著者
原 暉之 長谷川 毅 平井 友義 原 暉之
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

この研究の目的はロシア革命から第二次世界大戦にいたるまでのソ連の内政と外交に、軍事的要因がいかにかかわりあい、いかなる影響を与えたかを究明することにあり、具体的には、軍事的要因が、ロシア革命とボリシェヴィキ権力の樹立、内戦期における共産党独裁政権の確立、ネップ期の内政と外交、集団化と工業化によるスタ-リン体制の確立、反党派と軍の粛清、第二次世界大戦の開始にいたる歴史過程の中でいかなる重要性をもって具体的な政策過程に影響を与えたかを、軍事ドクトリンの変遷、軍事組織の変遷、党軍関係の進展という三つの視点から分析しようとするものであった。過去三年間にわたる共同研究は、これらの問題の解明にかなりの実績を挙げたといえる。まず第一に、この最終年度には、前年度に引続き、ソ連軍事関係の組織だった文献収集を継続した。また、「スタ-リン集団化と工業化の軍事的意義」「反党派と軍の粛清」について第一回の研究会を、「第二次世界大戦への準備」について第二回目の研究会を開き、現在、『軍事的要因からみたソ連社会主義の特質』と題する、今までの研究成果をまとめ、さらにこれまでパソコンに入力したソ連軍事関係の資料一覧を含んだ報告を刊行する準備が進められている。三年間にわたる研究の結果、内戦を通じて形成された赤軍は、「赤色司令官」と「軍事コミッサ-ル」という特色の制度を産み出し、それが、トロツキ-・フルンゼ論争を経て、常備軍の形成へと導かれ、主として軍事力の増強を第一優先順序においてなされた工業化を促すとともに、ソ連の社会主義の性格を、本質的には軍国化するに至った過程が明確にされた。即ち、軍事的要因は、ソ連の社会主義の性格になによりも増して決定的な役割を果たしたのであり、この結果をまとめた報告書は、この点で今後のソ連研究に大きな影響を与えることを信じている。
著者
森 修一 橋口 浩之 伍 培明 服部 美紀 荻野 慎也 山中 大学 松本 淳
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

インドネシア・スマトラ島に災害をもたらす沿岸豪雨強風帯の形成過程について,観測的研究を行った.長期衛星観測からは,エルニーニョ現象など年々変動に伴う沿岸豪雨帯の盛衰ほか,その気候学的特徴が明らかになった.また,レーダー等による集中観測から,沿岸豪雨強風帯を構成するメソ降水系の発達には,インド洋を東進する大規模な対流季節内変動とスマトラ沿岸を西進する日周期対流の相互作用が重要であること等が示された.
著者
長濱 浩平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では骨形成性シグナル経路として、BMP、ヘッジホッグ、Wnt、Runx2に着目し、各経路に抑制的にはたらくシグナル分子(骨分化抑制シグナル)をsiRNAを用いた遺伝子ノックダウン技術により抑制することで、骨再生を誘導することを目指した。骨分化抑制因子11種に対して、それぞれsiRNAを作製し、ノックダウン効果を確認した。これらのsiRNAのうち、骨分化を誘導した組合せについては、現在動物モデルによる確認を進めている。
著者
小谷 昌司
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

脂肪酸結合蛋白は長鎖脂肪酸の細胞内転送に関わるものと考えられているが、この蛋白質が等電点電気泳動などで多数の分子種に分離されることから、翻訳後の修飾が多型の原因となっているとともに、これが機能と密接な関係にあること予想された。我々はラット肝脂肪酸結合蛋白について、今回アラキドン酸を特異的に結合しているもっとも酸性な分子種は、アスパラギン105がイソアスパラギン酸となった新規の修飾であることを構造解析の結果同定した。また、この修飾をうけた蛋白質のリガンド結合能・プロテアーゼ感受性などの機能変化を検討し、その生理的意義の解明とこの翻訳後修飾反応に関わる細胞内因子の検索をおこなった。まず、試験管内でのイソアスパラギン酸の生成を試み、0.5M炭酸ナトリウム緩衝液中で保温するとイソアスパラギン酸105をもつ分子種が高収率で生成することがわかった。蛋白質の内部で生じるこのイソアスパラギン酸結合の検出のためメチル化とLiBH_4による還元でこれをイソホモセリンとして同定する方法を考案し、さらに、PTC化による高感度化を検討し一定の成果をえた。また、この蛋白質を細胞内因子検索のための基質とするため抗体を作成し、等電点電気泳動とウェスタンブロットの組み合わせによる検出方法を確立した。また脂肪酸をはずした蛋白質を炭酸イオン存在下で保温すると別の酸性の分子種が定量的に生成することが観察された。この分子種を分取し構造解析した結果、N末端から2番目のアスパラギンが脱アミドしたものであることが明らかになり、リガンド結合と脱アミド反応との関連を示唆する結果を得た。一方、ラット肝脂肪酸結合蛋白のシステイン69に遊離のシステインが混合ジスルフィドを形成した新しい分子種を見いだし、機能の解析を行った。また、ラット皮膚から新規に単離した脂肪酸結合蛋白質は分子内に5個の半シスチン残基をもつこれまでに見られないものでSS結合と脂肪酸結合能との関連を検討した。
著者
藤戸 敏弘 藤原 洋志
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

1.最小コスト木被覆問題・有向シュタイナー木問題・有向木被覆問題・b辺支配集合問題などのNP困難なグラフやネットワーク上での組合せ最適化問題に対し,新たに近似アルゴリズムを設計し,従来からの近似保証を改善した.2.侵入者と守衛の間で行われるグラフ護衛ゲームにおいて,最小の守衛数を求める問題に対し,従来手法を拡張し,侵入者が木上を移動する場合でもΘ(log n)倍以下で近似可能であることを示した.3.多状態スキーレンタル問題について,いかなるインスタンスに対し最適戦略をとっても,競合比はe/(e-1)より小さくできないことを示した.
著者
謝 暁晨
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

今年度は上記の課題名にて以下の成果を上げました1)アンカリング構造転移の成長過程を詳細に調べ、結晶成長とのアナロジーから、成長の次元性を検討した。2)昨年に続き、電気メモリーデバイスに応用するために、電場下でアンカリング構造転移の挙動を主に明らかにした。主な着眼点は下の二点になります。①アンカリング構造転移において双安定領域におきまして水平配向と垂直配向とを電場で非可逆的にスイッチングさせることができたことを踏まえ、使用する液晶の使用温度を室温まで低め、実用デバイスとしての利用を検討している。②アンカリング構造転移が起こる際の熱挙動や界面センシティブな超微小角X線回折実験結果からメカニズムの詳細を検討し、転移前後における界面の分子配向変化を明らかにした。その一方で、アンカリング転移の際における液晶分子の空間分布について未解明であったため、2光子偏光蛍光共焦点顕微鏡を立ち上げ、分子配向の可視化を試みた。得られた空間分子配向プロフィールはモデルとほぼ一致した。今後は、非線形光学効果を用いた顕微分光による界面の状態を、より詳細にプローブする予定である。
著者
澤田 俊輔
出版者
関西医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

口腔内感染症である慢性歯周炎は、罹患率の高さから国民を悩ます口腔疾患である。重度の慢性歯周炎では骨吸収により抜歯を余儀なくされるケースも少なくない。炎症を効率的に抑制するとともに、歯槽骨再生を積極的に促す新規治療法の確立は重要な課題となっている。我々は複数の炎症性サイトカインの抑制作用を持つ融合タンパク質発現ベクターを構築した。また、抗炎症作用だけでなく、組織修復能の観点から、in vivo実験に有効な骨分化能に優れたGFPマウス骨髄由来間葉系幹細胞株を樹立した。より効果的な抗炎症作用を有し、組織修復能に長ける幹細胞を用いた新たな治療法開発の基盤となることが予想される。
著者
池田 孝博 青柳 領
出版者
福岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

幼児の運動能力の二極化を次の視点で確認した。1)正規分布からの乖離性、2)尖度とパフォーマンス特性の関連、3)ヒストグラムの変化、4)運動能力の偏り。1411名の幼児の測定を実施し、多変量解析を用いて分析した。その結果、1)体格・筋力は正規分布だが、移動運動は優偏、操作・安定運動は劣偏の乖離が示された。2)尖度から格差は確認できない。しかし、6歳女児に格差傾向を示すパフォーマンスが存在した。3)ヒストグラムの形状は加齢に伴い正規化した。4)運動能力の偏りは一部の幼児(14.1%)に出現し、走力・リズムに優れ、操作運動・跳技能に劣るものとその反対のパターンであった。
著者
山本 拓 佃 良彦 和合 肇 斯波 恒正 森棟 公夫 国友 直人
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

研究成果を便宜上、理論的分析、実証分析、に大きく分類しよう。計量理論についての研究としては程島氏の一連の論文をまず挙げることができよう。同氏は構造変化が存在する場合における計量経済モデルの推測理論を研究し構造変化が存在する場合、制限情報にもとづく新しい最尤推定法を提案している。計量経済モデルの推定・検定・予測問題については森棟・佃両氏が漸近理論の立場から考察を加えている。森棟・佃・和合の各氏は構造変化が存在する場合の計量経済モデルの推測理論を現在研究を継続中である。さて構造変化の定式化としてはさまざまん考え方がありうる。例えば経済主体の期待形成について考えると、いわば連続的に構造変化が起こっていると捉えることが可能である。こうした立場から計量経済分析における予想形成と経済構造との問題については国友氏の一連の論文が考察を加えている。実証分析の中では特に斯波氏は日本の貨幣需要関数について詳細な検討を加えている。林氏は主として日本における消費関数・投資関数を中心として、その安定性を考慮している。また日本経済の外国との関係の分析に目を転ずれば、竹内・山本論文は日本における外国為替市場の効率性について詳しく検討を行っている。この論文では多変量時系列モデルを用いているために比較的、構造変化の存在に対して頑健(Robust)な検定方法と結論している。以上、極めて簡単であるが、本プロジェクトの研究成果は理論面及び実証面の多岐にわたっているがいずれも本プロジェクトにおける連絡・討論やコンファレンスから発展し、深化したものが少なくない。加えて、内外の専門家とのコンファレンスと通じた交流は意義深いと云うことができよう。こうした意味で、本プロジェクトが当初意図していた計画は相当部分において達成されたと云ってもあながち過言ではないであろう
著者
鈴木 秀男
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,Fornellら(1996)によって開発されたACSIにおけるモデルで採用している尺度変数、潜在変数を参考にしながら、サービス品質,顧客満足度,顧客ロイヤルティの関連性を示した構造モデルを示した.また,Schmitt(2000)により発展した経験価値の概念の導入を検討した.これらのモデルに基づき,サービス品質,顧客満足度,顧客ロイヤルティのスコアを算出した.調査対象としてプロ野球のサービスを取り上げ,インターネット調査を2009年,2010年および2011年の1月下旬に行った.モデルとして,サービス品質(チーム成績,チーム・選手,球場,ファンサービス・地域貢献,ユニホーム・ロゴ)→総合満足度→応援ロイヤルティ→観戦ロイヤルティの構造モデルを構築し,チームごとに構成概念スコアを算出した.また,経験価値に関するモデル構築およびスコアの算出を行った.最後に,算出された構成概念スコアの妥当性を検証するために,それらのスコアと平均観客数との関係性について調べた.
著者
宇佐美 まゆみ 林 俊成 西郡 仁朗 鎌田 修 由井 紀久子 木林 理恵 黄 美花 品川 覚
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

『BTSJによる日本語会話コーパス(トランスクリプト・音声)2015年版』(333会話、約78時間)、話者同士の関係等の会話の社会的要因、及び「自然会話教材作成支援システム」機能を組み込んで、自然会話コーパスと自然会話教材のリソースとなりうる自然会話データの保存の一元化を行い、「共同構築型データベース」として「自然会話リソースバンク(Natural Conversation Resource Bank: NCRB)」の基盤を構築した。また、『BTSJ文字化入力支援・自動集計・複数ファイル自動集計システムセット(2015年版)』を完成し、語用論、対人コミュニケーション研究の効率化を実現した.
著者
平林 敬浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

多様化膜分子群クラスター型プロトカドヘリン (cPcdh)はこれまでの結果から、神経回路形成に関与していることが示唆されている。本研究では、そのcPcdhの分子的多様性、細胞接着活性がシナプス形成時の細胞選別や機能的回路形成にどのように関与しているかを明らかにすることを目的とし、cPcdh分子の細胞接着活性解析および、Cre発現依存的にcPcdh遺伝子を欠損するcPcdh遺伝子コンディショナルノックアウトマウスの作製、解析を行った。その結果、Pcdhαの一部の分子種、Pcdhβ分子群に細胞接着活性が認められた。また、終脳特異的にcPcdh遺伝子を欠損したマウスでは脳構造に異常が観察された。
著者
岡本 義雄 伊東 明彦
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年の地震災害でなぜ”想定外”と言う言葉が頻発するのかを地学教育の面から検討する教材を開発した.特にこの問題で専門家の意識と一般の人や中高校生の意識の差に着目した.そのための教材として,教材用の地震計を開発し,学校における地震観測の条件を検討した.同時に気象台等の波形の教材化を図った.次に,想定外という言葉の元は地震や火山などの災害の「べき乗則」としての性質に着目し,これらの「べき乗則」の元となる災害のメカニズムや発生機構を考えるための教材を開発した.また偶然や周期性と言った災害と関連深い概念が,学生や一般の人々の災害像にどのような心理的なバイアスをかけているのかという検証も行った.
著者
三吉 秀充
出版者
愛媛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では古墳時代中期の初期須恵器を対象として、松山平野に所在する地方窯である市場南組窯跡の発掘調査や初期須恵器出土遺跡・遺構の分析を通じて、生産と流通について研究を行った。その結果、市場南組窯跡は小規模ながらも比較的長期間操業する窯跡であることを明らかにした。また松山平野や岡山平野・総社平野では、陶邑とも異なる須恵器生産と流通が行われていたことを明らかにすることができた。
著者
戸島 拓郎 上口 裕之 久保山 友晴
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

糖鎖による生命活動の制御様式として、糖鎖がコアタンパク質を介さずに直接的なリガンドとして特異的な受容体を活性化するという新概念が脚光を浴びている。本課題では、神経軸索の成長円錐の応答性を指標として、生理活性を持つ糖鎖機能ドメインとその受容体、さらにその下流で惹起される一連の細胞内シグナル伝達経路を解析した。その結果、コンドロイチン硫酸とケラタン硫酸が両方向性の軸索ガイダンス因子として機能することが明らかになった。
著者
後藤 忠徳 笠谷 貴史 荒木 英一郎 浅川 賢一 佐柳 敬造
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

H17年度には海底付近で人工電流を発生させた場合の地下構造探査の可能性を数値計算により確認した。2度の調査航海において深海曳航体へ搭載した人工電流源を用いて海底電気探査を実施した。またスマトラ地震の余震活動データなどを解析して海底地震観測の精度の議論を行った。これらの結果に基づき、豊橋沖海底ケーブル先端へ接続可能な海底磁力計や海底地震計などの開発や改良を行った。H18年度にはこれらの海底観測機器の水中動作試験を行った。またケーブル敷設船へ乗船し、豊橋沖海底ケーブルの引き上げ・ケーブル先端への分岐装置取り付け・ケーブル再敷設作業を行った。H19年度には新規に開発・改良を行った海底観測機器を豊橋沖海底ケーブル先端の分岐装置へ接続した。深海での接続作業にはJAMSTEC調査船および無人探査機を用いた。この結果、東海地震想定震源域の海底に地震・地殻変動・地下水流動などの総合観測ステーションを構築することができた。また海底ケーブルに流れている人工電流を用いた人工電磁探査モニタリングも開始することができた。観測成果の一例として、平成19年6月には掛川で発生したM4.3の地震波動に伴って海底電場が変動することが明らかとなった。一方、豊橋沖海底ケーブルを用いた海底下モニタリングに先立って、同海域の地殻電気伝導度構造を知る目的で、H18年度からH19年度にかけて自己浮上式の海底電位差磁力計(OBEM)など、のべ12台を東海沖海域へ設置した。これによって沈み込むフィリピン海プレートやその上の島弧地殻の電気伝導度構造を明らかにすることができた。以上の海底ケーブル観測システムの紹介、海底電気探査の成果および間隙水圧変動に伴う電磁場変動現象に関して、複数の研究成果として報告した。
著者
油尾 聡子
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

社会的迷惑行為とは,歩行を妨げる駐輪など,周囲の他者に不快感を与え,不便さをもたらす行為である。研究1では,「きれいに駐輪していただきありがとうございます」など,感謝を表した上で社会的迷惑行為の抑止を求める感謝メッセージの効果と抑止プロセス,調整要因を検討した。感謝の言葉で丁寧にお願いをされると,受け手はその好意に対するお返しを動機づけられ,感謝メッセージに従って社会的迷惑行為を抑制しようとする。研究1を通して,受け手のこのような心理的プロセスが"互恵性規範"(Gouldner,1960)によるものであることを提唱した。こうした互恵性規範の喚起による社会的迷惑行為の抑止方法は,受け手の反発心を招くことなく自発的に当該行為を抑制させる点で有用な方法と考えられる。研究1に関して,2012年度では,(1)感謝メッセージの受け手における心理的プロセスが互恵性規範以外のものでは代替不可能であることを明らかにした。この結果は,国内外の学会にて発表した。また,(2)社会的迷惑行為の抑止者にも焦点を当て,抑止者は,受け手に比べて,感謝メッセージや周囲の他者を配慮するよう求めるメッセージを好ましく評価していることを示唆する調査データも得られた。研究2では,対人場面での好意の提供(飲み物をおごる,面倒な仕事をやってあげるなどの親切行為)でも社会的迷惑行為が抑止されるかどうかを検討した。その結果,そうした好意の提供であっても,研究1の感謝メッセージ同様に,互恵性規範の喚起によって社会的迷惑行為が抑止されることが示された。ただし,その効果を補強するための条件が必要であることも明らかとなった。研究2の成果に関して,2012年度では,2011年度に投稿していた論文の審査対応などをし,掲載決定に至った。これらの2つの研究を進めることに加え,2012年度では学位論文の執筆を行い,これまでに実施した一連の研究成果をまとめた。
著者
中村 卓司 阿保 真 江尻 省 SHE Chiao-Yao YUE Jia 原 貴洋
出版者
国立極地研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

高度100km付近には、ナトリウム原子、鉄原子など様々な金属が原子状態で存在する金属原子層がある。本研究では、この層に地上からレーザー光を照射して、遠隔地との通信を行うと同時にこの付近の高度の大気の様子を調べる大気観測を行うことのできるシステムについて、首都大学東京と国立極地研究所の5.3km離れたキャンパス同士で送受信実験を行い、また観測法/通信法を詳細に検討を行って、実現可能であることを示した。
著者
石黒 章夫 加納 剛史
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,環境に呼応して這行や遊泳,飛行などの異なるロコモーション様式を自己組織的に発現する,広大な稼働環境領域を有するマルチテレストリアルロボットの具現化を目指した.具体的には,「生物は,いかなるロコモーション様式であっても,周囲環境から足がかり(scaffold)を効果的に獲得して,それらから反力を得て推進している」というシンプルな基本原理に基づき, 1)二次元シート状の身体構造を有するヒラムシをモデル生物とした,這行と遊泳を自律的に実現するシート型ロボットの開発,2)陸ヘビが示す這行と海ヘビが示す遊泳の背後にある制御原理の共通性のシミュレーションによる検証,を行った.
著者
角田 鉄人 堀川 美津代 加来 裕人
出版者
徳島文理大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究によって,世新しい光延試薬CMMP,CMBP等のホスホラン型の試薬を世界で先駆けて開発できた.また研究例のほとんどないデラセミ化法を開発できた。例えばラセミ体の3-ベンジル-2-ヘキサノンを光学活性なホスト分子と塩基性条件下で処理すると、93%の収率で99%eeのS体に変化した.これら手法を用い不斉3級炭素,不斉なアルコールさらに不斉なアミン類を効率よく調整できるようになった。これら新反応を利用してアブラムシの生体防御物質であるポリケタイド類の全合成を行った。