著者
古澤 龍 柳川 智之 大原 崇嘉 大原 崇嘉
出版者
東京藝術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

今まで感性として扱われてきた絵画用語であるヴァルール(鑑賞環境を含めた相対的な見えの強さ)の定量化を試みた。まずはビットマップ化した画像データの位置や色差による定量化アルゴリズムの基礎を考案し、作品発表等を通してその妥当性の検証を行った。また鑑賞環境によるバイアスを補正する必要があるため、環境要素の一つとして照明が絵画の見えにどのような影響を及ぼすのか、実験によって関係性の一端を明らかにした。画面の質感性(素材感)が比較的見えにくい低い照度環境においてはバイアスがかかりづらく、明るい環境においては画面の素材によって大きくバイアスを受ける可能性があることがわかった。
著者
酒井 麻衣 鈴木 美和 小木 万布 柏木 信幸 古田 圭介 塩湯 一希 桐畑 哲雄 漁野 真弘 日登 弘 勝俣 浩 荒井 一利
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ハクジラ亜目のホルモンレベル・行動とストレス・心理的幸福との関係を明らかにするため、行動観察および垢と血中のホルモン濃度測定を行った。対象動物は期間中大きな疾病はなく、得られた行動頻度・ホルモンレベルの時、おおむね健康な状態と言えた。顔を壁にこすりつける行動が比較的多かった期間に、血中および垢中コルチゾール濃度が高く、この行動がストレスの現れであることが示唆された。静止時間が多いときほど血中βエンドルフィン濃度が低く、運動量と関係があることが示唆された。また、中層での静止時間が長いほど、血中コルチゾール濃度が高いことがわかり、長時間静止する行動がストレスの現れである可能性が考えられた。
著者
石本 宙
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

保型形式や保型表現は整数論において価値のある情報を多く含んでいる研究対象である。しかし、重さ半整数の保型形式やメタプレクティック群の保型表現は、重さ整数の保型形式や古典的な代数群の保型表現よりも研究の歴史が浅く、知られていないことが多い。本研究は、重さ半整数の保型形式の理論とメタプレクティック群の保型表現論のさらなる発展への貢献を目的として、重さ整数の保型形式や古典的な代数群の保型表現との関係やその応用について調べる。
著者
下平 英寿 清水 昌平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

画像,タグ,文書等の様々な種類(ドメインと呼ぶ)の情報源から得られるデータベクトルと,データベクトル間の関連性の強さに関する情報が得られているデータを,多ドメイン関連性データと呼ぶ.従来の多変量解析ではベクトルが1対1対応するものを扱っていたため,柔軟なデータ構造を表すことができなかった.本研究ではベクトルの関連性をグラフ(ネットワーク)で表現して,そのグラフ構造をなるべく保存するように次元削減を行う情報統合の方法を提案・発展させた.
著者
馬場 洋
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

成熟ラットから後根付き脊髄スライスを作成し、脊髄後角細胞からホールセルパッチクランプ記録を行った。そして、後根の電気刺激で誘発される単シナプス性興奮性シナプス後電流に対するプレガバリンやガバペンチンの作用を検証した。これらの薬物は単シナプス性興奮性シナプス後電流の大きさを減少させなかった。これらの結果から、プレガバリンやガバペンチンは臨床濃度において一次求心性線維終末からのグルタミン酸放出に影響しないことが明らかとなり、これらの薬物の鎮痛作用は従来言われていたような一次求心性線維終末の電位依存性カルシウムチャネルの抑制によるシナプス前抑制ではないことがわかった。
著者
谷本 能文 藤原 好恒
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、(1)先に見いだした有機光化学反応に対する10Tクラスの強磁場効果の機構の解明、(2)さらに強磁場による新しい化学反応制御の可能性を模索することにある。(1)では、フェナントレン(Phen)とジメチルアニリン(DMA)をメチレン鎖で連結した連結化合物(Phen-(CH_2)_<10>-DMA)のエキサイプレックスケイ光の強磁場効果をナノ秒レーザー分光法により研究し、2T以上の磁場ではΔg機構による磁場効果が起こることが解明された。またアントラキノン(AQ)にメチレン側鎖をもつ誘導体(AQ-CO_2-(CH_2)_<n-1>-CH_3)のミセル中の光半により生成するラジカル対の強磁場降下のメチレン鎖長依存性、ミセルの種類の依存性をレーザー閃光法により検討したところ、δg機構による磁場効果が強磁場中で起こることが解明された。(2)では、金属銅と硝酸銀水溶液などの金属と水溶液系の酸化還元反応により生成する金属樹に対する強磁場効果を検討した。銅棒(5Φ X 250mm)と硝酸銀水溶液からの銀樹の生成反応(Cu+2Ag^+→Cu^<2+>+2Ag↓)では、金属樹の生成が磁場勾配により顕著な影響を受ける。すなわち強磁場中では銀樹がほとんど生成せず磁場の弱い箇所で主に生成することが明らかになった。この新しい磁場効果は、常磁性イオンである銅のイオンが勾配磁場効果により磁場に引き寄せられるためであることが解明された。また、反磁性結晶の成長が磁場配向するという新しい現象を見いだした。以上の研究から、「強磁場反応化学」というべき新分野の開拓の端緒を得ることができた。
著者
巌佐 正智
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

細胞から動物に至るまで自然界において,ひいては人間社会においても,生物の個体同士が互いに影響を及ぼし合った(相互作用した)結果として,その集団に秩序ある振る舞いが自発的に形成される現象(自己組織化現象)は様々に見られる.このような自己組織化現象は多様であるが,そこに通底する原理や法則を探究するため,相互作用する粒子集団の数理モデルであるSwarm oscillatorモデル(SOモデル)を解析する.SOモデルは,単一のモデルながら多様な空間的なパターンが生じることが判っている.よってSOモデルの詳細な解析により,自己組織化現象に潜む一般的な原理が見いだされることを期待している.
著者
中立 悠紀
出版者
九州大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-03-01

本研究は、1952年のサンフランシスコ講和条約発効後における、戦争犯罪者の釈放過程を解明する。特に、①当時、日本国内で盛り上がっていた戦犯釈放運動が、関係国との外交交渉に与えた影響を分析する。また②主にアメリカとの懸案事項であった再軍備・MSA協定の締結に、戦犯釈放問題がどのように関わっていたのかも考察する。この二つの分析は、日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの外交史料などを用いて行う。
著者
宇野 雄一 奈邉 健 新田 陽子 鶴田 宏樹
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

イチゴにより口腔アレルギー症候群を発症するケースがあり,生活の質の低下や,生産物の消費低迷が懸念されている.本研究では,イチゴに含まれるアレルゲンおよび抗アレルギー成分の解析を行い,誘発性評価システム開発のための基礎的知見を得た.IgE結合能の解析により,イチゴの主要アレルゲンはFra a 1であると考えられた.Fra a 1 の含量は,品種,栽培方法,生育段階,および部位の違いにより増減し,その構造は,60℃以上の加熱により変化した.また,イチゴの抗アレルギー成分にも品種間差がみられた。以上により,品種,栽培方法,調理方法などの適切な選択によりイチゴアレルギーが緩和できる可能性が示唆された.
著者
吉田 一彦 柴田 憲良 藤本 誠 高志 緑
出版者
名古屋市立大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

本研究は、「偽」というマイナスのイメージから研究上の価値が低いと誤認されてきた「疑偽経典」を、豊かな思想を伝えるテキストととらえ直し、その思想作品としての価値を解明するとともに、それらが日本および東アジアの社会、文化に果たした役割を明らかにしようと企図するものである。本研究では、日本に仏教が土着していった様相を、疑偽経典の受容、作成、浸透に着目して考察し、そこから日本仏教の歴史と思想の特質を考究する。
著者
磐下 徹
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は平安時代末期の貴族である源俊房(みなもとのとしふさ)の日記である『水左記(すいさき)』の記事を丹念に読み込み、その註釈を作成することで、古代から中世へという日本の歴史の転換期の政治・社会状況、都である平安京の都市的環境、この時期における日記のもつ意義・機能について考察することを目的としている。こうした目的を達成するため、古代史・中世史の各分野の専門家が参加する「水左記輪読会」を開催して、質の高い『水左記』の註釈を作成することを第一の目的とする。こうして蓄積された註釈をもとに、古代から中世への転換期である平安時代後期についての考察を深めていきたいと考えている。
著者
園山 大祐 小山 晶子 丸山 英樹 林 寛平 二井 紀美子 島埜内 恵 池田 賢市 菊地 かおり 有江 ディアナ 見原 礼子 辻野 けんま 本所 恵 布川 あゆみ 斎藤 里美 中田 麗子 福田 紗耶香
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

第1にEUの教育政策目標に対して各国の予防、介入、補償がどこまで達成されているか明らかにした上で、第2にセカンド・チャンス教育およびノンフォーマル教育にみるグッド・プラクティス校を中心に質的調査を経年比較する。これらを通じて、公教育における課程主義による資格取得を目指す欧州と、就学義務によって卒業資格を目指す日本との比較から、教育と職業訓練の学校教育化のメリットと、学校嫌悪、不登校、不本意入学による進路変更や中退問題等にみる学校教育化のデメリットとノンフォーマル教育のメリットについて検討する。
著者
相澤 秀生 川又 俊則
出版者
鈴鹿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本社会は寺檀関係を支えてきた世代の人びとが多く死去する時代を迎えた。次世代を担うであろう団塊の世代以下の人びとの多くは故郷を離れ、菩提寺とは疎遠な関係にあり、代々の寺檀関係が継承される見通しが立てられない時代となった。これまで寺院は葬儀や法事など、人びとの人生の一部だった。寺院がなくなれば、誰が死者を弔い、墓や遺骨を守っていくのか。日本人はそうした切実な問題に直面している。本研究はこの喫緊の課題にこたえるべく、多宗派の寺院の実態を数量的調査、質的調査によって明らかにし、寺院の存続と人びとの暮らしがいかに相互影響しているのかに迫るものである。
著者
中村 匡徳
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、X線による可視化と数値流体計算により、実際の鳥呼吸器内の流れを調べ、その流体制御機構を解明することを目標として研究を行ってきた.研究成果として、鳥気管支の第一分岐部上流側において狭窄している部位があり、そこを吸入空気が通過することで慣性力が増加し、後気嚢に導かれることがわかった.これにより、主気管支から分枝する気管支には空気が入らず、流体の主方向が決定されることがわかった.また、気嚢の厚さが変化することで胸腔内圧の変化と気嚢の変形が同調せず,呼吸器内の流体制御がうまくいかなくなることも判明した.
著者
桑原 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

日本の製造企業の国際競争力は、工場の内部で作り出されてきた。そうした工場管理のプロトタイプは、第2次大戦前の紡績工場に見られる。その形成のプロセスを、日露戦争後の鐘淵紡績会社の兵庫工場に於ける、武藤山治の試行錯誤を事例としてつぎのように説明した。第1 鐘紡の問題は、品質の不安定であった。第2 工場を、武藤山治は技術のシステムと社会のシステムからなるシステムとして捉えた。技術システムとしての側面を、各工程の糸切れ調査によって、数値的具体的に把握した。そして、後工程の品質は前工程の品質に規定されることを実証し、トータルシステムとして捉えた。第3 その為にハードウエアと作業方法の標準化を進めた。其れは科学的管理法の実践であった。第4 しかしそれだけでは品質は安定しなかった。それは、工場には常に攪乱要因がもたらされるからである。この攪乱要因の処理は現場の労働者の技能と意欲に規定される。そこで武藤は、労働者の技能を高めるとともに、かれらの社会的心理的欲求を充足して貢献意欲を引き出した。こうして、技術と社会の間に補完関係を作り出した。第5 これによって品質安定は可能となり、こうした管理能力に基づいて、製品の高付加価値化を推進することができるようになった。以上の分析成果により、次の貢献をした。日本企業の生産システムの源流の解明(連続性)、国際的に見た其の個性の析出、日本に於ける科学的管理法の源流の把握、武藤山治にたいする従来の解釈の修正。
著者
木村 睦 中島 康彦 ZHANG Renyuan 松田 時宜 羽賀 健一 徳光 永輔
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

人工知能は、未来の社会の中心となる技術であるが、巨大なサイズと膨大な電力が問題である。ニューロモーフィックシステムは、脳の模倣で、コンパクト化・低消費電力化が期待できる。そこで、我々は、超コンパクト・超低パワーの『リアルニューロモーフィックシステム』の研究を、アーキテクチャ:単一アナログデバイス/マテリアル : アモルファス金属酸化物半導体/アルゴリズム:局所的学習則の3つの観点から進めている。本研究では、上記の新技術を導入したニューロモーフィックシステムの動作を、シミュレーション・実機で確認し、実用的かつ人間の脳と同様な超コンパクト・低パワーの汎用人工知能の可能性を検討する。
著者
一家 綱邦 山口 斉昭 高山 智子 勝俣 範之 秋元 奈穂子 八田 太一 下井 辰徳 渡辺 千原 藤田 みさお 高嶌 英弘 佐藤 雄一郎 手嶋 豊
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

科学的エビデンスの不明な医療(がん治療に関するものが主たる対象)がもたらす社会的問題への対応策の検討を目的に4分野に跨る学際的研究を行う。(ⅰ)科学的エビデンスの不明な医療の内容を理解するための医学的観点からの研究(ⅱ)科学的エビデンスの不明な医療への法規制を検討する医事法学研究:医療行為そのものと医療行為に基づくビジネス活動を対象とする。(ⅲ)生命倫理・医療倫理のあり方を対象とする生命倫理学研究(ⅳ)法・倫理の規制の前提となる科学的エビデンスの不明な医療の実態把握のための調査研究。さらに、社会的課題としての重要性を鑑みて、研究成果を社会に発信することも研究活動の中で重要な位置を占める。
著者
淵田 仁
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

平成24年度の中心課題は、ジャン=ジャック・ルソーにおける哲学的方法論の解明および18世紀フランス啓蒙思想期における経験主義哲学研究であった。まず、『化学教程』においてルソーが着想を得た世界観が後の思想展開にどのように関係しているかを『サヴォワ助任司祭の信仰告白』(『エミール』第四巻所収)を用いて検討した。その結果、『化学教程』で得られたエピステモロジーが『人間不平等起源論』『エミール』といった作品に息づいており、唯物論者ドルバックとの決裂も個人間の問題からというよりも、エピステモロジーの違いに基づいていたということが明らかとなった。コンディヤックやドルバック、ビュフォンらの間で共有されていた啓蒙思想におけるプログレマティークとは別の次元の問いをルソーが提起していたということが明らかとなった。この点に関しては、ブリュッセル自由大学の18世紀研究所が発行している論集『Etudess sur le 18^e siecle』のルソー生誕300周年記念号に論文を掲載した。以上の問題から、ルソーの哲学的方法論について研究をおこなった。諸自然科学や新興の学問を総動員してルソーは自らの哲学・政治思想を構想した。そのとき、ルソーは〈方法論〉に重きをおいて自らの思索を深めていったと考えられる。この問題に関しては、日本でおこなわれたルソー生誕300年記念国際シンポジウムにて発表した。
著者
菊池 和美 長田 久雄
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

報告者は, 参与観察調査および実証研究を通して, 犬の飼い主らが自らの住む地域コミュニティで行っている「犬の散歩」が,飼い主にとっての,人々との地域交流関係の形成と維持の機会となること,また,その関係性の発展が地域コミュニティにおける潜在的な人的資源形成に繋がり,散歩を行う地域社会への愛着と関心「わが町意識」を高め,ソーシャル・キャピタル醸成のプラットフォームとなる可能性を有することを指摘した.
著者
堀野 治彦 中村 公人 櫻井 伸治 中桐 貴生
出版者
大阪公立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

重金属が農業用水に混入し作物生産が困難な農地での対策として、汚染土壌でも作物の可食部に重金属が移行しない栽培管理を導入できないかと考え、その方法として有機物投与による重金属の不動化に着目した。本研究では,複数の重金属種が共存する土壌において腐熟度の異なる有機堆肥が土性や水環境に応じてどのように不動化に寄与するかを実験的に検証し、汚染農地においても生産を持続する対処法に関する知見を提供する。