛症(Fibromyalgia)は長期にわたって全身の筋肉の痛みと特徴的な圧痛点を多数認め,通常の臨床検査では殆ど異常が認められないことから診断されるリウマチ性疾患である,他に疲労感,慢性頭痛,うつ状態,睡眠障害などを認める.病因は不明であるが,素因説,脳神経内分泌系の循環または代謝障害説,精神疾患説,免疫異常説,などがある.治療にはアミトリプチリンなどの三環系抗うつ剤, SSRI剤,入眠剤,などが用いられる.
著者
近藤 浩代 藤野 英己 石原 昭彦
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

糖尿病合併症は微小血管障害に起因する臓器の機能不全による. また, 微小血管において慢性炎症を引き起こし,毛細血管を退行させる. 一方, 運動による血流増加は毛細血管の退行を抑制させることができる. また, 経皮的な二酸化炭素の吸収はボーア効果による血流促進効果をもつことが報告されている. そこで本研究では二酸化炭素経皮吸収による筋毛細血管退行の予防効果を検証した.さらに超音波照射による炎症抑制や代謝促進効果についても検証する計画である.平成29年度は二酸化炭素経皮吸収による糖尿病性毛細血管退行の予防効果について検証した.慢性的な高血糖曝露は骨格筋のクエン酸シンターゼ(CS)活性の低下や毛細血管の退行を引き起こした.一方,経皮的二酸化炭素吸収は高血糖曝露によるCS活性低下や毛細血管退行を抑制し,血糖の上昇を抑制した.さらに骨格筋の代謝や血管新生に関するeNOS, PGC-1α, COX Ⅳ, VEGFタンパク質発現量を増加させ,血管新生抑制因子(TSP-1)の低下が認められた.これらの結果から経皮的二酸化炭素吸収は骨格筋の代謝や血管新生に関わる因子を増加させ,血管新生抑制因子を低下させることで高血糖曝露による骨格筋の酸化的リン酸化機能低下や毛細血管退行を抑制することが明らかとなった.また,超音波照射による効果を検証するためにC2C12筋芽細胞を使用して予備検討を実施した.C2C12筋芽細胞の超音波照射ではインテグリン/focal adhesion kinase (FAK)のリン酸化の増加が観察され,P38MAPKリン酸化が減少させ, 炎症モデルにおいてTNFaの発現を超音波照射で軽減させる効果を観察した.
著者
加藤 秀一 尾崎 紀夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.13-20, 2019 (Released:2019-01-30)
参考文献数
50

自閉スペクトラム症は,社会性やコミュニケーションの障害,および行動・興味・活動の限局を特徴とし,米国精神医学会の精神障害診断・統計マニュアル第5版では,非常に多様な表現型を包含することとなった.何らかの身体症状や精神障害を併存することが多く,包括的評価が求められる.ゲノム解析が広く行われ,頻度は低いものの発症に強い影響を与えるゲノムバリアントの同定により,一部の患者に共通する発症メカニズムが明らかとなりつつある.その結果,クロマチン制御の異常によるエピジェネティックな変化が,発症に強く影響を及ぼしている可能性が示唆されている.病態の解明,治療法開発に向けてさらなる研究が求められている.
著者
長谷川 千洋 清水 寛之
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2014 (Released:2014-10-05)

人名想起時に生じる「のどまで出かかっているのに出てこない現象(tip-of-the-tongue phenomenon)」(TOT)は,日常的に観察される現象である。本研究は大学生を対象に日本の有名人に対するTOTの特徴について調査し,TOT解消方略との関係について検討した。調査参加に同意した大学生549名に対し30人の有名人物(歴史上の有名人物15名,現在の有名人物15名)の氏名の想起を求める質問紙調査を実施し,視覚イメージ,既知感,文字情報,音韻情報の有無について回答を求め,また,個人の特性傾向として,TOT現象に対する感受性や不快感の程度,TOTの解消方略についても調べた。結果,人名に対するTOT現象は、歴史上,現在の有名人物ともに同様に生起しており,人名の想起されやすさと視覚的イメージの鮮明さ及び音韻・文字情報との関連性に比べ、TOT現象の発生率は比較的一定に保たれている可能性が示唆された。また,TOTが増えれば,能動的なTOT解消方略を用いる傾向が高くなる可能性が考えられた。
著者
吉原 祥子
出版者
公益社団法人 日本不動産学会
雑誌
日本不動産学会誌 (ISSN:09113576)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.79-83, 2017
被引用文献数
1

Abandoned and unclaimed land has emerged as a major policy issue in Japan, where the population is dwindling and property values are falling everywhere but in the big cities. This article analyzes this alarming issue using the results of a nationwide survey conducted by the author targeting 1,719 local authorities, which revealed a disconnect between the existing land ownership system and rapid demographic change. Policy initiatives are needed to address three basic challenges, namely, how to get people to register title transfers when they inherit real estate; how to protect and manage land that has no immediate prospect for use; and how to improve the data collection and management infrastructure.
著者
鍋谷 圭宏 青木 泰斗 谷澤 豊 落合 武徳
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1725-1732, 2006-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2

胃切除術後の経口摂取熱量を増やす目的で,主・副食をともに半量にした「ハーフ食」を自由摂食とし,栄養調整食インパクト™を間食とした新しい栄養管理法を47例の開腹胃切除術周術期に行った(H群).その有用性を,従来の全量粥食で摂取量を規定して管理した23症例(C群)と比較して評価した. H群では,退院直前の経口摂取熱量(1171±147kcal/日)がC群(896±163kcal/日)に比べて有意に増加し,ハーフ食からの摂取熱量に個人差が少ない傾向を認めた.しかし, H群でも熱量充足率には個人差が大きく,胃全摘術後症例では幽門側胃切除術後症例に比べて経口摂取熱量が有意に少なかった.われわれの新しい栄養管理法は,胃切除術クリニカルパスへの導入に適した統一化された方法として期待されるが,経口摂取アウトカム・目標熱量の設定や経口摂取状況の評価は術式や個人差を考慮して個別化すべきであると思われる.
著者
森 善一 斎藤 祐基 上出 寛子
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18840833)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.9-15, 2012 (Released:2012-02-08)
参考文献数
17
被引用文献数
2 4

In recent years, along with the development of robot technology, it has become possible to move dolls and toys realistically. Robot therapy is expected to achieve similar effects to those of animal therapy. However, which element of a robot is important for robot therapy has not been examined. We surmise that humans obtain more emotional healing based on biological functions related to hugging a doll with similar size and weight to those of a human baby. This paper describes analyses of the relation between human impressions and elements of the object such as size, weight, motion, and touch. The experimentally obtained results for human impressions using dolls of five kinds, including a robot, were evaluated. The results show that motion, tender touch, sufficient size to be hugged, and weight suggestive of a human baby all gave humans good impressions.
著者
本田 俊介 立花 孝 西川 仁史 峯 貴文 長井 大治 船曳 久由美 小林 佐智 野村 星一 中村 真理
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1025, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 肩関節は人体最大の可動域を持つ多軸性関節であり、その動きを3次元的に捉えることは難しい。そして結帯動作について、指椎間距離という指標はあるが、その実測値は不明瞭であり、結帯動作として記述した報告が少ない。そこで今回下垂位から最大結帯位に至るまでの連続的動作の実測値を導き出し、肩甲骨の動き及び上腕骨の内旋や伸展の関連度合いを理解する事を目的として、Motion Captureを用いた3次元的動作分析を行った。【対象と方法】 健常成人男性10名(平均年齢27歳,平均身長171cm)の右肩関節を対象とした。体表指標点として、体幹に4点(第7頚椎,第7胸椎,胸骨頚切痕,剣状突起)、肩甲骨に5点(烏口突起,肩鎖関節,肩峰角,棘三角,下角)、上腕骨に3点(三角筋粗面,内・外上顆)と内・外側茎状突起に2点の計14点の反射マーカを貼付した。撮影は立位にてまず下垂位を撮影し、以降結帯動作をとってもらい、被検者の母指先端が尾骨、第5腰椎、第12胸椎、第7胸椎の位置に達した所で撮影した。その際皮膚上のマーカと実際の骨上とはずれが生じているため、各々の撮影場面でマーカを定位置に張り直した。なお、体幹側屈の代償を抑えるために反対側も同様の動きを行ってもらった。使用システムはQualisys社製ProReflex ,MCU-500で7台のCCDカメラを使用。サンプリングレートは60Hzである。そしてQToolsを用いてデータ解析を行った。【結果】 まず肩甲骨の動きについて、前傾は下方回旋と比べて序盤動きが大きいものの、最終的には16.9°で、下方回旋とほぼ同じ数値を示した。上腕骨の動きについて、まず内旋は0°から41.4°と初期に大きな動きを行う特徴を示し、最終的に47°で、肩甲骨の動きに対して1対2.8という比率を示した。伸展は下垂位-3.1°から最終的に26.7°まで変化した。外転は、最後の第12胸椎から第7胸椎の相では変化が少ないという特徴を示した。【考察】 肩甲上腕関節の運動について、まず内旋に着目すると母指先端が尾骨から第7胸椎に到達するまでに6.6°しか内旋しておらず、下垂位から母指先端が尾骨に到達するまでにほぼ最大に近い内旋を行っている事がわかった。次に外転と伸展について、この2つの運動は、臼蓋に接触した小結節を徐々に前方から下縁に向かって移動させている事に貢献しているものと思われる。また、第12胸椎から第7胸椎の相で内旋と外転は殆ど変化が無い事から、肩甲上腕関節運動の限界が示唆され、第12胸椎以降は肩甲骨運動によって行われていると思われる。肩甲骨の前傾と下方回旋については、臼蓋の関節面を前下方へ向けるためのもので、小結節の移動を行いやすくさせると同時に、見かけ上の上腕骨の内旋及び伸展を補強していると考える。
著者
渋谷 明信 澁谷 泰蔵 眞子 隆志
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.335-341, 2018-06-15 (Released:2018-06-28)
参考文献数
27

R3Al5O12 (R: rare-earth) ceramics are one of the emitter candidates for thermophotovoltaic (TPV) systems. We conducted a detailed study on the fabrication, the microstructural characterization, and the thermal emissive performance of porous Yb3Al5O12 (YbAG) emitters. The emitters were synthesized by solid-state reaction and sintered with various conditions using ball-milling powders, which result in different porosities of the samples. Thermal radiation measurements revealed that the porous ceramics had excellent selectivity regarding emission wavelengths and optimal porosity of sintered bodies for emittance wavelengths selectivity are different according to grain size of powders related to sintered body grain size. Generally, in spite of the narrow-band thermal emissions of rare-earth ions, most ceramics do not present sufficient selectivity because of their transparency in the near infrared range. This paper discusses the mechanism of high selectivity from observations of the microstructures of developed YbAG ceramics.
著者
石井 延久 藤岡 知昭 新藤 雅章 胡口 正秀 近田 龍一郎 前原 郁夫 千葉 隆一 亀井 重郎 常盤 峻士
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.484-489, 1984 (Released:2010-07-23)
参考文献数
9

従来より埋没陰茎 (buried penis) のはっきりした定義は余りなく, 潜在陰茎 (concealed penis) も埋没陰茎に含まれると考えられることが多かった. しかし, 埋没陰茎は陰茎皮膚外板が極端に不足しているために陰茎が皮下に埋没してみえる奇形であり, 真性包茎を伴っているのが普通である.一方, 潜在陰茎は陰茎の皮膚は十分あるが, 肥満やその他の理由により陰茎が周囲の脂肪内にかくれてしまう奇形である. この場合は包茎の有無と陰茎の埋没に直接関連性はない. また両奇形とも陰茎は正常に触知されることにより micropenis とは鑑別できる.今回, 我々は10例の埋没陰茎に対してZ形成術を利用して陰茎形成術を施行し, 良好な成績であったので報告する. 症例は1歳~12歳の児童で術後経過は1カ月~3年観察している. 術後の合併症では1例が約3カ月位まで一過性の浮腫がみられたが, 他の症例はいずれも変形や機能障害はみられず, 二次手術を必要とした症例は1例もない.本手術は背面切開手術に比較すると術後の変形はなく, 自然の陰茎の形態が保れ, 手術方法も極めて簡単である. さらにZ形成術は術後に直線状の瘢痕を形成することがないので陰茎の如き機能的な器官の手術には広く応用できると考えられる.
著者
今村 義臣 木藤 恒夫 Yoshiomi Imamura
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.16-23, 2010-03-31

3名の女性共感覚者(F,K,Y)について,現象学的な調査と心理物理学的な実験を行った。3名に共通するのは,特定の数字や文字を見ることによって色の知覚が生じるという書記素・色共感覚である。ただし,3名には現象学的な違いがある。内省報告によれば,Fは「実際に色がついて見える」であり,Kは「頭に色のイメージが浮かぶ」であるという。心理物理学的な実験としては,ストループ課題とRamachandran & Hubbardが用いたポップアウト課題を実施し,一般の知覚者と比較した。ストループ課題では,FとYは逆ストループ干渉において,Kはストループ干渉において対照群との違いが見られた。ポップアウト課題では,共感覚者の正答率は一般知覚者のものより有意に高かった。これら2つの課題のパフォーマンスにより,両者における共感覚的な知覚が実証された。
著者
田中 卓
出版者
文芸春秋
雑誌
諸君 (ISSN:09173005)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.201-209, 2006-05