著者
田中 愛治 河野 勝 清水 和巳 山田 真裕 渡部 幹 西澤 由隆 栗山 浩一 久米 郁男 西澤 由隆 長谷川 真理子 船木 由喜彦 品田 裕 栗山 浩一 福元 健太郎 今井 亮佑 日野 愛郎 飯田 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全国の有権者から無作為抽出した対象者(サンプル)に対し、ノート・パソコンを用いた世論調査(CASI方式)を日本で初めて実施した。さらに、ノート・パソコンによるCASI調査に、認知心理学的視点を加えた政治経済学実験の要素を組み込み、実験を導入した世界初のCASI方式全国世論調査に成功した。これにより、政治変動をもたらす日本人の意志決定のメカニズムの解明を可能にし得る新たな研究を踏み出した。
著者
間藤 徹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ホウ素はカルシウムとともにペクチン質多糖をラムノガラクツロナン(RG)-II領域で架橋することに機能している。RG-II領域でのペクチン質多糖の架橋はホウ素だけでは完成せずカルシウムによって補強されることが必要である。つまりペクチン質多糖の架橋にはホウ素とカルシウムがともに存在していることが必要であり,それぞれ片方だけでは機能しない。カルシウムはガラクツロン酸残基のウロン酸同士を配位結合で架橋するが,架橋するためにはメチルエステル化されて分泌されてくるウロン酸メチルエステルを加水分解する必要がある。この加水分解を触媒するのがペクチンメチルエステラーゼ(PME)である。本研究ではタバコ培養細胞,ニンジン根,エンドウ胚軸の本酵素活性を性質を検討した。いずれの材料でもほとんどの活性が細胞壁に会合して存在したが1M NaClによって可溶化された。ニンジン根の酵素は塩基性アイソザイムが少なく中性アイソザイムがほとんどであったが,タバコ培養細胞では塩基性アイソザイムが主であった。いずれのPMEも活性発現にCaが必須でKm値は約3mMであった。このCaはNaによって代替することができたがNaのKm値は約50mMと生理的な濃度ではなかった。CaはPMEの生成物であるウロン酸残基を架橋する元素であるとともにPMEの活性発現を通してペクチン質多糖の架橋に機能することが明らかになった。ホウ素はPMEの活性発現には関与していなかった。タバコ培養細胞細胞壁から抽出精製したPME塩基性アイソザイムのN末アミノ酸組成から本酵素のDNAクローニングをすすめている。
著者
蓮尾 昌裕 赤池 孝章 湯浅 英哉 有本 博一 鈴川 和己 進士 忠彦 片山 紀生 見延 庄士郎
出版者
京都大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2004

日本の科学研究費補助金(科研費)制度の効率的な運用のため、新たなプログラムオフィサー(PO)制度の構築に向けた以下の調査研究成果を得た。1 海外の競争的研究資金配分機関におけるPO制度運営状況の調査研究米国MH, NSF、英国RC、シンガポールA^*STAR、台湾NSC、韓国KRF、日本・北米・欧州HFSP、EU ESF、独国DFG等の競争的研究資金制度およびそのPO制度の現地調査を行い、それぞれの競争的研究資金制度の概要・特徴とその中でのPOの位置付け・役割を整理した。2 国内の競争的研究資金配分機関におけるPO制度運営状況の調査研究科研費(文部科学省・研究振興局)、科研費(日本学術振興会)、科学技術振興調整費(科学技術振興機構)、産業技術研究助成事業(NEDO技術開発機構)、先端技術を活用した農林水産研究高度化事業・民間結集型アグリビジネス創出技術開発事業(農林水産省・農林水産技術会議事務局)の競争的研究資金制度およびそのPO制度を調査・分析し、比較一覧表を作成した。3 文科省科研費担当学術調査官制度やPO制度に関するアンケート調査審査部会各系委員会委員、採択課題・領域の研究代表者、および学術調査官所属機関に対し、学術調査官の業務や構成、PO像やそのキャリアパス等についてアンケート調査を行い、意識・意見・要望を分析した。4 科研費応募者に対する科研費制度とPO制度の啓発活動、および応募者の意識・要望の調査研究本科研費の企画提案等により、日本化学会第85春季年会企画講演「より身近な科研費制度を目指して-プログラムオフィサーに求められる役割-」、日本機械学会2005年次大会特別企画「変わりつつある科学研究費制度-研究者自身に求められる役割-」、第78回日本生化学会大会シンポジウムパネルディスカッション「ポトムアップ型競争的研究資金、科研費制度の改善に向けて-アカデミアとプログラムオフィサーの役割-」を実施した。さらに会場でのアンケート調査により、科研費応募者の意識・要望を分析し、このような企画の効果を検証した。
著者
田中 英道 森 雅彦 松本 宣郎 吉田 忠 鈴木 善三 岩田 靖夫 池田 亨 芳野 明
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

宇宙の体系、天体の考察は当然歴史的な変遷の中で、人間の外界に対する思想行為として、深く芸術に影響を与えてきた。芸術そのものが近代のように、科学、哲学と分離している時代と異なり、一体化した時代にあっては、宇宙観、天体観がそこに表現されざるを得ない。例えばカトリックの総本山であるヴァチカン宮の、ミケランジェロによるシスティナ礼拝堂天井画には『旧約聖書』の「天地創造」の場面が描かれているが、これは基本的には「ユダヤの宇宙論」に基づいている。第一に指摘すべきことは聖書の記録が「宇宙」という観念を知っていたかどうかであるが、世界は有機的統一体ではなくて別の現象の集まりに過ぎず、それらの共通の創造主の意のままに制御されている。つまり聖書の世界にはユニヴァースやコスモスという言葉はない。理論的にはそのような形で芸術に表現されることになる。ミケランジェロの場合、神が闇と光を創造し、月と太陽をつくり、人間を生じさせた場面を描いたとき、そこには宇宙論的な統一体はないことになる。確かに創造された人間の姿は、決して、最初から宇宙の中で調和のとれた存在として描かれているものではない。しかし『創世記』(1-31)で天地創造の話の終わりに「はなはだ善かりき」という使い方があって、宇宙の優位性を語っている。聖書の世界像ははっきり地球中心的であるが、ギリシアの天体観は様々な形をとったが、太陽中心説でさえ存在した。これらの知識が総合されて芸術に含まれている。このような宇宙観、天体観がまずどのようなものであったかを根本的に検討することが、我々の研究課題であった。単に西洋のキリスト教的観念だけでなく、ユダヤの宇宙論、ギリシャの天体観などを多角的に検討し、またイスラム、インドさらには中国などの宇宙観と比較し、それぞれがどのような共通性と相違があるか、研究成果の中で取り入れることが出来た。様々な分野の分担者がそれをまとめる作業を行った。
著者
金田 忠裕
出版者
大阪府立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

小中学生向けの操作型ロボットを対象とした段階的なロボット教材および作成補助資料の開発を目的とし、下記のような研究成果を得た。1.小学生向けの2つのモータで動く簡単なロボット教材を製作し、授業実践やロボット工作教室を実施した。製作の手順を書いた説明書以外に製作手順をカード形式にしたものを用意して、あえて順番を示さずに自分で考えさせる訓練をさせた。この教材を用いて、公立、私立の2つの小学校で実践授業を行った。7枚のカードを用いた実践授業では、論理的な思考力を育成することがわかった。2.小学生向けのゼンマイで動く簡単なロボット教材を製作した。茶運び人形をモチーフにしたゼンマイ動力を用いた機構を作成し、からくりの面白さがわかるようにした。杯を置くとおもりによってゼンマイのストッパーがはずれて、ロボットが動き出す仕組みを実現した。3.中学生向けロボット製作指導用として参考になる書籍6冊及びビデオ教材2件を収集し、生徒及び中学校教員の参考となる知識を整理した。4.中学生向けの競技用ロボットとして参考となる走行機構とハンドリング機構のモデルをそれぞれ21種類と7種類製作した。5.中学生向けの具体的なロボット教材として、4chリモコンで操作する走行部(車輪・クローラー・脚)の変形が可能なロボットを作成した。また車輪式で不整地走行が可能なようにサスペンション機能を持つロボットとして、2chリモコンで操作するロッカーボギーサスペンションを模擬したロボットを製作した。
著者
静谷 啓樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目標は、Diffie-Hellman公開鍵配送方式を破る問題(以下この問題をDHと書く)と離散対数問題(以下DLPと書く)の相互関係を明らかにすることである。このテーマに関して現在までに分かっていることは、次の2点である。(i)DHはDLPに多項式時間Turing帰着する。(ii)特別な場合または特別な仮定のもとではDLPはDHに多項式時間Turing帰着する。しかし、一般にDLPがDHに帰着するかどうかは不明である。すなわち、一般にはDHとDLPの等価性は知られていない。本研究では、主に標数pの有限素体上でDHとDLPを考察し、DHとDLPの中間に入るような難しさをもつ2つの鍵共有方式:Open Diffie-Hellman scheme及びParity-Sensitive Diffie-Hellman schemeが存在することを明らかにした。特に後者を破る問題をPSDHと書くと、PSDHについては次が成り立つ。(1) DHはPSDHに多項式時間で帰着する。(2)DHを解く能力があれば、PSDHは誤り率2^<-q(|p-1|)>で解ける。ここにqは多項式である。(3)PSDHは多項式時間でDLPに帰着する。(4)DLPは平均的多項式時間でPSDHに帰着する。要するにDHとDLPの間の難しさのギャップは、(2)の誤り率という尺度で表現できることを指摘した。これはDHとDLPの関係の解明という20年余りの未解決問題に対する一つの成果である。この結果は国際学術論文誌上で公表すべく準備中である。
著者
井原 今朝男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1501年後柏原天皇即位式財政帳簿である即位下行帳をはじめて発見・公開し、中世禁裏の財政運営が朝廷の儀式伝奏と幕府の惣奉行との関係者によって共同執行されていたことをあきらかにした。その結果、衰微した天皇の代表といわれ22年間即位式を執行できなかった後柏原天皇について、即位式準備の財政帳簿である即位下行帳をはじめて発見・公開・報告・分析し、中世禁裏の財政運営が幕府と禁裏との共同財政帳簿で運営されていた史実をあきらかにした。
著者
瀬川 麻里子
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、原子炉から発生するガンマ線及び熱中性子線を種に高速中性子を他方向に発生させ、設置位置可変の分散型中性子ジェネレータを新たに開発する事を目的とする。そこで、LiF及びPbからなる中性子ジェネレータより発生する高計数率の中性子及び除去すべきバックグラウンドであるγ線を2次元で計測するシステムを構築した。当システムは、中性子・ガンマ線検出器、マルチチャンネルデータ計測器、可視化部からなる。線源及びコリメータを使用して当システムの空間分解能を評価し、本実験に向けた性能を実証することに成功した。
著者
氷見山 幸夫 春山 成子 土居 晴洋 木本 浩一 元木 靖 季 増民 季 増民
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

アジアにおける持続可能な土地利用の形成に向け、日本、中国、インド、極東ロシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ミャンマーで広域の土地利用変化データファイル(オリジナル電子地図、多数の現地写真等)を作成し、土地利用の現況と変化及び関連する諸問題を明らかにした。その成果はSLUAS英文成果報告他多くの雑誌・文献等で公刊した。また国際地理学連合、日本学術会議、日本地球惑星科学連合などと連携してアジア各地と国内で多くのシンポジウム等を主催・共催・後援し、研究成果を発信し、持続可能な土地利用に関する理解の向上に貢献した。東日本大震災発災後は土地利用持続可能性の観点から深く関わり、学術会議提言に寄与した。
著者
宮脇 淳 石井 吉春 遠藤 乾 山崎 幹根 林 成蔚 木村 真 若松 邦弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

台湾の直轄市制度の拡充に伴う政府間財政調整制度改革の政策議論、韓国の広域市制度の展開、欧州の財政危機問題に伴う財政と政治の理論的関係等について合意形成にまで掘り下げた比較研究を行い、その成果を日本の地方分権議論に反映させる調査研究を行った。とくに、台湾の直轄市制度に関する調査研究は、日本の大都市制度議論、財政調整制度のあり方、そして閣議意思決定との関係について新たな視野を形成した。
著者
八木 健
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究では脳の多様化分子群である CNR/プロトカドヘリン分子群に注目し、1)個々の神経細胞の多様化をもたらす分子メカニズムの解析、2)神経回路形成の分子メカニズムの解析より、神経細胞の多様性と神経回路形成を統合的に捉える分子メカニズムの解析を行った。その結果、CNR/プロトカドヘリンのランダムな発現制御に関わるシス因子、DNA メチル化、トランス因子の同定に成功した。また、CNR/プロトカドヘリン分子群が機能的な神経回路形成に必須であることが明らかとなった。
著者
佐々木 裕之 中尾 光善
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

エピゲノムは細胞のエピジェネティックな修飾の総体であり、発生・分化・がん等において重要な働きをする。網羅的・体系的なエピゲノム解析基盤を確立する目的で研究を行い、(1)独自のメチル化DNA濃縮ツールを開発し、(2)マウスの細胞を用いて網羅的解析技術を確立し、(3)この方法をヒト培養細胞や健常者・各種疾患由来の細胞に応用した。これにより、(4)様々なクロマチン因子の相互作用や標的配列を同定することに成功し、(5)ヒト・チンパンジー間のDNAメチル化の差を同定し、エピジェネティクスの制御機構や多様性・進化との関わりを研究する基盤を確立した。
著者
遠藤 織枝 桜井 隆 陳 力衛 劉 頴 CHEN Liwei LIU Ying
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

中国女文字の保存を考える2004年の現地調査での女文字の実情を報告する。調査に訪れた2週間後に伝承者陽換宜が死去して、この文字を伝統的方法で習得し、娘時代に実際にこの文字をコミュニケーション手段として用いた人はいなくなった。緊急によりよい保存の方法を講じなければいけないときにきている。調査の結果、伝統的な文字とは変形した文字が盛んに書かれていること、そのような書き手を現地政府が重用していること、昔の女性の文字に最も近い文字を書く何艶新が生活に追われて文字から離れてきていることがわかった。女文字の保存にとって望ましい状況ではないことが憂慮される。この文字の歴史や規模について、3000年以上の歴史がある、2000字以上の文字があるというような誇張された大げさな言説がインターネット、新聞などに流布している。この文字を、昔の女性たちが使い・伝えた、本来の姿に近い姿で保存することが望ましいが、以上のような根拠のない無責任な言説は、本来の女文字の姿を歪めかねない。こうした事態を軌道修正し、合理的・科学的に考究し合って共通理解を得ることが肝要と考えて、中国と日本との研究者の共同主催でシンポジウムを開いた。両国研究者が一堂に会して、同じ対象についてそれぞれの研究を発表し合い、真摯に討論する機会が得られた。女文字の研究方法や歴史に対する考え方にも共通の理解が得られたことは大きな成果であった。
著者
小原 嘉明 佐藤 俊幸
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

標記の研究課題を追求するために、下記の(1)から(3)の研究を行い、それぞれ下記の成果を得た。(1)ユーラシア大陸内とその近辺の島嶼における「まぼろし色」(紫外色)の翅の雌の分布についてこれについての概要を知るために、「自然史博物館」(ロンドン、イギリス)と「Zoologisches Forshungsmuseum Alexander Koenig博物館」(ボン、ドイツ)に所蔵されている関係地域のモンシロチョウ標本の紫外線写真を撮って紫外線の反射の有無および反射の強さを調査した。その結果、紫外線を反射する翅を有する雌はユーラシア大陸の東の沿海部のみにおいて観察されたこと、その他の、ヨーロッパ、中央アジア、地中海に面したアフリカ北部、およびカナリア諸島とキプロス島には観察されないこと分かった。(2)「まぼろし色」の翅を有する雌の進化について上記の結果と、紫外色の発現条件(幼虫時の長日条件)に基づいて、紫外色翅を有する雌のユーラシア大陸内での進化を追求するために、同大陸とその周辺の地域においてモンシロチョウを採集し、それから得た幼虫を長日条件下で飼育し、得られた雌成虫の翅の紫外色の有無およびその強度を調査した。その結果上記(1)の推測が支持された。すなわち、イギリスからキエフ(ウクライナ)間のヨーロッパでは紫外色を有する雌が見られないこと、北京(中国)およびソウル(韓国)から広州(中国)に及ぶ沿海部と台北(台湾)においてのみ紫外色を有する雌が棲息していることが分かった。またこれらの地域では紫外色を有する雌と有しない雌が混在していることも分かった。これらの結果から、紫外色を有する雌はユーラシア大陸の東方の沿海部近辺において進化したことが示唆された。(3)紫外色の遺伝機構について紫外色翅を有しないオランダのモンシロチョウと、それを有する日本のモンシロチョウを交雑して得られた結果を分析した結果、紫外色は複数の遺伝子座の遺伝子によって支配されていることが示唆された。
著者
柴田 清 渡辺 一哉 笠井 由紀 滝口 泰之 渡辺 一哉
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では深海における沈船中残存油の微生物分解処理の可能性を検討するために、高圧下におけるフェノールの微生物分解について実験的に調査した。その結果、Pseudomonas stutzeri単離株を用いた場合、海表面条件下ではフェノール分解が進行することが確認されたが、2.0MPa~5.0MPa加圧下では分解の進行が確認できなかった。一方、深海泥試料を添加した場合は常圧よりも加圧下の方が分解の進行が速いことが観察され、深海環境下でも有機物の微生物分解が進行する可能性が示された。
著者
伊狩 裕
出版者
同志社大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

数世紀にわたって国家を持つことのできなかったウクライナ人は、18世紀末のポーランド分割以降は、ハプスブルク帝国、ロシア帝国に分断され、それぞれの地域において、支配者の側から、「ルテニア人」、「小ロシア人」と呼ばれ、被抑圧者の立場におかれ、自らのアイデンティティを主張することも困難であった。19世紀を通じて、西欧諸国においても、ウクライナ民族の認知度は低かったのであるが、ガリツィア出身のユダヤ系ドイツ語作家カール・エーミール・フランツォースは、19世紀の後半、先駆的にウクライナの民族文化を高く評価し、ウクライナの民謡、文学を西側に向けて紹介している。しかし、20世紀を通じてもウクライナの民族と文化に対する西側の関心は低く、そのため、ウクライナ民族の歴史と文学とを紹介した『小ロシア人の文学』、今日でもウクライナの国民的詩人であるシェフチェンコについての評伝『タラース・シェフチェンコ』といったフランツォースの著作も、ウクライナ民族と運命をともにし、今日まで評価されることはなく、フランツォースは、もっぱら、東方ユダヤ人の世界を描いたゲットー作家とみなされている。今年度の研究においては、フランツォースの「ウクライナ」をとりあげ、ユダヤ系ゲットー作家という従来のフランツォース像を正すと同時に、ユダヤ人によるウクライナ文化のドイツ語圏への紹介という多文化間の交渉が、19世紀ガリツィアという空間を俟って初めて可能であったということを明らかにした。
著者
篠原 琢 戸谷 浩 吉岡 潤 割田 聖史 青島 陽子 古谷 大輔 小森 宏美 秋山 晋吾 中澤 達哉 小山 哲 池田 嘉郎 平田 武 梶 さやか
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本プロジェクトは、ポーランド=リトアニア連合王国(ロシア帝国西部諸県)、ハプスブルク帝国、沿バルト地域を中心に、近世から現代にいたるネーション、およびナショナリズムの動態を分析してきた。ここでは近世から20世紀にいたる各時代の政治社会におけるネーションの多次元的な機能と構成が分析された。近世期のネーションは、多様な政治的、文化的文脈で構築され、さまざまな価値と関連付けられ、ネーション理解は単一の政治社会に収斂しない。近代のネーションは政治社会における多様な交渉を全的に文脈化する傾向をもつ。本研究は個別研究と比較史の方法で境界地域におけるこの過程を明らかにした。
著者
万波 秀年
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

バイオメトリクスの一つとして歩容の応用が期待されている.本研究では実用化のために,年齢・性別における歩容の違いを明らかにするとともに,その違いを利用して正確な個人識別の実現を目的としている.本年度はまず,年齢・性別による歩容の解析及び手法の評価に用いるデータベースを構築した.構築したデータベースは,従来のものと比べ以下のような特徴を持つ.・幅広い層(男性198名,女性156名,5〜75歳)の被験者・多数(25)方向からの観測・多様な服装変化(32種類)・多様な速度変化(2〜10km/h)以上4つの点に関しては,これまでに発表されているデータベースのいずれも並ぶものはなく,そのため構築した歩容データベースは世界最大である.上記のデータベースを用いて年齢・性別による違いの解析を行った.性別,年齢それぞれに関して識別実験を行い,その結果に基づき,性別・年齢識別にした分類として,4クラスを求ゆた.それらのクラスに対して,観測方向による識別性能へめ影響を確認した.また,各観測方向においてクラスに特有な特徴がどの部位に現れるかを解析した.結果として,コンピュータビジョンの観点からの知見が得られた.
著者
吉田 学 吉田 薫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

受精の過程において精子の運動能・受精能が調節されるメカニズムについて解明することを目的とし、本課題においては、主に精子走化性運動調節機構、及び精漿による精子の受精能調節機構の2点に研究内容を絞って研究を推進した。そして、精子走化性においては精子誘引物質による精子鞭毛内Ca^(2+)濃度上昇が鞭毛運動の変化となり、走化性運動に顕著な方向転換となっていること、マウス精子の受精能獲得は精漿タンパク質SVS2が精子表面のガングリオシドGM1と結合することで抑制されること、ヒト精子の受精能抑制は精漿タンパク質SgとZn^(2+)により制御されていることなどが明らかとなった。