著者
谷 謙二
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、時系列的な地図データを扱うソフトを開発し、データを整備することによって、教育現場でのGISの活用を目指した。平成17年度では、ラスター型の時系列地形図閲覧ソフト『今昔マップ』(首都圏編)を開発し、教員を含めて200部ほどを配布した。このソフトは平成19年2月に行われた日本地理学会地理教育専門委員会主催の講習会でも使用され、好評を博した。平成18年度には、「昭和の大合併」以前の市区町村境地図データの整備を行った。地図データは昭和5年前後に発行された1/50,000地形図をもとに作成し、昭和20年代までの「昭和の大合併」以前の国勢調査等の市区町村別統計データを地図化できるようにした。整備の手順としては、3大都市圏の範囲で地形図ごとに白地図画像を作成し、筆者開発の「MANDARA」の白地図処理機能を用いてベクトルデータに変換し、その後にそれぞれの地形図の領域を結合していった。平成18年度中に、三大都市圏のうち首都圏分についての地図データが完成し、ホームページで公開した。また、明治期の埼玉県の町並を知る貴重な資料である『埼玉県営業便覧』を用いて、埼玉県の町の商店の業種構成を分析し、前述の地図データで地図化した。この研究成果は、小学校・中学校における身近な地域の歴史学習などにも利用できるであろう。
著者
山根 克 中村 仁彦 山本 知孝 辻 省次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

1.神経筋骨格モデルおよびそのための順・逆動力学計算法の開発と神経医療における知見を基にした検証と改良従来の筋骨格モデルに比べて極めて詳細(155自由度の骨格と約1000本の筋)な筋骨格モデル,および脊髄神経から筋までの神経-筋ネットワークをモデル化した神経筋骨格モデルを開発した.また,体性反射や筋ダイナミクスなど生理学的な知見をもとに高精度な筋張力推定アルゴリズムを開発した.2.計算・シミュレーション結果の可視化と低次元化による診断・リハビリテーション支援への応用計測された運動データ,計算された筋張力などを三次元モデルやグラフとして可視化し,神経筋疾患の診断やリハビリテーションを支援するツールを開発した.また,多次元のデータを低次元化して容易に理解できるように提示する技術を開発した.3.神経筋骨格モデルパラメータを非侵襲に同定する手法の開発骨格モデルの運動学・質量パラメータ,関節粘弾性パラメータ,筋モデルパラメータ,神経-筋ネットワークパラメータを,非侵襲な運動・筋電計測データのみにより同定する手法を開発した.4.新しい非侵襲運動計測システム技術の提案従来の球状マーカを用いた光学式モーションキャプチャに代わる運動計測システムのプロトタイプを開発した.具体的には,平面状のメッシュマーカを用いて計測点数を増加するとともに安全性を高めた方法と,カラー画像を用いてマーカレスに運動とトポロジーの取得を同時に行う方法を実現した.
著者
堀 善夫
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

CO_2を水溶液中で, Cu電極を用いて電気化学的に還元すると, 常温常圧でメタン, エチレンなどの炭化水素を生成することを, 本研究代表者は過去の研究で見いだした. 本研究課題では, この反応についてさらに詳細に研究し, 反応機構を明らかにし, 優れた電極触媒を探索することを目的とする.前年までの研究で, CO_2の電極還元において, COが, 中間種として生成することが予測されていた. この点について, ボルタンメトリー及びクーロメトリーの手法を用いて検討した. それによれば, CO_2はまずCOに還元される. 生じたCOはCu電極に吸着され, 平行反応である水素発生を著しく阻害する. と同時に吸着されたCOは, さらにCu電極上でメタンまたはエチレンに還元されることが分かった. ここで中間生成物であるCOのCu電極にたいする吸着力は, 比較的弱く, 容易に脱離することが明らかにされた.次に, Cu電極上での炭化水素の生成機構を解明する目的で, 生成条件と選択性について詳細に検討した. この検討において, 電極近傍のpHを規定するために, 回転リングディスク電極を用いた. また溶液中の生成物を定量するために, 紫外可視検出器をイオンクロマトグラフに組み合わせて用いた. その結果, COをCu電極上で電気化学的に還元すると, pHが高いときにエチレン, エタノール, プロパノールが多く生成することが分かった. またCO_2の電極還元を, 高濃度のKHCO_3やリン酸緩衝液中で行うと, メタンの生成が多く, 0.1M以下のKHCO_3や, 緩衝能のないKCl, KClO_4, K_2SO_4中ではエチレン, エタノール, プロパノールの選択性が高かった. 以上の実験事実から, 反応にともなって放出されるOH-イオンのために, pHが局部的に高くなっており, CO_2は電極近傍で非平衡的に存在すると考えられた. これは, CO_2の水に対する水和速度が遅いことによると結論された.
著者
西野 麻知子 大高 明史 池田 実 大和 茂之 川勝 正治 丹羽 信彰 遠山 裕子 WANG Hong-Zhu CUI Yong-De WANG Zhi-Young CHEN Rong-Bin CHEN Rung-Tsung WU Shi-Kuei PONCE Leonrodrigo VOLONTERIO Odile
出版者
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本に侵入したと推測されるカワリヌマエビ属を遺伝解析した結果、2つのクレードに分かれた。クレードIは日本在来亜種ミナミヌマエビと分布域が重なったが、クレードIIは日本と中国の両方にみられた。雄の外部形態からも、前者は在来、後者は外来種と判断された。日本の4地点では両クレードが混在し、外来種との交雑による遺伝子撹乱の可能性が示された。聞き取り結果と合わせると、日本のカワリヌマエビ属は中国の華中・華北地域、近年、兵庫県で発見された共生種ヒルミミズは華中地域から導入された可能性が高い。
著者
青田 寿美
出版者
国文学研究資料館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

「蔵書印データベース」に、蔵書印の印文行数および印影外郭を検索条件に指定する機能を実装し、新たに採録した印文改行表記と併せて新規情報の公開を行った(約23,500件)。また、人物情報の精査により蔵書印主の職種および時代を分類し、カテゴリ一覧機能として実装した(約15,600件)。印材コレクションの採録に着手した他、書肆印の印主情報等を搭載し、国文学研究資料館所蔵古典籍を中心に印影数を増強した。約39,000件の蔵書印レコードを対象に、複合検索とカテゴリ一覧・ブラウズ機能等を活用することで、蔵書印情報を基点とする典籍移動史や人的交流関係を可視化するための情報プラットホームの整備と拡充を実現した。
著者
市原 恭代
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2色覚者,多数派とは色の感覚が異なる者にとって赤は明るく目立つ色ではない。しかし情熱の色は赤だと知っている。また悲しみの色が青系の色であることもわかっている。それは後天的な学習によるものである。となれば色名による文字の刺激と色による色刺激では受ける印象に乖離があるはずである。また多数派と同士でも1型と2型では印象が異なることが予想される。この研究では色感覚が異なる者の色世界を感覚的に知るため、文字刺激と色刺激を用いてSD法による印象調査を行った。被験者,1群:1型2色覚者(以下P型強度と呼ぶ)20代~60代の男性13人,2群:2型2色覚者(以下D型強度と呼ぶ)30代~60代の男性9人,刺激:基本色名11色の色刺激と文字刺激因子分析を行った結果、今回の実験では最も因子負荷量が大きい値は全て正の値になった。第1因子は「にぎやかな、派手な、暖かい、明るい」第2因子は「濃い、重い、強い」第3因子はD型では「硬い」P型では「乾いた」の形容詞群に影響を与えていた。P型D型ともに第1因子は同じ成分であった。それぞれの形容詞群からそれぞれ第1因子に「感覚性」第2因子に「物量性」という因子名を付けた。P型D型ともに青の色刺激と青の文字刺激は似た傾向が出ていない。色刺激では第一因子さみしい、冷たい、地味な、暗いの感覚性因子が大きいが文字刺激ではこれらの因子は現れず、代わりに薄い、弱い、軽いの物理性因子が大きい。また、ピンクの色刺激と文字刺激も大きく異なる。ピンクの色刺激は第2因子物理性が大きい。しかし文字刺激では感覚性因子が大きい。また、緑は茶色系と似た傾向がでており、紫とも近い位置にある。P型に関しては、図3より青と緑とピンクのそれぞれ第1因子、第1,2因子、第1,3因子に大きく差が見られた。また、白、オレンジ、紫のそれぞれ第1因子、第3因子、第1因子にわずかながら傾向に差が見られた。
著者
中井 宏 吉田 春夫
出版者
国立天文台
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

冥王星の軌道は正のリアプノフ指数を持ちその意味でカオス的な軌道である。本研究では、過去・未来112億年間の外惑星系の数値シミュレーションを行い、海王星と冥王星の間の共鳴関係が冥王星軌道の安定性に果たす役割について調べた。1,従来から知られていた3個の共鳴関係の他に、"海王星と冥王星の昇交点経度の差の3倍と海王星と冥王星の近日点経度の差の和が180度の回り110度の振幅、5.9億年の周期で秤動する。"という新しい関係を見付けた。重力効果だけの働く保存系では、これらの4個の共鳴関係が少なくとも112億年正確に維持することを確かめた。また、これらの関係は冥王星が海王星に大接近するのを妨げるように働き、冥王星の軌道安定化機構として作用していることを確かめた。2,冥王星とその近傍に配置したテスト天体の相空間上での距離は時間と共に指数関数的に増加するが、共鳴関係の振幅以下で飽和し、それ以上には増加しかった。すなわち、冥王星近傍の軌道は海王星との共鳴間系により、運動領域が制限され、軌道要素は周期的変動幅以下でしか変化出来ないことになり、大局的な軌道は準周期運動となるが、軌道要素の差が飽和値以下の微小運動領域内では運動を制限する力が働かないため、軌道はカオス的で、リアプノフ指数は正となることを示した。3,重力効果だけの働く保存系では外惑星の軌道配置は112億年の間、現在と殆ど変わらなかった。これは、太陽系誕生期には非保存力が働いていたことを暗示している。現在の惑星配置及び惑星相互の共鳴関係がエネルギー散逸過程とどう結び付くのかは今後の重要な研究課題である。
著者
DASH Shobha
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、愛媛県宇和島市津島町に残る「津島貝葉」(17世紀初期ごろ書写されたと思われるオリヤー語版『マハーバーラタ』(=サーララー・マハーバーラタ)の「森林章・第一部」の貝葉写本)の校訂テキスト作成に関する研究である。インド国内外の様々な所蔵先から入手した9本の異本を用い校訂作業を進めた。正確な文字解読・入力のために「津島貝葉」に使用されている書体の文字表及びそのローマナイズ転写記号の決定版も作成した。『サーララー・マハーバーラタ』は二つの系統を持ち伝承されて来たことが明白になったことが本研究の著しい研究成果と言える。
著者
小林 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2016-08-26

本研究は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの哲学を自然哲学として提示し、その内実を明らかにすることを目的としている。前年度は、後期の著作である『千のプラトー』(1980)におけるイェルムスレウの言理学および地質学の議論の分析を中心に、ドゥルーズ=ガタリの自然哲学における非人間主義的特性を明らかにした。今年度は、前年度の研究結果を踏まえ、①ドゥルーズの自然哲学に対する哲学史的影響、および、②その自然哲学がいかに現代の人文科学に継承されたのかを明らかにすることで、とりわけ英米圏の人文科学に対するドゥルーズおよびガタリの自然哲学の理論的影響を特定する作業を進めた。
著者
中村 美奈子 芝野 耕司 佐多 達枝 門 行人
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本を代表する創作バレエ作家(振付家)の一人である佐多達枝の作品と関連資料(舞踊譜等)について、再演を目的としたドキュメンテーションおよびアーカイブ化を行い、そのアーカイブ化の過程を論文として、イリノイ大学(米国)のサイト上に公開されている電子ジャーナル「身体運動の人類学的研究」(JASHM)に投稿し、日本の創作バレエ史における佐多氏の功績を海外に発表した。
著者
宮地 尚子 後藤 弘子 青山 薫 ケン クリアウォーター ガルヴァス イシャ 紀平 省悟 菊池 美名子 栗林 美知子 松村 美穂 嶺 輝子 宮下 美穂 中島 啓之 仁科 由紀 坂上 香 田辺 肇 田中 麻子 ヴァーナー チャン リル ウィルス 吉岡 礼美
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

トラウマとジェンダーの相互作用を、(1)精神病理的側面から、(2)犯罪行為や逸脱現象の側面から、(3)文化創造的な側面から探り、明らかにした。(1)では海外研究協力者との共同研究や、臨床家、脳科学やジェンダー学等の専門家らによる共同研究会議を実施、トラウマの臨床的課題について検討した。(2)では刑事司法におけるストーカーや性犯罪事件の取り扱い、女性薬物依存症者のトラウマと社会復帰、性労働従事者への暴力について分析した。(3)では参加型アートプロジェクトの実施、参与観察を行い、トラウマからの創造性について考察した。(1)~(3)を統合し、成果を著作やウェブサイト等の形にまとめ、国内外で発表した。
著者
清田 洋正
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

生物活性天然有機化合物に関して、探索および合成研究、生物検定を行った。全合成達成:抗生物質ポリナクチン類アナログ、植物毒素T-β-L、ピリキュオール類、海洋忌避物質プテロエノン、植物ホルモンジャスモン酸類、鶏胃潰瘍形成物質ジゼロシン。部分合成:気菌糸誘導物質パママイシン類、スピロファンジン類、抗生物質エナシロキシン類、血管新生阻害物質コルチスタチン。単離・構造決定:エナシロキシン類、タキサン類、リモノイド類、新規骨格エチノピン。
著者
若山 照彦 水谷 英二
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

絶滅あるいは絶滅危惧種を復活させることができれば、失われた遺伝子の機能解析や産物利用が可能となる。研究代表者らはそのための基礎研究として、核移植技術を根本から見直し改善するのと同時に、クローン個体の大量生産の方法や、凍結死体、毛皮、糞や尿に含まれる細胞からクローン個体の作出を目指した。その結果、最新の技術を用いればクローン動物からクローン動物を作りだすことで無限生産の可能性を示し、また、尿に含まれている細胞からクローンを作りだすことに成功した。
著者
森 貴史
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

オランダの解剖学者ペトルス・カンパーの顔面角理論、ドイツの解剖学者ザムエル・トーマス・ゼメリング、おなじく比較解剖学者ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハ、博物学者フォルスターなどの18世紀後期の人類学理論が古典主義美学の影響下にあり、その人類学理論と言説が同時代のスイスの文筆家ヨハン・カスパー・ラーヴァターの観相学、ウィーンの神経解剖学者フランツ・ヨーゼフ・ガルの骨相学、19世紀後半の犯罪人類学イタリア学派創設者チェーザレ・ロンブローゾの生来性犯罪者説、フランスの犯罪学者アルフォンス・ベルティヨンの人体測定法、ナチスドイツの反ユダヤ主義人種論まで理論的な影響を与えたことが確認された。
著者
鈴木 猛
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

前年度よりすでに始めたCHILDESの検索及びデータベース化作業を継続した。up/down/out/on/offなどの前置詞・パーティクルを検索し、該当する発話を列挙し、重要なデータを整理中である。CHILDESのデータからTomasello (1992): First Verbsのデータに対する我々の解釈の妥当性を確認できる見込みである。すなわち、英語では経路を表すパーティクルは早い時期から述語として習得され、それが後の文法形成に影響し、二次述語として発達すると考えられる。発達理論的には、経路パーティクル(=satellite)が最初期から習得され、経路はそのままパーティクルが表しながら、動詞が足されていく。文法習得に継続性を認め、理由がない限り前段階の文法の特性が受け継がれ成長するという自然な仮定のもと、大人の英語におけるパーティクルの述語性が帰結として自然に得られると考えられる。動詞が後から習得されるのが事実なら、従来の一般的な動詞と補部という捉え方とはなじまず、非常に興味深い。本研究の成果は、動詞側から見直せば、英語における同文脈での動詞の意味的弱さへと結びついてくるのは必然である。さらに、パーティクルの中で、境界性を持つup, down, out等の方が、持たないものalong, around等より習得が早いという新たな一般性が見えてきた。述語になりやすいかどうかということと相関があると考えられる。今後考察を深めていきたい。また、日本語習得についてもデータを調べ、当初の予想通り、経路等の概念は最初期から動詞で表すことが見えてきた。軽動詞+satelliteで表すパターンは日本語では生まれないことが予測される。日本英文学会中部支部第69回大会シンポジウムにおいて招聘発表の機会があったので、収集したデータに基づいて発表を行った。