著者
古川 謙介 後藤 正利
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

偏性嫌気性細菌Desulfitobacterium sp.Y51株はテトラクロロエチレン(PCE)を最終電子受容体として強力に脱塩素化してトリクロロエチレン(TCE)を経てcis-ジクロロエチレン(cis-DCE)を生成する。この反応はエネルギー生成系が共役しておりハロゲン呼吸と称される。本課題では以下の研究を行った。1.Y51株のPCEデハロゲナーゼ酵素を精製、抗体を取得した。ついで本酵素がペリプラズムに局在することを明らかにした。2.PCEデハロゲナーゼ酵素はPCE及びTCEの添加により転写レベルで高度に誘導された。一方、cis-DCE添加により転写が阻害されるばかりでなく酵素反応も阻害された。3.PCEデハロゲナーゼ遺伝子(pceA/pceB)近傍の遺伝子をクローン化した。その中に本遺伝子クラスターの転写制御遺伝子と考えられるpceRが存在した。pceR遺伝子はPCE/TCEと結合してpceAB遺伝子の転写を促進すると考えられる。4.cis-DCEによる転写阻害に関しては、市販のcis-DCE中に不純物質として存在する著量のクロロフォルムが関与していた。1μMの極低濃度のクロロフォルムを添加して培養するとpceAB遺伝子を含む約6.6-kbDNAが高頻度(80%以上)に欠失した。また、クロロフォルムはY51株野生株の生育を著しく阻害するが、欠失株の生育を阻害しなかった。5.上記の研究と並行してPCEを完全にエチレンまで脱塩素化する微生物コンソーシアを取得した。このコンソーシア中にはDehalococcoides属細菌の存在が認められた。
著者
朝田 隆二
出版者
金沢大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

1.粘土-微生物相互作用粘土鉱物を含む培地を作成して、微生物の生育について実験を行った。培地の栄養塩を制限したとき、粘土を入れた方は入れなかった場合に比べて、分裂開始時刻が早まった。また、無酸素状態で、微生物を培養した場合、粘土を入れた方は、入れなかったものに比べてより長期間生き続けることが明らかとなった(R.ASADA, et al.,2004)。このような結果は、粘土鉱物表面が細胞の分裂を促進する効果を持つことや粘土鉱物が無酸素状態において酸素の代わりに最終電子受容体になることが示唆される。このことは、極限環境である熱水中の粘土粒子と微生物、また、地下生物圏における粘土鉱物と微生物、の相互作用を考える上で有益な情報となる。2.粘土-重油-微生物相互作用重油で汚染された環境のバイオレメディエーションシステムの開発のために、実際に汚染された現場からの有用細菌の単離、および実験室での粘土鉱物を使った実験を行った。単離された細菌は1997年の日本海重油流失事故で被害にあった日本海側沿いの3つの海岸から得られた。それらは、長鎖の飽和炭化水素を効率よく分解し、重油の中でもよく育つことがわかった(Chaerun S.K., Tazaki K., Asada R., and Kogure K. 2004)。また、これらの細菌を重油だけでなく、海岸に普遍的に存在する粘土鉱物を混ぜて培養実験を行ったところ、混ぜない場合に比べてより細胞分裂が促進されることが明らかとなった(Chaerun S.K., Tazaki K., Asada R., and Kogure K. 2005)。さらに、培地の中の粘土-重油-微生物の複合体の透過型電子顕微鏡観察により、粘土表面および端部への重油や細菌の吸着過程が明らかとなった。これは、粘土-重油-微生物相互作用によるバイオレメディエーションのプロセスを示している。
著者
有馬 暉勝 前田 栄樹
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

C型肝炎ウィルス(HCV)の遺伝子構造が明らかにされ、診断面では各種第二世代のHCV抗体の開発により十分な感度で血清診断が可能となった。我々も独自にHCVの遺伝子のクローニングを行い、コア抗原と非構造蛋白(NS3領域)との複合抗原を用いた高感度の新しいHCV抗体検出系を開発した。1.HCV遺伝子の免疫スクリーニングによるクローニングC型肝炎患者血清よりAGPC法によりRNAを抽出し、ランダムプライマーを用いてλgtII-cDNAライブラリーを作成し、患者(急性C型肝炎患者回復期および慢性C型肝炎)血清を抗体として用いクローニングを行った。患者プール血清よりスタートしたひとつのcDNAライブラリーから幸運にも構造蛋白領域をコードするクローン2個を含むHCVの各領域の特異的cDNAクローンを得た。2.新しい高感度HCV抗体検出系の開発コア領域をコードするS29抗原とNS3領域をコードするS4抗原の混合抗原を用いたELISAによるHCV抗体測定系はきわめて高感度であり、現在開発されている第二世代HCV抗体検出系(アボットII)と同等以上の感度、特異性を有し、臨床応用が期待される。
著者
小玉 香津子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.1, 2001-03

私共の学部は看護系大学のなかではまったくの後発校であることもあって,淡々と,気負わずに発足したのでしたが,"紀要"をめぐっては,何とも意気込みました。身のほどにあわせて最善をつくせばよいとは知りつつも,大学学部なのだからと,収載するにふさわしい論文について討議を重ね,名称にも新味を探るなどしたあげく,初年度の発行は見送ったのです。しかし,ようやくその時がきて,ここに名古屋市立大学看護学部紀要第1巻が誕生しました。学部内輪の単純な喜びをまずは記さずにはいられません。と同時に,ご高覧くださることを願ってこの紀要をお届けいたします関連の外部の皆様には,謹んでご批評を乞わせていただきます。研究誌としての"紀要"の価値は高くないと決めてかかる向きがあり,私共の論議にもそれが見え隠れすることがあったのですが,さて,どうでしょうか。私は,看護学文献を"さわって"きた若干の経験から,ここ2,30年の日本の看護学研究の進歩は,短期大学等の紀要をぬきにはありえなかったのではないかと思っています。ちょうどその間,私は看護学のキーワードの1つである生活行動援助を主題とした文献集を5年毎に編み,150を越える看護関係誌から文献を取り出し,いくつかの観点で分類をする作業をしたのですが,当時のいちばんの印象は,たとえどんなに小さくても確かな発見のある研究,あるいは引用頻度の高い論文はかなりの頻度で"紀要"にあるということでした。それらは概して,形にとらわれずに自由に書かれており,疑問のたて方がまっとうといいますか地に足が着いていて,もっぱらその解決のために研究という方法を採った必然性が明か,したがって結果の有用性がよく見える,そんな記憶があります。研究の進め方はいったいに素朴ではありました。ということができますのは,同じ時期に私は大規模学会の学会誌編集も手がけていまして,こちらには,申し分なく形の整った,どうかすると,手の込んだ仮説をもとにみごとに作り上げたといった感のある,しかしあまりせっぱつまったふうの勢いのない論文が載る傾向があり,暗に"紀要"と比べていたからです。この種の学会誌の論文が看護学のそればかりであるのに対し,"紀要"には看護学周辺の諸学領域の研究も発表されており,看護の入った諸領域共同研究もあって,全体として看護学の研究に奥行をもたせている,そうした違いも感じました。"紀要"には,看護学の研究ではないという理由で学会誌が退けた,とはいえ看護学の研究でもありそうな研究が載っていたのです。いま,研究のスタイルも論文のスタイルも整った看護学の世界は,学会誌への発表に非常な重きをおき,確かに"紀要"を軽くみるようになっています。しかし,"紀要"のあの"長所"に思い当たると,"紀要"の復権を考える行き方のあることに気づきます。学内誌である"紀要"には,私共がへんに構えることなく投稿できるよさがあり,そのことが,形よりも実質を問いかつ必要とする看護学のような専門にもたらす恵みは大きいのです。私共の紀要には,研究による発見ばかりでなく,トライアル・アンド・エラーののちの発見も,偶然の発見も発表することができます。同僚間査読のシステムはそれを支えるように働きます。私共の紀要には,看護学の論文ではない論文も載ります。看護学部のメンバーの仕事はすなわち看護学の収穫と考えるのもよし,看護を専門としない者がしたからこれは看護学の研究ではなく,看護の者がしたからそれは看護学の研究だといったナンセンスを皆で笑うのもよし,学部に活気が高まるでしょう。私共は"紀要"に関してだけはいささか気負って論議した結果,一見以前からある伝統的な,しかし出自は間違いなく私共の学部にある紀要をもつことになりました。この紀要に,名古屋市立大学看護学部の学風を立てよう,と私は呼ばわります。文字通り,風が立って欲しいのです。
著者
坂田 清美 吉村 典子 森岡 聖次
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

近年わが国における児童の肥満傾向の者や高脂血症が増加を続けているため、児童を対象とした高脂血症、肥満予防を主な目的とした教材を開発した。教材の開発にあたっては単に知識を与えるだけでなく、自ら考え判断できるスキルを身に付けるよう工夫した。教師の使いやすさや、保護者に対しても教育効果が上がるように配慮した。和歌山県中部の一地域において、小学4年生を対象に教材を用いて教育を実施した結果、「コレステロール」の言葉の認知度は、1年間で61%から79%まで上昇した。「食物繊維」という言葉の認知度は59%から78%まで上昇した。油、塩、砂糖に関する正解率では、15問中13問以上正解した者の割合は、38%から49%まで上昇した。お菓子の材料が記載されていることを知っている者は73%から85%まで上昇した。肉・魚を同じくらい食べると答えた者は51%から54%まで上昇した。野菜を毎日食べる者は、37%から42%と増加した。朝ご飯を毎日食べる者は、78%から81%と増加した。運動をほとんど毎日する者は、41%から43%へと微増した。健康教育教材を使用することにより、健康に関する知識の向上がもたらされた。運動については、今後さらにプログラムを充実させる必要がある。今後は、血清脂質等に与える影響を評価し、さらに健康教育プログラムを他の学年にも実施し、こころと体、健康と病気についての段階的で、包括的な学習プログラムへ発展させる予定である。
著者
鈴木 雅人
巻号頁・発行日
2008-02-04

修士論文
著者
小林 重雄 肥後 祥治 加藤 哲文
出版者
筑波大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

自閉症児は他者との間で社会的相互作用をもつことを困難としている。これは,他者から発せられる刺激が,強化刺激として機能していないことが第一の原因であると考えられる。つまり,自閉症児に社会的行動をとらせるためには,単純に必要とさせる社会的技能を形成するだけでは不十分で,他者とのやりとりが強化的(楽しい)になる必要がある。本研究では,自閉症児2名を対象として,大人との間の社会的相互作用を社会的強化刺激として機能させるために必要な条件の分析を行った。訓練は,要求文脈利用型指導手続きを用いた。具体的には,子どもの要求が生起しやすいような環境設定を準備し,要求が生起した場合にはすぐに訓練者がその要求を充足する手続きを繰り返し実施した。例えば,棚の上に自閉症児の好きなお菓子を並べておいたり,ひとりでは遊ぶことが困難なおもちゃを床の上に並べて置くなどの操作である。その結果,対象となった自閉症児は,単に要求的な反応を生起させるだけでなく,大人との間で社会的相互作用を求める反応が生起するようになった。つまり,大人に対して特定の物品や遊びを要求するのではなく,大人の注目そのものを求めるような反応が生起するようになった。これは,先行研究で示されているように,1次性強化刺激である要求対象物と,大人の発する刺激(中性刺激)とが対提示されることにより,大人の刺激が条件性強化刺激としての機能を獲得したためであると考えられた。
著者
酒井 一彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.放卵放精型のサンゴについては、慶良間列島が沖縄本島の幼生供給源となっていたことを明らかにした。この結果、沖縄本島では慶良間列島に近い地域で、放卵放精型サンゴの幼生加入量が多かった。しかし幼生保育型のサンゴについては、慶良間列島から沖縄本島への幼生供給がほとんどなかった。2.沖縄本島では慶良間列島から分散してきたと考えられる放卵放精型のサンゴ、特にミドリイシ属サンゴ、が多数加入したが、ほとんどの場所で生存できず、これらの場所ではサンゴ群集が回復しなかった。加入したサンゴの死亡要因として最も大きかったのは、オニヒトデによる捕食であった。この結果、沖縄島ではサンゴ群集の回復は極めて局所的で、2006年で調査地点(n=18)の10%程度でサンゴの被度が30%を超えるたのみであった。3.過去のデークも含めて解折を行い、沖縄本島北部の瀬底島周辺ではこの25年間で、サンゴ群集の回復力が著しく低下していることを明らかとした。4.慶良間列島では2002年よりオニヒトデが大発生し、親サンゴが減少した。この結果、沖縄本島へのサンゴ幼生供給も大幅に減少したことを明らかとした。5.繁殖様式が放卵放精型で幼生の浮遊期間が長いミドリイシ科について、親サンゴから幼生が分散する距離は、200km程度に限られていることが示唆された。6.ミドリイシ属サンゴが大型海藻と接触すると、成長率が低下しかつ配偶子生産量も減少することが明らかとなった。これはサンゴが大型海藻との接触で受けた傷の修復に、資源を使うために起こると考えられた。
著者
城間 祥之
出版者
札幌市立高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度は,まず,花形図形を基本パターンとするパターン生成プログラムを開発し,その花形図形に各種変換を施しイメージを変えるプログラムを開発した.ここでは,拡大・縮小・回転変換,せん断変換,三角変換などのプログラムを開発した.また,変換プログラムを複雑系手法に基づく抽象模様生成プログラムに適用することを目的として,まず,ベクトル画像として生成される抽象模様をビットマップ画像に変換するアルゴリズムを開発し,セル・オートマトン画像生成プログラムに組み込んだ.ここでは,セル・オートマトンの(1)1次元2状態3近傍の256ルール,(2)1次元2状態5近傍総和型の64ルール,(3)1次元2状態5近傍の43億ルール,(4)1次元2状態線形セルオートマトン,(5)2次元9状態5近傍線形セルオートマトンなどの関数プログラムに画像形式変換アルゴリズムを組み込んだ.平成12年度は,まず,(1)網目状カオスのような面積保存型,および(2)面積変化型円環状カオス,(3)翼状カオス,(4)チョーサとゴルビツキーの対称型カオスなどの関数形式描画プログラムを開発し,これらに上記の各種変換プログラムを組み込んだ.同様に,フラクタルについてもシェルピンスキー曲線,コッホ曲線などの描画プログラムを開発し,上記の各種変換プログラムを組み込んだ.次に,開発したシステムを基に生成した抽象模様パターンを各種デザイン業務に適用する応用実験を行った.ここでは,ボールペンの絵柄,ペットボトルのラベル,包装紙,ティッシュペーパー箱の絵柄,風呂場の大理石風壁模様,乗用車や飛行機のイスカバーのデザイン,化粧品ケース,ダイニングセット,CDジャケットの絵柄,金属製他コースター,ブックマークなどへ適用し,その有効性を確認した.今後は,開発したシステムを芸術・デザイン系高専での授業の中で活用していきたいと考えている.
著者
加藤 康子
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近代以前の日本の子どもの読み物の中で、江戸時代中期から明治剛期にかけて出版された絵草紙には、「絵」という視覚的な要素と文章があいまって、読み物の内容を印象深く読者に伝える効果がある。近代以降の子どもの読み物でも、挿絵や絵本は同様である。江戸時代から現代までの子どもの読み物、特に絵草紙や絵本には、英勇譚が少なくない。ただ、近代以前には武士が登場してくるが、近代以降では武士の存在は次第に薄れ、価値観が変容していく。本研究では、江戸時代から現代の子どもの読み物の系譜を辿り、作品分析からその価値観について考察した。これよって、日本の子どもの読み物の中で、どのようなことが読者を夢中にさせたのか、また作り手と読み手のそれぞれが何を求めていたのか、を考えていくきっかけになり、近代以前日本児童文学と近現代日本児童文学の関係を密接にする手だてになり、未来を担う子どもたちの読み物や絵本の体験をどのようにするかという課題への示唆も得られるのではないかと思われる。研究の結果、近代以前日本児童文学では、絵草紙として、上方絵本、草双紙、豆本以外にも武者絵本などがあり、近代以後もそれらを踏襲したような絵本があるが、無学や今回の調査を踏まえれば、日本の英勇譚によく登場する人物は、源義経、源頼光、豊臣秀吉である。この中で注目されるのは、源頼光とその家来たちの英勇譚である。この物語は、個人の人生を辿った史実に近い逸話が物語化されているのではなく、史実とは異なる空想の物語がほぼ同じ内容で、類型化された絵と共に長く伝えられてきていることに特徴がある。また、頼光を中心にしているものの個人の活躍よりも四天王と保昌を加えた六人の集団が活躍するところにも特徴がある。これらの頼光を中心とした一連の物語は、日本の民族が長年にわたって培ってきた、民族の物語の一つといえる。また、史実とは異なる創作物語の英勇譚である江戸後期の『南総里見八犬伝』も集団の架空物語であり、大きな敵に向かって何度も挑戦していく構造に相通ずるところがある。この構図は読者を魅了し、現代の人々が魅了されている「ファンタジー」にも通じるところがあるのではないかと考えている。したがって、日本民族の物語は忘れられつつあるが、それを享受する素地はあり、時代に合わせた復権を試みる意義があると考える。
著者
荻山 正浩
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.泉南地方の事例明治期における泉南地方の若年女性の就業態度をめぐって、綿布生産量など、各種出来高を通して分析すると、彼女たちは家族に対して強い愛着を有していたため、生家では勤勉に働いたが、家を離れて働く場合には逆に充分な働きをしていなかったことが判明した。こうした家族に対する愛着は、彼女たちを含めて、この地域の人々の就業行動にも相当な影響を与えていた。この点を実証するため、明治後期における泉南から他の地域への労働移動のあり方に注目し、寄留統計にもとづき、この地域の人々の多くは家族をともなって移動していたことを解明し、それを英文の論文にまとめ所属機関の紀要に発表した。また泉南地方の貝塚に所在した商家の廣海家には、同家の雇用していた家事使用人の記録を収めた史料が残されており、その家事使用人の雇用動向は、若年女性の就業行動を解明する貴重な手掛かりを与えてくれる。そこで、明治後期から大正期に至る同家の家事使用人の雇用動向を分析した論文を所属機関の英文のワーキングペーパーとしてまとめた。これについては、平成18年度に英国の学術誌に投稿する予定である。2.両毛地方の事例明治40年代に群馬県桐生に所在した桑原家の絹織物工場の史料を分析し、女工の絹布生産量の多寡から女工の就業態度を分析することを計画していた。だが、この地方では多種多様な絹布が生産されていた関係から、当初の予想と異なり、絹布生産量から女工たちの就業態度を分析することは困難であると判断し、同地方の研究を中断することにした。3.秋田県北部の事例平成17年度から、両毛地方に代わり秋田県北部の事例に対象を移し、若年女性の就業態度を分析する作業を開始した。具体的には、明治末期から大正期に至る秋田県北部の大館に居住した資産家である中田家の史料を使用し、同家が家事使用人として雇っていた若年女性の雇用動向を分析する作業を進めている。

1 0 0 0 OA かさしのひめ

出版者

書名は、表紙中央の書題箋による。菊を愛する姫と菊の精との異類婚姻譚。異類の中でも、草木の精霊は謡曲に多く現れるが、菊の精霊が現れるのは珍しいという。当館本は、横本形態の奈良絵本。表紙に金泥で野草を描き、金銀砂子をまいた美麗なもの。全15丁で、挿絵は6図。第4図のみ人物の衣服等に彩色がみられない。幕末から明治初期の国学者榊原芳野(1832−81)の旧蔵書である。室町時代物語大成3ほかに翻刻されている。
著者
松田 一朗
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

旧世代の符号化方式で記録された映像コンテンツを、画質を保ったまま効率的に再符号化する技術の開発を行った。主に静止画像および動画像符号化の国際標準であるJPEGおよびMPEG-1方式を対象として再符号化アルゴリズムの実装と検証を行い、既存の映像データの符号量を10~30%削減することに成功した。この結果は、過去に記録された膨大な量の映像資産を、最新の符号化方式に匹敵する効率で蓄積・保存する手法を確立したことを意味する。
著者
土屋 俊 竹内 比呂也 佐藤 義則 逸村 裕 栗山 正光 池田 大輔 芳鐘 冬樹 小山 憲司 濱田 幸夫 三根 慎二 松村 多美子 尾城 孝一 加藤 信哉 酒井 由紀子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、今後の学術情報流通環境における大学図書館の役割を追求し、大学の教育研究の革新という観点から検討を行うとともに、それを実現するための要件を明らかにし、「2020年の大学図書館像」を描き出すことを目的とした。そのために大学図書館における情報サービス(NACSIS-ILL)と情報資源管理(NACSIS-CAT)の定量的、定性的分析を行い、時系列的変化を明らかにするとともにその要因について考察した。これらを踏まえ、さらにシンポジウムなどを通じて実務家からのフィードバックを得て、「2020年の大学図書館像」について考察した。
著者
藤尾 三紀夫
出版者
沼津工業高等専門学校
雑誌
沼津工業高等専門学校研究報告 (ISSN:02862794)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.113-118, 2005-01-31

The purpose of this research is to apply Marching Cube method to the Boundary-Map geometric model which is one of decomposition model, and to visualize it at high speed. The Boundary-Map geometric model is a geometric model based on decomposition data developed as a geometric model suitable for computer aided manufacturing system. This model has been applied to tool path generation, NC machining simulation and so on. It is confirmed that the Boundary-Map model is able to use as a geometric model for CAM. However, this model is difficult to create polygons for visualization because it is a decomposition model. On the other hand, Marching Cube method is the most general technique that visualizes medical images like as MRI and CT data. In this report, the algorithm which is to visualize the Boundary-Map geometric model by using Marching Cube method is developed, and it is recognized that this method is able to realize visualization at high speed.
著者
鷲田 祐一 三石 祥子 堀井 秀之
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-15, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
10
被引用文献数
7 6

本研究では, 8つの代表的な科学技術研究開発領域と, 「スキャニング」手法を用いて作成された近未来における社会変化シナリオとの「交差点」で発生する多様な社会技術問題を議論することを目的とした. 各専門領域における有識者が「スキャニング」データベースを用いて, 生活者視点での社会変化シナリオを構築することで, 他の技術普及予測があまり取り扱わない外部性要素をうまく取り込むことができた.
著者
永田 真 田部 一秋 山本 英明 丸尾 仁 木内 英則 坂本 芳雄 山本 恵一郎 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.628-634, 1993
被引用文献数
6

ダニ抗原感受性の成人気管支喘息におけるrush immunotherapy (RI) の至適施行指針を確立する目的で, 筆者らはRIを施行した38症例についての臨床的解析を行った。全例で10日以内にハウスダスト (HD) 10倍液の0.10ml以上の維持量に到達可能であった。全身的副作用は10倍液の0.15ml以上の注射時に多くみられ, また注射部位の発赤・腫脹径が8cm以上を示した症例で高頻度であった。喘息発作の誘発に先行して気道系の前駆症状が高率にみられた。RIの臨床的な有効率は, 1秒率<70%の症例では明らかに低値であり, また。維持量が10倍液の0.10mlの群と0.20m以上の群との間では差はみられなかった。以上の成績からHDを用いるRIにおいては, 1) 非発作時の1秒率が70%以上の症例を選択すること, 2) 10倍液の0.10mlを原則的な到達目標量とすること, 3) 局所皮膚反応が8cm以上となるか, 気道の違和感などの前駆症状がみられた場合は抗原量の増量には慎重を期すること, などがその安全性と有効性を向上させる観点から推奨されると考えられた。