著者
Takashi NAITO Yuriko SAKATA
出版者
Psychologia Society
雑誌
PSYCHOLOGIA (ISSN:00332852)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.179-194, 2010 (Released:2010-11-03)
参考文献数
33
被引用文献数
11 39

To explore different functions of gratitude and indebtedness, two questionnaire studies were conducted with female university students in Japan. These studies examined the correlations between positive feelings, regret, and indebtedness when receiving a favor, and the resulting feelings such as the enhancement of prosocial motivation (wish to help) and the obligation to help others. The results of Study 1 suggested that positive feelings and indebtedness in a hypothetical helping situation differently correlated with other variables: Positive feelings had a significant positive correlation with the enhancement of prosocial motivation. In contrast, indebtedness had a significant positive correlation with enhancement of obligation (should help). Study 2 was conducted by using positive and socially conceptualized feeling items such as the fulfillment of friendship. Results suggested that the social conceptualization might add obligatory nature to the positive feelings.
著者
青井 啓悟
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本研究は、先進的な分子設計概念により、全く新しい糖質大環状デンドリマーの創成を行うことを目的として行った。計画に従って、ポリリシンの側鎖アミノ基からポリ(アミドアミン)デンドリマー構築を行い、新しいシリンダー状高分子を得た。この反応では、市販のポリリシン臭化物塩をトリエチルアミン存在下アクリル酸メチルを用いたマイケル付加反応によりデンドリマー分岐構造に誘導した。表面アミノ基と糖誘導体置換セリンN-カルボキシ無水物(GlycoNCA)との高分子反応により、嵩高い糖の層を形成し、チューブ状の構造体を得ることに成功した。糖としては、N-アセチル-D-グルコサミンなどを導入した。シリンダー状デンドリマー内部の、ポリリシン部分の高次構造をIR測定、CD測定さらには中性子小角散乱により解析し、評価した。大環状ポリリシンを用いて、同様のデンドリマー精密構築と糖の導入により大環状糖質デンドリマーの合成が可能であり、大環状ポリリシン合成を試みた。ポリ(アミドアミン)デンドリマーの末端部分をヒドロキシル基とした新規重合体も合成し、高次構造の解析を上記と同様に行った。その結果、ヒドロキシル型でもナノスケールの円筒状の形態をとり、糖質を導入したものはより安定に円筒状となることが明らかになった。糖鎖シリンダー状デンドリマーの分子認識能を、実際に小麦胚芽(WGA)レクチンを用いた赤血球凝集阻害試験により調べた。4分岐型で優れた認識能を発揮することが分かった。また、電気泳動により、プラスミドDNAと安定な複合体を形成し、生体機能材料として有用な展望が開けた。
著者
上原 周三 長 哲二 吉村 厚 吉永 春馬
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.69-73, 1976-03-10

ここではもっとも普通に使用されている70kVpにおける測定のみを例に挙げたが,筆者らはすでに100kVp以下のそれ以外の管電圧での測定を行っており,100keV以下のX線スペクトルを可能な限り高い精度で測定するという所期の目的をほぼ達成できた。しかしまだいくらかの検討の余地を残している。1.主増幅器におけるパイルアップを減少させるために,0.8μSという短い時定数に設定したが,その結果エネルギー分解能は悪くなった。通常の状態では時定数3.2μSの場合1.4keVなる分解能が得られている。したがって高い計数率のもとで分解能を悪化させずにスペクトル測定を行なうには,短い時定数でも分解能が悪化しないタイムバリアントフィルター増幅器7)がよいと思われる。入射ビームがバンチされているX線の場合,このことはとりわけ重要である。2.この実験では補正の際に効率のみを考慮しているため,とくに効率を正確に求めることが要求される。この点20keV以下の光子の吸収の割合がかなり大きいこと,また13keV以下の検出効率が得られなかったことなど入射窓による吸収の問題が残されている。容易に入手できたという理由で真空槽の入射窓には1mm厚のベリリウムを用いたが,低エネルギー部のスペクトルをより正確に観測するには,もっと薄い0.25mm厚程度1-3)の窓を用いなければならないと考えられる。
著者
三成 由美 徳井 教孝 内山 文昭 酒見 康廣 大仁田 あずさ 山口 祐美 鶴田 忠良 和才 信子 川口 彰
出版者
中村学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

児童に生きる力を発揮させ、健康管理能力を高める事を目的に、望ましい食習慣と規則正しい排便習慣の形成のための日本型薬膳食育プログラムを開発し評価した。食と健康の意識・実態調査と学校給食にヘルシーメニューを導入することで知識は向上した。さらに、食育CD-ROM、解説書・カレンダーを作成して3ヵ月間、児童に配布し評価すると効果は認められた。これらの教材は学校現場の食育で利用価値が高まると考えられる。
著者
岡 まゆ子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

1.卵胎生ウミタナゴを用いた母仔間移行研究大槌湾にて採集したウミタナゴの親魚(n=25)と胎仔(n=10)中の有機塩素系化合物(OCs)濃度を調査した。胎仔は出生直前に指数関数的に汚染物質を体内に蓄積していることが明らかとなった。これは、親魚の血液に含まれるリポ蛋白のうち有機塩素系化合物と親和性の高い種類が妊娠後期に分泌されるためであることが推測された。最終的に胎仔中の濃度と親魚中の濃度は平衡に近い値を示した。これは妊娠期間の長い卵胎生魚に特徴的であることが考えられ、胎仔への危険が高いことが明らかとなった。2.サケ科魚類におけるOCsの蓄積特性サクラマスは降海する降海型と一生を河川で過ごす残留型が存在する。降海型サクラマスは約1年半の河川生活ののち、降海する。約1年後に母川回帰し、遡上後約4ヶ月河川で成熟を待ってから産卵する。各成長段階におけるOCs蓄積を調べるために、幼魚から回帰親魚まで幅広い生殖腺指数(GSI)を持つサクラマス中のOCs濃度を調べた。海洋生活期を経たサクラマスは降海直後と比較して筋肉中で最大58倍、肝臓中で最大11倍にOCs濃度が増加した。卵形成の時期が近くなるにつれ、肝臓へと脂肪は集中する。この時、OCsの肝臓中濃度が筋肉中濃度の約7倍となり、降海直後の約4倍と比較すると高い値を示した。このことから、OCsも脂肪とどもに肝臓へと移行することが示唆された。卵形成がさらに進むと肝臓中で合成された脂肪や蛋白が卵へと移行し、肝臓中OCs濃度は徐々に減少した。肝臓中OCs濃度はGSIが5%付近で筋肉中濃度と並び、最後には筋肉中濃度より下回ることが明らかとなった
著者
廣田 栄子 井脇 貴子 樺沢 一之 鈴木 恵子 小渕 千絵
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

聴覚障害児者の様々な領域での活躍には、聴覚音声情報の制限を視覚情報で収集する技能の向上が重要であり、書記リテラシー(読書き能力)の形成が欠かせない。本研究では、近年の各種先進医療・技術開発による書記リテラシーの改善と達成度・課題について実態を明らかにした。さらに、IT化による書記リテラシー評価・支援システムを開発し、臨床手法としての有用性を実証して、生涯発達の視点での包括的支援に関する知見を得た。
著者
藤本 啓二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

細胞表層にポリマーからなるシールド層を形成させ、さらに外側に種々のバイオアフィニティを提示させることにより多様な細胞からなる組織体を形成させた。次に組織再生を視野に入れた細胞の構造化に向けた表層改質条件の検討を行った。また、このアフィニティを利用して基板上に細胞を2次元あるいは3次元状に配列し、セルチップなどの技術への展開をはかるための基盤技術の確立を行った。また、リガンド・レセプター間結合を高め、細胞表層改質のために、リガンド固定化部位、光反応性部位、アフィニティ部位および解離性部位からなる多機能性ナノ分子(ポリマーナノツール)を作製した。これにより、細胞の移動性を光によって制御することができた。
著者
橋本 晴行 善 功企 江崎 哲郎 戸田 圭一 高橋 和雄 北園 芳人
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2003

03年7月19日から20日未明にかけて九州各地で,局地的な集中豪雨により,河川の氾濫や斜面崩壊,土石流が発生した。本調査研究は,被災地の現地踏査,住民・防災関係機関への聞き取り調査,資料収集などを実施し,以下のような成果を得た。1.7・19北部九州豪雨による災害-福岡都市水害福岡県太宰府市において,19日午前4時に最大時間雨量99mm,総雨量315mmに達する豪雨が発生したその結果,2級河川御笠川の上流に当たる同市三条地区などで土石流が発生するとともに,下流の福岡市博多駅周辺で御笠川が氾濫し,ビル地下階,地下鉄駅構内が浸水した。99年水害の再来となった当時の降雨量は,太宰府市で総雨量180mmであったため,今回の水害は99年水害を上回る規模であったと推測された。99年水害と異なった点は,御笠川上流の太宰市で,前回を大幅に上回る降雨量が発生したため土石流や崩壊が発生し,土砂が多く下流に流下・氾濫したことと,流量規模が大きく,前回越流のなかった中・上流においても広範囲に氾濫が発生したことである。2.7・20中南部九州豪雨による災害-水俣土石流災害熊本県水俣市で20日午前4時に最大時間雨量91mm,総雨量323mmの降雨を記録した。その結果,同市集川において上流右岸斜面が崩壊して土石流化し,下流の人家を襲った.集地区では,斜面中腹から地下水噴出が発生しその影響で崩壊を起こした。下流の扇状地では巨礫が多く堆積しており,土石流の本体部分は典型的な砂礫型士石流であったと推定された。97年に隣接の出水市で発生した土百流は泥流型土石流と考えられている。質的な面において両者は異なると推定された。現在,熊本県では土砂災害警戒雨量が参考値として扱われ避難勧告基準としては活用されていない。土砂災害情報を初動体制に活用する行政の体制づくりが不可欠である。
著者
中井 泉 真道 洋子 大村 幸弘 吉村 作治 川床 睦夫
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ガラスの古代の東西交易を明らかにするためにポータブルX線分析装置を開発し、美術館や中国、インド、エジプト、シリア、トルコ、クロアチアの現地で出土遺物を分析した。日本の古墳出土ガラスは、インド、タイ、中国などのアジアの国々から伝来したものであることを実証した。また、平等院出土ガラスの分析では、奈良時代の鉛ガラスの製法が平安時代も継続し、新たにカリ鉛ガラスの製法が中国から伝来したことを示した。地中海沿岸諸国における東西交流についても実証的データを得た。
著者
土方 久
出版者
西南学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

複式簿記を包摂して「会計」に進化するとしたら、簿記と会計の接点にあるのは「年度決算書」。世界で最初に規定されたのは17世紀の中葉。簡便ないし簡単な簿記としての「単式簿記」を頼りに「財産目録」の貸借対照表を作成することが普通商人(小売商)にのみ規定されたのである。大商人(卸売商)および銀行家に規定されることがなかったのは、すでに、17世紀、18世紀に、複式簿記を頼りに「損益勘定」と「残高勘定」を作成、この残高勘定を貸借対照表の代用にしえたからである。しかし、ドイツに複式簿記が普及するのは19世紀の中葉。「損益勘定」に相当する「財産目録の検証表」まで作成しなければならなくなると、単式簿記は複雑ないし煩雑な簿記に陥ってしまい、むしろ、退化して、複式簿記に融合することになる。さらに、株式会社が急増する19世紀の中葉に、ドイツ株式法、ドイツ商法によっては、貸借対照表に併存して、「損益計算書」も作成することが規定されることから、複式簿記に、最終的に融合したにちがいない。
著者
川西 宏幸 周藤 芳幸 堀 賀貴 内田 杉彦 辻村 純代 津本 英利 花坂 哲
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

古代エジプトで外来系土器が増加するのは第20王朝からであり、第18・19王朝で主流をなしたミケーネ系をはるかに凌ぐ量がフェニキアからもたらされ、一部は模倣されたことが判明した。また、アコリス遺跡の発掘によって、第20王朝から第3中間期における地方社会の実態と交易の殷賑が立証された。すなわち、王朝の衰微と西アジアにおける強国不在状態が、地方社会の自立を促し、交易を隆盛に導いたという、文献史学が語りえなかった衰亡期研究の新たなパラダイムに逢着した点に、本研究の成果がある。
著者
大月 康弘 加藤 博 坂内 徳明 中島 由美 齊藤 寛海 立石 博高 長澤 栄治 大稔 哲也 三沢 伸生 亀長 洋子 堀井 優 竹中 克行 松木 栄三 三浦 徹 栗原 尚子 臼杵 陽 勝田 由美 黒木 英充 堀内 正樹 岩崎 えり奈 青山 弘之 飯田 巳貴
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

地中海世界の歴史において人びとの活動の重要拠点となった「島嶼」に注目し、自然・生態環境に規定された人々の生活・経済空間としてのマイクロエコロジー圏、および当該マイクロエコロジー圏が対外世界と切り結んだ経済社会ネットワークの構造分析を行った。政治的、人為的に設定され認知されてきた「地域」「海域」概念、および歴史的統一体としての地中海世界の存在論にも批判的検討を加えた。
著者
中西 祐子
出版者
武蔵大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では「doing gender(ジェンダーをする)」という概念に着目し、学校・職場内において、人々が自らのジェンダー/セクシュアリティを、自ら意図的に、あるいは他者から意思に反して構築する/されることがどのようなメカニズムで起きているのかを検討した。本研究では、人々のジェンダー/セクシュアリティというものが、アプリオリに存在しているのではなく、ある場面で行為者間の間で持ち出されることによって作り出されているのではないか、という理論的立場をとっている。たとえば、セクシュアル・ハラスメントに代表されるような学校・職場のトラブルは、文脈を無視して突然「ジェンダーをする」ことが持ち出される現象の典型例である、と考える。本年度行ったのは次の4点である。(1)国内外の先行研究の収集、(2)アメリカ社会学会参加と「ジェンダーの構築」に関連する最先端の研究動向の把握、(3)大学生を対象にアルバイト先でのハラスメント経験についての質問紙調査、(4)大学生を対象にアルバイト先でのハラスメント経験についてのインタビュー調査(継続実施中)。なお、平成20年度中に、これまでの研究をまとめた成果を論文として発表する予定である。ここまでの知見を簡単にまとめると、(1)アルバイト先でのハラスメント経験者は量的にはごく少数であるが、お客や上司からのハラスメントを経験しているものは存在している。(2)経験者の中で、その場で表立って文句をいったものは皆無であり、(3)「相手がお客さんだからはっきりと拒否するわけにはいかない」「相手が上司だからあまり強くいえない」という理由から、何とかその場をうまく「やり過ごす」/「取り繕う」ことにむしろ力点が置かれていることがわかった。これは、突然構築された「ジェンダー/セクシュアリティ」が、「客と販売員」「上司と部下」という別な文脈で消去されようとするプロセスといえるのではないだろうか。
著者
Masago Ishikawa Ichiro Kawase Fumio Ishii
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Biological and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.2031-2036, 2007-11-01 (Released:2007-11-01)
参考文献数
37
被引用文献数
12 16

The simplest amino acid, glycine, is important in protein composition and plays a significant role in numerous physiological events in mammals. Despite the inhibitory effect of glycine on spontaneous melanogenesis in B16F0 melanoma cells, the details of the underlying mechanisms remain unknown. The present study was conducted to investigate the further effects and the mechanisms of inhibitory effect of glycine on melanogenesis using B16F0 melanoma cells and hair follicle melanogenesis in C57BL/6J mice. Treatment with glycine (1—16 mM) for 72 h inhibited α-melanocyte stimulating hormone (α-MSH)-induced melanogenesis in a concentration-dependent manner without any effects on cell proliferation in B16F0 melanoma cells. Treatment with kojic acid (2.5 mM) for 72 h also inhibited α-MSH-induced melanogenesis in B16F0 melanoma cells. The highest dose of glycine inhibited the α-MSH-induced increment of tyrosinase protein levels in B16F0 melanoma cells. In hair follicle melanogenesis in C57BL/6J mice, treatment with glycine (1250 or 2500 mg/kg, i.p.) for 5 d prevented the decrement of L* and C* values and inhibited the increment of tyrosinase protein levels and melanin content within the skin. Treatment with hydroquinone (100 mg/kg, i.p.) for 5 d had a similar hypopigmenting effect to that of high dose glycine. These results suggest that glycine has an inhibitory effect on melanogenesis that is mediated by down-regulation of tyrosinase protein levels, leading to a hypopigmenting effect in C57BL/6J mice.
著者
中山 祐一郎 西野 貴子 渡邉 修 渡邉 修
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

白山(石川県)の高山帯・亜高山帯には,12種(群)の雑草性植物が侵入していた。そのうち,オオバコでは,自生種ハクサンオオバコと雑種を形成していた。スズメノカタビラでは,高山の環境に適応した生活史特性をもつ個体が定着していると考えられた。外来タンポポでは,低地~山地に生育する様々な種や雑種の型のうち,一部の種や型が亜高山帯や高山帯に侵入していた。これらの知見に基づき,侵入雑草への対策について「白山国立公園生態系維持回復事業検討会(環境省中部地方環境事務所)」等で提案した。