著者
徳永 仁 髙村 徳人 松岡 俊和 佐藤 圭創 瀬戸口 奈央 緒方 賢次 佐藤 圭創 緒方 賢次 瀬戸口 奈央
出版者
九州保健福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

病棟、薬局、在宅およびドラッグストアを想定した薬効の評価や副作用の早期発見のトレーニングを目的とする薬学生・薬剤師のためのフィジカルアセスメント(PA)学習教材を作成した。基礎学習(スライド形式・動画形式)と症例学習からなり、基礎学習ではPAの基本解説と心音、肺音および腸音の正常または異常の聴診できる。症例学習では患者アバターに対して客観的または主観的な身体学的所見の情報、バイタルサインや臨床検査値を加えることにより、薬剤師としての受診勧奨、他医薬品への処方変更、薬効・副作用の確認もバーチャルで可能となった。患者対応から症状回復までが体験できるこれまでにない有益な教材が開発できたと考えている。
著者
齊戸 美弘
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、針型形状の試料前処理デバイスを開発し、火災現場空気試料の迅速なサンプリングおよび分析前濃縮を行うとともに、その試料を精密分離分析することにより、空間分布が精密解析可能な新規火災原因解明技術の開発を行った。これにより、従来法の問題点を大幅に改善するとともに、火災現場における迅速かつ広範な検証用空気試料の採取が実行できることが明らかとなった。開発したデバイスは、常温でも一定時間までの試料保存が可能であり、従来よりも早い段階で確実に火災原因の断定が可能である。また、石油ストーブへのガソリンの誤給油等の火災原因究明にも応用可能であることが確認できた。
著者
堀内 功 澤井 英明 小森 慎二 赤谷 昭子 香山 浩二
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

TNSALP遺伝子のゲノムDNAをPCR法にて増幅した。ゲノム遺伝子は12エクソンに分かれているため、PCR法に用いるプライマーはそれぞれのエクソンについて合成する必要がある。しかも細胞1個にはTNSALP遺伝子は1対(2個)しか含まれていないため、これを遺伝子増幅するためには増幅対象領域についてPCR反応を繰り返して2度行ういわゆるnested PCR法が必要となる。この方法に必要なTNSALP遺伝子のプライマーの塩基配列はすでに報告されているので、これらの情報を用いて、細胞1個より増幅可能な条件を検討した。増幅された遺伝子がTNSALPであるかどうかについてはそれぞれの増幅された遺伝子内に存在する制限酵素部位が、既知のTNSAPLの遺伝子配列と一致するかどうかで判断した。同じ増幅法であっても細胞融解の方式によって増幅の程度の差が出ることが判明した。すなわち蛋白融解酵素を用いたものよりもアルカリ溶解法を用いた方が正確な増幅が期待できることがわかった。しかし、allele drop out(ADO)と呼ばれる、2本の染色体のうちの1本がうまく増幅されない減少についての検討を次に行った。低アルカリホスファターゼ症は常染色体劣性遺伝形式をとる疾患であるので、ADOがあっても正常のalleleの増幅がみられれば、少なくとも保因者であり、罹患はしていないと診断できる。しかし、あまりにADOの頻度が高いと、正確な診断という意味では問題が生じる。文献上はいずれの方法が良いかについては相反する報告があり、増幅する遺伝子によって違いがあるものと考えられた。そこでADOの頻度を検討して、さらに増幅率を加味して検討した結果、TNSALP遺伝子の増幅についてはアルカリ溶解法を用いた方が、増幅効率とallele drop outの率から考えて、良いと考えられた。
著者
小谷 一孔
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は顔表情(可視情報)と顔温度画像(非可視情報)を用いて人の感情を推定する。このため、人の基本感情において顔画像とこれに対応する顔温度画像のデータベースを作成した。そして、顔画像、顔温度画像、顔画像と顔温度画像とを組み合わせた感情推定手法を試作し、各々の特性を評価した。その結果、いずれかのみを用いた場合、70%程度の推定精度が得られる感情クラスが見られた。更に顔画像と顔温度画像とを組み合わせることにより10ポイント程度の精度向上が得られる感情クラスが見られた。可視情報と非可視情報とを組み合わせにより感情強度の推定やより複雑な感情クラスの推定が可能であるとの知見が得られた。
著者
丸山 空大
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成26年度は、課題「フランツ・ローゼンツヴァイクの後期思想に関する研究」の最終年度として、平成25年度までの研究の成果をふまえつつ、ローゼンツヴァイクの教育論と律法についての見方に特に着目しながら研究を進めた。まず、初期から晩年にかけてのローゼンツヴァイクの教育論の変遷を追った。このことを通して、ローゼンツヴァイクが宗教教育によって一人ひとりのユダヤ人がユダヤ人としての自覚を獲得するというプロセスを重視していたことが明らかになった。このことを彼は「ユダヤ人になるJudewerden」ことと呼んでいる。彼は、初期から晩年まで一貫して、近代の(ドイツ・)ユダヤ人は家庭において自然にユダヤ人としての生活習慣や心構えを獲得するということができなくなっているから、あらためて「ユダヤ人にな」らなければいけないと考えていたのだ。このように初期思想と後期思想の連続性が明らかになったことで、後期ローゼンツヴァイクの、初期思想に対する自己批判の要点がはっきりとした。この「ユダヤ人になる」というプロセスは、初期思想の一つの到達点である『救済の星』においては、観念的に、読書と思考を通した世界観の変容として理解されていた。これに対し、後期では祈りや宗教儀礼への参加という実践的な要素が重視されるようになるのだ。しかし、このような儀礼の重視は、伝統的な正統派への退行を意味するのではないのだろうか。このような疑問を解明するために、ローゼンツヴァイクの思想を同時代の正統派の論客イザーク・ブロイアーと比較した。後期ローゼンツヴァイクとブロイアーは、律法の実践を重視することにおいて共通していた。しかし、前者においてはユダヤ人としての意識の獲得が律法の実践に先立つのに対して、後者においては逆に律法の実践を通してユダヤ人としての意識が涵養されると考えられていることがわかった。
著者
堀 忠雄 山上 精次
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

事務的で魅力のある課題の遂行にも、ウルトラディアン・リズムの影響が表われるかを実験的に検討した。課題は言語情報処理に関して、ワープロ入力(邦文研究論文原稿の入力)を、空間情報処理に関しては、ファミコン(ゲーム名:ゼビウス)ゲームを採用した。男子大学生及び大学院生20名を、ワープロ課題10名、ファミコン課題10名割付け、朝の8時から夕方の18時まで10時間、15分毎に5分間の課題遂行とその前後に各1分ずつ閉眼安静を課した。残る8分間は被験者は食事・用便・休憩・ジクソウゲーム等の自由行動が許された。実験期間は恒常環境室を閉鎖し、孤立条件で実施した。行動観察とともに脳波・眼球運動・心電図をポリグラフィ記録し、脳波については課題中とその前後の安静期について、1分間の記録をスペクトル分析し、脳波の左右差指数とコヒーレンスを計算した。ウルトラディアン周期変動成分の同定は、最大エントロピー法(MEM)によった。ワープロ入力課題では、作業速度と誤りを指標として時系列分析した。成績曲線には'ゆらぎ'は認められるが、MEMスペクトルは平坦なパタンを示し、ランダム変動であることがわかった。しかし、原稿内容に自動変換で正しく入力できる部分と自動変換が誤りの発生因となる部分もあり、作業成績の適正評価という点に問題がある。従って、実務作業にはウルトラディアン変動はないと言い切るのは早計のようである。この点については、今後、指標の洗練化を試みる。ファミコンの成績は得点数とクリア場面数、使用機数を重み関数として時系列を作った。最も明確にMEMスペクトルにピークがみられたのは、単純なゲーム得点で約90分周期のウルトラディアン変動が認められた。脳波はゲーム中に右半球活性の状態を示しながらも、約100分周期の変動を示した。コヒーレンスに全く周期変動がみられないのは、単純作業と著しく異なる。
著者
岩崎 博之 中井 専人
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

測定原理の異なる二つの雨量計で得られた10秒降水量データを用いて,発達した積乱雲群を構成する対流セルの微細構造を調べた.二つの雨量計で得られた10秒降水量の時間変化には,明瞭な1-2分周期の変動が認められ,多くの場合,その二つの位相は一致していた.この事実は,1-2分周期の変動は測器の測定誤差ではなく,実在の現象であることを意味している.つまり,一般に積乱雲の構成単位と考えられている対流セルの内部には,更に小さな複数の降水コアがおおよそ1km間隔で分布していると考えることができる.しかし,降水コアには周期性が認められるが,降水コア通過に伴い地上気象要素が変動する事実は認められなかった.
著者
吾妻 健 嶋田 雅暁 平井 啓久
出版者
高知大学(医学部)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

導入:これまで、Schistosoma属の起源について、ミトコンドリアDNAのcytochrome oxidasel遺伝子(CO1)、また核リボソームRNA遺伝子の、large ribosomal subunit rRNA遺伝子(lsrDNA)及びinternal transcribed spacer gene 2(ITS2)の部分塩基配列から系統関係を推定したが、本研究では、CO1、lsrDNA及びsmall ribosomal subunit rRNA遺伝子(ssrDNA)の全塩基配列をはじめて決定し、その情報をもとにSchistosomatidae科全体の系統関係を推定した。材料:解析対象の材料としてSchistosomatidae科のSchistosomatinae亜科6属、Bilharziellinae亜科2属、Gigantobilharziinae亜科2属の計10属29種、またアウトグループとして、Sanguinicolidae科のChimaerohemecus1属を用いた。本研究で決定し解析に用いた各遺伝子の塩基数は、CO1は、1,122塩基対、ssrDNAは1,831塩基対、lsrDNAは3,765塩基対であった。結果:今回は3つの遺伝子を結合した情報をもとに解析した。その結果、(Bilharziella(Trichobilharzia,(Dendritobilharzia, Gigantobilharzia)))の系統樹が支持された。また、(Ornithobilharzia + Austrobilharzia)と(Schistosoma + Orientobilharzia)のクレードとのシスターグルーピングが支持され、哺乳類住血吸虫はparaphyleticであることが推定された。また、Orientobilharzia属は、Schistosoma属内に含まれることが明らかになり、Schistosoma属も非monophyleticであると推定された。また、この系統樹では、S.incognitumは、Orientobilharzia属とシスタークレードをつくるので、これらの2種うち、おそらくOrientobilharziaが、アフリカ産グループとS.indicumグループの祖先種であると推定された。論議:Schistosoma属住血吸虫の起源に関する説については、これまで2つある。一つは、『アジアの住血吸虫は、ゴンドワナ大陸から分離したインド大陸プレートによってアジアにもたらされた。また南米の住血吸虫は、南米がアフリカ大陸と分離する以前にすでに移動していた。』とするゴンドワナ説(アフリカ起源説)である。もう一つは『住血吸虫の祖先は、アジアから哺乳類の大移動によりアフリカに広がった。一方、アジアに残った祖先種は、S.japonicumグループとして適応放散した。また、アフリカに渡った系統は、S.mansoniグループとS.haematobiumグループに分岐したが、S.indicumグループの祖先は、ヒトや家畜とともにアフリカからインドに戻った。』とするアジア起源説である。今回の研究により、後者のアジア起源説が一層支持される結果となった。
著者
山田 朋子
出版者
中村学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

幼稚園教諭と保育士が存在する認定こども園での実習評価票の課題を明らかにした上で現在の幼稚園と保育所の実習評価項目をもとに「認定こども園の現状に即し、自己評価と実習評価を兼ね備えた」新たな保育教諭育成の実習評価票を開発する研究である。全国保育士養成協議会策定のMS実習評価票と保育者自己評価項目案をもとに自己評価も可能な新たな評価項目を検討した。結果、幼保連携型認定こども園も従来の実習に準拠した受け入れ状況にある。双方の組織理解のもと保育教諭、幼稚園教諭、保育士に共通する普遍的な保育者の資質を発揮する保育実習で、実習評価票には自己評価と保育者実習のポートフォリオの役割が求められることが示唆された。
著者
後藤 昌弘 岩田 惠美子 大久保 郁子 西中 未央 森 元幸 森 一幸 中尾 敬
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北海道産5品種,長崎県産5品種2系統を用いて,化学成分分析,テクスチャー測定,官能検査を行い,品種による調理適性を明らかにすることを試みた。官能検査の総合評価から,北海道産ジャガイモの収穫直後では,「ピルカ」が揚げ加熱,「はるか」がゆで加熱に,貯蔵6ヵ月では「ピルカ」が電子レンジ加熱,「はるか」が揚げ,蒸し,電子レンジ加熱に,長崎県産春作の「西海31号」は電子レンジ加熱,「西海37号」は蒸し加熱,ゆで加熱,秋作では「アイユタカ」は揚げ加熱,「さんじゅう丸」は揚げ加熱,「西海31号」は電子レンジ加熱,「西海40号」は揚げ,電子レンジ,ゆで,焼き加熱に適していると考えられた。
著者
横田 雅紀
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

現地での測定が極めて困難な超強風条件における海面抵抗係数について,暴風域外で観測された波浪観測データから逆推定可能なデータ同化システムに現地データを適用し,海面抵抗係数を風速の関数として推定した結果,風速30m/s以下の風速範囲については,複数の擾乱事例について,任意に設定した複数の初期値からほぼ同様の推定結果を得ることができ,従来,利用されているMitsuyasu・Hondaの式が概ね妥当であることが確認できた.さらに,強風が発生していない観測地点であっても,強風域で発生し伝播してきたうねりが観測されていれば,データ同化により強風速範囲の海面抵抗係数が推定可能であることを明らかにした.
著者
出牛 真
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

全球化学輸送モデルのシミュレーションと航空機・ゾンデ観測を組み合わせて、アジアモンスーン循環がインド上空における物質輸送過程に与える影響を、その年々変動とともに明らかにした。また、等温位面の質量重み付き帯状平均を用いた解析をおこない、大気中の一酸化炭素のグローバルな輸送収支を平均子午面輸送・渦輸送・積雲鉛直輸送のそれぞれからの寄与を分離して評価した。北半球亜熱帯域の上部対流圏から下部成層圏においては夏季アジアモンスーン循環によって高気圧性循環が形成されるが、その領域では平均子午面輸送による一酸化炭素の収束が卓越している事がわかった。
著者
松田 和信
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、1990年代の初めにアフガニスタンのバーミヤン渓谷およびパキスタンのギルギットから発見され、ノルウェーのスコイエン・コレクションや米国のアダムス・コレクションをはじめとする海外の蒐集家、および我が国の平山郁夫画伯らに分割して引き取られたサンスクリット語やガンダーラ語による大量の仏教古写本類のうち、平山郁夫画伯のコレクションに含まれる写本類を中心に取り上げ、スコイエン・コレクション等の他のコレクションに含まれる仏教写本研究に従事している海外共同研究者とともに関連資料と比較しつつ解読研究を行って、その出版を目指すものであった。平山郁夫コレクションに含まれる写本類の中で最も重要な資料は、パキスタンのギルギットから発見された説一切有部教団に属する『長阿含経』のサンスクリット語樺皮写本である。これは本来、全453葉よりなる写本であったことが判明しているが、平山郁夫コレクションは、この中の53葉を入手している。4年間に亘った研究期間の間、この長阿含経写本の解読を主として行い、53葉に含まれる複数の経典の解読とテキスト校訂を終えた。また平山郁夫コレクションが入手板した他の写本類についても解読研究を行い、その全体像を明らかにすることができた。研究成果の詳細については研究成果報告書において公表する。
著者
豊田 二美枝 前川 眞見子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1. 精子細胞膜におけるZP3受容体の局在:マウス卵の透明帯構成糖蛋白質ZP3は同種精子の認識、付着、先体反応の誘発に重要である。ZP3受容体の精子細胞膜上の分布を調べるために、単離ZP3を金コロイド標識し、表面レプリカ法で観察した結果、ZP3受容体は精子先体部の辺縁を被う細胞膜表面に三日月状に分布することが明かになった。2. マウス精子の56kDa蛋白質sp56の局在、分子形態、精子形成中の動態。(1), sp56の精子表面における局在:sp56はZP3と特異的親和性をもち、1.のZP3受容体と同じ局在を示すことから、ZP3受容体としての条件を満たしている。(2), sp56の分子形態:sp56は8量体を形成するが、シャドウィング法により、四葉のクローバー状に観察され、2分子づつがより緊密な関係にあることが示された。(3), sp56の精子形成中の動態:免疫組織化学的にsp56はゴルジ期には点状、頭帽期にはベレー帽状、先体胞期には髷状、成熟期には三日月状に分布し、常に精子細胞に局在していた。これはsp56が精子自身の産物であることを示している。3. Aquaporin7(AQP7)の精子形成中の動態と精子の小形化への関与:精子が小形であることは受精時の透明帯通過に不可欠である。精子形成末期に起こる精子細胞の体積減少は、大部分が水の消失により説明される。これは精子細胞が高張な精細管内腔液に曝露される時期とも一致している。AQP7は26kDaの膜貫通性蛋白質で,水Channel分子とアミノ酸配列の相同性が高く、強制発現で浸透圧による水の透過性が上昇する。ラット精巣でAQP7を免疫組織化学的に調べたところ、AQP7は先体胞期に出現し、残余細胞質とそれを被う細胞膜に強く発現していた。この結果は、細胞内からの水の流出過程にAQP7が水Channelとして機能し、精子細胞の急激な体積減少に寄与することを示唆する。
著者
前田 茂 要 真理子
出版者
京都精華大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1920年代を通じて、英国のモダニズム批評は、新しいメディアである映画を扱い始め、それにより、文学と絵画を前提とする以前の美学と批評論は、新たに練り直されねばならなかった。この練り直しは、1930年代に入りロシア由来のフォーマリズム映画批評が紹介され、以降の映画研究における主流となっていくにつれ、ほとんど無視されてきた。こうした傾向に抗して、本研究では英国の批評動向における上記の部分に光を当て、現代の批評理論へのその有効性を検討することを目指した。その結果、ヴァ-ジニア・ウルフやウィンダム・ルイスらの言説の中に「時間感覚」と呼べるものが言及されるようになった事実を明らかにした。
著者
渡辺 興亜 本山 秀明 神山 孝吉 藤井 理行 古川 晶雄 東 久美子 島田 亙
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

氷河や氷床など氷久雪氷層中には大気中からさまざまな物質がさまざまな過程を経て混入している。それらの物質は雪氷層中に初期堆積状態を保ち、あるいは続成過程の結果として保存される。このように保存された各種物質の濃度、組成、存在形態は雪氷コア中に特色ある情報系を構成し、堆積環境、気候状態の情報指標(シグナル)となる。とりわけ物質起源に関して地球環境、輸送機構に関して大気環境と大きく結びついているエアロゾル起源物質は地球環境情報の指標として重要である。本研究ではエアロゾル起源物質の雪氷層への(1)初源的堆積過程、(2)積雪の変態過程に伴う二次堆積-移動過程、(3)定着化過程を積雪の氷化過程を中心課題として研究を進め、(4)指標シグナル全体としての特性の形成機構を中心に解析をおこなった。極域にはさまざまな起源からエアロゾルが大気循環を通じて転送され、極域大気循環を通じて雪氷層に堆積する。降水の同位体組成とともに、エアロゾル物質の濃度、組成化、その他の指標特性はさまざまな時間規模の大気環境、雪氷堆積環境の状態とその変動特性を指標する。しかしその指標特性は単純ではない。エアロゾルの輸送、堆積に関る大気環境と堆積後の諸過程に関る雪氷堆積環境にはさまざまな地域特性を反映しているからである。極域における雪氷コアから抽出できる各種の指標シグナルは極めて豊富であるが、指標特性の形成の過程と形成の機構の解明に不可欠な再現実験が困難という問題が存在する。そのため、本研究ではフィールド観測対象域として極域の積雪変態過程とほぼ同様な変態、氷化の諸過程が生じる、北海道東北地方の内陸部を選び、二冬期間に観測を実施した。わが国の積雪域は現在の気候下では季節雪氷圏であり、氷久雪氷圏の極域雪氷の諸現象との相違も大きいが基礎観測としてほぼ十分な成果をあげることができた。
著者
山内 明 栗林 太 山内 三爵子 金ヶ嵜 史朗 土屋 朋子 小日置 佳代子 板谷 益美
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

炎症性疾患の発症機構を解明するために、炎症反応で重要な好中球の走化性惹起因子に対する遊走パターンを解析した。好中球のfMLPおよびIL-8への遊走の軌跡は直線状であること、LTB4およびPAFへの遊走の軌跡は蛇行することを確認した。fMLPおよびIL-8への直線状の遊走では単極性で安定的な形態が、LTB4, およびPAFへの蛇行する遊走では多極性で不安定な形態が関連していた。また、これら4種のリガンドの強さはfMLP > IL-8 >> LTB4 = PAFであることが明らかとなった。これらの知見は今後の炎症コントロールおよび抗炎症剤の開発などに役に立つものと思われる。
著者
三井 はるみ
出版者
昭和女子大学短期大学部
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、千葉県の上総・安房地方に広がる「房総アクセント」の実態把握と体系記述を目的とした。「房総アクセント」は、京浜アクセント(金田一春彦による)の一変種でありながら、北奥方言アクセントなどと同じく母音の種類(広母音か狭母音か)が音調に関与するアクセントで、地域差も大きい。またその歴史的解釈をめぐっては、異なる立場からの論争がある。本研究では歴史的解釈に先立つものとして、1.特に語音と音調の関係について従来の報告より細部にわたる詳細なデータを収集する。2.代表的な地点の体系記述を行い、地域差を把握する。の2点を目標とした。金田一の「房総アクセント」の4分類などを参考に、10地点(市原市、東金市、茂原市、一宮町、大多喜町、鴨川市、君津市、白浜町、木更津市、館山市)を選び、それぞれ60歳代から70歳代の生え抜きの話者を対象に調査を行った。調査にあたっては、主として東北大学文学部編『アクセント調査票』を用い、場合によっては類別語彙を補充した。また読み上げ式調査を補完するものとして、上記のうち2地点では談話の収録を行った。現在読み上げ式調査、収録談話ともに、結果の整理を行っている。今後これらをもとに体系の記述に進む予定である。なお、今回の調査内容は比較的簡略なものであった。研究実施計画に記した、より詳細な内容の調査は今回行うことができず、今後の課題として残されている。
著者
佐藤 由美 玄 善允 弘谷 多喜夫 佐野 通夫 李 正連 宮崎 聖子 磯田 一雄 仲村 修 鈴木 常勝 前田 均 上田 崇仁
出版者
埼玉工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本統治下の台湾や朝鮮では、学校教育を受けることのできる子どもたちは限られていた。その機会に恵まれた子どもたちでさえも、その期間は限定されていたが、子どもたちは学校以外でもさまざまな学びを経験したはずである。そこで私たちは学校教育以外の場で、子どもたちがどのような学びを経験したのか、その様相に焦点を当て多様性を明らかにした。例えば、社会教育(伝統教育機関、夜学や国語保育園など)、サブカルチャー(児童文学、紙芝居、ラジオ、労働、遊び)の中での彼らの学びである。資料としては、当時の政策文書や新聞雑誌、インタビュー調査の記録を用いた。
著者
山家 京子 佐々木 一晋
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、少子高齢化及び人口減少を背景に、神奈川県の郊外住宅地の現状把握により、郊外住宅地の持続可能性について検討することを目的とする。まず、整備された住宅地景観を空間資源として捉え、道路境界域の特徴について定量的分析を試みた。さらに、住民意識と生活関連施設利用行動に関するアンケート調査を行い、高齢化及びアクセスを障害と捉えている点、生活関連施設と移動手段との関連性、多様な生活関連施設利用行動などを明らかにした。