著者
柚崎 通介 松田 信爾 飯島 崇利
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

補体Clqの球状ドメイン(gClq)を磯能ドメインとして持つClq/TNFスーパーファミリーが、シグナル分子や細胞外マトリックス分子として細胞外環境において非常に多彩な生理機能に関与することが近年注目を集めている。一方、Clq/TNFスーパーファミリーの中には脳内に主に発現するCblnファミリーとClq1ファミリーが存在するが、これらの分子の生理機能についてはほとんど分かっていない。私たちはこれまでにCblnファミリーのうちCbln1分子が、小脳顆粒細胞-プルキンエ細胞シナプスにおいて、シナプスの接着性と可塑性を制御することを発見した。Cbln1は海馬歯状回に線維を送る嗅内皮質にも発現し、他のメンバー分子Cbln2やCbln4も海馬や脳内の各部位に発現していることから、他の脳部位においてもCblnファミリーがシナプス形態調節分子として機能している可能性がある(Eur J Neurosci,in press)。今年度はClq1ファミリー分子群(Clql1-Clql4)の解析を進めた。Clql1は小脳登上線維の起始核である下オリーブ核に特異的に発現し、Clql2とClql3分子は海馬歯状回の顆粒細胞に発達期および成熟後も共発現する。これらの分子は何れもCblnファミリーと同様に同種・異種分子間にて多量体を形成して分泌されることを見いだした(Eur J Neurosci,2010)。これらのことからClqlファミリーもCblnファミリーと同様に、発達時や成熟後の脳においてシナプス機能に関与している可能性が示唆された。
著者
蜂須賀 元文 上野 勝代 佐々木 伸子
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 (ISSN:13433954)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.17-25, 2001-12-25

Homes for single mothers should play the role of a "residence" until they are on their own. However, little attention has been paid to residential environments of the homes and not enough researches on the homes have been done from the viewpoint of their structures. This study aims to elucidate the realities of the residential environments of the homes and describe how the residents are actually supported. Questionnaires were sent out nationwide to 299 homes for single mothers to gather information. Ground plans of the homes were also collected. In addition, we visited homes that were considered to be advanced and interviewed the staff and the residents there. The results of our research are summarized as follows : (a) Sixty percent of the homes for single mothers don't function fully as a residence. (b) Nearly half the homes don't necessarily provide the residents with adequate support because the staff at these homes are off duty at night and on holidays. (c) The support of most homes doesn't meet the needs of the households of mother and child. That is the reason why the rate of living units used by families of mother and child at each home is low.
著者
下村 美刈 日下部 美衣
出版者
愛知教育大学教育実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
no.11, pp.279-286, 2008-02

母子生活支援施設での母子自立支援では,主に母親の経済的自立に重点が置かれ,家庭内の問題も母親への働きかけが中心となっている。しかし,母子生活支援施設に入所している児童の中には,学習面,生活面,対人関係面など様々な面で困難を抱えている児童も多い。特に,学習面での困難は,児童の低い自己評価をもたらし将来の展望において希望を喪失することも間々あり,児童への直接的支援も必要である。そこで本研究では,学習ボランティアとして筆者らが母子生活支援施設児童と関わる中で,児童への支援の一つとして学習支援を行った。その中で,学習支援では単なる学習の教授のみではなく,児童一人一人との関係を築くことがより重要であることがわかった。また,その関係形成においては,施設児童に特有な対人関係における困難さが浮き上がってきた。
著者
松木 俊二 菅原 英世 坂本 真佐哉 田中 雄一郎 楢原 久司 宮川 勇生 中野 重行
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.62-68, 1999

不妊症経過中に発症したうつ病2症例の睡眠障害に対して,腕時計型活動性モニタリング(ACTIWATCH^<[○!R]>)と睡眠チェックリスト,睡眠日記を併用して評価を行った.症例1は27歳主婦.2度の卵管妊娠(両側卵管摘出)の既往あり.2度目の退院後にパニック障害とうつ病を発症した.ACTIWATCH^<[○!R]>は睡眠薬離脱期に2週間装着した.症例2は35歳主婦.両側卵管閉塞による続発性不妊症(体外受精-胚移植による1児あり).ACTIWATCH^<[○!R]>は睡眠薬導入期に4週間装着した.睡眠-覚醒の客観的評価(ACTIWATCH^<[○!R]>)と主観的評価(チェックリスト,日記)は必ずしも符合しなかった.即ち,患者自身が眠っていると感じた時間帯にACTIWATCH^<[○!R]>で評価した身体活動量は増加し,患者自身が眠れないと感じた時間帯にその活動量は低下していた.睡眠障害患者の睡眠の評価には自覚症状のみでなくACTIWATCH^<[○!R]>や睡眠チェックリスト,睡眠日記を用いた客観的指標の有用な場合があることが示唆された.

1 0 0 0 Oral radiology

出版者
Japanese Society of Dental Radiology
巻号頁・発行日
1985
著者
中川 光弘 高橋 浩晃 松島 健 宮町 宏樹 長谷川 健 青山 裕 石塚 吉浩 宮城 洋介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

カムチャッカのクリチェフスコイ火山において地球物理学的および岩石学的研究を実施した。研究期間中に4点の傾斜計を設置し、既存の地震計を合わせた観測網を構築・維持させることができた。そして2010年の噴火活動中に10~20分の周期でのサイクリックな傾斜変動を観測し、ストロンボリ式噴火モデルを構築した。特に過去3000年間の噴火堆積物の物質科学的解析を行った結果、3000年間で2タイプの初生玄武岩質マグマが存在し、ひとつのタイプから別のタイプへと次第に入れ替わっていることが明らかになった。また最近80年間の噴火では火山直下のマグマ供給系が噴火活動期毎に更新されていることも明らかになった。
著者
河合 知子 久保田 のぞみ 佐藤 信
出版者
市立名寄短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今年度は、米飯給食における地元産米利用とその実態について、北海道の稲作地帯(空知管内)と畑作酪農地帯(十勝管内)の給食だよりを基に比較検討した。米飯給食の実施回数については、空知地域が週当たり平均米飯実施回数3.5回に対して、十勝地域のそれは2.6回であり、稲作地帯の学校給食の方が米飯を取り入れている回数は多い。また、使用している米については、十勝地域については何ら紹介がないのに対して、空知地域は、地元産米使用と紹介している学校給食が17センター中8センターある。米の生産地である空知地域は学校給食に地元産の米を積極的に取り入れている。米飯給食の導入が他の献立内容にどのような影響を与えているのか、使用野菜数との関係、白飯と味付けご飯との割合、他の献立内容との関わりについて分析した。1食当たり使用野菜数は、空知地域の平均が37.8種類、十勝地域のそれは40.3種類であった。米飯給食の週当たり実施回数が少なくても、使用野菜数の多い学校給食もあれば、またその逆のケースもあり、米飯給食の実施回数と使用野菜数にはっきりとした相関は見られなかった。さらに、米飯給食のうちどの程度白飯が出されているか(以下、白飯率という)について分析すると、白飯率が下は30%台から、多い学校給食においては90%を超えたところもあり、その幅は大きい。個別に、丼物、カレーライス、混ぜご飯などの味付けご飯の時と白飯の時の献立内容を比較すると、味付けご飯の場合は総じて、漬け物と汁物だけの献立であることが多く、白飯の献立内容と比べて満足度に欠ける。献立の多様性は必要ではあるが、おかず類の充実には白飯率を上げることも一案と考えられる。
著者
山下 昭 池添 博彦
出版者
帯広大谷短期大学
雑誌
帯広大谷短期大学紀要 (ISSN:02867354)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.A1-A10, 1974-03-25

1.年令および性の違いによる対象を区分し,その各々の対象群における,食品の嗜好尺度値を求めた。2.肉および乳製品類については,男性の嗜好が高く,果実類,芋類では,女性の嗜好が高い,ラーメソ,カレーライス,サンドイッチは若い人で,また赤飯,ミソ汁,餅は年令の上の人でそれぞれ嗜好が高い。3.好まれる食品は果実類の嗜好度が大きく,中でもミカソが最も大きい。女性ではシイタケ,サラダ,エビ,男性ではサシミ,バターの度合が大きい。食品の好みは,年令の若い人および女性でその度合が大きい。4.嗜好度の低い食品としては,女性で脂肉,ウイスキー,馬肉,男性でキャビア,ユバ,ラード等があり,食品を嫌う度合は,年令の若い者のグループおよび男性で若干大きい。5.嗜好の面から食品を捉えるとミカン,イチゴ,モモ等の果実類は女性に特に好まれる食品,であり,男性ではスジコ,サシミ,ビール,ミソ汁,すき焼が特に好まれる食品である。若い人および女性では,年令の上の人および男性に較べて,好および嫌嗜好係数がかなり高く嗜好の巾が大きい。
著者
吉田 久美 亀田 清 近藤 忠雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

目的赤小豆(Vigna angularis)は日本では文化的にも独特の位置を占める豆で、とくにその色が珍重されるが、未だに種皮色素の構造も、その加工食品である飽の色についても化学的な知見がほとんどない。本研究では、種皮色素の化学構造を明らかにすること、および、製餡加工工程において、種皮色素がどのように餡へと移行して餡の紫色が発色するのかを解明することを目的に行なった。方法および結果赤小豆種皮から色素を抽出して分析する条件の検討を行ない、トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル水溶液で抽出し、逆相HPLCで分析する手法を確立した。赤小豆種皮には、二種類のアントシアニンとは違う発色団を持つと推定される色素が含まれることを初めて見いだした。そこで、これらの色素の単離精製法を検討した。溶媒抽出後、アンバーライトXAD-7カラムクロマトグラフィー、次いでゲルろ過カラムクロマトグラフィーを行うことにより、かなり色素の純度の上った色素を微量であるが得た。同時に、ケルセチンを同定した。種皮色と餡色の違いを明らかにする目的で、製餡加工工程試料から成分を抽出して、HPLC分析を行なった。渋切り水には、色素はほとんど含まれず、無色のポリフェノール成分が多く溶出することがわかった。さらし餡に、種皮に含まれる2種の色素が存在することがわかり、同時に、餡では、無色のポリフェノール量い対する色素の含有量が増えていることがわかった。渋きり操作により、赤茶色系統の発色をするポリフェノール類が除去されることがわかった。
著者
貝沼 やす子 福田 靖子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.118-126, 2005-04-20
被引用文献数
1

We have shown in previous studies that the use of bamboo charcoal advanced the gelatinization of starch, and reddened and softened kintoki beans. We applied these effects for red rice steamed with glutinous rice and cowpeas. The pH value of the bamboo charcoal extract was about 9.5, and it decreased to about 8.0 after cooking cowpeas for 15 minutes. The broth used to boil the cowpeas with the bamboo charcoal extract became redder and clearer. There was a positive correlation between the pH value of the cooking water and the value measured by a color difference meter of the broth used to boil the cowpeas. Glutinous rice soaked in the broth used for boiling the bamboo charcoal extract became redder after steaming. The sensory test evaluated the red glutinous rice prepared by using the bamboo charcoal extract as significantly redder than that by using tap water. Use of the bamboo charcoal extract also accelerated the softening of the cowpeas, and the red glutinous rice was evaluated as tender in texture just after steaming.
著者
長尾 慶子
出版者
東京家政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

食材の加熱に関する一連の実験研究において、これまでに水分量の異なる食材モデル系および各種実用食材を対象に種々の加熱実験を行い、食材加熱面から内部一次元方向xの位置の温度φ(t)と加熱時間tとの関係が,指数式1-exp[-t/τ(x)]で表されること、その式に現れる遅延時間すなわち時間定数τ(x)と試料加熱面の面積Sとの比が、各試料の熱拡散率αとベキ指数の関係[S/τ(x)=k・α^n]にあることを明らかにした。引き続き平成17-18年度の研究助成テーマでは乳化系(水系と脂質系の混在系]を加熱食品モデルにとりあげ、その熱拡散率に及ぼす成分的要因を、乳化の型(O/WまたはW/O)を含めて熱移動現象を追跡し定式化を試みたものである。初年度(平成17年度)は卵黄を乳化剤として分散油相体積分率(Φ)を0.3〜0.8まで変化させたマヨネーズ様の水中油滴型(O/W)乳化系試料を調製し、分散油滴径の大きさとその分布状況が系の伝熱機構に如何に影響するかを検討した。その結果、油相体積分率が小(すなわち水の割合が大)の試料になるほど、みかけの熱拡散率が大となり、試料加熱時の内部温度上昇曲線から算出した時間定数τ(x)の逆数との間に両対数グラフ上で正の相関があることを報告した。この結果を受けて、平成18年度は卵黄に代わる乳化剤として、親水性ならびに疎水性の食品用乳化剤を選択し、同様に分散相体積分率(油または水)を0.3〜0.8に変えたO/W型乳化系およびW/O型乳化モデル系を調製し、昨年度と同様な加熱実験、熱物性値の測定・算出、粘度、分散相粒子の顕微鏡観察と画像解析を行った。その結果、乳化の型が異なっても(すなわち分散相が油や水に関らず)、系内の熱移動を支配しているのは試料の水の量と試料固有の熱拡散率であり、系中の水の割合が多い程みかけの熱拡散率が大となり、内部温度の上昇速度が増す(すなわち 1/τ(x)が大)ことが確認された。またW/O型乳化試料は、O/W型のそれと比較して、試料調製時の撹搾速度や加熱により不安定であること、みかけ粘度やCassonの降伏値も低いこと、分散相である水滴粒子径の分布範囲が広く最多頻出径が3μm(O/W型では1.5μm)と粒径が大であることが明らかとなった。単純な水・油の系に、分離を抑制するために加えたこんにゃくマンナン粉末は熱伝達方式が伝導伝熱を維持する役目を担っていたが、結果として試料全位置での内部熱移動が抑制された。すなわち、マンナンゲルが水を捕捉し熱の移動に関る自由水が少なくなるものと推測された。
著者
間瀬 正啓 馬場 大介 長山 晴美 村田 雄太 木村 啓二 笠原 博徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.28, pp.69-74, 2008-05-06

本稿では,自動並列化コンパイラにより並列性抽出が可能なC言語におけるポインタ利用方法の制約について述べる.実際にこの制約を満たすようにプログラムを作成し,flow-sensitive, context-sensitiveなポインタ解析を用いた自動並列化を適用したところ,8コアSMPサーバにおいて,逐次実行と比較してSPEC2000 artで3.80倍,SPEC2006 lbmで6.17倍,MediaBench mpeg2encで5.14倍の速度向上が得られた.
著者
横田 英史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム
巻号頁・発行日
vol.97, no.26, pp.33-39, 1997-04-24

米Intel Corp.。約25年前に世界初のマイクロプロセサ4004を生み出した、世界最大の半導体メーカだ。そのIntel社に危機が忍び寄る。21世紀に向け、Intel社のマイクロプロセサには克服しなければならない技術的な課題が多く残されている。たとえば、あまりに大きくなりすぎた発熱と消費電力。ノート・パソコンなどの携帯型のマシンには使いづらい。本稿では、Intel社の現状と問題点、次期マイクロプロセサPentium IIに見る最新技術、x86互換チップ・メーカの現状をジャーナリストの観点から概説する。
著者
川島 慶之
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

糖尿病の合併症の一つに難聴が知られている。一部にミトコンドリア遺伝子変異が関与していることが明らかになってきているが、多くは、障害部位、障害原因とも明らかではない。一方、肥満・過食・高インスリン血症など顕著な糖尿病症状を自然発生する突然変異の糖尿病モデルマウス(db/db)がジャクソン研究所で発見され、糖尿病およびその合併症の発症機構の解析究明に汎用されている。我々は、db/dbが難聴を発症し、そのホモ接合体はヘテロ接合体、野生型に比べ早期にABR閾値が上昇することを確認した。さらにDPOAEでもホモ接合体は早期からDPレベルの低下を認めた。このため、難聴の主因は蝸牛血管条障害であると予想したが、光学顕微鏡では有意な血管条障害やラセン神経節細胞の脱落は認めなかった。しかしながらレプチン受容体の内耳発現を確認するためにC3H/HeJのコルチ器を免疫染色したところ、外有毛細胞の不動毛において発現が見られた他、neonateの動毛において強い発現を認めた。これらの結果より、これらのマウスにおける聴覚閾値の上昇は、外有毛細胞の何らかの障害を含めた複数の機序が関与しているものと想定している。