著者
大坪 志子 森 康 森 未来
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

縄文時代後期後葉(太郎迫式期)に、九州に出現・盛行するクロム白雲母製の石製装身具は、後期末~晩期にかけて東日本に拡散する。悉皆調査の結果、中部地方が主要分布圏の東限とみられる。クロム白雲母製装身具の東進の背景は、韓半島からの初期農耕の受容と拡散に関連があると想定したが、太郎迫式期に近畿地方での加工が確認され、関東にも数例の類例があることが判明した。東進の背景は、太郎迫式期の土器の動態とより関連が強い可能性がある。
著者
吉本 尚
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本では24時間アルコール飲料の購入が可能であったり、多くの飲食店において飲み放題サービスが提供されるなど、未だにアルコールに対して寛容な環境がある。本研究は前向きコホートによって飲み放題システムの1回飲酒量に与える影響を明らかにする。本研究によって、アルコールと上手に付き合いながら社会で活躍するための大学生への教育や、大学生自身の飲み放題の利用が自分たちの飲酒量に与える影響を知り、自己選択を行うことが可能となる。また、飲み放題サービス提供者に対する提供方法等についての議論にも発展する可能性がある。
著者
井上 幸江
出版者
山口大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1987

シュードモナス属細菌より分離された, トルエンやキシレンの完全分解系を支配するTOLプラスミドについて, 発現調節機構を明らかにするために本研究を行なった.1.活性化因子XylRにより正の調節を受ける第1オペロンと調節遺伝子xylSのプロモーター領域を含むDNA断片をクローニングし, 逆転写酵素マッピング法により転写開始点を決定し, その周辺の塩基配列を決定した. その結果, 両プロモーターの構造は, 通常とは異なる大腸菌のシグマ因子NtrAをもつRNAポリメラーゼによって転写がおこるプロモーターと類似していることが示された.2.第1オペロンとxylSの発現を大腸菌のNtrA変異株を用いて測定した. その結果, 両遺伝子とも, 活性化にはNtrAが必要であることが明らかとなった.3.xylR遺伝子の全塩基配列を決定し, 一次構造を明らかにした. XylRのアミノ酸配列を窒素の利用や固定に働く遺伝子群の活性化因子NtrCやNifAの一次構造と比較した. その結果, これら3つの活性化因子のC末端側約200アミノ酸にわたって非常によく似た配列があり, お互いの相同性は約50%であった. この3つの調節蛋白に共通していることはNtrAをシグマ因子としてもつRNAポリメラーゼにより転写がおこる遺伝子群に対して正の調節因子として働くことである. このことから, 相同領域は, NtrA-RNAポリメラーゼと相互作用をもつことが示唆された.以上のことから, 分解系酵素誘導において各遺伝子が遂次発現されるときに, その発現調節に通常とは異なるシグマ因子が関与することが明らかとなった.XylR蛋白の分離精製は進行中である.
著者
木谷 秀勝
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

児童期から支援を継続して10年間追跡調査を続けた高機能自閉症スペクトラム障害(以下、高機能ASD)がもつ安定した「自己理解」の背景には、柔軟な状況判断を通した「自分らしさ」の表現と援助要請スキルの高さ、学習・就労体験からの達成感の高さが重要である。その一方で、青年期以降から支援を継続した高機能ASDの場合、家庭や職場において受身的な姿勢で支援を受けるだけでは、青年期以降の能動的な計画性や予測能力が十分に育たないことがわかってきた。そこで、集中型「自己理解」プログラムを通して、高機能ASDの能動性が賦活され、葛藤や対処スキルへの気づきが促進される効果が示唆された。
著者
椛 秀人 奥谷 文乃 村本 和世 谷口 睦男
出版者
高知大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

雌マウスに形成される交配雄フェロモンの記憶のシナプス機構、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養によるニューロンの成熟分化、シナプス形成、及び幼若ラットの匂い学習機構を解析し、以下の結果を得た。1.フェロモン記憶の基礎過程としてのLTPの入力特異性と可逆性スライス標本を用いて、副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導される長期増強(LTP)に入力特異性と可逆性が認められた。2.僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のalpha2受容体を介した抑制のメカニズムノルアドレナリンは僧帽細胞のG_<i/o>を活性化して電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制するほか、Ca^<2+>流入後の放出過程をも抑制することが判明した。3.alpha2受容体の活性化によるシナプス伝達のハイ・フィデリティの達成alpha2受容体の活性化は副嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのシナプス伝達のハイ・フィデリティを達成させた。これがLTP誘導促進の鍵となっているものと考えられる。4.副嗅球ニューロンとの共培養による鋤鼻ニューロンの成熟と機能的シナプスの形成副嗅球ニューロンとの共培養によって鋤鼻ニューロンが成熟分化し、3週間の共培養により両ニューロン間に機能的なシナプスが形成されることが判明した。5.幼若ラットにおける匂いの嫌悪学習とLTPとの相関匂いと電撃の対提示による匂いの嫌悪学習の成立には電撃による嗅球のbeta受容体の活性化が不可欠であった。スライス標本を用いて、嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導されるLTPもbeta受容体によって制御された。この知見は、このLTPが匂い学習の基礎過程であることを示唆している。
著者
森 暢平 河西 秀哉 茂木 謙之介 舟橋 正真 松居 宏枝 加藤 祐介
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本の立憲君主制研究は、「日本史」の枠組みで検討されるか、英国との比較のなかでしかなされてこなかったのが現状であり、日本の立憲制のモデルになったドイツとの比較があまり行われてこなかった。そのため本研究は、ドイツの公文書館に所蔵される史料および日本の宮内公文書館の史料を中心に、ドイツ人研究者を交えて、日独の立憲君主制の比較研究を行う。具体的には、(1)新たな立憲君主制論の構築、(2)「宮廷システム」をドイツからの移転という視点で捉え直す研究、(3)皇族の位置づけをドイツの模倣という観点から再検討する研究の3つの分野から研究をすすめる。
著者
位藤 邦生 吉田 典可 小林 芳規
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究は角筆文献の発見者でありその後の角筆文献研究を領導してきた小林芳規を研究分担者に迎えて、角筆文献をさらに発掘し、従来の語学的見地からのみでなく、広く文化史資料として角筆文献を活用せんとする試みであった。さらに角筆文献によって得られる情報(文字情報および絵画情報)を画像処理によってコンピュータに入力し、それらの情報を国内外の研究者に提供する方法の研究を同時に行ってきた。位藤邦生は山口県宇部市厚東にある恒石八幡宮蔵『角筆下絵八幡大菩薩御縁起』に注目し、これを三原市御調八幡宮蔵『角筆下絵八幡大菩薩御縁起』と比較することによって両本の関係や中世において寺社縁起の類がどのようにド伝播したかの研究を進めた。小林芳規は二年間にわたって全国各地の図書館や文庫に赴き、多くの角筆文献を発見調査した。これまでの全発見点数は平成7年3月現在で1,485点にのぼっている。そうした発見の文献の中には、大英博物館蔵の敦煌文献中にあった角筆文献があり、日本における角筆文献の淵源としての中国大陸での角筆使用の実態を探ることが今後の重要な研究課題となった。また高野長英が獄中で書いた角筆による手紙が解読され、脱獄の半年前から長英が脱獄の意思を持っていたことが判明した。広島大学が新たに購入した角筆文献の中には千利休の聚落屋敷の絵図等があり、これには角筆で方眼が描かれている。角筆文献の大半は漢籍であるが、山林の境界線を角筆で描いたものなど、さまざまな分野の文献が発見され、文化史的見地からの研究は今後ますます重要になることが予想される。文字だけでなくこうした絵画・地図資料等をコンピュータに入れて提供する方法の検討も今後併せて行われなければならない。
著者
勘米良 祐太
出版者
浜松学院大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、大きく2つの問いを設定する。(1)植民地朝鮮における文法教育は、内地の教育内容に対しどのような内容の加除を行ったか。また、その目的はなにか。(2)(1)による変更は、内地の教育内容にどのような影響を与えたか。また、その目的はなにか。植民地における「国語」教育は、および内地における国語教育から影響を受け、また逆に影響を与えながら展開していたことが予想される。植民地を包み込んだ考察を行うことで、「国語」教育史を新たな視点から照らし直すことをめざす。また相対的に数が不足している、植民地朝鮮における言語施策の実証的な考察(教科書や授業記録などの史料を用いた考察)を行うことをめざす。
著者
種本 和雄
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

チエノピリジン系抗血小板剤であるクロピドグレルの術前至適中止タイミングについてVerifyNowシステムを用いて検討した。同薬剤中止後の血小板機能回復曲線から検討したところ、中止後3~5日でカットオフラインを越えて血小板機能が回復していた。同薬剤術前中止時期としては従来言われている14日に比べて大幅に短縮することが可能である。VerifyNowを用いて評価した術前血小板凝集能と術後ドレーン出血量との関係は有意ではなかったが、血小板凝集能が低い症例でドレーン出血量が多い傾向がみられた。
著者
岩井 祥子 池田 華子 長谷川 智子 吉村 長久 飯田 悠人 川口 恵理 末次 仁美
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

分岐鎖アミノ酸がストレス下の培養細胞に対し、細胞死抑制効果を持つこと、細胞内ATP濃度低下の抑制効果を持つこと、が明らかになった。また、分岐鎖アミノ酸を網膜色素変性モデル動物や緑内障モデル動物に投与することによって、視細胞変性や網膜神経節細胞死が抑制されることが明らかになった。網膜色素変性モデル動物では、分岐鎖アミノ酸投与によって、網膜の機能低下が抑制されることが明らかになった。分岐鎖アミノ酸は、小胞体ストレスの抑制や細胞内ATP濃度低下の抑制、mTORシグナルタンパクの活性化を介して、細胞死抑制効果を示していた。分岐鎖アミノ酸は、眼難治疾患の新たな治療法になる可能性がある。
著者
すぎ本 重雄 藤田 岳久 阪口 哲男 武者小路 澄子 田畑 孝一
出版者
図書館情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

Netscape等のWWWブラウザが広く利用され、ディジタル図書館プロジェクトの多くもこれらを利用している。しかしながら、現在のWWWが提供する多言語環境は十分ではないため、非英語情報の流通は十分ではない。一方、図書館は多様な言語の情報を所蔵するため、最も基本的なサービスであるOPACでさえも多言語環境を必要とするため、現在のWWWをそのまま利用することは困難である。そのため、本研究では、多言語文書を読む機能を中心課題として以下の研究を進めた。1.多言語文書の検索と閲読(ブラウジング)のためのソフトウェアツールセットの開発2.利用者の環境に合わせて多言語文書の利用環境を構築するツールの開発本研究ではは多言語文書ブラウザ(MHTMLサーバおよびそのクライアント)を開発し、それを用いたゲートウェイサービスを行ない、サーバを数ヶ所のサイト(海外)に移植してきた。さらに、ゲートウェイサービス用に開発したソフトウェアを多言語文書の提供に利用できるよう拡張し、日仏英3ヶ国語で書いた日本昔話(10編)からなる多言語電子テキストコレクションの提供に適用した。このほか、本学のOPACデータをSGML化して作成した目録データベースの検索ユーザインタフェースにMHTMLを利用した海外利用者向けのOPACやMHTMLを利用した遠隔地からの日本語入力ソフトウェアの試作を行なった。研究成果については、国際会議、学術雑誌等に発表した。開発したソフトウエアは我々のWWWサイトを通じて公開し、自由にダウンロード・移植できるようにしている。また、昔話のコレクションに関して、コレクションの拡大のための協力者を募集した結果、何人かの応募があり、かつ応募者は国内だけではなく世界的に広がっている。
著者
河上 麻由子
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

5~9世紀に仏教を受容したアジアの王権は、勅命による経典目録の編纂や寺院建立といった崇仏事業、あるいは君主を菩薩・転輪聖王と位置づけることで、仏教の持つ影響力を王権に内包していった。仏教に裏付けられた王権の正統性は対外的にも喧伝され、諸国の対外政策・認識には仏教の影響が認められるようになる。その結果、当該時代のアジアでは、仏教を思想的基盤とする諸国間交渉が、様々なレベルで展開したといえる。
著者
宮腰 昌利
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

大腸菌やサルモネラなどの腸内細菌科細菌で見出されたmRNAの3’UTRから生成するsmall RNA (sRNA) は、従来型のsRNAと同様に転写後レベルで遺伝子発現を調節する機能を持つ新しいタイプの制御因子である。本研究はmRNAの長年見過ごされていた機能を浮き彫りにし、RNAの機能を理論的に拡張することで遺伝子の概念を覆すことを狙いとしている。また、病原性細菌のRNAによる遺伝子発現制御について新しい知見を得ることで、細菌感染症の抑止に応用することが期待される。
著者
中野 雅之
出版者
富山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

当該年度、申請者はKAGRAの入射光学系、特にPre-stabilized laser(PSL)とInput mode cleaner(IMC)について開発とインストールを行ってきた。入射光学系は主干渉計に安定な光を送るためのサブシステムである。多くの安定化は光共振器を使って行われる。重力波観測機では強度や周波数の安定化されたレーザー光が必要不可欠であるが、当該年度は特に周波数安定化について、インストール、インテグレーションを行い、その性能評価まで完了した。KAGRAの周波数安定化システムは全部で3つの周波数参照を使った3stageの階層制御で行う。このうち、第一階層の周波数参照共振器であるReference cavity (RC)と第二階層の周波数参照共振器であるIMCは入射光学系の管轄である。PSL上に置かれるRCを使った1st loopでは、レーザー結晶に取り付けられたPZTやbroadband EOMにフィードバックし、レーザー周波数を制御し安定化する。RCの制御帯域は500kHz程度である。second loopではRCより大きく、共振器長も安定なIMCを周波数参照とし、さらなる安定化を行う。また、RCの方が安定な1Hz以下の低周波帯ではIMCの共振器長を制御する。 IMCの制御帯域は20kHz程度である。Reference cavity(RC)とIMCの制御は非常にロバストで、調整することなく1週間以上ロックし続けることができることは実証されている。また、現状では2kHz以上で要求値を達成していないが、達成のためのサーボフィルタの改善設計などを行い、要求値達成可能性を示した。
著者
高橋 力也
出版者
日本大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、国際連盟における国際法の法典化事業に深く関与した米国の国際法学者ハドソン(Manley O. Hudson)の残した個人文書や、米国政府の外交記録等を海外の公文書館・図書館で渉猟し、これらの分析をすることで、連盟を中心に行われた国際法の発展に対する米国の関わりを史的に明らかにするものである。
著者
住谷 昌彦 四津 有人 大住 倫弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

【目的】運動器慢性疼痛患者では,運動恐怖により運動発現過程で知覚運動協応の破綻が生じていることが報告されているが、その定量的評価は確立されていない.本研究では,到達・把握運動の3次元動作計測から取得される運動学的データを用いて運動恐怖による知覚運動協応の変容を定量的に分析することを目的とする。【方法】上肢の運動恐怖を伴う慢性疼痛患者を対象とし、健肢と患肢それぞれについて3次元動作解析を行った。3 次元位置磁気計測システムを用いて、到達・把握運動の運動軌跡を計測した。到達運動における運動速度の時系列変化を算出し,運動開始から運動速度がピークに達するまでの区間(加速期),運動速度のピークから運動終了までの区間(減速期)に分割した。太さの異なる目標物に対する把握動作の指最大開大幅と手運動速度を計測し、目標物の太さに依存する運動量に応じた運動恐怖の変化を動作解析により客観化できるか評価した。【結果】患肢運動は健肢運動に比して明らかに速度が遅く、指最大開大幅も小さかった。この傾向は、目標物の太さに応じて増悪した。ただし、目標物の太さが大きくなると健肢では指最大開大幅が大きくなり、目標物の太さに応じたこのような傾向は患肢でも維持された。【考察】患肢でも目標物の太さに応じた指最大開大幅は変化したことから生理的な運動表象の立案は行われていると考えられる。一方、目標物の太さに応じて加速期の運動が特に障害され指最大開大幅が不自然に小さくなっていること特に障害されていることから運動実行までの過程で運動恐怖が修飾していることを示唆する。これらの結果から、知覚-運動協応の中枢神経系における内的モデルに運動恐怖による修飾回路を組み入れることに成功した。
著者
柳本 史教
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

平成30年度は以下の研究項目を実施した. 1. 平成29年度に実施したシアリップ形成試験結果の分析:複数の温度,負荷応力で実施したシアリップ形成を伴う脆性亀裂伝播試験に手えられた破面を非接触型3次元形状測定機を用いて解析した結果を分析し,シアリップ厚さの定量化を行った. 2. 亀裂先端近傍応力場決定因子の解明:従前より実施していた有限要素解析を用いた亀裂先端近傍応力場の解析を引き続き実施し,非定常効果や速度による影響を取りまとめた. 3. 脆性亀裂アレスト予測理論モデルの開発:上記1,2の成果およびこれまで実施してきた研究の内容を統合し,物理的根拠に立脚した脆性亀裂アレスト予測数値モデルを開発し,その妥当性を検証した.その結果,従来の理論モデルのような非現実的な家庭を導入することなくアレスト現象を再現することができることが示された. 4. 透明樹脂を用いた3次元構造中の亀裂伝播観察:実験難易度,コストの観点から実験趣旨を変更することなく透明度が高い弾性体であるアクリル樹脂を用いた高速き裂に対する3次元構造因子の影響について実験的に調査を行った.なお,当初想定していた3次元Application phase有限要素解析は計算コスト上現実的ではないことが研究途上で明らかになったことから実施せず,3次元効果についてはシアリップ形成試験結果を整理することに注力した.上記のうち,1の成果及び2,3の成果をそれぞれ取りまとめ2連報の論文としてすでに破壊力学に関する国際論文誌に投稿している.また,4については破壊に関する国際学会22nd European Conference on Fractureにて発表を実施済みである.
著者
沼野 藤夫 GRANDOS Juli PARK Y.B HOFFMAN Gray REYESーLOPEZ ペドロエー ROSENTHAL Ta ARNETT Frank MECHRA N.K. SHARMA B.K. PREEYACHIL C SUWANWELA Ni 角田 恒和 能勢 真人 松原 修 木村 彰方 長沢 俊彦 西村 泰治 CHARAOENWONGSE P. REYES-ROPEZ P.A. GRANDOSE J. PEDRO A Reye FRANK C Arne YACOV Itzcha N.K Mehra B.K Sharma NITAYA Suwan Y.B Park
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

高安動脈炎は非特異性血管炎であり、その成因は不明で、我国では難病の1つに指定されている。長年の研究の結果、この血管炎の発生に自己免疫機序の関与が示唆されるが、まだ十分解明されるまでには至っていない。本症は、臨床的にもいくつかの特徴が明らかにされており、(1)若年女性に多発し、(2)アジア諸国に多く、欧米に少ない種属差が知られている。我々は、本症の成因に遺伝要因の関与を想定し、現在までにHLA A24-B52-DR2のhaplotypeが本症患者に有意に高い頻度で出現していることを確認し、この事実がアジア諸国に多発する本症の謎と解きあかす鍵と考えられた。なぜならばB52の高い出現頻度を示しアジア諸国、アメリカインディアン、南米と本症の多発地域とが一致するからである。その後の検索で南米、韓国、インド等に於いても、本症患者にB-5 or B-52が有意に高い頻度を示すことが明らかにされてきている。そこで本症の病態につき国際研究を開始したが、この国際比較に於いていくつかの新しい事態が明らかにされた。その1つは、各国によって男女比が異なることである。我国では、女性が圧倒的に多い事実に対して西方にゆくに従って、その比率が減少し、イスラエル、トルコでほぼ6:4の割合までにゆくことである。もう1つは種属によりその臨床病態が異なり、我国では上行大動脈より大動脈弓部にかけての病変が多いのに対し、インド、タイ、南米(メキシコ、ペル-)ではむしろ腹部大動脈に病変が多いという差が明らかにされた。特にインド等では腹部大動脈に限局した患者もかなり認められた。このことから病態の分類に腹部大動脈の病変のみを含めた新しい体系を国際間で取り決め、この新分類に従った患者の実態を目下明らかにしつつある。このことはHLAの研究に於いても新たな展開を開かしめた。我々の研究に於いてHLA B-39の存在が健康日本人に比し有意に高い統計上の成績が得られたが、実数はわずか10名に満たぬ程であった為に放置しておいたが、そのDNAレベルの研究から、本症患者にのみ認められるB-39-2という新しいタイプの存在が発見された。そしてこのB-39は南米や東南アジア諸国に於いてはB-52より高い出現頻度を示しており、B-39と連鎖不平衡を示す遺伝要因が改めて注目されるようになっている。目下、各国に於いてB-39の出現頻度とその臨床病態との比較が新たなテーマとして取り上げられ、目下検討が成されつつある。このDNAレベルの解析は、各国より送ってもらった血液にて当大学で目下行いつつある。
著者
西林 仁昭 中島 一成 吉澤 一成 坂田 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究代表者らがこれまでに達成した知見を踏まえて、「温和な反応条件下でのアンモニア合成反応法の開発」と「温和な反応条件下でのアンモニアの分解反応の開発」に取り組んだ。前者では、トリホスフィン(PPP)型三座配位子やPCP型ピンサー配位子を持つ窒素架橋2核モリブデン錯体を設計・合成し、それらを触媒として利用した触媒的アンモニア生成反応を検討した。その結果大幅な触媒活性の向上を達成した。後者では、フェロセニルジホスフィンを配位子として有する窒素架橋2核モリブデン錯体の設計・合成に成功し、酸化還元による架橋窒素分子の窒素―窒素三重結合の開裂及び再結合を可逆的に制御できることを見出した。
著者
林 梅 佐藤 哲彦 村島 健司 西村 正男 荻野 昌弘
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、中国辺境地域が、市場経済や国家による開発に組み込まれる過程で、均一的な文化の受容を通して地域社会を変容させながらも、少数民族独自の伝統や文化を継承していく様態を明らかにすることに努めてきた。それは、グローバリゼーション時代において直面せざる得なくなった多文化社会のあるべき方向性を模索する作業で、そこには多重の人為的な「境界」による他者性を生きながらも、そうした「境界」を使い分けている構造があったといえる。