著者
堀場 裕紀江 木川 行央 岩本 遠億 深谷 計子 松本 順子 鈴木 秀明 西 菜穂子 李 榮 山方 純子 田所 直子
出版者
神田外語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

第2言語(L2)としての2種類の日本語語彙テスト(語義・語連想)を開発し、中級から超級までの学習者と母語話者を対象にした大規模調査を行った。語彙知識は語の頻度と種類、知識の要素、母語背景などの影響を受け、量的・質的変化を伴って発達することを検証した。語彙知識とL2読解(日本語・英語)の関係についても実証的研究を行った。また、文脈における語彙の形・意味・使用に関する特性について理論的・記述的な言語研究を行った。
著者
折山 早苗
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,看護師が深夜勤務時間帯(午前0~9時)に2回の短時間仮眠をとることによる効果を明らかにすることである。対象は女子学生15人で,(1)午前2:30と(2)午前5:30に15分間の仮眠をとり,1時間毎に舌下温,脈拍,主観的評価(眠気,疲労感)などを測定した。さらに,看護師16人を「仮眠あり」条件と「仮眠なし」条件に分け,分析した。「仮眠あり」条件は,疲労感の有意な上昇はなかった。仮眠の効果として,夜間から朝方にかけて疲労感の低減効果が示唆された。
著者
菊地 正悟 稲葉 裕 和田 攻 黒沢 美智子 山城 雄一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成7年12月から平成8年3月の間に、1.5歳児検診を受診した95人と3歳児検診を受診した113人の唾液中Helicobactor pylori抗体を測定した。また、平成7年度に小学校1年生であった310人と中学2年生であった300人から、平成7年6月と平成8年6月の2回唾液を採取し、唾液中H.pylori抗体を測定した。同意に保護者に、既往症、家族歴、ペットなどに関する質問票の記入を依頼した。さらに、平成8年に小児科受診者85人の血清Helicobactor pylori抗体と唾液中H.pylori抗体を測定した。唾液の測定は、英国Cortecs社製のキット、Helisalによって、血清の測定は米国Biomerica社製のキット、Pilika Plate G Helicobactorによって行った。小児科受診者85人の血清Helicobactor pylori抗体と唾液中H.pylori抗体を測定したところ血清陽性者は4人で、その唾液中抗体価は1.5以上が3人、0.5未満が1人であった。こうしたデータに基づき、1.5歳児では唾液中抗体価1.0以上を陽性、1.0未満を陰性とし、3歳児では1.5以上を陽性、1.0未満を陰性とし、1.0-1.49の児は分析から除いた。小学生と中学生については、平成7年8年とも唾液中抗体価1.0以上を陽性、2回とも1.0未満を陽性とし、2回の結果が1.0にまたがる例は分析から除いた。同胞がいる小児は1.5歳と3歳で唾液中抗体陽性率はそれぞれ8.6%、24.1%で、同胞のいない小児の0.6%、7.7%より大きく、3歳児では有意であったが、小中学生では唾液中抗体と関連を認めなかった。1.5歳児では、同室で同胞と寝ていた期間が唾液中抗体陽性者で有意に長かった。3歳児では、親が添い寝していた期間が唾液中抗体陽性者で有意に短かった。小中学生では、唾液中抗体陽性者で、小学校入学以前の共同生活の期間が有意に長かった。乳幼児の栄養や、親が噛んだ食べ物を与えたか否か、出生児や健康受診時の体格、両親の胃疾患の既往、ペットの有無は、いずれの年齢でも唾液中抗体と関連を認めなかった。
著者
坂本 隆一
出版者
核融合科学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ステレオ視高速カメラとバンドルファイバアレイを相補的に用いた高時間・空間分解能観測を用いて,高温プラズマ中へ入射された固体水素ペレットが溶発して形成される溶発プラズモイドの詳細観測を行った.その結果,溶発プラズモイドは最大100kHz程度の周波数で分離し, 10数μsの寿命の間に~15cm程度低磁場側に輸送されることを明らかにした.この結果は,実験的に観測されているペレット溶発位置と実効的な粒子デポジション分布の差異を説明することができる.
著者
荊 雷
出版者
会津大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、無拘束常時手指装着型装置の応用展開において、資源制約のある状況に適用可能な充電方式と即時認識手法の基礎研究を行った。充電方法について、太陽光、体温、運動や無線電波などを含め、複数の環境発電手法を指輪サイズ、極端に小型な装置に評価実験を行いた。ジェスチャー認識手法について、連続ジェスチャー入力手法と即時認識手法を研究提案した。本研究が、極端に資源制約された装着型装置に、共通した充電と認識などの課題を解決することにより、ウェアラブルコンピューティングを基礎研究から応用研究へ進むことを促進する。
著者
福田 育弘 神尾 達之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

全体として複合文化学の方法論の基礎が確立された。福田は、当初の予定通り、フランス、パリ・ソルボンヌ大学地理学科の教授・研究者との連携によって、日仏におけるワインの文化的受容の研究を深め、2013年12月13日14日の日仏シンポジウム「ワインをめぐる人を風景」を開催した。これによってワインの受容が文化的社会的背景をもつことが明らかになった。神尾は、行為としてのコミュニケーションに基礎をおくルーマンの社会理論を、日本のネット社会に応用し、日本の若者に顕著な「つながりたい」欲望の在り方を分析した。この2人の具体的で日常的な文化現象の考察により、複合文化学の在り方やその方法論が明確になった。
著者
TAKAHASHI T
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は過去12年間にアジアモンスーン域13箇所から飛揚した200台以上のVideosondeデータを解析し、豪雨をもたらす機構を雲物理学的視点から研究することを目的としている。ビデオゾンデ解析に先立ち、ドップラーレーダ等のデータ解析からモンスーン雨をもたらす雲システムの分類を行った。シノプテックな場の違い、気団の相違から各地でそれぞれ独特な雲システムが発達していた。ビデオゾンデ解析研究は雲内降水粒子の映像を記録したビデオテープの読み込みから始め、143台分の降水粒子型別粒度高度分布を求め、高度500mごとに積算し、質量及び数密度関数値を計算した。これらの基本データをもとに、まずアジアモンスーンの降水機構についての研究を行った。モンスーン雨は降水機構で"すみわけ"があること、即ち中国内陸の"冷たい雨"、熱帯海洋上の"凍結氷雨"、及び多島域での"混合型雨"である。これら降水機構の違いは雲内氷相活動の差を意味しており、雪数空間濃度に大きな地域差が見られ、雷放電頻度地域図と良く符号していた。雷放電の少ない西太平洋上で霰も氷晶も少なく、そこでは多島城と異なる"凍結氷"型で雨が降っていた。解析のハイライトは"Mix"型降雨域で雨水量が急増しているケース群の発見である。ビデオゾンデによる粒度高度分布は0℃層で霰も凍結氷も急成長していた。この原因の解明のため、微物理過程導入の三次元雲モデルを走らせた。温度・湿度場は熱帯型を与え、風には下層に直線シアーを与えている。発達した雲セルからの降水は強い下降気流を形成、下層風上に侵入した流れは次々に前方に小積雲を作る。氷晶成長に伴う潜熱放出で親雲セル内上昇流は強まり、風上側娘小積雲を引き寄せる。親雲セルから降る霰は娘雲セルから供給される十分大きく成長した過冷却水滴を捕捉、0℃層で霰が急成長、降水強度も急増した。即ち豪雨時霰急成長を通して0℃層での水の集積が行われていることが見出された。豪雨形成には霰形成の活発化と0℃層への過冷却水滴の定常的な供給を可能とする特別な力学の場が必要であり、ポラリゼーションレーダ等によるそれらの早期検知が豪雨予報改良に役立つと考えられる。
著者
小倉 幸雄 松本 裕行 塩谷 隆 富崎 松代 三苫 至 半田 賢司
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

確率変数の取る値の空間を一般化する研究は,理論の上からも,応用数学の立場からも重要なテーマであろう.それをファジィ集合の空間に取り,極限定理を調べるのが本研究の目的である.この空間では,位相の入れ方によって可分性が壊れることがあるので注意を要する.本研究の一つの成果は,大数の法則,中心極限定理それにマルチンゲール収束定理は,可分性が壊れる一様位相を入れた空間でも成り立つことを突きとめたことである.方法としては,単調性を用いる方法と,分割を細かくするときのパラメータに関するエントロピーの可積分性を出して,経験分布の理論に持ち込む手法を取った.大偏差原理については,可分性がより大きな影響を与えるが,Levyの距離による位相についてまでは,自然な条件の下でCramer型の大偏差原理が成り立つことを得た.Skorohod位相と一様位相の場合は,やゝ強い条件の下で成り立つことを得た.また,この条件をみたす具体例を求めたが,これはM.Arcones : Large deviations of empirical processesの一つの定理の反例になっている.また自然な条件の下で,Sanov型の大偏差原理が成り立つことも得た.速度関数を具体的に求める問題は,簡単な場合しか出来ていないが,一つの例では,2つの測度の相対エントロピーになることが分かった.次に,研究分担者の松本裕行とともに,一次元ブラウン運動B(t)とその時刻tまでの最大値M(t)について,cM-Xがマルコフ過程になるのは,c=0,1,2の場合のみであることを得た.これは,15年度からの継続の研究であるが,Levyの定理(c=1の場合)とPittmanの定理(c=2の場合)を補完するものである.
著者
野村 彰夫 森川 公夫 川原 琢也 斉藤 保典
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

局地気象情報取得のための昼夜連続観測可能な可搬型バイスタティックイメージングライダーの開発を行った.システムの基本構成として,送信系はNd:YAGレーザを用いた車載型とした.送信レーザ波長は532nm,繰り返し10Hz,最大出力200mJである.受信系は冷却型高感度CCDカメラに高速ゲート.イメージング・インテンシファイヤーを組み合わせ,高速シャッターを可能とした.高速ゲートとレーザ射出タイミングを同期させることにより,受信散乱光強度を減少することなしに背景光強度を1/5000にまで減少させることができ,昼間観測においても良好なSNRでレーザ光の散乱飛跡を画像として捉えることを可能とした.本システムを用いて4回のフィールド観測を行い,実用化に向けてのシステムの問題点と有用性について検討を行った.3日〜10日間の昼夜連続フィールド観測を実施し,その間,地上から高度3kmまでのエアロゾル,霧および雲底高度の鉛直プロファイルを時間分解能1〜2分でカラーコード化した時間変化をディスプレイ上に表示した.特に最終目標である長野冬季オリンピックのアルペン競技が行われた八方尾根会場におけるフィールド観測では,モノスタティックライダーとの共同観測を10日間実施した.連日の悪天候の中での気象予報が困難を極めていたが,昼夜連続観測を行っていたライダー観測データは,早朝に競技の実施を判断する気象担当官から多いに役立ったと高い評価を受けた.以上から,本研究は当初の計画を完全に実施することができ研究成果をあげることができた.フィールド観測から局地気象情報を得るための有用な観測手段になりうることも実証できた.
著者
岡松 暁子
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

北極海における船舶起因の海洋汚染問題については、沿岸国のうちカナダが、1970年に「北極海汚染防止法」を制定し、その適用範囲を200海里にまで拡大、通航の際の事前通告をvoluntaryからobligatoryに変更する等、自国法による規制強化を図る実行を重ねている。これに対して、アメリカは、当該水域を「国際海峡」であると主張し、国際海峡制度に関する規定を援用しながらカナダの一方的行為に抗議している。しかし、排他的経済水域内のうち他国により国際海峡との主張が行われていない水域においては、カナダ法は対抗力を獲得する状況に至っていると考えられる。
著者
西山 晃 田村 智彦 市野 素英 堀田 千絵
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞分化には、各系譜に特異的な転写因子による適切な遺伝子発現が必須であり、その破綻が免疫不全やがんなどの疾患を引き起こしうる。転写因子IRF8は単球を含む血球細胞分化に必須であり、慢性骨髄性白血病の重要な制御因子と考えられている。本研究ではIRF8の機能解析を通じて血球細胞の分化機構を明らかにし、ひいては白血病の新規治療法の可能性を探ることを目標とした。IRF8の遺伝子導入等の複数のマクロファージ分化系で遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、共通に発現が誘導される転写因子を同定し、それらの遺伝子導入によりIRF8を介さないマクロファージ分化を達成した。
著者
佐々木 雅寿
出版者
大阪市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

(1)カナダの憲法学者・行政法学者・裁判官から研究のレヴューを受ける平成12年9月17から同月27日まで、カナダオンタリオ州のトロント市に赴き、トロント大学法学部のH.ジャニッシュ教授(行政法の専門家)およびP.マツクレム教授(先住民法・憲法の専門家)から、そして、オンタリオ州控訴裁判所R.シャープ裁判官(憲法訴訟の専門家)およびオンタリオ州上級裁判所K.スウィントン裁判官(憲法・労働法の専門家)からそれぞれ研究のレヴューを受けた。カナダにおける環境保護に関する最近の動きとしては、先住民の自治政府による環境保護政策を連邦および州レベルでどの程度法律上組み込むかが争点の一つとなっていることが指摘された。(2)日本の環境訴訟に関する検討わが国の現行の実体法・訴訟法体系が個人の権利利益を保護することを主要な目的として構築されているため、訴訟提起の段階、裁判所の審査の段階、そして、救済の段階のすべてにおいて、公益を裁判所によって保護することはかなり困難である。しかし、行政事件訴訟法のいわゆる客観訴訟において行政行為の適法性といういわば公的な利益の保護が裁判所の重要な機能の一つとして認められていることからすれば、現行の枠内においても裁判所が公的な利益を保護する機能を持つことを禁じられていると解することはできない。(3)日本における裁判所の役割とカナダにおけるそれとの相違上記のように日本の裁判制度は基本的には個人の私的な利益を保護するためのものと観念されている。それに対しカナダの裁判所は、個人の私的利益の保護を主要な機能と捉えつつも、副次的ないしは第二次的には、法律の規定に従って公益を保護する機能も重視している。これは議会が法律により特定の公益を保護する機能を裁判所に与えたことが主な根拠となっていると考えられる。(4)若干の提言わが国の裁判所の機能は少なくとも憲法上個人の私的な利益の保護に限定されておらず、裁判所が法律の要請に従って一定の公益を保護することは可能であると考えられる。法の支配の要素に個人の私的権利利益の保護のみならず、法律に従った公益保護もありうることの研究が今後必要となろう。
著者
齋藤 類
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

①観測を行ったアリューシャン渦の構造とその時間変化について記述し、平成28日3月に発表した論文の内容を示す。西部亜寒帯循環(WSG)域に存在した渦の中冷水の最低水温がアラスカンストリーム(AS)域に存在した渦よりも低かった。この水温差は冬期の冷却と春期加熱期の渦周辺水の影響に起因すると考えられた。渦解像モデルを用いた粒子輸送実験によると、WSG 域に存在した渦は春季加熱期においても周辺の冷水の巻き込みにより中冷水を冷却されることを示唆した。中暖水の水温は渦間で差は無かった。渦がAS域からWSG域の伝播において、中冷水は時間の経過とともに変質するが、中暖水は形成時の性質を維持することを示した。②低次生産が高い春季から秋季にかけての渦の一次生産への影響に関する成果を示す。先行研究によってアリューシャン列島南岸で形成された渦の存在が確認されたAS域からWSG域までの範囲を対象域とし、表面 CHL、水温、一次生産量(NPP)と海面高度偏差(SLA)の偏差を比較した。春季及び秋季のSLAの変動があった列島南岸からWSG域までの範囲で一次生産に変動があったため、渦がWSG域にあると生物生産が高くなることを示唆した。2010年7月に観測した渦の変動を見ると、AS域を移動した冬季は水温が低く、一次生産も低かった。夏季の水温上昇により CHLは7~9月まで上昇した。秋季の水温の低下によって、一次生産は減少し、秋季のCHLは渦内で高かった。秋季の他の渦内もCHLが渦外よりも高く、対象域に渦が存在すると、一次生産が高くなることを示した。③沿岸水の影響を受けない外洋域での渦の生物生産への影響を生態系モデルを用いて評価したところ、外洋域に存在する渦内で生物生産が高くなることが示唆された。渦の中冷水・中暖水は表面水に比べると、列島南岸の形成時に巻き込んだ沿岸水を維持しながら、WSG 域に達するためと考えられる。
著者
山口 恒夫 高橋 知音 鷲塚 伸介 上村 惠津子 森光 晃子 小田 佳代子
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

自閉症スペクトラム障害(以下ASD)と注意欠陥多動性障害(以下ADHD)の傾向に関わる困り感と支援ニーズを把握するための質問紙を実施し、その特徴及び信頼性、妥当性を検討した。ASD困り感質問紙ADHD困り感質問紙は、既存の自己評価質問紙の項目に加え、事例報告論文、当事者の手記等から行動特徴、困難経験を表す記述を抜き出したものを項目化し、それらの困り感を4段階評定で問う質問紙であった。分析の結果、十分な信頼性が示され、外的変数との関連から妥当性に関する証拠も得られた。
著者
今村 都南雄 金井 利之 光本 伸江 佐藤 学 原田 晃樹 嶋田 暁文
出版者
山梨学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

第1に、「自治の器」の縮小を「手段」として住民生活を維持し、地域社会の「看取り」を責任持って行うという、もう一つの「自治」のあり方"を提示することで、既存の「自治」観の問い直しを行った。第2に、複数の自治体を取り上げ、長期的なスパンで分析を行うことにより、「意図せざる結果」に満ちた「自治のダイナミクス」を描き出すことに成功した。第3に、そうした研究の蓄積は、「課題設定の次元」と「課題対応の次元」からなる公共サービス供給編制の多様性への着目を惹起し、新たな研究展開をもたらすことになった。
著者
平城 智恵子
出版者
呉YWCA
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的筑豊のおばあちゃんの語りを使った教材で学習した筑豊地区の子どもが、自分の郷土の歴史を知り、ふるさとを愛するようになることが目的である。研究方法筑豊のおばあちゃんたちの語りによる音声資料を、1,「いつでも、簡単に」視聴できるように整備する。2,学校などの教育現場で活用しやすいように教材として開発をする。3,継続的な実施のために、今回の取り組み全体をプログラムモデルとしてまとめる。研究成果上記方法の分類別に成果を示す。2,当初は複数の筑豊のおばちゃんによる聞き取りを対象としていたが、2011年1月に、戦前の坑内労働経験女性(橋上カヤノさん、1910年生まれ)に出会い、肉声証言保存の緊急性を考慮し、橋上さんに限定した音声資料の整備を行うことにした。取材、編集を重ね、映像制作者山本祐子氏の協力を経て、インターネット動画共有サービス(YouTube)に配信している(2012年3月20日現在2動画アクセス数合計158)。2,学校現場での教材開発については、飯塚市立大分小学校の中山雅子教諭の協力を得て、ヒアリング、指導案作成、パワーポイント教材作成と修正を行った。2012年1月24日、6年1組21人の児童に「わたしたちが暮らす『筑豊』」の単元の中で中山教諭が教材を使用して授業を行い、評価までを行った。(1)筑豊は好きですか、(2)筑豊はどんなところですか、(3)炭坑について知っていること、(4)炭坑について学習したいこと、の4項目について学習前・後の評価検証を行った。その結果、(1)については、学習前に「筑豊」が「好き」が5人、「だいたい好き」が16人だったが、学習後「筑豊について興味を持って学習することができましたか?」の問いに、「持てた」が14人、「だいたい持てた」が7人と高評価を得た。3,今回一校しか実施できず、教育現場での協力者探しに課題が残った。地域学習の必要性についての説得力と利用の簡便さが教育プログラムには要求されることが分かった。
著者
平藤 雅彦 篠田 壽
出版者
北海道医療大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究はエンドトキシンの全身投与が歯髄組織にどのような微小循環障害を引き起こすかを検討し、さらにその発生機序を生化学薬理学的および組織学的手法を用いて解析、検討する事であった。平成4年度はエンドトキシン投与後、歯髄組織中の組織障害のマーカーの一つである過酸化脂質をTBA法で測定し、組織障害の有無を検討した。エンドトキシン10mg/kgを静脈内投与して4時間後の歯髄祖組織内の過酸化脂質濃度を測定したところ、有意な過酸化脂質の増加が認められた。同様に肺および空腸組織についても検討したが、2及び10mg/kgエンドトキシンのいずれにおいても有意な影響は認められず、歯髄組織はエンドトキシンにより障害を受けやすいことが示唆された。そこで平成5年度は、エンドトキシン投与による歯髄組織内のアデニンヌクレオチド濃度の変化を検討して、循環障害の有無を検討し、またエンドトキシン投与後の歯髄組織および象牙質形成障害を組織学的に観察した。ラットにエンドトキシン2mg/kg静脈内投与を行い、4時間後の歯髄組織内アデニンヌクレオチド含量をHPCLで測定したところ、AMPの有意な上昇と、ADP、ATPの有意な減少が認められ、組織内のエネルギー状態を示す指標であるエネルギーチャージは著明に減少し、虚血性障害を起こしていることが示唆された。さらに、組織学的観察を行ったところ、エンドトキシン処理により歯髄組織細胞の核の変形、萎縮が認められた。しかし、炎症細胞浸潤や、血管拡張などの炎症性組織所見は認められなかった。以上のことより歯髄組織はエンドトキシンにより虚血性の組織障害を受けることが示唆された。本研究ではさらに、内皮細胞の機能障害機序についても培養ヒト内皮細胞を用いて検討し、好中球の活性化に依存して内皮細胞への血小板粘着が生じ、これは血小板のcGMPレベルの減少が伴っていることを明らかにした。
著者
小林 良彰 名取 良太 河村 和徳 金 宗郁 中谷 美穂 羅 一慶
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

平成23年度、(1)選挙公約内容分析ユニットでは、日本の地方選挙における都道府県知事選拳・都道府県議会議員選挙・政令指定都市長選挙・政令指定都市議会議員選挙、韓国の地方選挙における道知事選挙・道議会議員選挙・広域市長選挙・広域市議会議員選挙の公約を収集して、16の政策領域について内容分析した。次に、(2)政治的選好/政策分析ユニットでは、平成22年度に行った日本の都道府県知事・全ての市長宛の意識調査と比較するために、日本の都道府県議会議長・全ての市議会議長、韓国の道知事・基礎自治体長・道議会議長・基礎自治体議会議長宛の意識調査を行った。また日本の都道府県・全ての市の企画部局、韓国の道・広域市を含む全ての基礎自治体の企画部局宛の意識調査を行った。さらに(3)データアーカイブユニットでは、日本の都道府県、政令市を含む全ての市町村、韓国の道・広域市を含む全ての基礎自治体の財政データを収集してデータアーカイブを構築した。上記の各ユニットで得られたデータを接合して分析した結果、地方分権の効果は、(ア)韓国においてより肯定的に評価されていること、(イ)韓国においてより地域活性化への意識が強いこと、(ウ)日本においてより財政再建志向が強いこと、(エ)韓国において、より「代理型」の代表スタイルが施行されていること、(オ)韓国では、政治的・財政的に中央との結びつきが強く意識されていること、(カ)日韓両国とも、首長と議会の間の認識ギャップが存在するが、そのギャップは日本において、より顕著に見られること、(キ)韓国の地方選挙において公約の地域差のみが表れるのに対して、日本の地方選挙においては公約の地域差と政党差をみることができ、有権者に政策上の選択肢が提示されていることが明らかになった。これらの分析を通して、日本と韓国における自治体が有する共通点と相違点が統計的に明らかにされた意義は大きいと考える。
著者
追川 修一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,組み込みプロセッサ向け仮想化環境の研究,および異なるプロセッサアーキテクチャを持つプロセッサの相互接続手法の研究の2点を研究の目的とした.研究成果として,組み込みシステムで広く使用されているARMプロセッサをターゲットとする仮想化ソフトウェアの開発手法を明らかにし,また実際に実装することで手法の正しさを検証した.また,OpenCLを拡張したHybrid OpenCLにより,効率的に複数のプロセッサを相互接続できることを明らかにした.
著者
村上 興匡 鷲見 定信 村上 興匡 武田 道生 小熊 誠 佐藤 壮広 小熊 誠 武田 道生 佐藤 壮広
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

沖縄から本土への移住者の文化習慣の変化と、沖縄で進行しつつある本土的な文化慣習が普及する変化(「本土化」)とを比較することで、現在の沖縄で起きている変化は、単に本土の文化慣習が沖縄に移入しているわけではなく、それに先だって、まず本土へ移住した沖縄系移住者が、自らの文化慣習を本土に適応させて新たな形を作り出すということがあり(「沖縄化」)、それが再び沖縄に移入されるという形で、文化変容が起きていることが明らかになった。