著者
中村 建太 寺井 早紀 白井 直樹 海老原 充
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.78, 2016 (Released:2016-11-09)

COコンドライト隕石は岩石学的にタイプ3に分類される炭素質コンドライトの1グループで、変成の程度に応じて、さらにタイプ3.0から3.7に細分化された分類を持つ。この岩石学的分類の違いは熱水変質の程度を示していると考えられている。しかし、元素組成と岩石学的分類の関係性は明らかになっていない。そこで、本研究では宇宙化学的揮発性元素に着目し、誘導結合プラズマ質量分析法を用いて、岩石学的分類の異なるCOコンドライト隕石中の揮発性元素の定量を行った。得られた結果より、揮発性元素組成と岩石学的分類の関係性を考察することを目的とした。
著者
尾﨑 俊也
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.85-97, 2017 (Released:2018-06-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本稿は、社会学的行為理論の枠組みから男性性概念を用いて男性のDVや性暴力を研究しているメッサーシュミットから知見を得て、暴力行為と男性性の関係を明らかにすることを目的とする。行為理論の枠組みから、男性の暴力行為がどのように理解されうるのかは大きく問われてこなかった。他方、犯罪心理学の分野において、男性の暴力行為の原因が個人の病理的な特性や性衝動に回収される傾向にあった。そのなかで、メッサーシュミットの研究からは、暴力行為に極めて社会的な過程があることが理解できる。メッサーシュミットは暴力行為の社会的意味が暴力行為者にとって重要なものであり、暴力行為を通じて、男性性が実践される側面を解明した。この意味で、われわれの社会が構築してきた男性性が、暴力加害に作用していると言える。男性の女性に対する暴力については、支配的な男性性をめぐる男性同士の社会的な闘争で周縁化された男性が、女性に対する暴力を行使することで、支配的な男性性を実践する社会過程があると分かった。さらに、性暴力は異性愛に特徴づけられた男性性を行為することを通じて、より支配的な男性性を実践できる傾向にあることも読み取れた。このように、女性に対する男性の暴力が発生する背景に、社会的に構築された男性性があり、また性的な意味を経由することで、よりその支配性が暴力行為者によって見出されるのである。
著者
福間 将文
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

量子重力理論の新しい定式化として、量子力学の起源をランダムネスに置き、「ランダムネスから時空の幾何が発現する機構」を構築した。具体的には、マルコフ確率過程における遷移の難しさを定量的に表す量として「配位間の距離」という概念を初めて導入し、様々な確率過程からどのような時空が得られるのかを調べた。とくに行列模型の確率過程については、固有値を時空の座標とみなしながら、結合定数を付加的力学変数とする焼き戻しを行うと、拡大された配位空間に、3次相転移点をホライズンとする漸近的反ド・ジッター・ブラックホールの幾何が現れることを示した。
著者
山口 敦美 藤谷 知子 大橋 則雄 中江 大 小縣 昭夫
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4039, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】QUATは2種の4級アンモニウム塩(アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドとアルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド)の消毒、殺菌剤である。布製品や室内空間を殺菌消臭する目的で、溶液を散布して用いられている。一般的な毒性については古いデータがあるのみで、マウスに経口投与した時、LD50は150-1000mg/kgと報告されている。これまでに我々は、QUATを含む消臭・ハウスダスト除去剤の噴霧で乳幼児が経口摂取する可能性を考え、健康に影響を及ぼすかどうかについての検討をおこなった結果、消臭・ハウスダスト除去剤2mL/kgを21日間新生マウス仔に経口投与した後それらのマウスの交配から生まれた仔マウスに、死亡率の増加と精巣重量の低下を観察した。QUATの免疫系への作用は不明なので、まず免疫毒性を持つかどうかを調べる目的で、8週齢雌ICRマウスにQUATを経口投与し、免疫系に作用を及ぼすかについて検討をおこなった。 【方法】8週齢雌ICRマウスにQUATを0, 50, 100, 200mg/kg経口投与し、2日後に体重と臓器重量を測定、胸腺、脾臓と血中のリンパ球をフローサイトメーターで分析、脾臓細胞のサイトカイン産生能の変化をリアルタイムPCRで測定した。また、QUAT投与の1日後に卵白アルブミンを投与して、産生される抗卵白アルブミンIgM抗体をELISA法で測定した。 【結果・考察】QUAT投与で用量依存的に血中B細胞の減少、B細胞分化に関与するサイトカインIL6, IL10の減少と、抗卵白アルブミンIgM抗体産生の減少が、有意な減少が200mg/kgの投与時に観察された。 今回の結果は、単回大量投与ではあるが、免疫系への抑制作用が用量依存的に見られたことから、繰り返し使用する時の安全性への考慮の必要性が示唆された。

19 0 0 0 OA 2.肥満症と炎症

著者
菅波 孝祥 小川 佳宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.989-995, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

肥満を中心として発症するメタボリックシンドロームの基盤病態として慢性炎症が注目されている.最近,マクロファージを中心とする免疫担当細胞が肥満の脂肪組織に浸潤し,アディポサイトカインと総称される生理活性物質の産生異常を招来することにより,メタボリックシンドロームの病態形成に中心的な役割を果たすことが明らかになってきた.本稿では,肥満の脂肪組織に浸潤するマクロファージに焦点を当てて,脂肪組織炎症の分子機構に関する最近の知見を概説する.
著者
藤長 かおる 伊藤 由希子 湯本 かほり 岩本 雅子 羽吹 幸 磯村 一弘
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:24359750)
巻号頁・発行日
no.18, pp.33-48, 2022-03

『いろどり 生活の日本語』は、主に就労目的で来日し日本で生活する人を対象とし、基礎的な日本語のコミュニケーション力を身につけるための教材として開発された。生活ですぐに役立つ日本語を身につけるために、①「JF 生活日本語 Can-do」を参照して生活場面に必要な課題遂行226項目を目標とし、②会話理解では日常生活で遭遇する可能性の高い口語表現を取り入れ、読解素材ではレアリアを活用する等、日本で生活する人にとっての真正性を重視した。③文法や語彙など言語知識の学習では、理解できればいい日本語と使える日本語を区別して考え、④自律学習をサポートするために「文法ノート」「漢字のことば」「日本の生活 TIPS」を設けた。また、『いろどり』は著作権フリーの教材としてウェブサイト上で公開することにより、各国教師による副教材の作成・共有が進み、日本国内・国外を問わず、教師同士の連携を促進する教材となっている。
著者
小澤 実奈 村田 伸 窓場 勝之 小西 佑磨 阪本 昌志 高橋 萌 吉田 安香音 安彦 鉄平 白岩 加代子 阿波 邦彦 堀江 淳 甲斐 義浩
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.179-183, 2016-01-31 (Released:2016-03-17)
参考文献数
18
被引用文献数
4 7

要旨:本研究の目的は,最適歩行と最速歩行の歩行パラメーターと下肢筋活動を比較し,それぞれの特徴を明らかにすることである。方法は,健常成人女性15名を対象に,歩行中の大腿直筋,大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,腓腹筋内側頭の筋活動量を,表面筋電計を用いて測定した。なお,歩行パラメーターは歩行分析装置を用いて評価した。その結果,歩行パラメーター,筋活動においてすべて有意差を示した。さらに,最適歩行に比べ最速歩行の歩行率は歩幅よりも有意に増加し,立脚時間・両脚支持時間は有意に減少した。下肢の筋活動においては,最速歩行ですべての筋活動が2倍前後増加し,遊脚期の大腿直筋のみ約3倍増加した。以上のことから,歩行速度の増大には,歩行率の増加,立脚期の短縮が大きく関与し,また筋活動では前方への推進力としての役割が強い大腿直筋が大きく影響していることが示唆された。
著者
高橋 均 荒 このみ 山本 博之 増田 一夫 遠藤 泰生 足立 信彦 村田 雄二郎 外村 大 森山 工
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

戦後、欧米先進諸国に向けて、開発途上国出身の多くの移民が流入し、かれらを文化的に同化することは困難であったため、同化ではなく統合を通じてホスト社会に適応させようとする≪多文化主義≫の実験が各地で行われた。本研究課題はこのような≪多文化主義≫が国際標準となるような≪包摂レジーム≫に近い将来制度化されるかを問うものである。結論として、(1)≪多文化主義≫の背景である移民のエンパワーメントは交通・通信技術の発達とともになお進行中であり、いまだバックラッシュを引き起こす危険を含む。(2)第一世代はトランスナショナル化し、送出国社会と切れず、ホスト社会への適応のニーズを感じない者が増えている。(3)その反面、第二世代はホスト社会の公立学校での社会化により急速に同化し、親子の役割逆転により移民家族は不安定化する。このために、近い将来国際標準的な≪包摂レジーム≫の制度化が起こる可能性は低い。
著者
塙 芳典 東山 正明 種本 理那 伊東 傑 西井 慎 溝口 明範 因幡 健一 杉原 奈央 和田 晃典 堀内 和樹 成松 和幸 渡辺 知佳子 高本 俊介 富田 謙吾 穂苅 量太
出版者
日本小腸学会
雑誌
日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集 第58回日本小腸学会学術集会 (ISSN:24342912)
巻号頁・発行日
pp.36, 2020 (Released:2020-11-19)

【背景・目的】炎症性腸疾患患者(IBD)の急増の一因として食事などの環境因子が想定されている。様々な加工食品に用いられている人工甘味料は安全性が充分に検討されているものの、近年腸内細菌への影響が報告された(Nature 2014)。そこで人工甘味料の中でも特に消費量の多いアセスルファムカリウム(acesulfame potassium; ACK)が腸管免疫に及ぼす影響を検討した。【方法】生後7週C57BL/6Jマウスに水とACK(150mg/kg w/v)を8週間自由飲水させた。その後、マウスを安楽死させ、小腸を採取、組織学的スコア、各種炎症性サイトカイン、接着分子の発現を評価した。FITCデキストランを用い、小腸の透過性亢進の有無を評価した。回盲便を用いてACKによる腸内細菌叢の変化を次世代シーケンサーで解析した。生体顕微鏡下でリンパ球のマイグレーションを観察した。【結果】ACK投与群でコントロール群と比べ、HE染色を用いた組織学的スコアは有意に上昇した。またTNFα、IFNγ、IL1β、MAdCAM-1のmRNAの発現は有意に上昇し、GLP-1R、GLP-2Rの発現は有意に低下していた。ACK群で免疫組織学的にMAdCAM-1の有意な発現の増加を認めた。ACK投与により小腸粘膜の透過性は亢進していた。腸内細菌はACKの自由飲水群でdysbiosisを認めた。生体顕微鏡観察ではリンパ球のマイグレーションがACK群で有意に増加し、抗β7抗体投与で有意に低下した。【結論】人工甘味料の長期投与がdysbiosisを誘導し、接着分子発現の亢進など腸管免疫に影響を及ぼしており、人工甘味料がIBD発症の環境因子の一つである可能性が示唆された。
著者
増田 雄亮 八重田 淳 會田 玉美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.68-79, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
42

【目的】本研究の目的は,日本の作業療法士を対象とした新しいEBP自己評価尺度(EBPSA)を開発することである.【方法】全国の回復期リハビリテーション病棟に勤務する作業療法士1,216名を対象として,質問紙による郵送調査を実施した.【結果】531名(回収率43.7%)から回答が得られ,このうち515名のデータを有効回答とした.因子分析の結果,4因子14項目が抽出され,モデル適合度は,CFI=.972,TLI=.965,RMSEA=.048であった.内的整合性の検討では,下位尺度および尺度全体のα係数はいずれも.80以上を示した.【結論】本研究において,良好な尺度特性を有するEBPSAが完成した.
著者
野村 岳志
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.613-621, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

緊急時の外科的気道確保としての輪状甲状膜穿刺・切開は種々の気道管理ガイドラインの最後の手段の一つである.手技自体は喀痰吸引などを目的に計画的に行う輪状甲状膜切開と同じであるが,施行する環境は大きく異なる.SpO2モニターが低音調で頻脈,不整脈,あるいは徐脈を告げ,アラーム音が鳴り響く中での手技である.時間的余裕はなく,数分で心停止となる.このような状況下での緊急輪状甲状膜切開はやはり手技自体の成功率が下がる.そのため換気不可能となった場合は人員を集め,生理学的状態を考えながら換気不可能に対処するタスクチームを編成する必要がある.確実な輪状甲状膜切開と同様に,二人法のマスク換気,薬剤の投与,除細動器・救急カートの準備,確実な記録記載などを行うことも重要で,タスクチームとしての対処が患者の生命予後を左右する.