著者
蓬茨 霊運 柴崎 徳明
出版者
立教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究から次のようなことが明らかになった。1.X線新星、LMXB(低質量連星型X線星)それぞれのX線スペクトルには二成分が存在する。この内の一成分はどちらにも共通しており、降着円盤から期待されるスペクトルによく合う。この降着円盤成分はどちらのX線源においても強度の時間変動がきわめて少ないか、あってもゆるやかである。このことから中性子星のまわりにも、またブラックホールのまわりにも同じような性質の降着円盤が形成されているといえる。2.スペクトルのもう一方の成分は、X線新星の場合は、ベキ型のスペクトル、LMXBの場合は黒体輻射のスペクトルでよく表わされる。ベキ型の成分はブラックホールの近傍でホットプラズマによるcomptonizationあるいは非熱的なプロセスでつくられるのであろう。一方、黒体輻射成分は中性子星表面からの放射と考えられる。3.ベキ型成分、黒体輻射成分はどちらも激しい強度変動を示す。X線新星でもLMXBでも、スペクトルの二成分はそれぞれ独立に変動することをみつけた。もしこれらの二成分が正の相関をも動するならば、降着円盤を通過した物質がブラックホールや中性子星表面に到達することになる。したがって、二成分間に相関がないということから、中心天体への物資降着には降着円盤(幾何学的にうすく光学的にあつい円盤)を通過するチャンネルの他にもう一つ別のチャンネルがあると結論できる。もう一つのチャンネルに対し、私たちは降着降着円盤が二重構造、つまり光学的にあつく幾何学的にうすい円盤が光学的にうすい円盤ではさまれたサンドイッチ状の構造になっているのではないかと考えている。現在、観測との比較のため必要になる二重構造円盤のより詳細な性質に向けて研究を進めている。
著者
上原 秀幸
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

圃場で観測した土壌水分データの空間相関特性に基づき、センサノードをクラスタリングし、ノード間の協調制御で低消費電力を図るセンサネットワークプロトコルを開発した。具体的には、(1) 観測データの空間相関分布特性に基づくクラスタリング・アルゴリズム、(2) ノード間協調によるON-OFFスケジューリング制御、(3) 環境の変化に対応してクラスタを再構築するアルゴリズム、(4) 省電力化に加え転送遅延とスケーラビリティを改善する疑似同期MACプロトコルを開発した。
著者
大浦 宏邦 海野 道郎 金井 雅之 藤山 英樹 数土 直紀 七條 達弘 佐藤 嘉倫 鬼塚 尚子 辻 竜平 林 直保子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

秩序問題の中核には社会的ジレンマ問題が存在するが、社会的ジレンマの回避は一般に二人ジレンマの回避よりも困難である。本研究プロジェクトでは、Orbel & Dawes(1991)の選択的相互作用の考え方を拡張して、集団間の選択的な移動によって協力行動が利得のレベルで得になる可能性を検討した。まず、数理モデルとシュミレーションによる研究では、協力型のシェアが大きければ選択的移動が得になる可能性があることが明らかになった。次に所属集団が変更可能な社会的ジレンマ実験を行った結果、協力的な人は非協力者を逃れて移動する傾向があること、非協力的な人は協力者がいるうちは移動しないが、協力者がいなくなると移動することが明らかとなった。この結果は、特に協力的なプレーヤーが選択的な移動をする傾向を持つことを示している。実験室実験の結果を現実社会における集団変更行動と比較するために、職場における働き方と転職をテーマとした社会調査を実施した。その結果、協力傾向と転職行動、転職意向には相関関係が見られた。これは、実験結果の知見と整合的だが、因果関係が存在するかどうかについては確認できなかった。方法論については、基本的に進化ゲームやマルチエージェント分析は社会学的に有意義であると考えられる。ただし、今回主に検討したN人囚人のジレンマゲームは社会的ジレンマの定式化としては狭すぎるので、社会的ジレンマはN人チキンゲームなどを含めた広い意味の協力状況として定義した方がよいと考えられた。広義の協力状況一般における選択的移動の研究は今後の課題である。
著者
石井 宏幸 山本 将生 鈴木 聡 神山 斉己 臼井 支朗
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.2370-2378, 1994-12-25
被引用文献数
3

網膜水平細胞間を結合するギャップジャンクションは,視覚情報処理の基本である中心-周辺拮抗型受容野の形成に重要な役割を担っている.従来,こうした水平細胞間のギャップコンダクタンスが非線形特性をもつことや順応状態により動的に変化することが示唆されているが,そうした特性を生理実験によって直接測定することは著しく困難であった.本論文では,筆者らが先に提案したイオン電流モデルを用いた入力電流推定法に特定の信号伝達経路を制御する生理実験技術を適用し,水平細胞の膜電位応答からギャップコンダクタンスの動的変化を推定する手法を提案する.提案手法の有効性は,視細胞-水平細胞ネットワークモデルから求めた水平細胞モデル応答を擬似実験データとして用い,モデルのギャップコンダクタンス値が精度良く推定されることにより確認した.更に,コイ網膜L型水平細胞より記録した膜電位応答に提案手法を適用したところ,従来報告されている知見に近いギャップコンダクタンス値が推定された.
著者
金森 修 杉山 滋郎 杉山 滋郎 小林 傳司 金森 修
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

金森修は、コンディヤックの『動物論』を分析する過程で、人間と動物との関係を巡る認識的議論にその調査対象が拡大した。その過程で、金森はフランスの重要な科学史家ジョルジュ・カンギレムの仕事に注目するようになった。そして結果としては、コンディヤックの『動物論』自体の分析は、擬人主義論の中ででてくることはでてくるが、副次的なものになり、より射程の広い擬人主義論、そしてカンギレム自体のさまざまな業績を扱った四つの論文、計5篇の論文の形で、その成果をまとめることができた。まず「擬人主義論」では、心理学が擬人主義を放擲かくするに及んで、もともとの研究プログラムを喪失していく過程の分析、比較心理学や動物行動学に伏在する擬人主義の剔抉などを中心に扱った。次の「主体性の環境理論」では、一八世紀から一九世紀初頭にかけて、環境という概念がどのようにその意味あいを変えていくかを巡る史的な分析を行い、それが一九世紀から二○世紀にかけて、主体を環境によって規定された受動的なものとしてではなく、それなりに環境を構成する能動的なものとして把握するという思潮がどのようにでてきたのか、またその考え方の環境倫理学的な意味あいについて分析した。次の「生命と機械」論では、古来からの生物機械論と生気論とが、現代的なバイオメカニックスや人間工学においては、対立ではなく、融合を起こしていること、そのため、人間がどこまで機械として説明できるのか、という問い自身がもはや成立しえないことを論証した。次の「生命論的技術論」では、技術的制作一般を巡る主知主義的な把握を破壊し、技術制作と創造者との間の相即的で相互誘発的な関係を分析した。 次の「美的創造理論」では、アランの美学をカンギレムが分析している文章を精密に分析する過程で、創造行為一般における創発性、規範の存在の重要性などを分析した。杉山滋郎は、平成2年度から4年度に収集した文献資料をもとに、当初の研究目的にそって考察を進めてきた。その結果、「生命観」の概念規定を明確にすることに努めつつ、わが国における「生命観」の時代的変化ならびにその特質について、概念が把握されつつある。現在のところまだ具体的な論考には結晶していないが、必要な資料をさらに収集して、今後しばらく検討を続けたうえで、すみやかに成果を公表する予定である。
著者
中澤 達夫 蔵之内 真一
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、低コストで高効率の太陽電池実現が期待される、銅-インジウム-セレン(GIS)系薄膜太陽電池の各要素のうち、バッファ層用のCd(Zn)Sおよび吸収体材料であるCIS(S)薄膜を溶液法で堆積するための基礎を検討したものである。得られた新たな結果を以下にまとめて示す。・CBD法によりCdS薄膜の堆積では、出発原料としてよう化物,あるいは,硫酸塩を用いると、塩化物や酢酸塩を用いた場合に比べ、よりムラが少なく表面状態の良好な膜が得られた。・溶液法によるZnS膜の堆積は困難であった。CdZnS膜については、溶液中のCdとZnの混合比率の制御により、膜中のCd/Zn比を制御することができた。・電気めっき法によるCIS薄膜の堆積では、Cu-In-Seの三元素を混合した溶液を用いるone-step堆積法により、ほぼ良好なCIS薄膜が得られることがわかった。・CIS膜の禁制帯幅制御を行ってさらに太陽電池の変換効率を改善することを目指し、三元素の電着溶液にさらに硫黄(S)を加えた四元素を同時電着する方法を試みた。この場合、電着溶液を一定時間放置し、生じる沈澱をろ過し去った溶液を用いることでCuIn(S, Se)_2四元薄膜が堆積できることがわかった。このとき、ほぼ化学量論組成の膜を得るための電着条件(電着電位、溶液組成)を明らかにした。・電着した薄膜を真空中で熱処理することにより、CuInSe_2およびCuIn(S,Se)_2のX線回折ピークが観察され、カルコパイライト構造を持つ半導体薄膜の形勢が確認できた。・CIS薄膜上にアルミニウム薄膜を蒸着した構造で、整流性が確認できた。
著者
長野 仁 高岡 裕 真柳 誠 武田 時昌 小曽戸 洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中国を起源とする漢方だが、腹診と小児鍼は日本で発達した診断・治療法である。本研究の第一の目的は、日本における腹診の発達の歴史の解明である。加えて、もう一つの日本発の小児鍼法も解析対象である。本研究の成果は、腹診の起源と変遷と、小児鍼成立に至る過程、の二点を解明した事である。加えて、資料の電子化とオントロジー解析も実施し、更なる研究に資するようにした。
著者
大江 夏子 田原 誠 山下 裕樹 丸谷 優 蔵之内 利和
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.169-177, 2004-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
6 3

蒸切干し用に開発されるサツマイモ新品種の不正使用や海外流出に対抗する手段を確立するため,加工品である蒸切干し製品から,その原料となった品種を,DNAの多型を基に高精度に判定する技術を開発することとした.転移因子であるレトロトランスポゾンは,植物のゲノムに多数の複製配列が散在している.サツマイモのレトロトランスポゾンRtsp-1のゲノム挿入部位を,葉から抽出したDNAを用い,蒸切干し用新品種候補を含む12品種についてS-SAP(Sequence-Specific Amplification Polymorphism)法により分析した結果,多数の複製配列の挿入と挿入部位の品種間の多型が検出された。品種間で違いが見られたRtsp-1挿入部位の塩基配列を調べ,挿入を受けた宿主側の配列とRtsp-1の末端反復配列間のPCRによって,それぞれの品種について様々な挿入部位における挿入の有無を調べた.その結果,最少5ヵ所の挿入部位のPCRにより,上記12品種の区別が可能であった.蒸切干しイモのDNAは,イオン交換樹脂カラムを用いて抽出することができたが,加工による断片化が進んでいた.断片化した蒸切干しイモのDNAを鋳型にしたPCRにおいても,明瞭な結果が得られ,原料品種の識別が可能であった.染色体の特定部位におけるレトロトランスポゾン挿入の品種間多型をPCRにより判定し品種識別を行う方法は,DNAが断片化した加工品の分析に適する,再現性が高く操作が容易,マーカー数の確保が容易などの利点があり,高次倍数性の作物や加工品などにおける優れた品種識別マーカーとなる.
著者
神藤 貴昭 酒井 博之 山田 剛史 村上 正行 杉原 真晃
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.113-116, 2006

本研究では,京都大学教育学部の授業と,鳴門教育大学大学院学校教育研究科の現職小・中・高教員対象の授業を連携させ,教育の理論と実践について議論することを目的とした京鳴バーチャル教育大学(KNV)実践の概要を示し,また,相手大学に現職教員あるいは京大学生という自己とは異なった顔を持つ<他者>がいることによる「フレーム」の変容に関する考察を,インタビュー及び電子掲示板の発言をもとにおこなった.その結果,一部「フレーム」の変容が困難であった受講生もいたが,教育に関する知識に関する「フレーム」変容だけではなく,教育に関する考え方や議論の仕方等,形式に関する一定の「フレーム」の変容が認められた.
著者
ウィーガンド クレイグ 芝山 道郎 山形 与志樹 秋山 侃
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.673-683, 1989-12-05
被引用文献数
6

作物の生育と収量に関する新しい推定手法として野外での分光反射測定がある。この測定により得られた作物の波長別反射係数間の相互演算結果 (VI) が, 葉面積指数, 光合成有効放射 (PAR) および同吸収率 (Fp), PAR日吸収量 (Sp), 地上部乾物量 (DM) および収量とどのように関係づけられるかを数式で提示し, これらを茨城県つくば市での実測データに適用してその有効性を検証した。植物材料としては, 15aの水田を13区に分割し, 2移植期 (5月21日, 6月11日), 6窒素施肥水準 (0, 2, 4, 6, 8, 12 g/m^2) を設けて3品種のイネ (日本晴, コシヒカリ, シナノモチ) を栽培したものを供し, 10日ないし2週間隔で分光反射測定を行った。移植期から登熟期において, 収量ならびに積算Sp (ΣSp) はともに積算PVI (ΣPVI) の1次式で推定されることがわかった。PVIは赤および近赤外反射係数から算出されるVIである。またΣSpからDMへの転換効率 (e_c) は移植期から出穂期20日までの期間で2.9 g DM/MJ, 移植期から収獲期までは2.5 g DM/MJだった。一方収量と出穂期のDM (DM_h) とはr_2=0.92の高い相関関係を示した。DM_hと1100, 1650 nm反射係数間の差との相関関係は, PVIとのそれよりも密接であった。(r^2=0.82および0.6 g) 。
著者
片山 修
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.1319-1319, 1982-09-25

東京女子医科大学学会246回例会 昭和57年5月21日 東京女子医科大学本部講堂
著者
中垣 啓
出版者
日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.p41-50, 1975-03
著者
上野 隆
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-48, 1954-01-01

本論文の要旨は昭和27年4月1日第4回日本産科婦人科學會總會に於て發表した.更に其の1部は昭和25年5月21日春季名古屋醫學會第59回總會,昭和25年10月22日秋季名古屋醫學會第60回總會,昭和26年2月25日第7回東海産科婦人科學會,昭和26年11月3日第9回東海近畿連合産科婦人科學會に於て夫々分割發表した.