著者
木島 輝美
出版者
札幌医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,認知症高齢者が落ち着いて過ごすことができる状態が一定して変わらずに維持される暮らし,すなわち「定常化された暮らし」の要素をとらえ,ショートステイを利用する認知症高齢者を安定した暮らしへ導くための援助について検討することであった。対象者は認知症高齢者とその家族の2事例(A氏,B氏)であった。研究方法は,対象者がショートステイを利用する前・後の自宅での面接およびショートステイ利用中の観察データにもとづき,施設入所中の様子と自宅での様子が異なる場面を事例的に分析した。認知症高齢者が安定した暮らしを営むために定常化することが望ましい要素として以下のようなものが見出された。A氏は日常生活の殆どに援助を必要としており,「時間のズレによる排泄や睡眠の変調」「食事内容や介助方法の違いによる食事拒否」が見られた。B氏は自宅での日常生活動作の殆どは自立しており,「自由に行動でき自立性が保たれると落ち着く」,「さりげなくサポートしてくれる存在により安心する」という様子がみられた。また,2事例に共通して,「普段のデイケアで利用している場所にくると安心できる」という様子がみられた。これらの結果より,日常生活に多くの援助を必要とする場合には生活時間や介護方法を一定に保つことが重要であると考えられる。よって,自宅での生活時間や介護方法についての詳細な確認を行い出来るだけ再現することが必要である。また自宅である程度自立している場合には,その自立性を保つことが重要であり,誇りを傷つけないように分かりやすい表示やさりげない誘導などが必要である。そして,ショートステイにおいて定常化された暮らしを維持するためには,家族と施設職員との情報交換の重要性が示唆された。
著者
渡辺 昭一 木畑 洋一 秋田 茂 横井 勝彦 菅 英輝 吉田 修 木畑 洋一 秋田 茂 横井 勝彦 菅 英輝 吉田 修 都丸 潤子 波多野 澄雄 河西 晃祐 山口 育人
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

冷戦体制の確立期におけるアジア国際秩序の再編問題について、国際援助計画コロンボ・フランの実施過程との関連から検討した。第一に、コロンボ・プランは、イギリスにとってコモンウェルス体制として影響力を残存させるために、インドおよびオーストラリア、ニュージーランドにとってアジア安全保障体制の強化のために、策定されたこと、第二に、その計画のド要な財源となったスターリング・バランスの枯渇により、イギリスの支援が資本援助から技術援助へとシフトしたこと、それによって被援助のアジアは、積極的な資本援助を求めて支援の多様化を図っていったこと、第こに、イギリスのコモンウェルスの存続、アメリカのヘゲモニー支配が強化される中で、その多様化が自立したアジア地域連合という新体制の成、忙につながったことを明らかにした。
著者
北爪 智哉 山崎 孝 岩井 伯隆
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

フッ素系物質をフッ化物イオンへと分解可能な菌体を見いだし、分解の計時変化を検討した。ATP、L-メチオニンを出発物質とし、MetK、フルオリナーゼ、MtnN酵素類とフッ化物イオンを用いて、one-pot反応を行い5-FDRを創製するための最適化条件を見いだした。各種のフッ素系物質を菌体で分解し生成したフッ化物イオンを利用した系でも5-FDRを生成可能な系を確立した。また、BTFの分解により生成したフッ化物イオンをフッ化カルシウムとして回収するシステムも確立した。
著者
澤田 博司 山濱 由美 間瀬 啓介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,カイコ休眠卵を浸酸処理し休眠移行を阻害した際に特異的に発現する一酸化窒素合成酵素(NOS)の新規スプライシングバリアント(NovNOS-V)を見出し, NovNOS-VがNOS遺伝子の35残基のアミノ酸に相当する一つのエキソンを除いて合成されること及びNOS遺伝子が22のエキソンと21のイントロンで構成されていること等を明らかにした。また,休眠卵,非休眠卵,浸酸処理休眠卵でのNOSの遺伝子発現と酵素活性を解析した。その結果,活性変動は転写レベルでなく,翻訳後の修飾による可能性が示唆された。更に,抗NOS抗体を用いた免疫組織化学的解析を行ったところ, NOSは卵黄細胞に局在していることも明らかにした。
著者
上田 修司
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

低分子量G蛋白質のRhoAは骨格筋形成に不可欠な分子であるが、筋肥大におけるその役割は殆ど分かっていない。本研究では、C2C12細胞を用いた筋細胞肥大モデルにおいてRhoAの発現量と活性調節機構について検討した。IGF-1刺激によってRhoAの発現増加と持続的な活性化が認められた。RhoAの活性阻害実験では、IGF-1による筋肥大の抑制が示され、更に複数の筋肉分化に関わるシグナル分子の活性低下が観察された。また、BirA酵素標識法を本研究に導入したことで複数のRhoA結合蛋白質の同定に成功した。本研究より、IGF-1による筋肥大に関わるRhoAの活性調節機構の一端を明らかにすることができた。
著者
岸田 治
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

エゾサンショウウオの幼生はエゾアカガエルのオタマジャクシがいるときに、オタマを丸呑みしやすいよう大顎化する。一方でオタマジャクシはサンショウウオがいるときに丸呑みされないよう頭部を膨らませる。実験室及び野外での操作実験により、両者の対抗的な可塑性が2種の相互作用において拮抗した効果をもたらすことで、オタマジャクシの個体群動態を変えるとともに、互いの変態タイミングや形質選択に作用することで、群集を構成する他種の個体数や物質循環にまで影響することが明らかとなった。
著者
曽我 真人 瀧 寛和
出版者
和歌山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

擦弦楽器の一種である二胡を事例として,初心者の演奏時の手指の動きを測定し,誤りについて分析した.また,初心者の二胡の演奏スキルの学習を支援する学習支援環境を構築した.具体的には,学習者の左手指先に装着した磁気式位置センサが,弦を抑える位置を検出する.システムは,その学習者が弦を抑える位置と,正しい位置とを表示し,抑える位置のずれを三次元CGで可視化することができる.
著者
磯貝 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平安時代から鎌倉時代にかけて仏家によって撰述された漢文資料の原本調査を実施した。対象としたのは済暹撰『顕密差別問答』、覚鑁撰『心月輪秘釈』『密厳浄土略観』および『法勝寺御八講問答記』である。翻字本文にもとづく電子テキストを作成し、注釈関係文献については漢字の情報付きデータベース構築の基礎的段階を終了した。また、「注釈活動を中心とした教義理解」と「法会における言説の記録」という異なる言語活動の所産について、そこに認められる言語事象の記述を行った。このことを通じて、当該期の仏家の漢字文に共通する用字・用語・文章構造の実態を明らかにした。
著者
王 立華 WANG Licheng CAO Zhenfu 満保 雅浩 SHAO Jun 青野 良範 BOYEN Xavier LE Trieu Phong 田中 秀磨 早稲田 篤志 野島 良 盛合 志帆
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

従来の公開鍵暗号システムは量子計算機の発展に伴い安全性が揺らぎつつあるため、Lattice暗号と非可換暗号の研究によって、量子攻撃に耐えられる新しい暗号の構築を目指している。一方、クラウドコンピューティングというネットワーク環境が発展するにつれて、利便性が要求されると同時に、安全面やプライバシー保護への需要も高まってくる。そこで、この需要に応じる代理再暗号(PRE)や準同型暗号など暗号プリミティブとLattice、Braidなど非可換代数構造のプラットフォームを結合して、量子攻撃に耐えられ、クラウドなど新な応用環境に適応する長期利用可能な新しい暗号方式を設計することが本課題の目的とする。
著者
倉林 敦
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

アカガエル類(上科)は、大陸移動に伴い分布拡大と系統分岐を生じた分類群とされるが、従来の分子系統解析では解決できない系統額上の問題が数多く残っている。そこで従来法にはない利点を持つ、転移因子SINEの挿入に基づく系統解析によって、これらの問題を解決することを最終目的として研究を行った。これまでにアカガエル類が属するカエル亜目からはSINE配列が発見されていなかったが、本研究により、ツメガエル類で発見されていたSINE2-1XTホモログが、現生両生類の共通祖先で獲得され、多くの両生類ゲノムに現存していることが明らかとなり、アカガエル類において本SINEを用いた系統解析が初めて可能となった。
著者
川瀬 裕司 須之部 友基
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海水温の上昇が沿岸性魚類の繁殖に及ぼす影響を解明するため,過去の繁殖記録の集約と現 在の繁殖状況のモニタリングを各地で行った.八丈島からはスズメダイ科7 属23 種の繁殖が 確認され,多くの種では春から秋にかけて繁殖行動が観察された.繁殖終了時の水温は繁殖開 始時より高く,繁殖の継続期間は水温以外の要因によって決定されていることが示唆された. 一方,水温が低くなる秋以降を中心に繁殖する種や,水温条件によってはほぼ年間を通して繁 殖する種も確認された.
著者
加藤 祐次 清水 孝一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

散乱媒質中の蛍光体深さと厚さを同時に推定する簡便な手法を新たに開発した。本手法では、多波長複数配置光源群の励起光を用い、蛍光体の深さと厚さを同時推定する。この計測原理確率確立のため,数値解析および生体試料実験等において、蛍光体深さと厚さと蛍光強度比の関係を検証した。その結果、深さと厚さ推定が原理的に可能であり、また生体組織への適用性も確かめられた。最後に、生体模擬ファントムを用いて蛍光体の深さ厚さの同時推定を行った。推定された深さ情報から散乱により劣化した蛍光像を改善した。更に厚さ情報を加えて3次元再構成することで、蛍光体の3次元像の取得が可能であることを示し、提案手法の有用性を明らかにした。
著者
加 三千宣 山本 正伸 中村 有吾 竹村 恵二 守屋 和佳 谷 幸則
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

地球温暖化に伴って、数十年スケールで大変動する太平洋のイワシ資源は、今後どのような変動を示すのか。中世温暖期におけるイワシ存在量の数十年スケール変動の振幅変化とそのメカニズムの解明を試みた。マイワシには過去1000年間において300年スケールの変動が見つかり、中世温暖期とそれにつづく小氷期という汎地球規模の気候変動に対して応答しないことがわかった。一方で、マイワシ存在量の300年スケール変動の背後には太平洋とその東西陸域を含む空間規模を持つ気候変動と関連している可能性が示唆された。日本マイワシ資源変動の環境要因として、北西太平洋の餌環境が重要である可能性が示唆された。
著者
岡 昌吾 川崎 ナナ 竹松 弘 森瀬 譲二
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

近年、脳の高次機能に糖鎖が深く関わることが次々に示され、神経系における糖鎖研究の重要性が増している。本研究では神経可塑性の調節に重要な役割を持つHNK-1糖鎖、およびシナプス可塑性調節に中心的な役割を担うAMPA受容体に発現するN型糖鎖を中心に解析を行った。その結果、AMPA受容体上のN型糖鎖が、その細胞表面発現量、細胞表面上での側方拡散の調節などに関わることを明らかにした。また、ペリニューロナルネット上に存在する新規HNK-1糖鎖を同定し、神経可塑性調節に重要なコンドロイチン硫酸鎖の合成を制御していることを明らかにした。
著者
小川 和也
出版者
北海道教育大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

本研究には2つの柱がある。(1)大老・堀田正俊の政治思想研究。(2)「御家」の思想と民政思想の研究である。研究成果は以下のとおりである。(1)に関して、一橋大学附属図書館所蔵の堀田家文書のうち、朝鮮通信使に関する史料を使い『日韓相互認識』(第5号、2012)に論文「天和度朝鮮通信使と大老・堀田正俊の「筆談唱和」」を発表し、東アジアにおける近世日本の儒学、領主思想の一端を明らかにした。(2)に関しては、昨年10 月に群馬県在住の秋山景山の子孫・秋山綽家の原文書を悉皆調査し、その史料をもとに、『書物・出版と社会変容』(第12 号、2012) に「越後長岡藩儒・秋山景山の『教育談』について」を発表し、近世武士教育のあり方を考察した。
著者
中村 昌彦 小寺山 亘 柏木 正 梶原 宏之 山口 悟 兵頭 孝司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年全地球規模における環境変化の予測、環境保全に関する研究がますます盛んになってきている。これらの研究を行うためには地球環境に大きな影響を及ぼす海洋の時間的・空間的な観測データが必要であり、係留ブイシステムを利用した観測が行われてきた。しかし、空間的なデータを得るためには、数多くの係留ラインとセンサーが必要であり、莫大な設置コストが必要となる。また、設置海域によっては漁船の曳航網等によって係留ラインが切断され、データの回収が不能になる場合もある。そこで、本研究では、係留ラインを用いることなく、定められた範囲内に留まる(バーチャルモアリング)ことで空間的な海洋環境計測が可能な高機能自律型海中ビークルの開発を目指す。初年度はまず水中ビークルによるバーチャルモアリングシステムの計測アルゴリズムを検討し、水中ビークルに要求される仕様を決定した。また、CFDによりビークル形状を検討するとともに、小型モデルを製作し、流体力計測を行い、得られた流体力係数を用いて運動計算シミュレーターを作成した。次年度は、センサー・データ記録装置を搭載した模型によるグライディング試験を水槽で行い、シミュレーターの精度が良好であることを確認した。さらに、ビークルに内蔵した重錘を移動することにより、安定した運動制御が可能であることをシミュレーションにより確認のうえ、制御アルゴリズム検証用水中ビークル模型"LUNA"を製作し、動作確認を水槽で行った。最終年度は異なるタイプのアクチュエーターを製作し、シミュレーション・水槽試験を実施し、重心の移動によりグライディング中の円盤型ビークルの針路制御が可能であることを示した。以上により、円盤型海中グライダーを用いたバーチャルモアリングシステムが海洋環境計測に有効に利用できることがわかった。
著者
寺崎 弘昭 白水 浩信 河合 務 山岸 利次
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、欧米における「学校衛生」の歴史的展開を、とくにその「精神衛生」化の過程に焦点を合わせて明らかにすることである。学校衛生の「精神衛生」の過程を凝縮したかたちを示す事例を、われわれは、1904年から1913年にかけて4回にわたり開催された「学校衛生国際会議」の展開と転回に見出した。そこで、「学校衛生国際会議」記録の分析を綿密に実施し、その成果を軸に、学校教育の「衛生」化・「精神衛生」化のプロセスを詳細に跡づけることができた。成果として、「学校衛生」の歴史的特異性に関する分析を含む、最終報告書(102頁)を刊行した。
著者
竹市 博臣 軍司 敦子
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

m系列変調法は、脳波・脳磁図から事象関連電位およびそれに相当する信号を加算平均なしで短時間で記録する方法として開発された。この研究課題では、発達障害である自閉症スペクトラム障害(あるいは、自閉症スペクトラム症)(ASD)に着目し、ASD児の社会的特異性から、ヒトの声に特異的な反応をm系列変調法を用いて計測する実用的な方法の開発を行った。ヒトの声をm系列変調したものを健常成人に聴取させた場合、右半球の2~3の電極から記録されるβ帯パワーから声特異的反応が得られることが明らかになった。
著者
久保 文克
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

後発企業効果の可能性のある約120の市場をピックアップし、一次資料に遡って直近データを補いつつマーケットシェアのグラフを作成し直した。そして、後発企業効果が確認された63市場に関してマクロ定量分析を施し、業種別分布、市場参入の年代別分布、逆転の年代別分布、逆転に要した年数、停滞期を除くキャッチアップ年数について検討を加え、以下の事実を発見した。業種別には製薬、家電、食品が多く、制約条件の到来期に逆転が多い。停滞期を除くと10年以下のキャッチアップが多く、技術力、経営資源(技術者、販路、資金)、消費者、ブランドの4つの壁の克服が不可欠であり、内部資源活用型の後発企業には有利となる。
著者
山根 隆志 松田 兼一 山本 健一郎 西田 正浩 小阪 亮 丸山 修 山本 洋敬
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

緊急に除水が必要な患者から,簡便かつ安全に除水する可搬型除水システムを開発し,在宅医療や被災地医療にも役立つ装置の構築をめざす.本研究では透析液が不要な濾過方式を採用し,血液回路には羽根直径3cmの小型遠心ポンプを採用した.溶血試験では,1号機の溶血率は市販体外循環ポンプの3/10程度から,2号機では1/20程度に改善したが,摩耗に注意すべきことがわかった.模擬血栓試験ではピボット周辺以外に血栓は観察されなかった.さらに今回の血液濾過実験では,血流流量および濾液流量を一定に維持できたが,今後,長時間使用では中空糸目詰りやファウリングによって性能が劣化しないことを引続き立証する必要がある.