著者
石井 実 平井 規央
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

気候温暖化が里山の昆虫類に及ぼす影響を明らかにするために、ギフチョウなどを対象に研究を行った。本種の蛹を標高の異なる地点に置いたところ、初冬の気温が高い場所では羽化率が低かった。飼育実験の結果を加味すると、蛹期における「長い秋」が高い死亡率の要因と考えられた。衰退の顕著な大阪府北部の産地の個体群を調査したところ、卵の孵化率の低下が確認された。また既に本種が消えた産地では林床植生の植物種数が少なく、野生ジカの生息密度が高いことがわかった。これらの成果は、本種の衰退に暖冬の影響と野生ジカによる下層植生の過剰採食が関係し、個体群縮小による近交弱勢が拍車をかけている可能性が示された。
著者
西岡 敏 狩俣 繁久 又吉 里美 仲原 穣 仲間 恵子 中本 謙 下地 理則 下地 賀代子 野原 優一 小川 晋史 坂井 美日 青井 隼人 大森 一郎 當山 奈那 田代 竜也 當銘 千怜 平良 尚人 金城 絵里香
出版者
沖縄国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

琉球宮古方言は消滅危機言語に数えられ、他の琉球方言と同様、一刻も早い言語の正確な記録が求められている。本研究では、かつて調査された名詞語彙の言語地図作成を行い、宮古方言の地域的な特徴が視覚的に明らかになるようにした。また、これまで研究が手薄であった動詞の活用変化に焦点を当てた臨地調査を広範囲にわたる地点で行い、宮古方言の基本文例を数多く収集した。新たに収集したデータを言語地図化する作業は現在進行中である。
著者
成清 修
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

フェルミ流体論を金属絶縁体転移近傍の異常金属相に拡張することを目指した理論的研究を、銅酸化物高温超伝導体を含む遷移金属酸化物を対象として行った。ここでの金属絶縁体転移が、従来主張されているような、局所相関が重要な(狭義の)モット転移ではなく、非局所的な反強磁性相関が重要な、異なるクラスの金属絶縁体転移であることを明らかにした。1.バナジウム酸化物の金属絶縁体転移バナジウム酸化物(V_2O_3)の金属絶縁体転移は、従来典型的なモット転移であると考えられていたが、近年の実験は、銅酸化物高温超伝導体の常伝導相に類似の、「スピン電荷分離」や「スピンギャップ」とよばれる異常を示している。我々は遍歴-局在双対性に基づいたネストしたスピンゆらぎの理論によって、2次元物質である銅酸化物の異常を解明してきたが、これを3次元物質であるバナジウム酸化物に拡張することによって、その異常を説明した。これらの異常は2次元に特有のものと思われていたが、ネストしたスピンゆらぎの理論では、次元性は重要ではなく、3次元でも異常があらわれることを明らかにした。また、これらの異常は、我々の理論では中間結合領域に特有のものなので、バナジウム酸化物および銅酸化物高温超伝導体は、従来言われているような強結合ではなく中間結合の物質であると結論した。インコヒーレントなスペクトルの効果金属絶縁体転移の近傍では、フェルミ流体論では主役の遍歴的な準粒子よりも局在スピンによるインコヒーレントなスペクトルのウエイトが大きくなっている。我々の遍歴-局在双対性理論は、この2つの自由度を考慮しているが、フェルミ流体論では前者しか考慮していない。この意味で、遍歴-局在双対性理論はフェルミ流体論の自然な拡張になっており、従来非フェルミ流体とかマージナルなフェルミ流体とよばれていた現象も、遍歴-局在双対性理論の枠組みで理解できることを明らかにした。
著者
篠原 厚 高橋 成人 笠松 良崇 吉村 崇 二宮 和彦 畑中 吉治 畑澤 順 金井 泰和
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

医薬用放射性試薬や有用放射性同位体の供給の確保は、我が国の医療や基礎-応用にわたる研究レベルの維持には必須である。本研究では、サイクロトロンにより大強度照射・RI製造法を開発し、PETイメージング核種として124-Iと62-Zn、白金系抗がん剤の機序解明のために191-Ptの製造、分離、精製法を開発し、それぞれ核医学・薬学分野に貢献した。さらに、イメージング技術に基づくがん治療への展開として、新たに211-Atによるアルファ線内用療法の開発プロジェクト(概算要求事項)をスタートさせるに至った。一方で、国内生産の要請のある99m-Tcの加速器による製造・精製法の確立へも貢献した。
著者
石井 良昌 上田 毅
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

近年,障害者スポーツはリハビリテーション分野のみならず学校教育やスポーツ現場において広がっており,様々な環境下で運動活動を行う機会が増えてきている.我々は,過去においてダウン症や自閉症などを有する知的障害児・者の運動様相の違いに関してバイオメカニクス的な手法を用いて科学的にとらえて検証を行ってきた.従来行われてきた知的障害児・者に対する研究は,研究室内で環境を一定にした状態で行われた研究や対象数の少ない事例報告が多かった.今回の研究では,軽量化で携帯が可能となった無線の測定器を対象者に装備させて,様々な環境下で行われる実際の集団スポーツ活動中の生体変化について測定を行うものである.本年度は知的障害児における夏期の体育活動時の心拍数について検討した.対象は,知的障害をもつ児童4名(男性2名、女1生2名:平均年齢9.0歳)であった.夏期(気温31.2℃、湿度68%)の屋内体育館で体育活動(約30分間)を行い,その間の心拍数(Polar社RS400)を経時的に計測した.体育活動の内容はウォーミングアップ(ストレッチ、ジャンプ、ランニング)3分,休憩1分,なわとび2分,休憩6分,バレーボール10分,クールダウン(ジョギンク)2分であった.運動指導は経験の多い指導者1名が,集団指導(7名)の形で行った.その結果,4名の平均心拍数は安静時では99.8±142bpmであったが,運動中ではそれぞれ準備運動147.3±8.8bpm,なわとび161.5±9.9bpm,バレーボール137.0±21.3bpm,ジョギング164.5±22.9bpmであった.また,最高心拍数4名ともにランニングおよびなわとびの際に187-205bpmの高値を示した.体育運動中に元気な活動をしているようにみえても,比較的高い心拍数を示していた.特に夏期の暑い時期には、休憩を多く取るなど十分な配慮を行いながら行うべきであると考えられた.
著者
松村 知岳
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インフレーション仮説を検証する宇宙マイクロ波背景放射の偏光測定では広帯域観測が必須となる。望遠鏡に用いる光学素子は、表面反射を抑えるために反射防止膜を施す必要があるが、従来のコーティングによる極低温で広帯域を実現するのは難しい。本研究ではモスアイ加工を光学素子表面に施すことで広帯域反射防止膜を作成した。光学素子材料としてRexolite、アルミナに対して、ダイシングソーやレーザーを用いた加工にてプロトタイプを作成、またその評価測定システムの構築を行い、プロトタイプ素子の評価を行った。加工方法やレーザーの選定など今後、大型光学素子への広帯域反射防止膜を実現するための基礎検討としての成果を上げた。
著者
安藤 真次郎 野村 竜仁 岡本 信照 立岩 礼子
出版者
龍谷大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ルネサンス思想という観点から、一般にいう「スペイン黄金世紀」という時代の文化事象を捉え直すことにより、15・16世紀のスペインの独自性を明らかにするとともに、当時のスペインが直面していた問題をヨーロッパおよび新大陸との関係性において考察することで、ヨーロッパ思想史とラテンアメリカ思想史におけるスペイン・ルネサンス思想の位置づけを再検証している。
著者
伊藤 亜聖
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究プロジェクトでは、中国沿海部に集中してきた製造業が、2000年代後半以降にどのような変化を遂げつつあるかを、産業立地に注目して検討した。地域・産業データを用いた分析の結果、沿海部の産業集積地での「集積の経済性」の発生と、労働集約的産業の内陸部への移転は同時に観察された。このことから、中国製造業は、沿海部での規模を維持しつつも、内陸部へと取引ネットワークと立地が拡散しつつあったと言える。地域別貿易データの分析からも、中国中西部の輸出額の急増が確認され、とりわけエレクトロニクス製品の組み立てを担うEMSの移転が大きなインパクトをもたらしていることが判明した。
著者
鈴木 祐麻
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大腸菌と大腸菌群を対象汚染物質として選定し、微量の鉄粉およびレモン汁を処理原水に添加することで太陽光殺菌(Solar Disinfection, 通称SODISと呼ばれる)の効果を高めることができることを提案・実証することである。種々のバッチ実験および実証実験の結果、鉄粉、レモン汁、そして太陽光を組み合わせることにより、フェントン反応と類似した反応プロセスがペットボトル内で連続的に進行し、その結果、OHラジカルなどの活性酸素種やフェリルイオンなどの効率的な生成を通してSODIS効果を促進することができた。
著者
鎌江 伊三夫 柳沢 振一郎 石井 昇
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

敦賀湾における核事故を想定した医療対応力に関して、北陸・東海・近畿の部の医療機関にアンケート調査を実施した。その結果、ヨウ素製剤の備蓄・重症熱傷や骨髄抑制の治療などの急性期治療は、限定された人数なら対応可能であるが、大規模事故にて多数の被爆者が出た場合は対応が困難であることが推定された。敦賀湾限定の核事故におけるヨウ素製剤投与に関しては、確認された備蓄量11万人分という数量から推測して、準広域にて十分な対応が可能と思われるが、大都市を含む大規模災害となった場合の必要数と供給には2桁ほどの乖離が予想された。広域避難に対しては転送手段・受け入れネットワークにも課題が確認された。また、NBC災害や大規模災害に対する災害対応マニュアルを含めた準備態勢にも問題が見受けられた。一般施設の被災に関して、施設間転送ネットワークや各種災害マニュアルなどは比較的低予算で整備することが出来、ほかの各種災害に援用可能なシステムもあるので、積極的な整備が望まれる。災害拠点病院や県立病院単位でのネットワークは整備されているが、ネットワーク外に置かれている私立病院をはじめとする施設と患者が存在する。特に広域避難に関しては、個々の施設や自治体の対応の限界を超えた問題が多い。行政や関連学会の補助が必要と考えられるなど、今後の対策要件等について明らかにすることができた。避難区域が広域となった場合や大都市が発災中心となった場合、さまざまな医療措置が不足となる事態が想定される。例えば本研究の調査では、人工透析通院数と余剰受け入れ可能数の乖離が確認された。政策における余剰医療設備の適正量の決定は、医療経済的な側面からだけではなく社会安全保障の側面からの検討も必要との示唆を得た。
著者
玉木 直文
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

歯周病に対して,機械的刺激を重視した術者ブラッシングと細菌の徹底的な除去を目的とした初診時感染源除去法の2種の処置を行い,歯肉縁下歯垢の細菌叢の経時的な変化を,分子遺伝学手法を用いて解析することを目的とした。岡山大学病院・予防歯科に来院した患者のうち,20本以上の歯があり,プロービング・デプスが5mm以上の歯を4本以上有する者12名を対象とした。治療期間は28日で,7日目までは毎日処置を行い,その後は14,21,28日目に治療を行なった。処置内容は,つまようじ法による術者ブラッシングと初診時盛染源除去法とし,対象者をランダムに分けた。細菌叢の分析のための歯垢は,0,7,14,28日目に歯肉縁下から採取した。細菌叢は分子遺伝学的手法(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法,real-timePCR法)を用いて解析した。牽性剤濃度勾配ゲル電気泳動法の結果,両群とも治療寧過とともにP.gingivaJis等の嫌気性菌の検出頻度が減少し,Neisseria等の好気性菌の割倉が増えた。さらに,rea1-time PCR法の結果,全菌数は両群とも7日目以降に初夢時よりも有意に減少していだ(P<0.01,Wilcoxon test)。さらに,P.gingivalisにおいては初診時と比べて術者みぶき群では14日目,28日目に,初診時感染源除去碧では28日目に有意差に減少していた(P<0.05)。A.actinomycetemcomitanceは両群とも有意差は無かった。P.intermediaは,術者みがき群において7日目,14日目において有意に減少していた。T.dentiCOlaとT.forsythiaは,両群とも7日目以降に有意に減少していた。
著者
浦 環 THORNTON Blair
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

代表者らは平成18年度に続き三次元姿勢制御が可能なZero-G型水中ロボット「IKURA」が自律型(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)として水中画像観測を行うためのハードウエアと物理電池システムの開発を進めた。水中画像観測に関してはロボット単独でターゲットを見分けターゲットから相対的な位置及び姿勢の変化をリアルタイムに推定する必要がある。さらに、自律型ロボットとして水中観測を行うには、障害物を認識して回避しなければならない。このため、レーザとカメラを使った水中画像観測システムを開発し、シミュレーションを終え、現在水槽実験を行っている。物理電池システムに関しては、IKURAの姿勢制御システムとして搭載されたジャイロで発電する姿勢制御装置とエネルギー源を一体化させるシステムを開発した。陸上試験を行い、水中での実験で発電と三次元姿勢制御を同時に行うことに成功した。このシステムの実現は世界初であり、本成果について論文投稿準備中である。今後は、レーザとカメラをべースとしたビジュアル観測システムをIKURAに設置し、水槽でのビジュアル観測の実験を行って本システムの有効性を実証する予定である。IKURAはユニークな自由姿勢制御性を持つため、本研究により、今までのAUVには不可能だったビジュアル観測が可能となり、海洋調査技術と水中ロボットの技術が向上することが期待される。
著者
齋藤 正博 飯島 恵 西尾 温文 込山 洋美 東山 峰子
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

家族機能評価尺度(FACESIII)及び家族イメージ法(FIT)が小児がんの家族評価に有用か検討した。6歳以上の患児とのべ14家族を対象に入院の異なる時期に調査を実施した。FACESIIIでは欧米の報告とは異なり家族機能が不安定な家族が見られた。FITでは臨床で見られなかった家族の力動や特徴を捉えることができた。時期による家族関係の変化も捉えられた。これらの家族機能評価は多様な家族に対する有効な支援につながると考えられた。
著者
池田 光男 石田 泰一郎
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究は、人間の視覚情報処理の観点から防災標識を検討し、より防災力の高い視覚情報を探索するものである。研究は色の効果に着目した一連の実験と、実際の標識の探索特性を調べた実験により構成される。1.色情報の効果:標識が人の注意を引くための重要な要因は色である。そこでまず、注意を引く色を、被験者の注視点の移動を指標として調べた。これより、マンセル色票8Rのような赤系の色は視点が向きやすく注意を引くが、8BGなどの青系はあまり注意を引かないという結果を得た。次に、視野周辺で標識を捉えることが、標識検出の第一歩であることを考え、視野周辺部での色の目立ちを測定した。その結果、明所視では、視野周辺部においても、相対的には赤系の色が目立つなど、視野中心部での目立ちの結果と同じ傾向となった。さらに、標識を光源色として見えるようにすれば、周囲の物体色と区別できる。そこで、物体表面をどのくらいの輝度、あるいは照度にすれば、それが光源色として見え始めるかを、様々な条件で調べた。その結果、高彩度・高明度の色は、光源色になりやすいことが明らかになった。2.実際の非常口標識の探索:地下街や駅構内を取り上げ、そこでの標識探索の難易さを調べた。被験者には、それらの場所を撮影したスライドを見せ、「非常口」標識の検出時間、そのときの眼球運動を測定した。その結果、周囲に類似物がない状況では、標識を瞬時に発見できるが、視覚的なノイズが多い状況では、標識の検出が極めて困難になることが示された。標識の探索には、周囲の視環境が重要な要因であるといえる。本研究により、防災標識が注意を引くための色彩条件、標識が瞬時に検出されるための視環境条件などについて、有用な基礎データが得られた。また、色の見えのモードの観点から目立ちを検討するという、新しい考え方を提供できたものと思う。
著者
三瓶 良和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

汽水域の基礎生産によるCO2吸収能力の定量的評価およびその気候変化による変化特性について,日本の代表的汽水域である中海・宍道湖において,現環境および過去数百年間の関係を考察した。表層堆積物の全有機炭素(TOC)濃度は,中海南端~湖心では3.6~4.0%のsapropelicな高い値を示し1997年以降変化はなかった。宍道湖表層TOC濃度は,東部と西部を除き3.5~4.3%のsapropelicな高い値を示して2005年以降変化はなかったが,東部では約0.5%増加した。有機物の起源は,C/N比(7~9)と熱分解GC-MSのn-アルカン組成から判断して大部分が植物プランクトンに由来する。コア試料のTOC濃度は,中海・宍道湖ともに1800年以前は1%程度の低い一定の値を示し,1800から1900年にかけてさらに0.数%低くなり,その後現在に向かって急激に増加して4%程度になる。中海においては,表層TOC濃度が3.5%を超えると湖底水中に硫化水素が溶出されはじめ,両者に比例関係があり,H2S(ppm)=13.9*TOC(%)-52.1 (TOC>3.5%)で表されることが分かった。中海中央北東部における大気CO2濃度は,2013年4月~5月の平均値は約360ppmであり,春季の植物プランクトンブルーミングによって湖上の大気CO2濃度が低くなった影響が考えられた。また,最大80ppm程度の大きな昼夜差が見られた。Carbon sinkについては,金井ほか(1998,2002)の堆積速度を用いれば有機炭素埋積速度OCARは中海が7.0 mgC/cm2/y, 宍道湖が4.0 mgC/cm2/y,全域では中海で約6,000トン/年,宍道湖で約3,200トン/年と見積もられた。コア試料については,中海では,50~25cm(1770-1890年:世界的な寒冷期のLittle Ice Age期間)はTOC濃度が約1%と過去最も低く約2,000トン/年となり,これは現在の約1/3である。宍道湖コアでは,30~20cm(1830-1890年)で約0.7%と過去最も低くなり,約1,300トン/年となる。汽水域は半閉鎖水域で有機物の分解が遅く,かつ,水深が浅いために有機物の堆積が速やかに起こるので,気候変化に対しては非常にレスポンスの速いcarbon sinkとして特徴づけられた。
著者
村田 千代栄 鈴木 佳代 筒井 秀代 原岡 智子 近藤 克則
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

一般高齢者のヘルスリテラシー関連要因の探索のために質問紙調査と面接調査を併用した混合研究法を用いた。教育程度や年齢、健康状態に関わらず「診療場面でわからないことを質問できない」ほど、必要な治療を中断しており、治療方針について「医師の説明を聞いたうえで医師と患者が相談して決める」(パートナーシップ型)で中断がもっとも少ない一方、質問できない理由として「忙しそう」「次の人が待っている」「質問しても無視された」「嫌な顔をされた」などの意見がきかれ、良好な治療関係には、ヘルスリテラシー向上に加え、医師との良好なコミュニケーションが重要であり、医師・患者双方への働きかけが必要と思われた。
著者
阿辺川 武 室田 真男 仁科 喜久子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学習者作文に含まれるレジスター誤り、特にアカデミック・ライティングにおける不適切な表現を自動的に検出し、誤りを指摘する日本語作文推敲支援システムを開発している。本研究課題では、このシステムを使用した日本語学習者によるレポート形式作文の推敲支援を評価する実験をおこなった。その結果、システムの指摘の精度が不十分なため間違った誤用指摘も多く、正しく誤用を指摘した個所においても見過ごされてしまったこと、および使用後のアンケート結果から、誤用指摘だけでなくどのように訂正したらよいかという指針を含めて表示してほしいといった要望が多数聞かれた。今後これらを参考にしてシステムの利便度を向上させていきたい。
著者
日臺 滋之
出版者
玉川大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

中学、高校の英語の授業でALTとのインタビューテストやクラスメートとのチャットを実施し、活動後に、生徒に英語で表現したかったけれど英語で表現できなかったことを日本語で書いてもらった。次に、その日本語を、英語母語話者の協力を得て、英語に訳し、Excel上で日本語と英語を左右一対一対応に整理し、日英パラレルコーパスを構築した。最後に、日英パラレルコーパスを分析し、日本人中学生、高校生が、なぜ英語で表現したかったのにできなかったのか、その要因について分析した。
著者
佐藤 幹哉
出版者
川崎市青少年科学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ほうおう座流星群は、過去1956年に一度だけ大出現を記録した流星群である。研究代表者らは、ダスト・トレイルモデルでこの出現を解明し、そして2014年12月に再度出現する可能性を見出していた。本研究の目的は、2014年に予報通りの出現があるかどうかを観測すること、またその出現状況から、ダストが放出された20世紀初頭における母天体のブランペイン彗星(289P/Blanpain)の彗星活動度を推測することである。流星群は、2014年12月2日0時(世界時)の出現ピークが予測されたため、この観測条件と治安や気象条件などを考慮し、スペインのラ・パルマ島で観測することとした。観測方法は、流星群の活動度の測定のために、世界的な標準方法での眼視計数観測と、高感度ビデオ撮像による流星数観測の2種類を実施した。悪天候により島内南部に移動したため、極大時刻を過ぎてからの短時間の観測となったが、ほうおう座流星群の検出に成功した。眼視観測による流星数は、最大で12月2日0時45分~1時15分に6個を記録した。これは、ZHR(天頂修正1時間流星数)で31.4±11.9の規模であった。一方でビデオでは流星を捉えることができなかった。これは写野範囲が眼視観測より若干狭いこと、眼視観測よりも明るい流星までしか撮像できないこと、予定通りの観測継続時間を確保できなかったことが原因だと考えられた。眼視観測による出現規模から、ダストが放出された20世紀初頭の母天体の彗星活動度は、発見当初の1819年に対して約24.4%に減少していたことが推測された。これは、標準等級(H10)に換算すると、母天体が約1.6等級減光していたことに相当する。母天体は1820年から2003年まで見失われていたが、本研究の結果から、20世紀初頭の年代の母天体が、徐々に彗星活動を低下させていたことが推測された。観測結果は、研究代表者が勤務する川崎市青少年科学館にて報告会(2015年1月10日)を実施し、市民に速報した。また研究成果については、日本天文学会春季年会(2015年3月18日)にて発表した。なお、今回のほうおう座流星群については、ブラジル、アメリカ、カナダなど世界規模で検出の観測が行われたため、それぞれの成果を共有した上で論文に投稿する予定である。
著者
宮永 憲明 村上 匡且 細貝 知直 末田 敬一 川嶋 利幸 藤岡 加奈 時田 茂樹 李 朝阳 荻野 純平 宮本 翔 松山 卓弘 上須 駿一 富田 省吾
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

オクターブ近い周波数広がりのレーザーとプラズマの相互作用を研究するために、レーザーの技術開発と将来の応用に向けて陽子加速を研究した。広帯域光パラメトリック増幅(OPA、OPCPA)に関しては、誘導ブリルアン散乱パルス圧縮を利用したサブナノ秒OPCPA、回折格子対とレンズ対の4f構成光学系による周波数領域2段ピコ秒OPA、パラメトリック蛍光の低減手法を開発した。陽子加速に関しては、ナノチューブでのクーロン反発効果による加速手法を考案し、最大10MeVの加速を観測した。また、球状クーロン爆発による陽子加速では、比較的思い元素を混合させることで単色化が可能であることを水クラスターで実証した。