著者
西尾 文彦 近藤 昭彦 中山 雅茂
出版者
千葉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

寒冷な大気状態で降る雨や霧雨(着氷性降水)が付着凍結する雨氷現象は、森林被害や構造物・送電設備の倒壊被害を発生させる。本研究では、日本における着氷性降水の気象学的および気候学的な特徴の解明を目的として、(1)気候学的な特徴の把握(総観規模の特徴)、(2)発生条件の形成過程の解明(局地規模の特徴)、(3)大気の熱力学的構造の解析(雲物理規模の特徴)の観点から解析と研究を行った。そして、着氷性降水の発生予測手法を提案し、地上降水種(降雪・雨氷・凍雨・雨等)の地域分布の予測手法の可能性を示した。(1)では、中部地方以北の内陸山間部と関東地方以北の太平洋側平野部で着氷性降水の発生率が高く、着氷性降水の発生に関する季節変化と経年変化、地上気圧配置の特徴について示した。(2)では局地解析より、内陸山間部では盆地地形による寒気滞留が発生気象条件の形成に寄与し弱風下で発生し、太平洋側平野部では内陸からの局地的な寒気移流が関与して風を伴って発生するのが特徴である。この違いにより、太平洋側平野部では雨氷表面における負の熱フラックスが大きく、雨氷が発達しやすい大気状態にある。(3)では、熱力学的な理論計算により降雪粒子の融解条件と雨滴の凍結条件を求め、これと地上の露点温度の条件から着氷性降水の発生を予測する方法を提案した。推定された地上降水種の地域分布は、関東平野の事例における実際の降水種の地域分布に良く一致した。本研究では、着氷性降水の現象解明から発展して予測手法へ導く極めて独創性のある研究成果であると考えています。
著者
高橋 弘樹 大幢 勝利 高梨 成次
出版者
独立行政法人労働安全衛生総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

平成21 年に労働安全衛生規則が改正され、新たに墜落防止用の幅木等を足場に設置することが義務付けられたが、現行の風荷重に対する足場の設計指針は従来の足場を対象としているため、規則改正後の幅木等を設置した足場に対応しているかは不明である。本研究では、風荷重に対する規則改正後の足場の倒壊防止を目的として、規則改正後の幅木等を設置した足場を対象に流体解析と風洞実験を行い、幅木の高さと足場の風力係数の関係について検討した。研究の結果、幅木を設置した単体の足場の風力係数の値は、幅木の高さにほぼ比例することが分かった。更に、これらの結果をもとに、幅木を設置した単体の足場の風力係数の計算方法を提案した。
著者
伊東 敏光
出版者
広島市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

「不在」とは、「本来その場所に在るべきものがそこに無い状態」を意味するが、本研究に於いてはその「不在」の概念が、いかに美術家の制作意欲の源となり表現に可能性を与えて来たか、また鑑賞者には共通の意識として作品との交点を提供して来たか、という二つの観点から20世紀後半に活躍した美術家の作品および関連資料の調査を行ってきた。今年度の研究では昨年の研究対象作家の中から、アントニー・ゴームリー/Antony Gormiey、ルイーズ・ブルジョア/Louise Bourgeois、ヤン・ファーブル/Jan Fabreの3名に焦点を絞り、彼等の生い立ちや経験と、作品との関係についてさらに分析をおこなった。また今年度特に注目した作家は、1970年代の現代美術界においてカリスマ的存在であったドイツ人彫刻家ヨセフ・ボイス/Joseth Beuysである。ボイスは第二次世界大戦参戦中にクリミアで撃墜され、猛吹雪による寒さで生死の境をさまよっている時に現地の遊牧民に救われた体験を持つ。帰還後彼は、獣脂やフェルト等自身にその体験を喚起させる材料を使って、彫刻制作やパフォーマンスをおこなった。ボイスは生涯の芸術活動を通して、我々の社会に欠けている見えない存在を具現化しようと試みた作家であるが、その創造性とそれが社会に受け入れられた背景に「不在」という認識で本研究者が捉えている概念が大きく関わっている。さらに1933年のソ連邦生まれのイリア・カバコフ/Ilya Kavakovや、1950年イタリア生まれのエンゾ・クッキ/Enzo Cuoohi、その他ヤニス・クネリス/Jannis Kounellisu、ブルース・ナウマン/Bruce Nauman、日本の村岡三郎等の作家についても調査、研究をおこない、冒頭に記した二つの観点から考察をおこなっている。また本研究における「不在」という概念そのものについても意味と領域について考察を続けている。なお本研究においては、「不在」をテーマとした実験的作品制作を合わせておこなっており、平成11年度中に公開展示する予定である。
著者
永井 正夫 ポンサトーン ラクシンチャラーンサク
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、全国の交通事故の3割を占めている追突事故に焦点を絞って、運転中の居眠りや不注意を外乱変動とみなし、ドライバパラメータや操作量の分析にモデルベースのロバスト設計手法を導入して、人間機械系のドライバモデルを定量的に扱う手法の確立を目的として研究を実施した。2年間の研究期間の具体的な実施内容は以下のとおりである。(1)シミュレータ及び実車による走行実験により、速度制御にかかわる運転行動パラメータを抽出し、(2)調布と富士河口湖町の間の高速道路における公道実験データを収集して、(3)走行時の運転行動データとドライバモデルの出力との比較による眠気状態の分析を実施し、(4)顔画像による居眠り状態の分析と比較することにより、ドライバの注意力低下を判断できることを示した。基本的に、前後運動の理想的な速度制御モデルは、リスクポテンシャル理論に基づいており、結果的にはバネマス系で構成されるドライバモデルとして構築をした。この成果をさらに拡張して、アクセル・ブレーキペダルによる速度制御モデルだけではなく、ハンドル操作に基づく車線維持制御モデルと統合することにより、より精度よくドライバの居眠り状態や注意力低下状態を判断できるモデルを構築した。この成果は事故を未然に防ぐことを目的とした予防安全技術への応用として期待される。
著者
清水 元彦 小林 弥生子 中山 邦章 塩沢 丹里 藤井 信吾 清水 元彦
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本年度も、前年に引き続き、正常子宮平滑筋、子宮筋腫、子宮筋肉腫の各組織においてER,PRの異常、また腫瘍抑制遺伝子p53の蛋白質、RNAレベルにおいて定量的、定性的に調べ、各組織においてこれらの因子の異常の有無と程度を検討した。最初に免疫染色法で明らかになったER,PRの発現低下はER,PRの転写レベルで起こっているかどうかをmRNAレベルで調べた。手術摘出材料を採取し、ホルマリン固定パラフィン包埋切片の連続した包埋切片上の組織よりdigestion bufferで可溶化し、マイクロウエーヴ処理法でRNAを抽出し、RT-PCR法にて増幅しER,PRのmRNAを解析した結果、免疫染色法で明らかになったER,PRの発現低下は転写レベルでも低下していることが明らかになった。次にER,PRの転写レベルでの発現低下はER,PRプロモーター部位のGCの塩基配列のDNAメチレーションによるかどうかを調べた。手術摘出材料を採取し、ホルマリン固定パラフィン包埋切片の連続した包埋切片上の組織よりdigestion bufferで可溶化し、マイクロウエーヴ処理法でDNAを抽出し、GCの塩基配列上のDNAメチレーションを認識できる制限酵素、HpaII及びHhaIで切断し、ER,PRプロモーター部位のプライマーにてDNAを増幅することによって、ER,PRプロモーター部位のGCの塩基配列にDNAメチレーションがあるどうかを調べる系を確立することができた。現在この系を使ってER,PRの発現低下とER,PRの遺伝子のプロモーター部位のDNAメチレーションの有無の相関性を調べているところである。
著者
白井 裕子 佐々木 裕子 井上 清美 島田 友子 稲垣 絹代
出版者
愛知医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

1)野宿者の生活への参加観察等から、野宿者の健康や生活上における知恵や工夫について調査を行った。寒さ・暑さ対策、暴行を防ぐ、生活用品の入手方法、その場所に住まい続けるための方法(地域住民との関わり方)などが明らかになった。2)調査で明らかになった野宿者の知恵や工夫を、研究者らが行っている健康支援活動の中で、個々に紹介しながらその人の健康を高める方法をともに考えあった。3)梱包用エアーマットを活用した寒さ対策と、砂糖と塩でつくった経口補水液を活用した熱中症予防の方法について、野宿者に実際に生活の中で試してもらった。効果があったという意見も多く、野宿者に共通して広く紹介できることが明らかになった。
著者
佐々木 惇 中里 洋一 横尾 英明
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究において我々は、グリオーマ組織内tumor-associated macrophages (TAM)に関して、ヒト悪性グリオーマとS100β-v-erbBトランスジェニックラット発症グリオーマ組織を用いて、画像解析による定量的検討と統計学的解析を行い、悪性度の高いグリオーマでTAMの活性化が優位に強いという興味深い成果が得た。さらにラット発症グリオーマはヒト悪性グリオーマと異なり、M2タイプのTAMが少ないことが見出した。以上の結果は、英文雑誌、国内学会とシドニー大学でのセミナーにおいて発表した。
著者
松井 かおり 今井 裕之 吉田 達弘 McAvinchey Caoimhe 田室 寿見子 各務 眞弓 山田 久子 MURAKAMI Vanessa Cristiny
出版者
朝日大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、海外にルーツがあり多様な文化的背景を持つ子ども達が日本人地域住民と協同して行うドラマ・プロジェクトを調査し、これらの子ども達の発達を支えるドラマ活動の意義と可能性について考察を行った。調査は、外国人集住地区で活動する可児市国際交流協会や、移民大国であるUKのロンドン大学や演劇ユニットと連帯して行われ、複数回のドラマ・ワークショップ、国際シンポジウムを実施して、ドラマ活動を支える環境づくりについても議論した。
著者
伊藤 英明
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳梗塞後の脳循環代謝改善薬であるニセルゴリンの意欲改善効果について、その機序を検討するために抗うつ薬の標的蛋白であるモノアミントランスポーターに及ぼす影響を細胞レベルで検討した。ヒト神経芽細胞腫由来のSK-N-SH細胞において、ニセルゴリンが濃度依存性、非競合的にノルエピネフリントランスポーター機能を抑制した。セロトニントランスポーターを遺伝子導入したアフリカミドリザル腎臓由来のCOS-7細胞において、ニセルゴリンはセロトニントランスポーター活性の抑制効果は示さなかった。雄性マウスにニセルゴリンを投与したところ、抗うつ効果を評価する強制水泳テストにおいて、明らかな増強効果は認めなかった。
著者
柿田 秀樹
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、コミュニケーション学、とりわけレトリック研究の視点から、騙し絵と遠近法箱という具体的な視覚文化に焦点を絞り、そこに介在するレトリックの力を考察した。とりわけ、オランダとイギリスで17世紀に活躍したサミュエル・ファン・ホーホストラーテンを中心に、彼の絵画論とアナモルフォーズ、そしてレトリックに関する文献調査と共に騙し絵と遠近法箱の作品を分析した。西欧絵画に内在するアナモルフォーズ(と遠近法)に焦点を当て、その歴史的変遷と視覚レトリックの文化的力について批判的に考察した。
著者
李 孝徳
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

東アジア系(日系、朝鮮系、沖縄系)移民の第二次世界大戦後の文学表現は、日本の近代文学・比較文学あるいは各国文学研究においては、特殊なものとして個別的にしか扱われてこなかった。本研究では、こうした文学表現を、日本とアメリカ合衆国の植民地主義と人種主義が生み出した環太平洋地域のディアスポラによる、共通した「根こぎ」の経験が普遍的に表されたものと捉え、関係史的な観点から新たな文学研究のアプローチを提示した。
著者
佐藤 茂 吉岡 俊人 小杉 祐介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.長寿命カーネーションの探索と解析カーネーションの花の老化には,エチレンが主要な役割を果たしている.花の自然老化時には,最初に雌ずいでエチレンが生成し,このエチレンが花弁に作用して,花弁における自己触媒的エチレン生成と花弁の萎れを誘導する.国内育成品種‘ホワイトキャンドル(WC)'ほか数品種を長寿命品種として明らかにし,‘WC'を用いて,長寿命性の分子機構を解析した.‘WC'では雌ずいにおけるACC合成酵素遺伝子(DC-ACS1)の発現活性が低下していることを見いだし,雌ずいにおいて,花の老化のトリガーになるエチレンが生成されないことが‘WC'の長寿命性の原因とであることを明らかにした.2.カーネーション花弁の萎れに関与するCPase遺伝子の解析カーネーション花弁の萎れは,細胞構成成分の分解と引き続く細胞の崩壊によって引き起こされる.これらの過程には,プロテアーゼ,グリコシダーゼ,リパーゼ,ヌクレアーゼなどの加水分解酵素が機能している.プロテアーゼの1つとして,システインプロテアーゼ(CPase)の関与が指摘されていた.既知のCPase遺伝子(DC-CP1)と異なるCPase遺伝子を取得しDC-CP2とした.花弁細胞の老化時におけるDC-CP1とDC-CP2遺伝子の発現解析を行い,さらに両遺伝子のプロモーター領域を単離し,発現調節に関与する塩基配列を明らかにした.3.カーネーション花弁の‘萎れ(wilting)'と‘萎縮(fading)'の解析カーネーション花弁の老化には,エチレンの作用によって引き起こされる萎凋‘wilting'と,エチレンの作用なしに起こる萎縮‘fading'の2つのタイプがあることを明らかにした.さらに,両過程における,DC-CP1遺伝子とシステインプロテアーゼ遺伝子(DC-CPIn)の発現を解析した.
著者
坂本 勉 永和 良之助
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、高齢者の経済的虐待防止に焦点を絞った。まず、国内での高齢者虐待防止の相談機関として地域包括支援センターの状況を分析し、その課題を抽出した。また、海外での先行研究などから、消費者被害や経済的虐待事件から高齢者を守るために、金融機関と連携する事例が認められた。これらの先行研究を国内で応用するための基礎的課題を、法律専門家および福祉専門家との協議からその連携を探ろうとしたものである。
著者
鈴木 弘之 鈴木 淳一 河野 守 尾崎 文宣
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

鋼構造耐火設計における架構・壁の変形と崩壊温度のばらつきの問題を研究した。石膏ボード乾式壁の火災時における変形追随性能は架構の変形に対して不足することを実験によって明らかにした。この知見を踏まえ、火災が層内で拡大したとしても、健全なキーエレメントが僅かでも残存すれば、架構の崩壊温度は非延焼火災の場合のそれと変わらないことを明らかにした。鋼の高温強度がばらつくことによる架構の崩壊温度のばらつきは、600℃を超える高温域でむしろ増え、そのことは複数の崩壊モードが競合するときも変わらないという知見と、そうであることの要因を明らかにした。
著者
セレスタ アジャヤラム
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

siRNAの標的薬剤送達システムとしてantibody-nucleic acid conjugate (ANAC)の設計や合成を行うこととした。抗体に核酸を搭載するために毒性の少ないデンドリマーであるポリアミドアミン(PAMAM)を検討した。PAMAMにsiRNAを静電的結合し抗体とのコンジュゲートを目指した。しかし、得られANACはsurface plasmon resonance (SPR)や細胞assayではノンスペシフィックな結合が主であった。今後PAMAMの表面にあるアミノ基の保護基の導入やPAMAM1分子当たりのsiRNAの数などの検討が重要であると考えられた。
著者
森棟 せいら
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は, ガラス管型を用いることにより, ポリピニルアルコール(PVA)/ナノダイヤモンド(ND)ナノ複合材料を繊維状に成形し, さらに延伸を行うことにより, 超延伸PVA/ND繊維を作製した。作製した超延伸(延伸倍率 : 30) PVA/ND繊維では, PVA微結晶は延伸方向に高配向(配向率95.4%)していることを明らかにした。引張り試験による力学物性の測定をおこなったところ, 未延伸繊維の力学物性はPVA/NDキャストフィルムと同様であった。一方, 超延伸を行うことにより, 力学物性は飛躍的に増加した。ここから, PVAの微結晶配向が繊維の力学物性に大きく影響することが示された. また, 超延伸繊維についてPVA繊維とナノ複合繊維の比較を行うと, NDを1Wt%充てんすることにより, 弾性率は35%, 強度は23%と大きく増加することが明らかとなった。したがって, 超延伸ナノ複合繊維は, PVA微結晶が高配向したことに加えNDの優れた補強効果が発現したことから, 高い力学物性を示すことを見出した。上述の超延伸PVA/ND繊維と同様に, 超延伸PVA/グラフェンオキサイド(GO)繊維を作製した。GOはシート状の形状を有していることから, 繊維内でPVAのみならずGOが配列することにより, さらなる力学補強効果を期待できる。GOをlwt%充てんしたナノ複合繊維は, 超延伸(延伸倍率50倍)を行うことにより弾性率が60GPaに達した。これは, ガラス繊維(弾性率70GPa)に匹敵・追随する値である。さらに, 超延伸PVA/GO繊維は, 優れた熱物性を示すことを明らかにした。GOを充てんしていないPVA繊維と比較して, GOを1wt%充てんしたナノ複合繊維の熱分解温度は, いずれの延伸倍率においても10℃高いことを明らかにした。これは, GOがPVA分子鎖の運動を抑制し, 熱分解に伴う生成物の放出をバリアしたためであると考えられる。
著者
西川 慶子
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

けいれんモデル動物作出のために、申請者らによっってクローニングされたけいれん関連遺伝子SEZ-6のトランスジェニックマウスを作製した。トランスジェニックマウス作出に用いた導入ベクターはSEZ-6cDNAをネスティンのプロモーター/エンハンサーの神経特異的な発現を制御する領域に結合して構築した。このベクターはレポーター遺伝しとして大腸菌βガラクトシダーゼ遺伝子を用いて導入遺伝子の発現をモニターできるようにした。通常の方法により、このベクターを用いてトランスジェニックマウスを作製した。レポーター遺伝子の発現は、予想された通りに中枢神経系で強い発現を示した。このことから、導入したSEZ-6cDNAも中枢神経系で発現していることが予想された。このトランスジェニックマウスは雄雌とも正常な妊性を示した。さらに、組織レベルでは目立った異常は認められなかった。今後はこれらのトランスジェニックマウスのけいれん誘発剤に対する感受性を調べなくてはならないと考えている。
著者
中村 逸郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

現代ロシアでは、メドヴェージェフ大統領とプーチン首相による双頭政治体制が強化されています。政治権力の集中にともない、社会では市民団体などの非営利団体の活動が衰退しているように考えられています。しかし今回の調査では、中央集権化がすすむ一方で、人権擁護団体や宗教組織が政治権力と真っ向から対峙しなくても、独自の運動を展開している実態が浮き彫りになりました。
著者
小澤 正直 浜田 充 北島 雄一郎 西村 治道 Buscemi F.
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

【不確定性】ブランシアールの関係式を混合状態の任意の分解に適用する事で,混合状態に対する誤差擾乱関係を導く事ができる事を示し,2014年に本研究で導かれた,混合状態に対する誤差擾乱関係は最適な分解に対する誤差擾乱関係である事を示した。【相補性】測定過程が物理量の値を再現するのか,確率分布を再現するに過ぎないのかは未決着の問題であるが,定説では,Kochen-Specker の定理から測定は確率分布を再現するに過ぎないと考えられてきた。本研究では,定説に反して,任意の状態で確率分布を再現する事のできる2つの装置で同一の物理量を同時に測定するとそれらの測定値が常に一致することを示した。【情報理論的非局所性】量子通信路が他の通信路に分解可能であるための新しい必要十分条件を発見した。このような条件は,逆データ処理定理と呼ばれ,確率分布のマジョライゼーション順序を量子通信路に拡張している。【計算量理論的非局所性】量子対話型証明における検証者が多項式時間量子アルゴリズムを実行できることに加えて事後選択と呼ばれる能力を有する場合における検証能力を完全に特徴付けることに成功した。具体的には,このような量子対話型証明で検証可能な問題のクラスがPSPACEと一致することを示した。この成果はPSPACEという従来の計算量理論において重要な問題のクラスに対する新しい量子計算的特徴付けを与えるものである。【相対論的非局所性】非文脈依存的な隠れた変数の存在から導かれるKCBS不等式について研究し,非相対論的量子力学においてはすべての状態においてKCBS不等式が破れるわけではないのに対して,相対論的場の量子論においてKCBS不等式はすべての状態において破れるということを示した。【量子暗号】2014年発表のユニタリ演算子構成の定量的な限界式の一般化を行い,より広範囲の系に対して適用可能なものを提案した。
著者
武元 英夫 BRESSOUD Dav 竹内 洋 瓜生 等 降矢 美彌子 安江 正治 前田 順一 渡辺 徹 花島 政三郎 LAINE James KURTHーSCHAI ルサン LANEGRAN Dav PARSON Kathl WEATHERFORD ジャック SUTHERLAND A 石黒 広昭 川上 郁雄 本間 明信 猪平 真理 森田 稔
出版者
宮城教育大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

マカレスター大学において研究協議を行い、意見交流を行った。協議では学内のカリキュラム担当者、学外における教育プログラム担当者等と話し合いが行われた。また、カリキュラムに関する資料や学外の教育プログラムに関する資料が収集された。広域情報教育について、発達しているアメリカのその実態をマカレスター大学との研究討議で、教育センターを訪れることによって見ることができ、いくつかの資料を得た。音楽についてはアジアの音楽での楽器の使用での大学でのカリキュラムの討議、数学のカリキュラムについても解析学や数学科教育の分野での討議したり、実際に講義に参加しアメリカ合衆国での現在の大学でのカリキュラムの見直しの実態に触れ、これからの日本の大学におけるカリキュラムの検討課題が得られた。また、環境教育のカリキュラムについても討議を行った。当初の予想以上の成果があったと言えよう。マカレスター大学は今後の国際化教育を進める上で日本を含むアジア・アフリカ等との交流を重視していくというのは、21世紀に向けた日本の大学教育を考える上で極めて示唆に富む点である。今後の研究を進める上で、どのように共同の視点に立って協議を進めて行くかが課題となろう。経済学教育の面で、特に、アメリカ側から眺めた日本の経済体制についての討議が行われ、金融状勢についての両国の見方、大学でのカリキュラムの導入の方法等において有意義な研究が行われた。コンピュータネットワークは予想どおり、我が大学よりもはるかに進んでいて、数年後の本大学の期待する姿をみたような気がする。