著者
中西 希 伊澤 雅子 寺西 あゆみ 土肥 昭夫
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.39-46, 2010-05-30

1997年から2008年に交通事故に遭遇したツシマヤマネコ42個体(オス21個体、メス21個体)について、歯の萌出・交換状態と体サイズ及びセメント質年輪を用いて年齢査定を行い、交通事故と年齢の関係について分析した。また、栄養状態についても検討を試みた。交通事故遭遇個体の年齢は0歳から9歳であった。全体の70%以上が0歳で、2〜4歳の個体は確認されず、残り30%近くは5〜9歳の個体であった。交通事故の遭遇時期は、5〜9歳のオスでは2〜6月と9月であったのに対し、0歳のオスでは9月から1月に集中していた。0歳メスは11月に集中していた。0歳個体の事故が秋季から冬季に集中していたことから、春に生まれた仔が分散する時期に、新たな生息環境への習熟や経験が浅く、車への警戒が薄いため、事故に遭遇しやすいこと、また、分散の長距離移動の際に道路を横断する機会が増えることが要因と考えられた。栄養状態に問題のない亜成獣や定住個体が交通事故で死亡することは、個体群維持に負の影響を及ぼすと考えられた。
著者
田中 大輝 林下 淳一 上山 あゆみ Daiki TANAKA J.−R. HAYASHISHITA Ayumi UEYAMA
出版者
鳴門教育大学
雑誌
鳴門教育大学研究紀要 = Research bulletin of Naruto University of Education (ISSN:18807194)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.333-347, 2017-03-10

This paper firstly reviews Japanese language reference books published in recent years from the perspective of whether they are sufficient for learners to use Japanese verbs effectively. In Japanese a verb changes its meaning depending on what types of nouns serve as its arguments and what particle those arguments take. It thus follows that a viable reference book must introduce each meaning associated with a given verb together with the information of the types of arguments it takes and the particles accompanying those arguments. The example sentences for a given verb having a given meaning must also illustrate its arguments and their accompanying particles clearly. We demonstrate that while recent Japanese language reference books are useful in a number of ways, none of them meet these criteria sufficiently ; hence, we still await a reference book that enable learners to use Japanese verbs effectively. The second part of the paper introduces our ongoing project, which aims to produce a Japanese verbs reference book meeting these criteria. Our proposed reference book targets Japanese language learners who understand English, and incorporate English explanations creatively to achieve the goal.
著者
宮崎 あゆみ
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.105-123, 1991-06-05 (Released:2011-03-18)
参考文献数
10
被引用文献数
5 2
著者
宮崎 あゆみ
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.135-150, 2016

<p>本稿では,日本の中学校における長期のエスノグラフィを基に,どのように生徒たちが,ジェンダーの境界を越えた一人称を使用し,どのように非伝統的一人称実践についてのメタ語用的解釈を繰り広げていたのかについて分析する.生徒たちのメタ語用的解釈の分析からは,支配的なジェンダー言語イデオロギーから距離を置く創造的なジェンダーの指標性が浮かび上がった.その三つの例は以下の通りである.1)女性性に対する低い評価に伴い,「アタシ」よりも,中性的でカジュアルとされる「ウチ」が好まれる,2)女子が男性一人称「オレ」「ボク」を使用することが正当化される,3)一方,男性語であるはずの「ボク」を男子が使用する場合,望ましくない男性性を指標する.このようなジェンダー言語実践へのメタ語用的解釈は,社会的ジェンダー・イデオロギーの変化と結びついて,ジェンダー言語イデオロギーの変容に繋がった.ジェンダーを巡る「メタ・コミュニケーション」は,このように,言語と社会,ミクロとマクロ,言語とアイデンティティの関係を読み解く貴重な研究材料である.</p>
著者
阿南 あゆみ 山口 雅子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.73-85, 2007-03-01 (Released:2017-04-11)

親が子供の障害を受容して行く過程に関する文献的検討を行った結果, 障害の診断を受けてから, 親の心の軌跡に焦点を当てた段階説と慢性的悲哀説の2説が報告されている. 段階説の概略は, 親が子供の障害を受容して行く過程は長期に渡り紆余曲折があるが, いずれは必ず障害のある我が子を受容するに至るとする説である. 一方慢性的悲哀説は, 親の悲しみは子供が生きている限り永遠に続き, 子供の成長に伴う転換期において繰り返し経験され続け, 悲しみに終わりはないとする説である. さらにわが国においては, 2説を包括する形の障害受容モデルもあり, 研究者による分析方法や解釈の仕方に違いが見られる. 障害を持つ子供の支援に携わる医療者は, 主たる養育者である親が子供の障害を受容して行く過程を理解し, さらに2説の枠組みだけではなく親の養育体験全体を捉えることが必要であり, 今後さらなる体系的研究が望まれる.
著者
大野 聖子 佐藤 敬子 片岡 恵子 田中 結美 小原 優子 野田 あゆみ 小島 広美 細見 博子
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.264-268, 2000-08-23
参考文献数
8
被引用文献数
2

1995年と96年の公務災害に申請された針刺し・切創事故をEPINet日本語版を用いて解析を行った.それに基づき携帯型針捨て容器の導入, 病棟で使用する滅菌処置セットに滅菌済みの膿盆を組み込むこと, ゴム栓よりの真空採血用にルアーアダプターを採用などの改善を行った.原因器材としてディスポの注射器針, 翼状針, 留置針, 真空採血針の全体に占める割合は2年平均14件全体の65%から6件30%に減少した.携帯型針捨て容器はコスト的にも100床あたり月5000円程度で一般病院でもまず試みうる対策と考えた.
著者
関 あゆみ
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.54-58, 2009 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15

アルファベット言語圏においては発達性読字障害の主たる原因は音韻認識・処理障害であると考えられ、機能的MRIなどの脳機能画像研究により、音韻処理に関わる左頭頂側頭部と文字形態認識に関わる左下後頭側頭回の活動不良が共通する所見として報告されている。この2つの領域の読みの習熟に伴う変化や言語による違いが注目されており、縦断的な機能的MRI研究や言語間比較研究が開始されている。 日本語においても仮名の習得に困難を認めた発達性ディスレクシア児では音韻認識障害が認められた。さらに仮名の母音比較課題を用いた機能的MRI研究では、日本語の発達性ディスレクシア児にも同様の障害メカニズムが存在することが示唆された。
著者
猪瀬 あゆみ
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
文化交渉 : Journal of the Graduate School of East Asian Cultures : 東アジア文化研究科院生論集 (ISSN:21874395)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.3-19, 2018-11-30

東アジアの言語と表象 (East Asian languages and Representations)This paper looks at the artistic works of The Narrow Road to the Deep North by Yosa Buson (1716-1783). Three scrolls and one folding screen are extant. Buson completed these works, which were inspired by the famous prose and verse collection by Matsuo Basho (1644-1694), The Narrow Road to the Deep North, in the late 18th century, when a revival movement of Basho's poetic style was flourishing. There has unfortunately been a dearth of serious or detailed academic discussion on the relationship between Buson's paintings and his accompanying calligraphy. This research paper puts forward the proposition that these works differ from other artists' output, with particular emphasis being placed on his "The Trio of Poetry Calligraphy Drawing" in the Edo Era. Through a painstaking examination of each work, this paper seeks to clarify how the composition of the paintings and the calligraphy help form a harmonious whole.
著者
宮崎 あゆみ
出版者
東京大学
雑誌
東京大学教育学部紀要 (ISSN:04957849)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.169-177, 1993-03-30

This research examines student subcultures with a gender perspective, using the ethnographic approach on a girls' high school. In this paper I call subcultures studied with gender frameworks in mind "gendered subcultures". In the first part, I briefly review traditional subculture studies and school organization studies which have overlooked such aspects as gender roles and femininity and masculinity. I also review the debate about single sex education v. s. co-education. This debate focuses on sexism within schools and subcultures related to girls' academic achievement. In contrast, this research focuses on femininity and gender roles as aspects of gendered subcultures. In the second part, the research, focusing on femininity of girls, shows that, within a girls' high school, there are gendered subcultures free from femininity, peculiar to a single sex school, but that they both accommodate and resist femininity out of school. It is confirmed that femininity is not fixed but changing.
著者
川端 博子 松本 あゆみ 吉澤 知佐
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.139-146, 2007
参考文献数
7

セミフレアスカートにおける裏地の効果について,着用評価とスカートの裾線形状から追究した.3種の裏地(キュプラ,差別化ポリエステル,ポリエステル一般裏地)に,2種の異なるパターン(スカートと同型でフレア状に裁断したものと脇スリット入りのストレートな形状のもの)を組み合わせた6枚のスカートについてテストした.13人の女子学生が着用評価を行った結果,フレア形状の裏地をつけたスカートは快適と感じられ,中でも動作性に優れていた.また,キュプラ裏地のものは肌ざわりにおいて他より優れていた.動作分析法により,マネキンに着せたスカートの裾線の形状を静的・動的状態で観察した.静的状態においてフレア形状の裏地のスカートの裾面積は大きく,かつ裾線形状は左右対称であった.スカートの動きの観察から,フレア形状の裏地のスカートは裾面積および裾の移動距離が大きかった.また,フレア形状の裏地のスカートでは表地と裏地の間隙が少なく,一体となって動く様子が捉えられておりこのことも動作性を高める要因と考えられる.キュプラ裏地のものは裾面積が小さく広がりの少ない形状を呈したが,もっとも移動量が多く躍動感のある動きを示していた.このことは裏地のかたさと動的振動係数とかかわると推察される.これらのことから,スカートの快適性と形状は裏地のパターンと種類の両方から影響を受けることが明らかとなった.
著者
中村 晃士 鈴木 優一 山尾 あゆみ 加藤 英里 瀬戸 光 沖野 慎治 小野 和哉 中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.121-125, 2012-07-15 (Released:2017-01-26)

われわれは,家族内葛藤から生じたと思われる心因性難聴と診断された女児Aを経験した.16歳の女児Aの幼いころの家庭では,父親がアルコールによる病的酩酊があり,父親から母親に対する暴力が日常的にあった.患者自身は被害に遭うことはなかったが,母親が父親に暴力を振るわれる姿をいつも見ており,緊張した毎日を送っていたと思われる.こうした中,患者は小学校低学年から耳が聞こえにくいという症状を呈していたが,耳鼻科を受診するも耳鼻科の診断がなされるが精神科治療に結びつくことはなかった.患者が小学5年生のときに両親は離婚しているが,父親の仕事をAが手伝うといった形をとっていたため,家庭,そして両親のバランスをAがとるという調整役を担わされていた.その結果として,難聴は次第に悪化し,16歳まで遷延化したため,精神科治療に導入された.診察の結果,Aの難聴は心因性であるとされ治療が開始された.面接の中で,Aにとって難聴は,意思を表明しないための道具であり,防衛として理解された.すなわち,Aは両親の狭間で意見を求められたり,ときにはどちらにつくのかといった態度の表明を迫られたりし,それを出来ないAにとっての防衛策が難聴だったのである.Aは家庭内で調整役を担わされているために葛藤状況が生じていると考えられ,Aの思いを言語化するよう治療では促された.もちろん,防衛としての難聴をAが手放すには時間がかかるが,Aが家庭内での調整役を担わなくても家族が崩壊しないことを現実生活の中で体験していけば,少しずつ難聴を手放せていけると思われた.また現代社会の中で,家庭環境はより複雑化していく一方であり,このような患者が増えていくことが予想される.治療者は,家族内の病理が女性や子どもといった弱い立場の人の身体症状という形で表面化しやすいということを念頭に治療に当たらなければいけない.
著者
嶽本 あゆみ 前原 弘法 渡邉 敏晃 伊東 繁
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2008 (Released:2008-08-29)

音速を超える速度で伝播する圧力の波である衝撃波は、きわめて高い圧力を瞬間的に負荷することができる。水中衝撃波の場合は秒速およそ1300メートル、圧力は数百メガパスカルから数ギガパスカルに及ぶ。伝播速度が速いために、対象物に圧力が負荷されるのは、一瞬である。 また、衝撃波は伝播する媒体物質の密度境界面においてスポーリング破壊を引き起こす。媒体物質に入射した衝撃波は、密度差面で音速を保ったまま衝撃波として通過する透過波と、音速以下の速度となり反射する膨張波とに分かれる。衝撃波がこのように透過波と膨張波とに分かれる際に、密度差面では負圧力が生じ、引っ張り力によってスポーリング破壊と呼ばれる高速破壊現象を引き起こす。植物においては細胞質と細胞壁との密度境界面や、細胞組織に含有される気泡の膨張が原因で細胞壁の一部がスポーリング破壊を受けると考えられる。 衝撃波を野菜や果物などの食品に負荷することで、スポーリング破壊が細胞や組織に作用し、軟化作用を引き起こす。また衝撃波の圧力負荷時間がきわめて短時間なため、熱変成を生じず食品は非加熱の状態で軟化する。本発表では、衝撃波の強さと軟化効果について報告する。
著者
高水 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.103_1-103_1, 2016

<p> 近年、例えば「ハロウィンの仮装」のように、「仮装」という行為を集合的に行い楽しむ現象が見られるようになってきている。スポーツの場においても「仮装」は多く見られ、社会現象となっている。東京マラソンでは様々な仮装をして走るランナーが世間を賑わした。このような、衣装や化粧等によって身体加工を行い、普段の自分とは別の姿へと変身する「仮装」という行為はどのような行為であるのか。中でも、スポーツの場に現れた「仮装」とはどのような行為であるのか。この問いには、「仮装」に関する議論を整理し、「仮装」という行為を、身体との関係からより丁寧に読み解くことが必要である。そこで本研究では、これまでの「仮装」の議論を整理し、マラソンにおける「仮装」に着目して、スポーツの場に現れた「仮装」とはどのような行為であるのか明らかにすることを目的とする。</p>
著者
柳谷 あゆみ
出版者
東洋史研究会
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.379-348, 2016-09

This article deals with the reign of the Zangid ruler of Syria, Nur al-Din Mahmud (r. 541-569 AH/1146-1174AD) and attempts to analyze his policies towards his amirs who played important roles in the government and army. For this purpose, the author collected and organized information on individual amirs from contemporary documents, including their official positions, movements, iqta' (i. e. fiefs), and families, and confirmed trends in their activities and analyzed their participation in internal government affairs, which has not been dealt with in depth in previous studies. In the management of his amirs, Nur al-Din took account of an amir's family, its ties with others and internal order, not only of the amir himself. He emphasized the notion of "service of the family" by assuring transfer of a deceased amir's iqta' to his son (even if the son was still in his minority) and punishing the amir's family for the amir's misdeeds. He aimed to strengthen his leadership by adjusting the amir's family order in accord with his relationship with his amirs based on their service to the master. Nur al-din never had an amir killed for posing a threat to his reign but usually dealt with the unsettling matters by adjusting the amirs' positions and situations, for example, changing their iqta', or forcing them to participate in expeditions. His policies towards the amirs seems to have been effective in keeping the amirs and the soldiers in their charge in support of the regime by avoiding sudden, unreasonable executions. This rational order was based of the political and military steadiness of his regime. Occasionally, Nur al-Din was obliged to compromise with ambitious or disruptive amirs out of military necessity as in a series of battles against the Franks (Crusaders). Because of such circumstances and the fact that the amirs also could move to keep their independence within the framework of their services to their master, Nur al-Din faced a leadership crisis at the end of his reign. This is confirmed by the actual independence of the Ayyubids in Egypt who still operated within the framework of service to Nur al-Din.