著者
重原 一慶
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

咽頭と尿路のHPV感染の疫学調査では、尿道炎男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、咽頭18.3%、尿検体22.1%であった。次に、一般男性における尿路性器HPV感染率についての疫学調査では、823例の一般健常者を対象、亀頭擦過検体および尿検体HPV陽性率は、亀頭22.8%、尿5.8%であり、尿路に比較し亀頭のHPV感染率が高かった。最後に、80例のMSM患者(HIV陽性率93%)における肛門・尿路HPV感染の疫学調査では、HPV検出率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。男性においてもHPV感染は蔓延していると考えられた。
著者
小村 典央
出版者
大阪教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2018

連歌は、短歌を五・七・五と七・七とに分け、前の句と関連性や連想性をもたせながらも世界観を展開させるよう付句を繰り返して百句(百韻)、四十四句(世吉)などと詠みつなげる文芸である。情景や思いを乗せる言葉を自分の好きに使える短歌とは異なり、課題が設定される場所や、続けて詠んではいけない素材などといった規則(式目)が定められているため、使う言葉に制限がかかるため、語彙力が大いに試される。前に出た句をよく吟味し、先に決められた課題に向けて世界観を合わせていくように使う言葉を選ばなければならない。規則を確認し合い、規定の数まで句を詠み続ける協働作業によって、詠みつなげる楽しさの中で主体的な学びの力を育むとともに、言葉の力と豊かさやコミュニケーション力も培うことができると考え、教材開発と授業実践を試みた。授業実践では、連歌についての基本的事項の学習・鑑賞から始め、連歌会(連歌の創作)では5人1座のグループを編成して、連歌(十二調)を巻かせた。その後、巻き上げた他の座の連歌作品を相互に鑑賞・評価させるとともに、自分の座の作品や、選ばれた自分の作品についても評価させた。また、授業内容についてもふりかえらせた。授業後、生徒の作品は平野区内の連歌グループや連歌の研究者に鑑賞してもらい、コメントをいただいた。また、そのいくつかは生徒に配付した。教材開発・授業実践の成果については、「大阪市立大学教育学会」や、「附属学校園教員と大学教員との研究交流会」で報告した。また、現職教員や大学生・大学院生などを対象とした「連歌授業のための指導者講習会」を2月に開催し、連歌授業の実効性についての意見を徴した。そして、年度末には連歌授業のサブテキスト「のりおさんと連歌にチャレンジ! 」を作成・発行した。
著者
北村 繁 伊藤 伸幸 柴田 潮音
出版者
弘前学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

従来、中米・エルサルバドル共和国中部に位置するイロパンゴ火山で4世紀頃に巨大噴火によって、広い地域で火山灰が厚く堆積し、当時の古代メソアメリカ文明は壊滅的な影響を被ったとされてきた。本研究では、火山灰の堆積状況を現地で調査した結果、壊滅的な被害を被ったのは、火砕流が到達した火山から40km 程度の範囲、および、土石流が流下したレンパ川下流域などに限られ、それ以外の地域では、火山灰の堆積量が少なく、壊滅的な影響が生じなかった可能性が高いことが明らかとなった。
著者
中村 一基
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

冬虫夏草は古来より中国において滋養強壮薬として用いられており、また、その特有の成分としてコーディセピン(3' -deoxyadenosine)を含有している。平成18年度は、コーディセピンの生体内分解酵素であるアデノシンデアミナーゼの阻害剤である2' -deoxycoformycin(DCF)を併用することによりWECS及びコーディセピンの抗がん作用がどの程度増強されるかをin vitroにおいて検討した。その結果、WECS及びコーディセピンの抗がん作用はDCFの併用により著しく増強され、WECSで約3倍、コーディセピンで約300倍有意な活性亢進が認められた。平成19年度は、マウスメラノーマ細胞をC57BL/6Crマウスの足蹠皮下に接種するin vivo自然がん転移モデルを用いて、WECSのがん転移抑制作用をモデルマウスの生存日数延長により検討した。その結果、in vitroにおいてWECSの抗がん作用を3倍増強させたDCFは、腹腔内投与により単独あるいはWECSとの併用のいずれにおいてもがん転移抑制作用を示さなかった。一方、WECS 10mg/kgをがん細胞接種日から7日間連続1日1回及び原発巣切除翌日から7日間連続1日1回腹腔内投与したマウスの生存日数は、がん細胞接種後53日以内に全例が死亡した対照マウスと比べて有意に延長された。また、WECS 10mg/kg投与マウスの6匹中3匹はがん細胞接種後110日以上生存し、さらに、体重減少や脱毛などの副作用は観察されなかった。なお、WECS3mg/kgの投与量では、有意ながん転移抑制効果は認められず、WECS 100mg/kgの投与量では、対照マウスに比べて有意な体重減少が認められた。従って、WECSを臨床応用するためには、有効成分を出来るだけ絞り込み、抗原性を押さえ込んだ注射剤として開発することが、最も有力な方法であると結論付けられた。
著者
津金 麻実子
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-07-27

昨年度までに、リポソーム内でmiRNAを等温増幅し、検出することに成功した。これはプライマー、DNAポリメラーゼ、制限酵素を用いて標的microRNAを55℃の等温で増幅し、蛍光プローブ(SYBR GreenⅠ)で検出する方法である。本年度は等温増幅反応試薬内封リポソームとエキソソームと融合させ、リポソーム内でエキソソーム由来microRNAの検出を試みた。オクタデシルローダミンで膜染色したエキソソームと核酸等温増幅反応の反応液を内封したリポソームを混合後、電気刺激により膜融合させて55℃で2時間反応させた。しかし、リポソーム内でSYBR GreenⅠの蛍光は観察されなかった。電気融合はエレクトロポレーション用のキュベットを用いたが融合効率が低いことや、エキソソーム内のmiRNA濃度が低いことが理由として考えられる。最近、カバーガラスとアルミテープで作製した電気融合チャンバーを用いると融合効率が高く、さらに顕微鏡観察下で融合を実施できることがわかった。そこで、融合効率を上げるためのマイクロチャンバーデバイスの開発を行った。
著者
遠藤 勝義 井上 晴行 押鐘 寧 片岡 俊彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、絶縁体表面の原子構造と電子状態を原子レベルの空間分解能で観察できる高周波パルスSTM/STS装置を開発するとともに、超精密加工された絶縁体材料表面を計測評価し、加工条件の最適化を図ることである。絶縁体表面をSTM観察するためには、帯電と原子の移動を防ぐ必要性から、交流で伝導体に電子を注入するのに充分なバイアス電圧をmsec以下の短パルスで印加するとともに、探針-試料間の浮遊容量の影響を避けてトンネル電流の信号によってのみフィードバック制御する検出回路を開発しなければならない。さらに、絶縁体表面の欠陥準位を求めるために、トンネル電流のバイアス電圧依存性いわゆるトンネル分光を可能にしなければならない。そこで、矩形パルス電圧を印加した場合に浮遊容量によって生じる電流に妨げられることなくトンネル電流成分のみを検出できるRC回路を考案した。10kHz以上、±10Vまでの高周波矩形波パルスバイアス電圧を印加して、トンネル電流検出回路の出力をダイオードにより整流した信号をフィードバック制御する独自の高周波パルスSTM装置を設計・製作した。そして、導電性のあるHOPGの原子像を本パルスSTM装置によって観察することに成功した。しかし、真性半導体Siや酸化膜付きSi表面の原子像を観察するまでには至っていない。これらの原子像を観察するためには、100kHz以上の高周波領域における電流アンプのS/Nを改善するとともに、フィードバック制御系の追従周波数の向上が不可欠である。そこで、目的の高周波領域まで動作する電流アンプと印加する矩形パルス周波数のみを増幅するロックインアンプからなるトンネル電流検出系を提案し、新たな高周波パルスのトンネル電流制御系を設計・製作した。この検出系によれば、ダイオードによる整流回路の必要がなくなり、ノイズが低減されてフィードバック制御系の追従周波数が1kHzとなり、絶縁体表面の観察を可能にする。
著者
太田 一郎 宇都木 昭 太田 純貴
出版者
鹿児島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

アニメ声優が演じる「声」の音響的独自性が人びとの「感覚」に内面化した社会文化的な制度として確立している様子を主に言語学とメディア論の観点から複合的にとらえることを試みた。(1) 女性声優のアニメの声と一般女性の声を比較した結果,アニメの声にはより多くの倍音成分が含まれるなどスペクトル包絡に関わる特性が見られる,(2) アニメと声をめぐる状況は 声優とキャラの間の「演技」,キャラとファンの間の「受容(消費)」,ファンと声優の間の「情的関与」が考察の対象となる, (3) アニメ・声・身体の関係の議論についての重層的な声の受容を論じる聴覚文化論や「音象徴」などの言語学的知見が有効なことなどを示した。
著者
江田 真毅 川上 和人 沖田 絵麻
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

土井ヶ浜遺跡の1号人骨・「鵜を抱く女」と共伴した鳥骨の同定は、弥生文化の宗教儀礼の理解に重要である。しかし、これらの骨は断片化しており、骨形態の観察による同定は困難であった。そこで本研究では、コラーゲンタンパクのアミノ酸配列の違いによる同定を鳥類に初めて適用した。現在日本に生息する鳥類を対象に、同定に役立つアミノ酸配列のピークを特定するとともに、「鵜を抱く女」と共伴した鳥骨を分析した。その結果、「鵜を抱く女」と共伴した鳥骨はフクロウ科のものであることが明らかになった。一方で、これらの鳥骨が人骨に副葬されたかどうかはさらなる検討が必要である。
著者
河口 豊 日下部 宜宏 李 在萬
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

ユスリカは高等真核生物中で最も過酷な環境に多様な形で適応している生物の1つであり、高温、乾燥、低pH、低酸素状態に強い耐性を示す種が存在する。1種で全ての厳しい環壌に適応出来る訳ではないが、温泉ユスリカと総称される一群の種は、幼虫期を50℃程度の高水温下で過ごすことができる。このため、温泉ユスリカ由来のタンパク質は熱に対して比較的安定であると考えられる。熱耐性生物由来のタンパク質は、その精製の容易ざ、結晶構造の安定さより、PCR酵素に代表される試薬として、また、構造生物学における材料として幅広く活用されている。本年度も、強い高温耐性のユスリカの採集を目的に、調査を行い、数種のユスリカを採集した。しかしこれらのユスリカは42-45度程度の水温の温泉に生息しており、50度を超える温水からは採取できなかった。これらのユスリカよりmRNAを調整し、cDNAを作製したが、野外より採取した個体から調整したため、逆転写反応の効率が悪く、長鎖のcDNAを含むクローンが少なかった。そのため、クローンを選択、配列決定後、ホモロジー検索によりcDNAがタンパク質の全長配列を含んでいると判断されたものの割合が研究室で継代したユスリカ由来のクローンに比較して少なかった。これらのクローンについては、バキュロウイルスを用いた昆虫細胞系を用いて、ヒスチジンタグ付きの組換えタンパク質としての発現を試みたが、中程度の耐熱性を有するクローンがほとんどで、非常に高い耐熱性を示す組み換えタンパク質は得られなかった。
著者
小川 博司 石田 佐恵子 長谷 正人 川崎 賢一 河原 和枝 遠藤 知巳 岡田 朋之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

近年、現代メディアを取り巻く文化は、世界的な広がりを見せ、急速に変化している。だが、日本においては、その文化の具体的なありようや展開、日常生活に及ぼす影響などは十分に明らかになってはいない。本研究は、「クイズ形式の文化とその歴史的な変化から見る現代生活の諸相」に焦点を当て、メディア社会における文化のありようを明らかにしようとしたものである。本研究の目的は大きく分けて3つある。第1に、歴史社会学的観点からクイズ形式の文化が社会の中にどのように出現し、広がっていったかを明らかにすることである。第2に、歴史的な観点から描き出されたクイズ番組の変遷、クイズ文化の浸透に並行して、人々の日常生活における知識や情報のあり方の変化を明らかにすることである。第3に、アメリカ文化の強い影響を受けて導入されたクイズ形式の文化が、当初の輸入物の文化のありようを越えて、日本文化の一部として定着する際に、どのような形で加工され、「日本文化」化されたのか、明らかにすることである。具体的な作業としては、ラジオ時代のクイズ番組、テレビ時代のクイズ番組のデータを収集しデータベース化するとともに、クイズ番組関係者からのヒヤリングを行った。それらと並行して、アメリカ合衆国における「クイズショー・スキャンダル」についての検討、日本のクイズ文化について専門家からのヒヤリングなど、クイズ文化の歴史をどのように見るかの検討を積み重ねた。ここから、「高度情報社会」と呼ばれる現代の日常生活における知識や情報のおかれた意味について明らかにする、さまざまな知見が得られた。
著者
江口 聡
出版者
京都女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度はコンピュータの集団的な利用による「責任の曖昧化」の問題を検討した。Therac-25に代表される高度な技術や、コンピュータ・ウィルス、ネットワークによる投票、P2Pファイル交換ソフトウェア等はどれも誰がどのような行為を行なったのかという点を不明確にし、それゆえ責任の所在がわかりにくくなる原因となる。このような問題を扱うには「責任」の本来的な意味が「賠償責任」であるのか、最近一部の論者によって提出されている「応答責任」なのかを明確にする必要がある。報告者の分析によれば、通常提出されている「応答責任論」は「責任を問う」ことと「責任がある」ことの違いを見失っている可能性がある。この点は上で述べたような集団責任の問題をとりあげれば明白になる。集団的な責任においては、(1)責任を問うべき個人が誰であるか明らかでなく、(2)個人を見た場合その落ち度はささいな場合が多く、(3)他人の行為について応答するということの意味が不明確である。報告者の主張では、われわれは責任の問題をあつかうにあたって、伝統的な目的論的な解釈をおこなうべきである。「責任」という概念の中心にあるのは「非難」であり、社会的に望ましくない結果を抑止あるいは予防し、加害者の教育や被害者の救済その他の目的のための手段としてプラグマチックに解釈するべきである。つまり責任という制度は、そのような制度を採用することの帰結によって正当化されるような擬制にすぎない。より詳細な研究成果は、平成18年度に各種学会および刊行物で公開する予定である。
著者
澤 敬子 南野 佳代 江口 聡 岡野 八代 藤本 亮 渡辺 千原 中山 竜一
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、日本のロースクールにおけるジェンダー法学教育のあり方を模索する基本資料として、アメリカロースクールの著名なジェンダー法学教育担当者に対し、ジェンダー法学がロースクールで教えられるようになるまでの軌跡、現在の教育においての課題等をインタビュー調査することにある。主たる調査結果は、「ジェンダーの視点を法学教育に生かすための諸課題-米国フェミニズム法学教育者インタビュー調査から」(『現代社会研究』8号、pp.49-66、2005)で発表し、本科研報告書においても、この研究をもとに、日本における課題を検討している。調査により、アメリカにおいてジェンダー法学教育は、現在、ロースクールにおいてほぼ制度化され、特化されたジェンダー科目として、および/または実定法学の授業での論点として教えられていることが明らかになった。調査における注目点として、ジェンダー科目を最も習得するべきである学生が、ジェンダー科目が選択科目である限り履修しないこと、特化されたジェンダー科目と実定法学での論点として教える二方法のバランス、学生の多様なニーズにどのように答えて授業を行なうか、教育担当者のエンパワメントや研究推進など横の連携の方法などであった。本研究では、これら課題に対する米教育者らの対応についても調査している。とりわけ、教え方のバランスと選択履修の問題は、日本のロースクール教育においても既に重要な論点であり、米国での取り組みは、ロースクール授業に限らない「大学におけるジェンダー法教育」全般を視野に入れた教育としての取り組みの必要性を示唆している。
著者
加藤 紫苑
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本研究の課題は、中期シェリングの主要著作『世界時代』の分析を通して、ヘーゲルによるシェリング芸術哲学の批判とそれに基づく《芸術終焉論》がシェリング自身によっていかに再批判されるのか、という問いに答えることにある。この問題意識のもとに平成30年度は以下の活動を行った。第一に、平成29年9月以来、ドイツ連邦共和国のボン大学国際哲学センターにおいてマルクス・ガブリエル教授のもとで研究を行っており、平成30年度の前半も引き続き同所において研究を行った。平成30年6月にはガブリエル教授の日本への招聘講演にも帯同した。来日中、報告者の日本での所属研究機関の主催により、ガブリエル教授の京都大学で講演会を開催した。その発表原稿を翻訳したものが「なぜ世界は存在しないのか――<意味の場の存在論>の<無世界観>」である。第二に、ヘーゲルのシェリング批判の内実とその妥当性を判定するための論文を執筆した。「〈導入〉としての『ブルーノ』―同一哲学の見過ごされた側面」と題するもので、ヘーゲルの『精神現象学』におけるシェリング批判がある意味で一面的であることを示そうとした。本研究の中心的課題である『世界時代』の再解釈は、具体的には、(1)『世界時代』の構想の解明、(2)『世界時代』の過程の解明、(3)『世界時代』の成果の解明という三つの段階を踏んで行われる。本年度の前半は『世界時代』の執筆の挫折の主要原因を十分に明らかにした上で、後半はこの挫折の経験がシェリングの後期哲学(特にその『神話の哲学』)にとってどのような意義を有しているのかについて考察した。そのためには、この挫折の経験をふまえて行われている『エアランゲン講義』の内容の分析が不可欠であった。主に『エアランゲン講義』の読解を中心とした研究成果はいずれ、国内外の学会において研究発表を行い、各機関誌に論文を投稿する予定である。
著者
伊藤 公一 吉村 博幸
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

携帯電話やPHSなど,人体近傍で使用される携帯無線機器の普及に伴い,機器の設計開発という観点から,人体によるアンテナ特性への影響を定量的に評価する必要性が高まってきている.一方,これら機器より発生する電磁界が人体へ及ぼす影響を定量的に評価する必要性がより高まってきている.しかしながら,実際に人体を用いてこれら評価を実験的に行うことは困難である.このため,人体の電気的および形状的特性を考慮した数値解析用および実験用人体モデルを構築するとともに,これらモデル用いたシミュレーションによる検討方法およひ実験的検討方法の確立が必要不可欠である.このような背景を踏まえ,電磁波の人体に関する影響評価のための標準人体ファントムの開発に関する研究を行った.平成10年度は,マイクロ波帯用生体等価固体ファントムを開発し,これを利用した人体と高周波近傍電磁界との相互影響評価システムを考案した.また,人体頭部リアルモデルファントムを開発し,実際にSAR評価を行った.平成11年度は,前年度開発したファントムの保存性を高めるべく,グリセリンを主成分としたマイクロ波帯用生体等価固体ファントムを開発した.また,警察,消防,放送分野等で用いられる150MHz帯アンテナと人体との相互影響評価について検討を行った.以上の成果により,人体と高周波近傍電磁界との相互影響評価するための簡便なシステムを構築できた.また,保存性に優れたマイクロ波帯用生体等価固体ファントムを開発できた.携帯無線機器の設計開発,およびこれら機器より発生する電磁界が人体に及ぼす影響を定量的に評価する際,本成果が活用されることを期待したい.今後の課題として,本評価システムの高精度化およびファントムのさらなる改良を目指す.
著者
深町 晋也
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2019年度は、前半の期間を中心として、日常的迷惑行為の中でも特に親密圏における問題事象の研究を行った。その基本的な柱は4つに分けることができる。第1の柱は、前年度に引き続き、両親間における子の奪い合いと拐取罪の成否に関する研究である。前年度までに行ったドイツ語圏を中心とする広汎な比較法的検討の成果として、2019年度は、我が国におけるこの問題に関する最高裁判例の分析を行いつつ、なお解決されていない問題点を明確化し、その解決のための方法論的基礎を模索する論稿を公表した。第2の柱は、前年度に引き続き、家庭内における児童に対する性的虐待を中心とした性犯罪に関する研究である。2019年5月に、国立臺灣大学における招待講演・ディスカッションを行い、台湾における問題状況との比較検討の上、我が国の家庭内における性的虐待の問題点について分析した。第3の柱は、2019年5月に開催された日本刑法学会第97回大会のワークショップにおいて、児童虐待に対する刑事法的規制のあり方につき、親の有する懲戒権との関係で分析を行い、また、そうした研究の成果を公表した。従来、親の懲戒権は一定の限度での子に対する体罰をも許容するものと解されてきたが、児童虐待防止法の改正による体罰禁止規定の導入を受けて、こうした懲戒権にいかなる制約が生じ、また、それが刑法上の違法阻却事由にいかなる影響を与えるのかといった点について、比較法的分析や我が国の判例・裁判例分析を通じて一定の結論を示した。第4の柱は、日常的迷惑行為の刑法的規制を考える上で重要となる刑事立法学に関する研究である。ドイツにおける麻疹予防接種「義務化」を巡る議論を丹念に渉猟することで、親の有する子に対する権利・義務と子に対する予防接種「義務」との緊張関係について分析・検討を加えた論稿を公表した。
著者
安楽 誠 小田切 優樹 上釜 兼人
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

慢性腎不全モデルを利用した検討において,天然糖類であるシクロデストリン(CD)において,その包接能による尿毒症物質インドキシル硫酸の血中濃度低下が観察された.さらに天然多糖であるキチンを部分的に脱アセチル化したカチオン性高分子であるキトサンナノファイバー(CSNF)においてもキトサン粉末と比較して顕著なインドキシル硫酸の血中濃度低下に加えた血中抗酸化効果も観察された.そこで,CDとCSNFを素材とした薬物含有ゲルを作成した結果,CDの包接能による薬物の高い封入率とCDNFとCDの静電相互作用による薬物の徐放化が観察された.今回作成した複合ゲルの腎不全などの病態への応用が今後期待される.
著者
須永 和博
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年東南アジアでは、国内観光市場の成長を背景に、空洞化が進んでいた地方都市・旧市街の歴史的景観がノスタルジー消費の対象として再発見されるといった現象がみられる。こうした動きは、アートやデザイン、建築など「創造階級」に属する若年都市中間層の移住や観光産業への参入をもたらし、一部の地域では「創造都市」としての様相を示すようになってきている。本研究では、プーケット旧市街をはじめとするタイ国内の複数の地方都市・旧市街を事例に、創造都市化に伴うローカル・コミュニティの再編の過程について明らかにしたい。
著者
角田 晃一 関本 荘太郎 伊藤 憲治
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

簡易赤外線トポグラムを用いて、日本語で育った人間と、非日本語環境で育った人間における虫の声の処理機能違い「角田理論」の証明がなされた。 (Acta Otolaryngol. 2016)さらに、現在Science誌やNature誌で盛んに指摘されている、中枢の神経活動測定における再現性の問題に対処すべく被検者の姿勢による脳活動計測への影響の検証を行い、1)姿勢変化の影響が脳生理学研究において再現性に大きな影響をもたらすこと、2)研究にあたっては姿勢の安定が基本であり標準化すべきである。以上の2点を明らかにし、 Neuropsychiatry 2017 7 (7), 739-744 に発表した。
著者
宮本 達也 中込 宙史 武田 正之
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

膀胱上皮細胞にPiezo1が発現しており、膀胱伸展刺激を感知し、尿意や蓄尿機能の調節を担っているのではないかと考え、研究を行った。マウス膀胱上皮にはPiezo1が発現していた。またPiezo1は伸展刺激に応答して細胞内にCa2+の流入させることが分かった。またPiezo1阻害薬であるGsMTX4は、膀胱上皮におけるPiezo1を阻害し、伸展刺激反応を鈍化させ、蓄尿に有利に働くことが分かった。
著者
石森 大知
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、ソロモン諸島におけるバハーイー教徒とキリスト教徒の共生関係を考察するものである。バハーイー教徒は、改宗後もキリスト教徒の諸儀礼や行事に参加している。そこには2つの論理がみられる。1つは、彼らは自らを「見えない存在」とする実践を行っていること。もう1つは、彼らは「宗教(lotu)」と「伝統」を異なるものとみなし、後者の領域に親族的な事柄を置くことで、既存の社会関係の維持を図っていることである。これらの論理が村落部における二者間の共生関係の基盤にあることが明らかとなった。