著者
尾原 祐三 石井 建樹 片岡 みなみ
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

岩石を構成している岩石マトリックス、鉱物粒子、鉱物粒子境界の破壊靭性を評価するための試験法を開発した、その方法を用い、花崗岩中の長石および石英内に作製した10×10×50マイクロメートルの微小供試体の微視的な破壊靱性および変形特性を評価した。この結果、微視的破壊靱性は、通常の花崗岩供試体から得られる巨視的破壊靱性に比較して小さいこと、ばらつきが大きいことなどが明らかとなった。さらに、得られた値を用いて有限要素被膜法により巨視的破壊靱性試験における破壊進展数値シミュレーションを実施した。この結果、実験による破壊形状と解析結果はよい一致を示し、解析方法の妥当性が明らかとなった。
著者
吉田 邦彦 早坂 啓造 岡田 秀二
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

入会問題(理論、実態)について、小繋、戸呂、山中湖の事例、沖縄の事例から、多面的に問題状況を考察し、同時に、森林管理のために、林業の課題、中山間地の再生の道を探った。他方で個人主義的所有論の抜本的再検討のためにも、オストロム・コモンズ理論の分析を用いて、森林保護以外にも、海洋資源の保護、灌漑制度、水資源の共同利用等も検討した。それに関連して、先住民族の土地(生活空間)利用哲学の理解を深め(とくにアイヌ民族の場合)、その侵害補償の在り方を考えた。土地問題のみならず、薬草などの伝統的知識・遺伝資源の保護も扱った。
著者
梅原 弘光 永井 博子 BALLESCAS C. BAUTISTA G.M 早瀬 晋三 永野 善子
出版者
立教大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究では、労働力移動には通常の農村-都市間移動の外に、山地などフロンティア向けの移動が大規模に存在し、それが森林資源などの環境後退につながっているとの仮説に立ち、その実態の把握とそこでの住民の生存戦略の確認に努めてきた。その結果、以下に列挙するような事実が確認された。1.フィリピンの森林面積は、ここ20〜30年の間に急激に後退したが、その跡地ではすでに夥しい数の住民が生活していること。2.これら住民の多くは、かつて低地に住んでいたということであるから、低地農村から山地向けの労働力移動はかなり広範に存在するとみて間違いないこと。3.こうした住民の多くは、伐採跡地で生存のための焼畑農業を始めるが、やがて商品作物が入ってきて集約栽培が繰り返されたため森林の回復はなく、むしろ草地の拡大が進行していること。4.森林の後退は、一般には人口圧力、労働力移動、入植などの必然的結果と考えられてきたが、原因はむしろ政府の農業入植政策、森林開発政策、累積債務返済のための商業伐採の促進、伐採権の積極的付与と伐採企業による公有地の囲い込み、林道建設、伐採のための労働力吸収などが大勢の住民の山地移住を促進していること。5.低地住民をして山地移住を決意させたのは、近代的所有権制度による伝統的所有権剥奪、地主による小作人追放、「緑の革命」後の農業商業化の進展、工業団地建設のための農地転用などであった。
著者
福士 航
出版者
北見工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、英国王政復古期の作家アフラ・ベインの演劇・散文作品に見られる<他者>表象を、ジェンダー・党派政治イデオロギーの側面のみならず、人種・階級・振る舞いのコードなどの側面からも分析し、その結果、演劇的表象が<他者>のステレオタイプへの固定化に向かうことを明らかにする一方で、散文における<他者>表象は複層化することを確認した。
著者
岩田 美喜
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、18世紀のイギリス演劇に描かれる「非標準的な英語」を喋る人物たちに焦点を当て、ことばを通じた地理的/政治的/社会(階級)などによる〈他者化〉の現象を探るものである。18世紀は英語の標準化が進んだ時期であり、演劇という文芸ジャンルはそれ以外の英語を用いる者を「周縁」として前景化するはたらきを持っていた。だが、本研究ではさらに一歩踏み込んで、周縁的存在とされるアイルランド人劇作家たちが自ら差異化のシステムを助長するような作品を書いたケースを分析し、また日本における言語を通じた差別化の問題を比較文化的に論じるなど、一枚岩的には成り得ない「言葉と差別」の実相を明らかにした。
著者
吉武 隆一
出版者
国士舘大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ギリシア古代都市メッセネの古代劇場とアスクレピオス神域のコリント式オーダーを中心に、ヘレニズム建築の設計法と施工法の一端を明らかにしたものである。ギリシア建築のコリント式オーダーは、古典期まで建物内部のオーダーとして使われることが多かったが、ヘレニズム期になって建物外部のオーダーとして用いられるようになった。メッセネのアスクレピオス神域で使われたコリント式オーダーは、サモトラケのプロピロンと並び建物のファサードとして使われた重要な例であり、様式的にはペロポネソス半島の伝統の影響を受けていることが分かった。また、メッセネの古代劇場はヘレニズム期とローマ時代の両方の遺構が確認できる好例の建物である。これまでの調査で、ヘレニズム期には可動式の木製スケーネがあり、ローマ時代になって二層あるいは三層のオーダーからなるスケーネに改築されたことが分かった。
著者
高橋 裕次 小宮 木代良 丸山 士郎 佐々木 利和 小野 真由美 池田 宏 山口 俊浩
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題の最大の目的である、江戸幕府旧蔵資料の所蔵情報の把握を行うために、資料を所蔵している諸機関について情報収集を行い、所蔵の確認をした。さらに、江戸幕府旧蔵資料を引継いで管理していた東京国立博物館において、基礎的な情報を把握するため、収蔵品に関する様々なデータの整理をした。また、「浅草文庫」の目録や、帝室博物館の収蔵品目録、明治10年に博物館が作成した『博物館書目』をとおして、江戸幕府の引継ぎ資料の全体像を把握するための詳細調査を実施した。収集した江戸幕府旧蔵資料の所蔵情報をもとに、「江戸幕府旧蔵資料データベース」(暫定版)を作成した。収録したのは、東京国立博物館、宮内庁書陵部、国立公文書館内閣文庫、静岡県立図書館の所蔵する資料である。その点数が厖大であり、必ずしも現物1点ごとに詳細なデータの収集の実施はできなかったが、現在の江戸幕府旧蔵資料の概要を十分示すことができた。東京国立博物館の所蔵する漢籍、洋書については、これまで本格的な全体調査が行われていなかったが、今回、悉皆調査を行い、印記などを確認して、江戸幕府旧蔵資料と考えられるものをデータベースに収録した。東京国立博物館には、データに「伝来未詳」とされ、はっきりと江戸幕府旧蔵とは言えないまでも、その形態や特質から、江戸幕府に関係したであろうと推測できる資料もある。この点については今後の課題としたい。以上の研究によって、明治5年に湯島聖堂に集められた江戸幕府旧蔵資料の全貌を解明する手がかりができた。本研究報告書では、作成したデータベースや調査結果から、研究分担者・研究協力者が、江戸幕府旧蔵資料に関する個別研究も行った。しかし、本研究は江戸幕府旧蔵資料を明らかにする上での基礎的な作業であったといえる。今後は、江戸幕府旧蔵資料に関する各分野の個別研究を行う上で、本研究成果が基本的資料となると言えるであろう。
著者
廣澤 成美
出版者
埼玉医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究ではフェニトロチオンが内分泌臓器に及ぼす影響を調査するために雄若齢ラットを用いて曝露実験を行った。その結果、フェニトロチオン30mg/kg/day投与群の副腎と脳下垂体重量の増加がみられた。またフェニトロチオン投与群ではテストステロン及びACTHの血中濃度が高くなることが示された。脳下垂体と副腎におけるプロテオーム解析を遂行し、コントロール群と比較し投与群において発現量が増減した蛋白を同定することができた。
著者
益田 実 細田 晴子 齋藤 嘉臣 橋口 豊 青野 利彦 三宅 康之 妹尾 哲志 清水 聡 小川 浩之 池田 亮 鳥潟 優子 三須 拓也 山本 健 芝崎 祐典
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、巨視的視点から冷戦史の全体像を把握するための新たなパラダイムの構築を意図しながら、1940年代半ばから1980年代初頭までを対象とする米英仏独西中など関係諸国アーカイブ史料の実証分析により、同盟政治・脱植民地化・文化的変容という冷戦期における三つの中長期的な変動と冷戦との関連を明らかにすることに努めた。中心的な研究成果としては研究代表者および分担者全員により益田実・青野利彦・池田亮・齋藤嘉臣編著『冷戦史を問いなおす』(ミネルヴァ書房、2015年)を執筆刊行し、さらに同書に関する公開書評会を開催し、そこでの議論を踏まえた発展的研究課題を形成した。
著者
服部 英雄
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

佐賀平野に残る地名を聞取調査によって網羅的に収集した。佐賀県の小字は明治の地租改正時に数字のくみあわせなどによって新規に採用した新地名である。地元ではこれと異なる俗称として様々な小地名を使っていた。こちらの方が中近世の古文書の記載に合致する歴史的な地名である。佐賀ではこうした地名をしこ名と読んでいる。今回の調査では、多数の調査員の協力により、700の村の古老を訪問し、この俗称・通称として語り伝えられてきた地名の収集を試みた。その結果佐賀平野分で15、000程の地名が収集できたし、それを地図上に落とすことによって後世に記録として残すことができたのである。これらを歴史資料として活用していくことは様々に可能となった。条里の復原には多くの坪地名が活用できる。従来の調査研究が明らかにしていた坪地名(条里制の遺称地名)と比較しても、およそ2〜3倍の坪地名が収集できたので、各群毎に詳細な復原が可能になった。条里の施工単位の微妙なずれなども明らかになった。荘園地名によっては、中世の村の景観が復原できる。つまり用作・正作といった領主直営田を示す地名によっては中世の開発・干拓の様子を知ることができる。アオ潅漑を利用している地域においては、中世文書の記述との組み合わせによって、中世には既にアオに依拠する耕地が多かったことも明らかにできた。近世の村については、たとえば木戸地名・高札(制札)地名・硝煙蔵地名をてがかりに村の景観を考えることができる。このように本研究では、地名を聞き取りによって網羅的に収集することを目的としたが、その当初の目的はかなりの程度達することができ、また歴史地図である地名地図を作成したことにより、後世への記録を残すことができた。と同時に今後のこれらの地名を利用した新しい研究の展開に道をつけることができた。
著者
藤吉 康志 工藤 玲 川島 正行 林 政彦 宮崎 雄三 青木 一真 山本 真之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

地上リモートセンサーと同時にグライダーでのin situ 観測を実施することによって、大気境界層内の各種物理量が整合的に変動することが確認できた。さらに、大気境界層上端に発生した強い乱れは、小さな積雲の縁に存在する極めて狭い下降流によってもたらされていたことが分かった。また、エアロゾルの時空間分布と光学的特性の変動要因を解明するため、エーロゾルの量と光吸収特性の鉛直分布を導出するアルゴリズムを開発し、日射による加熱量を推定した。アルゴリズムの検証は、滝川で行ったグライダー観測データで行った。その結果両者にはまだ不一致が見られ、さらなるin situ観測との比較が必要であることが明らかとなった。
著者
菅原 正 高倉 克人
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

1)光学顕微鏡観察およびフローサイトメトリによるベシクル集団解析のデータより、ベシクル内でのDNAの自己複製とベシクルの分裂が連動するダイナミクスを解明した。2)親ベシクルの自己生産で生じる娘ベシクルに、枯渇したヌクレオチドを包みこんだ運搬ベシクルを融合させることで、娘ベシクルに自己増殖能を獲得させた。3)ベシクル型人工細胞には、外的および内的刺激に対して、それぞれ選択的に活性化される4つのステージ (摂取、複製、成熟、分裂) があること、さらに、各ステージでの内部的変化が、ベシクルを次のステージへと駆動していることを明らかにした。
著者
宮地 和樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

今年度は、「学問の自由」の政治性を、「文化自由会議」から1954年に派生して設立された「科学と自由についての委員会」におけるマイケル・ポランニーの活動に着目して考察した。第二次世界大戦の前後、共産主義批判を行うことは、知識人たちの中では困難なことであった。 この中で反共左翼と呼ばれる知識人たちが「文化自由会議」を設立し、ソヴィエト圏の共産主義政権下で抑圧されていた知識人・大学人の言論の自由や学問の自由を擁護するための活動を行った。委員会は1954年に当会議の派生的団体として設立される。委員会は、高等教育機関における「学問の自由」の擁護とその普及を目的とし、雑誌『科学と自由』の発行や、「学問の自由」に関わる問題を議論する会議の開催を行った。しかしながら、「文化自由会議」は設立当初から、いわゆるCIAから資金援助を受けていたということが暴露され、大きな批判を受ける。その批判とは、知識人の文化的活動の自由を外部の政治的権力から擁護するという理念と、実際の活動自体が政治的権力と協働していたという矛盾についてであった。この問題は委員会の活動とも無縁ではない。しかし、報告者は『科学と自由』や会議におけるポランニーの発言録などから、会議や委員会に向けられた批判が単純には当てはまらないことを明らかにした。なぜなら、その活動には必ずしもCIAやアメリカ政府の方針と反しないようなアパルトヘイト政策への抗議活動や、反共政策の一つであるマッカーシズムに対する批判なども含まれていたからである。報告者は以上から「学問の自由」の概念は、確かにある政治的権力に対抗し、またその限りにおいてある政治的権力と協同することもあり得る。しかしながら、それは特定の政治的権力における道具的価値あるいは政策の一部となるものではなく、それ独自の目的を目指した政治性であると結論づけた。
著者
橋本 鉱市 高橋 哲 鈴木 道子 稲永 由紀 二宮 祐 井本 佳宏 小島 佐恵子 丸山 和昭 朴 玄貞 陳 曦 京須 希実子 (白旗 希実子)
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、専門職の養成過程における「質」の側面に着目して、わが国における専門職コンピテンシーのあり方とそれを保証するシステムの実態を考察することを目的とした。10種以上の職種を取り上げて、それぞれの質保証に関する政策議論を跡付けるとともに、特に実習カリキュラムが大学における専門(職)教育(学問知)と現場での実際的な業務(実践知)とを繋ぐ制度として機能しているかを考察した。
著者
高井 研 中村 龍平 山本 正浩
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-05-31

研究期間において、(1)現場深海熱水噴出孔において硫化物チムニーの内外で600mV程度の起電力が潜在的に存在し、実際の電子伝達能を有していること、(2)にもかかわらず、実験室内実験において、チムニーに生息する微生物群集を植種源として、天然チムニー電極や様々な電極を支持体とした電気合成微生物群集の増殖が観察されないこと、が明らかになった。これらの結果を踏まえて、深海熱水現場環境での電気合成微生物群集の増殖実験を行い、電気合成微生物群集の形成を示唆する結果を得た。自然深海熱水噴出孔のチムニーにおいて電気合成微生物群集が生育可能であることが明らかになった。
著者
ダベンポート アンジェラ
出版者
東京女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究の目的:ロンドン・ブライドウェル救貧・矯正院の法廷記録(4巻[1598年]~5巻[1610年])のデータベース化をすること。オンラインデータベースを使った初期近代英国文学・文化研究/シェイクスピア研究の促進。および、人文学者がオンラインデータベースを自ら作成するという研究分野を促進するデジタル・ヒューマニティーズの分野に貢献すること。実績1.エリザベス朝の手書きの法廷記録を自動的に書き起こすソフトウェアを作成する課題に関していうと、現段階では作成不可能であることがリサーチの結果明確になり、当研究を通して開発の一歩を踏めるというところまでも至らなかったが、日本や中国、ヨーロッパにおいて、同様のリサーチを進めている研究者達との情報交換を通して、少しずつ進んでいること、さらには将来的な開発につながる情報を得ることができた。2.既に書籍にあがっている法廷記録のテキストを収集し書き起こし、自分で書き起こした記録と合わせて記録集の一部を電子化し、簡単な検索機能をつけた。3.2014年に立ち上げた研究グループEarly Modern Digital Humanities: Japanのオーガナイザーとして積極的に活動を行った。6月と9月にデジタル・ヒューマニティーズに関するセミナーを開催。8月には国会図書館において招待講演も行った。また、9月に京都で開催されたデジタル・ヒューマニティーズの国際学会にも参加して国内外の同様の研究を行っている研究者達とネットワークを築いた。4.研究グループEarly Modern Digital Humanities: Japanの組織を堅固なものにするべくメンバーを集めた。また、ウェブページの充実を図り、情報を発信した。
著者
加藤 久和 杉浦 一孝 森際 康友 中村 真咲 楜沢 能生 松本 恒雄 小長谷 有紀 萩原 守 小長谷 有紀 萩原 守 楜澤 能生 松本 恒夫 蓑輪 靖博 大江 泰一郎 恒川 隆生 奥田 進一 中村 真咲 上村 明 鈴木 由紀夫 B.アマルサナー S.ナランゲレル J.アマルサナー SH.バットスフ
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、モンゴル国における土地法制をめぐる諸問題を法社会学的な観点から研究することにより、モンゴル国の土地をめぐる紛争と環境破壊の防止に貢献することを目指した。日本国内で研究会・シンポジウムを開催するとともに、都市・牧地・定着過程にある牧地・農地・鉱山の5つの研究班による現地調査を実施し、その調査結果をモンゴル国で開催した研究成果報告会で報告した。この調査結果は高く評価され、モンゴル鉱物資源法改正のための参考資料としてモンゴル国会にも提出された。
著者
大森 毅 川原 一芳
出版者
科学警察研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

化学テロ現場において、原因物質のみを特異的に除染できる方法の開発を目指して、有機リン系化合物分解酵素であるorganophosphorus hydrolase(OPH) の遺伝子に変異を導入し、サリンやVX等を効率的に分解する酵素の開発に取り組んだ。136Leu、254Tyrおよび257Hisの3箇所のアミノ酸を置換した5種類の変異酵素を作成し、有機リン系化合物分解反応を調べた結果、Tyr254Hisの変異を導入した酵素が最も高い分解能力を示した。さらにこの酵素を担体に固定して作成したバイオリアクターは活性を維持し化学剤を分解したことから、酵素によるテロ現場除染技術への発展が可能と考えられた。
著者
梶川 裕矢 森 純一郎 中村 裕子
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、パテントプールにおいて必須特許となる特許の特徴を分析した。必須特許が引用しているBackgroundの特許群(B)、ならびに、Backgroundの特許群を引用(Citing)している特許群(C)のデータベースを構築し、必須特許との特徴の差異を分析した。その結果、必須特許群(V)は特許群(C)よりも出願年が古く、先行技術の優位性が示された。しかし、(C)かつ(B)である特許群は、必須特許よりも前方引用が少なく、後方引用が多い、出願年が古いという特徴を有していることが分かった。すなわち、必須特許は先行する基本特許の上に、各規格や標準に合わせた改良を加えたものであると推察できる。
著者
高柳 友紀
出版者
自治医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

下垂体後葉ホルモンのオキシトシンとその受容体は、社会行動と親和行動に重要であることが示されている。オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスには母性行動低下が認められた。一方で幼若期のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、母親から隔離したときの超音波発声がほとんど認められなかった。これらの結果は母仔親和行動において、母仔共にオキシトシン受容体が重要な因子であることを示している。また一方で、仔の成長後の行動は幼若期に母親から受けた愛着行動に強く影響をうけることが知られている。そこで、本研究では(1)母仔愛着行動においてオキシトシン系が活性化される脳部位の同定を行うこと、(2)幼若期のオキシトシン系活性化が仔の将来の行動を形成するという仮説を検証することを目的とした。母性行動誘発時にオキシトシン系が機能する脳部位を明らかにする目的で、神経活動マーカーであるc-Fosの免疫組織化学による解析を行った。仔に曝露して母性行動誘発刺激を与えたオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、外側中隔野、内側視索前野における神経活動が野生型に比べて顕著に少なく、これが母性行動低下に影響していることが示唆された。また、母仔分離をして仔が母への求愛行動を示す時にオキシトシン系が機能する脳部位を同定する目的で、オキシトシンとc-Fosの二重免疫染色による解析を行った。母と同腹仔から隔離した生後七日目のC57BL/6Jマウスにおいて、視索上核で神経活動マーカー陽性のオキシトシン産生ニューロンが多い傾向が認められ、室傍核のオキシトシン産生ニューロンにその傾向は見られなかった。また、C57BL/6J仔マウスに対して出生日から生後5日目までオキシトシン受容体アンタゴニストを連続投与し、成熟後の行動を解析した。Vehicle投与群と比較して情動行動には差が見られなかったが、社会行動において差が認められた。