著者
西村 大志
出版者
広島国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、文化・歴史社会学的方法を用いて、おもに日本における人体模倣の技術、思想、「もの」それ自体(人体模型・マネキン・人間型ロボット・人形・フィギュアなど)の変遷、さらにそれに対する人々の違和感、および共感を考察するものである。フィールドワークも同時に行い、史資料にとどまらない研究を展開するものである。昨年までは口頭発表が中心であったが、本年度は文字媒体での発表を重視した。2本の論文を2冊の書籍に掲載すべく、史資料を補充しつつ研究をおこなった。まず、日本のラブドールとアメリカのリアルドールを比較分析し、人の人体模倣への距離のとり方や、消費社会論の視点からみたドールなどを、「人体模倣の現在-リアルドール・ラブドール・スーパードルフィーをめぐって-」(仮題)としてまとめ、田中雅一編『フェティシズム』京都大学学術出版会(仮題)に所載するため、2007年9月に出版社に提出した。さらに、人体模倣に対する人の親和感と違和感を「不気味の谷」という理論を応用し、「『人体模倣』における生と死そして性-『不気味の谷』を補助線として」(仮題)としてまとめ、井上章一編『(仮題)性欲の文化史』講談社に所載するため、編者に2007年10月に提出した。この二つの論文をあわせ、さらに写真や図を増強し、考察と検討をさらに加えて、『人体模倣の変遷とその受容-文化・歴史社会学的考察-』(広島国際大学心理科学部2008年3月)として、研究成果報告書にまとめた。
著者
濱中(万見) 淳子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.47-65, 2002-10-31

The expansion of graduate education has been one of the major policy priorities in the area of higher education in recent years. Meanwhile, enrollments in graduate courses, especially in MSS (master programs in social sciences) have been rising rapidly. This paper attempts to analyze the mechanism of the expansion of MSS programs. For this purpose, the following two questions are posed. (1) Has the actual expansion conformed to the governmental framework? (2) If not, how can the mechanism behind the expansion of MSS enrollments be explained? On the first question, the following findings are made. At the end of the 1980s, there was a significant shift in government policy, encouraging the expansion of MSS programs. At the time, the government had two preconceptions about MSS. One was that students with a high motivation for study would apply for admission, and another that the social demand for students who had completed MSS programs was increasing. The government assumed that a significant amount of talent would be developed through MSS courses if the enrolment capacity expanded. However, the actual expansion fell below these expectations. On the second question, a methodological strategy was used of analyzing the interaction between students (demand side) and each individual university (supply side) as suggested by Craig and Archer. From this analysis, coupled with the findings for the first question, the following expansion mechanism was obtained : Following the shift in government policy at the end of the 1980s, national and private universities that already had MSS courses began to expand their admission capacities around 1990. This brought an expansion in demand among students for admission to MSS courses. However, in contrast to the expectation of the government, the social demand for students who had completed MSS programs did not increase much, and many of the students who entered MSS courses actually did not have a high motivation to study. There was also an expansion in the latter part of 1990s, because many private universities that had not focused much on MSS courses until the middle of the 1980s built up admission capacity based on the expected demand among students. Thus, an autonomous expansion among private universities occurred. These findings imply and suggest the following : (1) The actual expansion in MSS enrolments did not conform to the policy aim because the government did not judge student motivations correctly and did not take into consideration what private universities might do. In order to ensure the policy aims of such an expansion, some devices would be required to restrict the type of new students. (2) It was found that it was the steps taken by individual universities that had the greatest effect on how actual expansions occurred. The conclusion is that when analyzing expansions of enrolment, it is imperative to include measures that take into account actions by individual universities that increase supply.
著者
山崎 歌織 外西 壽鶴子 加藤 和子 河村 フジ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 2000-02-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

材料の種類と水煮時間が異なる煮こごりの品質に付いて調べた結果は次のようであった。1.煮汁をゲル化させた場合,最も硬いゲルを形成する水煮時間は,ぶりやまだらが鶏手羽先よりも短かった。ゲルの硬さは,鶏手羽先が最も高く次いでぶりであり,まだらはかろうじてゲル化する程度であった。2.鶏手羽先のゲルは長時間水煮において安定した硬さを保持するが,ぶり,まだらのゲルは水煮30分以降徐々に軟らかくなった。3.煮汁の透明度は水煮時間の経過と共に低くなり,煮汁中のタンパク質は,ぶり,鶏手羽先では増加した。4.煮汁中のタンパク質には,ゲル形成を促進させるゼラチンの他に阻害するものが含まれている。5.長時間水煮により煮汁中のゼラチン分子は低分子化してゲルは軟らかくなった。
著者
辻 とみ子 青山 頼孝 武山 英麿 橋本 和佳 佐々木 敏 川田 智恵子 青山 頼孝 武山 英麿 橋本 和佳 佐々 木敏 川田 智恵子
出版者
名古屋文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

地元小学校の6年生に食育支援介入研究を実施した。6年生を対象に「みんな元気だ!朝食パワー」単元構想図(68時間完了)のうち、家庭科と学級活動の時間を使って、9時間を本研究に充当した。3回シリーズで朝食に地産地消を取り入れた出前授業やわが家の自慢の朝食レシピを完成させ、調理実習でスキルを習得させた。子どもたちは「私食べる人」から、「時には私作る人」へと改善した。このプログラムを通して、子から家族へと食生活が改善でき、その変容が継続していることが成果である。
著者
寺川 直樹 原田 省 板持 広明 谷口 文紀 林 邦彦 小林 浩 百枝 幹雄
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

世界初の前方視的研究「本邦における子宮内膜症の癌化の頻度と予防に関する疫学研究」を企画した。全国の医療施設から約2, 000名の子宮内膜症患者の登録を得て、患者データを解析した。登録患者からの癌発生は7例報告されており、患者登録および解析を継続している。分子生物学的研究としては、卵巣チョコレート嚢胞と卵巣明細胞腺癌組織から上皮細胞群を捕捉したのちに、網羅的遺伝子発現の検討を行い発癌に関与する遺伝子群を検索した。線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)-2遺伝子の卵巣癌組織での発現増強に注目して機能解析を行った。
著者
荒川 豊 田頭 茂明 福田 晃
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2010-MBL-55, no.10, pp.1-6, 2010-08-26

本研究では,2009 年 12 月から 2010 年 6 月にかけて収集した位置情報付きツイート 50 万件の中から,位置依存性の高い文字列を抽出する手法を提案する.提案手法では,あるキーワードを含むツイート群に対して,緯度および経度の標準偏差をそれぞれ求め,ツイート群のばらつきの度合いから,そのキーワードの位置依存性を測る.しかし,この手法では,依存する位置が複数存在するキーワード (例えば,チェーン展開している有名店舗名など) を位置依存性の低い単語として判定してしまう.そこで,ある一定の割合以上のツイートを含むエリアを高速に抽出する二次元深さ優先探索を提案する.提案手法では,まず,エリアを 100 キロ四方のグリッドに分割し,それぞれのグリッド内のツイート含有率を計算する.次に,ツイート含有率がある閾値を超えたエリアを 10 キロ四方のグリッドに分割し,同様の判定を行い,最終的には 1 キロ四方のグリッドまで走査する.これらの分析により,1 つのキーワードに対して複数の位置依存性を抽出することが可能となる.
著者
柳 炳章 南 俊朗
出版者
九州大学附属図書館
雑誌
九州大学附属図書館研究開発室年報 (ISSN:18813542)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.1-10, 2009
被引用文献数
1

インターネット経由で入手できる情報が膨大になり,また,情報を探しだすための検索エンジンが高度化したことにより,Web を使って情報を入手するのが一般化した.電子ブックなどの図書館資料を自宅で閲覧することもできる.これからますますディジタル情報への需要が高まっていくであろう.図書館におけるディジタル資料の重要性と比重も同様に大きくなると考えられる.図書館は従来の紙資料とディジタル資料の両方を扱うハイブリッド図書館化への道を歩んでいる.今後ますます図書館に出向かずに図書館を利用する傾向が強まるであろう.一方,図書館には資料の提供以外に学習の場,コミュニティの人々の交流の場を提供するなどの文化的社会的役割もある.今やハイブリッド化した図書館における"場"のあり方を根本的に見直すべき時期にある.すでにLearning Commons などの形で利用者個人やグループでの学習を快適化する努力が大学図書館を中心に進められている.本稿ではハイブリッド図書館に対する場の構築策としてワンストップサービスの実現を提案する.館内をテーマ別のレイアウトに再構成することにより利用者は同一エリアに滞在しつつハイブリッド資料や人的サービスを享受することができる.このようなサービスの統合化により,利用者の図書館への関心をより一層高めることができる.
著者
寳月 誠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1920年代から20世紀末までの約80年間のアメリカ社会学における主要な逸脱理論の展開過程は以下の時期に区分される。20年代から30年代のシカゴ学派、40年代から50年代のアノミー論や機能分析、60年代のレイベリング論や闘争論、70年代から80年代の保守的な時代の実証主義、90年代から21世紀にかけての統合理論の時代である。この過程を理論的パースペクティブからみると、構造論・相互作用論・行為者論の基本モデル間の循環・組み換え・統合として捉えられる。また、方法論は、実証主義/解釈主義、分析的/ナラティブ、リアリズム/構築主義に区別されるが、これらも時代によって主流となる方法論は交代している。こうした理論の展開過程から知の創造性を活性化する条件として、知識社会学的に以下の点を読み取ることができる。1.新規な逸脱理論は突然生み出されるものではない。構造論・相互作用論・行為者論の基本的パースペクティブ間の循環や組み換え、さらに実証主義や解釈主義などの方法論の交代として生じる。2.逸脱理論の発展は対立する視点を互いに考慮して、自らの立場をより鮮明にしたり、逆に相手の立場を取り入れて互いが類似してくることによって生じる。アボットが指摘するよう、対立する視点から現象を捉える「フラクタルな思考」は、理論の創造性において重要な役割を果たしている。3.理論が基本的なパースペクティブ間の循環であるとすれば、学界で影響力を発揮するには、それが伝統的な理論の継承や再解釈に基づくものであることをアピールし、一定の正統性を引きだすのが効果的である。4.学界での影響力は、理論自体の妥当性以外に、学派内部でのコリンズのいう「相互作用儀礼」の活発度や大学の威信などによって左右される。5.理論の交代を促す要因は社会・時代の要請と関連している。時代にマッチした逸脱理論は人々の関心を得て支持され、現実の政策に反映され、研究資金も獲得しやすく、大学でのポストも得やすい。注目を集める理論・学派ほど、「雪だるま式」に勢力を拡大する。
著者
亀山 修一 苫米 地司 佐藤 威 石田 眞二 川端 伸一郎
出版者
北海道工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

可視光通信LEDによって歩行者に安全・安心情報を伝えるしくみ(歩行者ITS)を積雪寒冷地に適用することを目的とし,室内実験およびフィールド試験によって降雪が可視光通信能力に及ぼす影響について検討した.また,札幌市中心部において収集したすべり抵抗,道路区画線の視認性などのデータを整理・分析し,歩行者の交通安全にとって重要なこれらの因子の測定方法および評価方法を開発した.
著者
斎藤 博之 山内 五郎 高井 健一 菅原 宣義 林 幸成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-II, エレクトロニクス, II-電子素子・応用 (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.342-348, 1998-03-25
被引用文献数
1

無線アンテナ等の通信装置に雪氷が付着して通信回線に問題が生じることがある.これを未然に防ぐためにはっ水材料の実用化が期待されている.本論文では, 高性能の塗料型はっ水材料による着雪氷の防止性能, 着氷が電波反射に及ぼす影響の軽減について検討を行った.結果は以下のとおりである.(1)水の接触角が150度, 氷の付着力が0.1kgf・cm^-2の新しいはっ水材料を開発した.(2)このはっ水材料を塗装したアルミニウム板では+1.5℃でも雪が明確な摩擦角を示した.(3)試料に着氷が生じている間, 電波反射には影響がなかった.(4)試料上の着氷が融解する際に, アルミニウム板やエポキシ樹脂を塗装したアルミニウム板では電波の反射強度は減少するが, はっ水材料を塗装したアルミニウム板では反射強度は減少しない.
著者
金子 勇 森岡 清志 園部 雅久 片桐 資津子 坂野 達郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

3年間の研究で大きくは2つのテーマの研究をした。一つは先進22カ国のうちフランスだけが合計特殊出生率の一貫した反転に成功したから、その要因をパリでの参与観察法で探求してきた。日本での応用可能性に絞ると、制度化された「公認保育ママ」、フランス人全体への政府の手厚い家族支援のうち特に権利として勝ち取られてきた子育て関連休暇制度、そしてフランスのCNAF、これは日本で長らく私が提唱してきた「子育て基金」と規模が類似していたから、この導入の検討が日本的な文脈でも有効である。国内では北海道伊達市と鹿児島市での少子社会調査を実施した。市民のソーシャル・キャピタルが相対的に貧困であれば、地域社会における子育て支援の輪が広がらない。さらに、ソーシャル・キャピタル調査結果と自由意識の側面を表すいくつかのデータを組み合わせたら、「自由意識」よりも「伝統意識」と高い合計特殊出生率とが正相関した。まとめると、日本都市においては、ソーシャル・キャピタルに恵まれ、伝統意識が強い都市に合計特殊出生率が高く、それが乏しく自由意識が強い都市では少子化が進む傾向にあると主張できる。
著者
鈴木 恵美
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

平成17年度の研究は、先に提出した研究計画に従って政権政党と経済界の関係解明に関する調査研究を行った。研究の経過としては、8,9月にエジプトにおいて資料収集と政府関係者へのインタビュー調査を行った。当該国では、諸制度が未整備であるため、通常、図書館の利用や資料収集等には予定外に時間がかかること、加えて夏季は文書館や調査機関の開館時間が短いため、現地の滞在期間中は調査と資料の収集が中心になった。それらを精査し、一般化する作業は帰国後にゆだねることになった。論文としての成果は、2005年9月に行われたエジプト史上初の大統領選挙の分析を行った。これまでの大統領の選出は議員による信任投票という形で行われていたが、同年5月に選挙法が改正され、9月に初めての直接投票による大統領選挙が行われた。論文ではこの選挙の意義を解説し、最終的に10名に絞られた立候補者の選挙公約から、現代エジプトの社会、政治、経済問題の所在を論じた。まず第一に、実際の選挙戦の候補者となる明日党のアイマン・ヌール候補と現職のムバーラク大統領を除いた8名の候補者の公約の共通点と独自な公約を明らかにした。この8名の公約を二分すると、アラブ民族主義、社会主義の再興を目指す者、市場経済化の促進を掲げる者に分けることができた。また、各候補が掲げる独自の公約には、首都移転、郡県制の見直しなど実現不可能と思われるものが多くみられた。一方、ヌール候補とムバーラク大統領の公約については、社会経済政策に関しては共通するものが大半であったが、政治政策については権威主義政権の長期維持を目指す現職と、全ての政治犯の即時釈放を最重要公約の一つに掲げるヌールの主張は正反対のものであった。論文の最終部では、近年の選挙結果を大きく左右するムスリム同胞団の重要性について言及し結語とした。
著者
メジアニ ヤーヤムバラク
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

トランジスタ内に生じるプラズラモン共鳴を利用したテラヘルツ(THz)帯動作デバイスの研究開発が活発化している。プラズモンの共鳴周波数は電子密度、ドリフト速度、およびゲート長によって定まる。プラズモン共鳴は、THz帯電磁波(THz波)放射源となるとともに、プラズモンの非線形性によって、注入THz波によるプラズモン励起によって整流効果が得られることが理論的に示されている。本研究では、小型集積化プロセス技術が利用可能な半導体材料を用いて開発した回折格子状HEMTをTHz帯電磁波の検出器として利用し、実験的にTHz波検出とその構造・材料依存性を明らかにした。
著者
花辺 充広 金子 真也 メジアニ ヤーヤ ムバラク 尾辻 泰一 佐野 栄一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.403, pp.83-88, 2006-12-01

InGaP/InGaAs/GaAs高電子移動度トランジスタに二重入れ子型回折格子ゲートと縦型共振器構造を導入したテラヘルツ帯プラズモン共鳴フォトミキサーを試作した。1.5μm帯の単光波連続光(CW)入力、4.0THzの差周波成分を有する二光波CW入力に対する光応答特性を測定した結果、それぞれ光励起二次元プラズモンによる自己共鳴発振、差周波成分による注入同期共鳴発振に相当する明瞭なピーク特性が得られた。さらに、1.5μm帯、70fsパルス光入力に対する電界応答を反射型電気光学サンプリング法により測定した。得られた放射スペクトルには、明瞭なプラズモン振動モードが確認できた。室温条件においてフォトミキサーからのテラヘルツ波放射の観測に成功した。