著者
佐藤 宏樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.53-78, 2014-06-20 (Released:2014-08-02)
参考文献数
168
被引用文献数
2 1

In tropical forest ecosystems, majority of plant species depend on frugivorous vertebrates for seed dispersal. Because primates constitute a large portion of frugivore biomass in neotropical and paleotropical forests, the roles of primates as seed dispersers have been examined since 1970's. The process of seed dispersal by vertebrates can be divided into three phases: (1) pre-dispersal phase in which animals select particular fruits as attractive food; (2) dispersal phase in which animals handle, transport, and deposit seeds during their foraging activities; (3) post-dispersal phase in which dispersed seeds germinate and grow to reproductive age. To understand roles of primates as seed dispersers, this paper marshals the previous achievements in order of the three phases. During pre-dispersal and dispersal phases, quantitative and qualitative effectiveness of seed dispersal are generally related to several anatomical traits and behavioral pattern of each primate taxon, and particularly, large-bodied frugivorous primates often perform effectively. However, during post-dispersal phase, high mortality and unpredictable fates of dispersed seeds dramatically hurt the effectiveness of primate seed dispersal. Large-bodied frugivorous primates are recognized as vulnerable taxa to human disturbance such as deforestation and bushmeat hunting. Recently, in the forests where such primates are locally extinct or reduced, researchers have demonstrated that the loss of their seed dispersal services drives low density of seedlings and saplings and low rates of gene flow among populations. These facts paradoxically suggest that primates contribute regeneration of plant populations even their effectiveness is lessened in post-dispersal phase. As future issues, integration between seed dispersal research and plant demographic study will develop our understanding of the primates' roles in plant population dynamics over many generations. Moreover, considering the critical situations in empty forests, there is also an urgent need to argue prioritized conservation of high-performance primates for maintaining regeneration and vegetative restoration in degraded forests.
著者
佐藤 亮介 萩原 加奈子 喜多 綾子 杉浦 麗子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.6, pp.340-345, 2016 (Released:2016-06-11)
参考文献数
25

ERK MAPK経路やPI3K/Akt経路といった細胞内シグナル伝達機構は真核生物に高度に保存されており,細胞増殖や分化,アポトーシスといった様々な生命現象を制御している.このようなシグナル伝達機構に破綻が生じると,がんや自己免疫疾患,糖尿病,神経変性疾患などの疾病の引き金となることが知られている.したがって,シグナル伝達機構の制御機構を明らかにすることは,病態のメカニズム解明にとどまらず,疾病治療という観点からも極めて重要である.近年,シグナル伝達ネットワークを時空間的にダイナミックに制御する機構として,「RNA顆粒」という構造体が注目を集めている.ストレス顆粒やP-bodyといったRNA顆粒は,ポリ(A)+ RNAやRNA結合タンパク質などから構成されており,mRNAのプロセシングや分解,安定化といった転写後調節に関わる「RNAの運命決定装置」として発見された.我々は酵母遺伝学とゲノム薬理学的研究を展開することにより,MAPKシグナル依存的にストレス顆粒に取り込まれるRNA結合タンパク質を同定し,MAPKシグナルがストレス顆粒の形成を制御していることを見出した.さらに,カルシウムシグナルのキープレーヤーであり,免疫抑制薬FK506の標的分子でもあるSer/Thrホスファターゼ「カルシニューリン」がストレス顆粒に取り込まれることで,カルシニューリンシグナルが空間的に制御されていることを見出した.このような「ストレス応答やシグナル制御の拠点」としてのRNA顆粒の役割に関して種を超えた理解が進みつつあり,異常なRNA顆粒の形成と神経変性疾患やがんなどの病態との興味深い関係が浮かび上がりつつある.本総説では,我々の研究が明らかにしたシグナル伝達制御とRNA顆粒との関わり,その疾患治療への応用の可能性について紹介する.
著者
菊谷 和宏
出版者
いなほ書房
雑誌
社会学史研究 (ISSN:02886405)
巻号頁・発行日
no.32, pp.15-28, 2010-06
著者
高見順著
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1965
著者
真鍋 恒博 大元 康司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.67, no.560, pp.143-149, 2002
参考文献数
40
被引用文献数
3 4

Many kinds of components, materials and building systems are turning according to the changes of building systems by several reasons. However, the changes of ordinary components are rarely recorded in detail. As fundamental data for development of building systems, it is important to record the changes of components and materials. In this study, we grasped the outline of development of integrated ceiling. The appearance of integrated ceiling in Japan is the same period as skyscraper. It was adopted in the Kasumigaseki building which is the fist skyscraper in Japan, and developed into adoption of the full-scale integrated ceiling in W. T. C. building.
著者
和祥
出版者
鶴屋喜右衛門
巻号頁・発行日
1763

青本(改装)3冊(合1冊)、題簽「楠末葉軍談(くすのきは(ば)つようぐんだん) 上」、題簽全揃は岩崎文庫本(黒本)にあり。題簽により未年(宝暦13年[1763])の鶴屋版。和祥作。柱題「楠ば(は)つよう くすのきはつ葉 くすのき末葉」。残存状況は黒本青本の中で抜きん出て多く、今のところ国内だけで8部知られている。
著者
佐藤 順子 Junko SATO 聖隷クリストファー大学 Seirei Christopher University
雑誌
聖隷クリストファー大学社会福祉学部紀要 = Bulletin of the School of Social Work Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-10, 2021-03-31

論文地域福祉を外的に規定する自治制として、2000 年代のコミュニティ政策と、その中核をなす国や地方自治体をあげて促進されたコミュニティ制度化やそれを伴う自治体内分権を取り上げ、先行研究をもとにコミュニティ政策に対する評価と課題、及び2010 年代中盤におけるコミュニティ制度化とそれを伴う自治体内分権の実態について述べた。特にコミュニティ政策に対する評価として、それには両義性があり、行政によるコミュニティの包摂化、行政管理型の住民自治などになる懸念がある一方、住民が統治に参画する、自治やデモクラシーを促進する可能性も指摘されていることを示した。そして、前者=マイナス面を後者=プラス面に転化するための条件・課題として、コミュニティ組織設立のプロセスにおける地域住民との時間をかけた熟議、決定権限の委譲、協働(公共サービスの提供)機能より参加(公共的意思決定)機能≒協議機能を重視すること、政治的・財政的な自律性を担保すること、行政とは別の評価システム、コミュニティ自治の支援システムを構築すること、と整理した。 全国的な調査結果からは、今般のコミュニティ政策が住民自治促進には必ずしも直結するとはいえないことが明らかとなった。
著者
尹 智博
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.109-116, 2011

本論は、近代以後の音楽に大きな影響を与えたウィーンの作曲家アーノルト・シェーンベルクの音楽やその作曲法のなかに見出される造形的概念としての「無重力」について研究するものである。1920年代に活躍したオランダの造形集団デ・ステイルは、彼らの造形実験と同様の実験を音楽領域で行った人物としてシェーンベルクを取り上げている。本研究は、デ・ステイルの造形実験と同様とされたシェーンベルクの音楽の分析を通して、その音楽や作曲法のなかに見出される造形的概念について考察を行うものである。1929年に、デ・ステイルの中心人物であったテオ・ファン・ドゥースブルフは、グループの活動をまとめた「新しい造形に向かって」という論文を発表する。ここで、グループの造形実験と同様の実験を音楽領域で行った人物として、グループ唯一の音楽家ジョージ・アンタイルと共にシェーンベルクが取り上げられている。シェーンベルクは、「十二音技法」の作曲法などによって近代以後の音楽に大きな影響を与えた音楽家であり、同時代の様々な造形芸術家達からも強い関心を有されていた。デ・ステイルは、様々な音楽活動や『デ・ステイル』誌の音楽に関する論文において、シェーンベルクの音楽を取り扱っており、そこではシェーンベルクの音楽について、「デ・ステイル音楽」、「構成主義的音楽」、「キュビスムの音楽」、「機械的音楽」などと造形領域の言語を用いて論じていた。一方で、シェーンベルクの音楽の特徴でもある長調や短調といった調のない「無調性」の音楽に対しては、音楽領域から、これは「無重力」と同じものであると論じられるなど、造形領域が自明のものとしている「重力」という概念との関係によっても、シェーンベルクの音楽が捉えられていた事が確認される。デ・ステイルとシェーンベルクは、双方が「無重力」の追及や「上下左右の消失」という言語を用いて各々の芸術空間において共通する概念を示していた。そこでは、それぞれの芸術領域が自明としている造形領域においては「重力」や音楽領域においては「調性」といったものに束縛されない、自由な表現を求める実験が作品に表現されていた。そして、この「無重力」や「上下左右の消失」という概念こそが、シェーンベルクの音楽における造形的概念を示すものであり、多くの造形芸術家達に影響を与える要因となっている事が考えられる。
著者
古川 哲史
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.24-28, 2012 (Released:2015-06-18)
参考文献数
3
著者
望月 沙紀 渡邊 昌宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-231_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】臨床において、下肢の神経徴候のない急性・慢性の腰痛症患者に対して大腿筋膜張筋とハムストリングスにストレッチを実施することで、疼痛の軽減だけではなく、姿勢や歩容の改善が即時的に得られると言われている。また、ストレッチにより筋を含めた組織柔軟性の維持・向上、筋運動疲労回復の促進、疼痛緩和、精神的リラクセーションが期待されると言われている。しかし、腰痛症患者の筋の柔軟性が腰痛に関わるかどうか明確になっていない。そこで、本研究の目的は筋の柔軟性と腰痛の関係を明らかにすることとした。【方法】対象者は、腰痛あり13名と腰痛なし11名の合計24名(20±2歳)の成人女性とした。医師の診断や主観的判断で神経症状、内科的疾患を示す場合は除外した。アンケートにて腰痛あり群となし群に分けた。その後、柔軟性テストにて伏臥位上体そらし(顎床間距離)、トーマステスト(床膝間距離)、体幹捻転(膝床間距離)、SLR(股関節屈曲角度)、エリーテスト(臀踵間距離)、立位体前屈(指床間距離)の順に測定を行った。次に柔軟性テストの順で対応する筋にスタティック・ストレッチを実施し、その直後に再度測定を行った。ストレッチは、各筋に対して30秒間保持、休憩10秒を挟み片側に対し計2回行い、反対も同様に実施した。解析には、実施後測定値から実施前測定値の差を計算し、柔軟性による変化を算出した。統計学的検討は、腰痛のあり群・なし群と各柔軟性テストの差に対応のないT検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】床膝間距離は腰痛のあり群がなし群に比べ、右はストレッチ介入後の測定差に有意差が認められ(2.56±1.72cm、P=0.066)、左には有意な傾向が認められた(2.70±1.98cm、P=0.022)。その他の筋の柔軟性に関しては腰痛のあり群となし群には有意差は認められなかった。【結論(考察も含む)】大腰筋は筋力低下により伸張されると骨盤後傾、腰椎後弯が生じ、短縮が生じると骨盤前傾、腰椎前弯姿勢が生じると報告されており、腰椎の過前弯・過後弯によって腰痛が生じることが明らかとされている。今回、腰痛がある場合には腸腰筋は伸張されやすかったことから、腸腰筋の短縮が認められていたと推察された。また、筋連結の観点から腰痛は腸腰筋と直接関連すると報告されている。これらのことから神経症状がない腰痛者は腸腰筋の柔軟性が低下しており、ストレッチ介入によって伸張されやすいと考えられた。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には、本研究の目的・意義および本研究で得られた情報は個人が特定できないように処理し、データと結果は研究目的以外に用いることが無いことを書面にて説明し、同意を得た。また、本本研究への協力は個人の自由とし、実験の途中でも不利益を受けることなくいつでも撤回できることを説明し実施した。
著者
太田 成男 上村 尚美 ウォルフ アレクサンダー 西槙 貴代美 一宮 治美 横田 隆
出版者
日本医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

放射線によって ヒドロキシルラジカルが生じ、それがトリッガーとなってラジカル連鎖反応を生じさせ、主に細胞膜において細胞障害をあたえることが知られている。低濃度の水素は、ラジカル反応誘発剤による細胞障害も抑制したので、水素は少量でも脂質ラジカルを抑制することにより連鎖反応を抑制して細胞を保護することを明らかにした。さらに、低い水素濃度でも、細胞膜の脂質過酸化を抑制することを明らかにした。本研究では、放射線障害を水素が抑制する可能性を示唆し、その分子機構の一端を明らかにしたが、それをそのまま社会に適用するためには不十分である。
著者
渡邊 ひとみ
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.105-115, 2020 (Released:2020-06-25)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

This study examined the types of positive meanings derived from positive and negative past experiences and explored their effects on identity development in adolescence. Participants (494 undergraduates) were asked to recall a single or series of past events that they considered to be the most influential to their current definition of self and sense of who they are. Next, they completed the Identity Scale, Centrality of Event Scale, and other instruments for measuring benefit-finding. Several types of positive meaning—personal growth, attainment of new perspectives and values, interpersonal growth, and positive changes in family relationships—were derived from both negative and positive events central to identity. In addition, “acceptance and personal growth” from negative events and “attainment of new perspectives and values” from positive events were mainly responsible for higher identity achievement levels. Perceiving positive past events as central to identity directly promoted identity achievement. This suggests that, in addition to helping with engagement in positive meaning-making, support or interventions that actively integrate past positive experiences in the life story might lead to identity development and mental health.
著者
山根 雅司 山崎 淳 阿部 正佳
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.1-10, 2008-10-27

本発表では,自動エラーリカバリ機構を持つパーサジェネレータ yayacc の設計と実装を述べる.yacc や bison をはじめとして,現在広く使われているパーサジェネレータでは,文法中に特殊なエラーリカバリ動作を指示するトークンを手動で挿入させることで,エラーリカバリパーサを生成している.この古典的な手法は本来の文法定義を変えてしまうことに起因する深刻な問題があり,正しいエラーリカバリを行うパーサを生成させるには,多くの勘と経験が必要とされる.一方,yayacc ではエラーリカバリのために,文法を修正するというこがいっさい不要であり,生成されるパーサは従来の error トークン手動挿入によるパーサでは理論的に不可能な優れたエラーリカバリを自動的に行う.さらに yayacc では意味動作の Undo も自動で行うことが可能である.これは先行研究における自動エラーリカバリパーサでは扱われていないが,字句解析が完全に分離できない文法,たとえば C 言語に対しても自動的なエラーリカバリを行う場合に必要となる重要な機能である.yayacc は筆者らが開発している SCK コンパイラキットのツールの 1 つとして作成されたものである.現在 ANSI C言語,および小規模な関数型言語のパーサは yayacc により自動生成されたものを使っており,きわめて優れたエラーリカバリが行われている.
著者
松島 綱治 橋本 真一 倉知 慎 上羽 悟史 阿部 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

伝子発現解析の結果からケモカイン受容体CXCR3に着目したところ、CD8陽性T細胞の活性化直後のリンパ組織内局在をCXCR3が制御することで、その後の免疫記憶CD8陽性T細胞の形成に影響を及ぼしていることが明らかになった。また、メモリー細胞において、CTLに特徴的なサイトカインやケモカインなどの遺伝子群の顕著な発現量上昇、細胞老化と関連深いリボゾーム蛋白類の発現量低下とを認めた。さらに一次メモリーと比較して、二次メモリーCTLではNK細胞特異的遺伝子の発現量上昇が認められ、老化メモリーCTLの特徴となることを明らかにした。
著者
和田 平悟 鈴木 俊明
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.138-142, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
1

We report a case of left-side hemiplegia due to subarachnoid hemorrhage. When our patient walked with a T-shaped cane, almost no extension and adduction of the left hip joint from the left loading response to the left mid-stance, poor weight transfer to the left lower limb, and instability from the right mid-stance to the right terminal stance due to hyperabduction of the right hip joint were noted. The patient's right hip joint was externally rotated, and the pelvis was left rotated throughout both standing and walking due to internal rotation weakness of the right hip joint. The left hip joint was poorly flexed in the left swing phase due to hypotonia of the left iliacus muscle, and the left lower leg had been swinging out for many years due to left pelvic elevation along with left lumbar flexion. It was necessary to first address the problems of the right lower limb. Left hip extension, adduction, and internal rotation, left ankle dorsiflexion, and left foot supination were absent. In addition, horizontal movement of the pelvis was difficult. An approach improving the left rotation of the pelvis and external rotation of the left lower leg via external rotation of the right hip joint, resulted in extension and adduction of the left hip joint occurring in the middle stage of the left stance, enabling the patient to transfer weight onto the left lower limb.