著者
伊藤 憲三 水島 昌英 北脇 信彦
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.431-440, 2005
参考文献数
28
被引用文献数
1

入力信号を音声とそれ以外の信号(非音声)に識別して, 定常雑音を効率的に抑圧する方式を提案した。音声と非音声の識別には, 入力信号の周期性を表す特徴量, 信号スペクトル特徴, パワーなどを用いた。雑音抑圧処理は, スペクトルサブトラクション(SS)とロスコントロール(LC)を併用した。SSでは, 周波数重みづけによって雑音を差し引くこととし, また, LCはSSで消し残った残留雑音を損失制御することによって無音区間の残留雑音を完全に除去した。種々の雑音を用いて評価実験を行った結果, 信号対雑音比が10dB程度以上の雑音条件下で良好な動作をすることを示した。また, 本方式をマルチマイク集音系と組み合わせることによって更に性能を向上させることを示した。更に, 聴覚障害者による数字了解度試験を実施し, 提案した雑音抑圧処理が難聴者の聴こえに非常に有効であることを示した。
著者
猿舘 朝 伊藤 憲三
出版者
日本音響学会聴覚研究委員会
雑誌
聴覚研究会資料 (ISSN:13461109)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.621-626, 2006-10-06
被引用文献数
5
著者
猿舘 朝 伊藤 憲三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.179, pp.13-18, 2008-07-28
参考文献数
34

本稿では,聴覚障害者のための生活音自動識別システムについて提案する.我々はこれまで,識別したい生活音の信号特徴量をあらかじめ事前に登録する方式とすることで,非常に高い識別率を実現した.信号の特徴には,平均スペクトル情報とパワー情報,識別には線形判別関数を用いた.また,実時間システム構築の際に必要な,フレーム処理に基づく信号検出及び識別アルゴリズム等について検討を行い,高速で識別処理するシステムとして実現した.さらに,本報告では周波数帯域特徴や時間パタンを考慮した光や振動といったメディア変換呈示および,システムの実装構成について述べる.
著者
猿舘朝 伊藤憲三
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムLSI設計技術(SLDM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.98, pp.89-93, 2008-09-29
参考文献数
22

本稿では,聴覚障害者のための事前登録型生活音識別システムについて提案した.我々はこれまで,フレーム処理に基づく信号検出及び識別アルゴリズムにより,高い精度で識別処理するシステムとして実現した,本報告では,識別アルゴリズムの際に分析した周波数帯域特徴や時間軸パタンを利用したメディア変換法,携帯電話を利用した職別結果呈示法,そして,システムの実装構成について述べる.The living sound identification system based on preregistered of signal characteristics for hearing impairments persons was proposed. This system accomplished with very high identification rate by signal part detection and identification algorism based on frame by frame analysis. In order to system implementation, conversion method from identification result to another information as vibration or a light were studied. And, method of transmitting identification result by cellular phone was described.
著者
猿舘 朝 伊藤 憲三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIP, 信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.228, pp.89-93, 2008-09-29
参考文献数
22

本稿では,聴覚障害者のための事前登録型生活音識別システムについて提案した.我々はこれまで,フレーム処理に基づく信号検出及び識別アルゴリズムにより,高い精度で識別処理するシステムとして実現した.本報告では,識別アルゴリズムの際に分析した周波数帯域特徴や時間軸パタンを利用したメディア変換法,携帯電話を利用した識別結果呈示法,そして,システムの実装構成について述べる.
著者
小森 貞男 副島 淳一 工藤 和典 京谷 英壽 阿部 和幸 古藤田 信博 小松 宏光 伊藤 祐司 別所 英男
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.880-889, 1998-11-15
参考文献数
16
被引用文献数
4 2

前報で設定した各S遺伝子型に対応した品種・系統を利用して,栽培品種を中心により広範に品種・系統のS遺伝子型の解析を試みた.その結果15種類のS遺伝子型のうち(S_Jb, S_Je)および(S_Je, S_Jd)型を除く13種類で品種との対応が以下のように明らかになった.下線を付したものが,今回新たにS遺伝子型が判明した品種・系統である.[table]
著者
菊池 愛美 伊藤 貴之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.76, pp.49-54, 2006-07-11
参考文献数
9

虹は自然現象の中でも発生条件の厳しいものであるが、映画やドラマ等の映像で用いられることが多い。虹は、空気中の水滴内部での光の反射によって起こる現象であり、この光反射をモデル化することで、CGによる表現力同能である。しかし、CGによって表現された虹を撮影映像に合成する技術に関しては、まだ議論の余地があると考えられる。本報告では、CGで生成した虹を実写画像に合成する手法を提案する。提案手法では、まず実写画像に撮影された各物体の奥行きを仮想することで、3次元仮想空間を構築する。続いて、ユーザによって定められた位置に虹力境られるように、太陽光線方向を設定し、また3次元仮想空間全体に対して大気中の水滴分布を設定する。そして、実写画像における各画素について、空気中の水滴内部を反射して視点に到達する虹の光の強度を算出する。以上の処理手順により、視点と背景物体との距離による虹の見え方の違いを表現する。Rainbow is often seen in movies or dramas; however weather condition for seeing rainbow is severe. The rainbow is a phenomenon that happens due to the reflection of light in water drops in the air. It is possible to represent it by computer graphics (CG) by modeling the light reflection. However, there are some issues on the synthesis of the rainbow represented by computer graphics onto real photograph images.This report proposes a technique for synthesizing the rainbow generated by computer graphics to real Photograph images. In the proposed technique, a three-dimensional virtual space is constructed by assigning depth values for each object taken in the photograph images. Sunlight direction and water drop distribution is then set to the three-dimensional space, so that the rainbow is rendered at ttie desired position in the photograph image. Brightness and color of light of the rainbow that reflects inside the water drops are then calculated for each pixel of the photograph image. The technique realizes the representation of various rainbows depending on the distances between a viewpoint and objects taken in the photograph image.
著者
伊藤 史朗 佐藤 友美 栗原 伸一
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
食と緑の科学 (ISSN:18808824)
巻号頁・発行日
no.63, pp.77-82, 2009-03

最古のセラピーの一つと言われる園芸活動の効果について学術的な報告が行われたのは、1699年のイギリスにおける研究が最初であり、その後、第一次世界大戦を機にアメリカでは園芸療法が広く普及した。一方、わが国では、園芸療法や園芸セラピーといった言葉が、90年代に入りようやく使われ出した。その後は順調に普及し、現在では多くの医療・福祉施設や教育機関において作業療法や能力開発手段の柱として導入されている。しかしながら、林らによる先行研究などいくつかの分析例は存在するが、医療や教育面における園芸活動の研究が近年大きく進んでいるにもかかわらず、一般的な趣味であるという認識のために、市民に対してもたらされる効果については余り注目されてこなかった。そこで本研究では、そうした園芸活動の持つ心理的効果を広く捉え、地域社会や社会・環境問題などに対する意識や活動との関連性を構造的に明らかにすることを目的とした。具体的には、松戸市周辺において園芸活動を行っている市民とそうでない市民の両者を対象に実施した意識調査の結果に「グラフィカル因果分析」を適用する。
著者
長田 富香 井上 美恵子 高尾 篤良 三森 重和 森 克彦 高見沢 邦武 広沢 弘七郎 伊藤 光子 岩島 恵美子 菊池 尚子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.543-543, 1972-07-25

東京女子医科大学学会第38回総会 昭和47年10月1日 東京女子医科大学本部講堂
著者
伴野 潔 伊藤 靖夫
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,属間雑種を利用したリンゴとナシの飽和連鎖地図を同時に,かつ効率的に作成するとともに,得られた情報をもとに有用遺伝子をマッピングし,リンゴやナシのDNAマーカーを利用した新育種法の開発の可能性を検討した。1.胚培養を用いて育成したリンゴ‘ふじ‘とナシ‘大原紅'の対称雑種62個体を用い,連鎖地図を作成した。その結果,‘ふじ‘では,1348.1cM,17連鎖群,195遺伝子座からなる連鎖地図が,‘大原紅'では1345.4cM,17連鎖群,240遺伝子座からなる飽和した連鎖地図がそれぞれ作成された。作成された両品種の各連鎖群では,SSRを中心とした共優性の各遺伝子座がほぼ同じ順序と遺伝距離で対応し,リンゴとナシのゲノムのシンテニーが高いことが示唆された。2.‘おさ二十世紀',‘大原紅',‘ふじ'の3品種の幼果からm-RNAを単離し,作成したcDNAライブラリーから得られたESTクローン約350種類についてシークエンスを行い,相同性検索を行った。その結果,ナシ果実で発現するESTクローンはこれまでに報告されたリンゴ果実等で発現する遺伝子と極めて相同性が高く,1〜2塩基多型(SNP)を示すものが多く,さらに6%の遺伝子で5塩基以上の挿入あるいは欠失変異が認められた。3.‘おさ二十世紀'と‘大原紅'の交雑系統(Os×Ob)90系統を用い,開花・結実した系統について果実の成熟期,果形,果重,硬度,糖度,酸含量,追熟性の諸形質を調査し,作成された両品種の連鎖地図上に各形質についてQTLマッピングを行った。4.リンゴ品種‘ふじ'へカラムナー形質を導入するために,‘ふじ'とカラムナー品種‘メイポール'とを交雑した。得られた系統を用いて,果実形質を調査するとともに,カラムナー形質や赤葉形質,果皮・果肉の着色形質について遺伝解析し,これらの形質に関与する遺伝子のマッピングを行った。その結果,‘メイポール'の第10連鎖群にはカラムナー遺伝子(Co),第9連鎖群には赤葉遺伝子(Rl)がそれぞれマッピングされた。
著者
井上 吉世 石津 日出子 伊藤 知子 大鹿 淳子 梶本 五郎 竹井 よう子 高村 仁知 中原 満子 西池 珠子 林 淑美 原 知子 深見 良子 福井 広子 的場 輝佳 水野 千恵 村上 恵 夜久 富美子 湯川 夏子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.299-304, 2003-08-20
参考文献数
17
被引用文献数
3

A collaborative study was designed to examine the applicability of a sensory evaluation to determine the life span of frying oil. Soybean oil was heated at 170℃ in an electric fryer. Two types of food, chicken fillet and potato, were deep-fried with or without breaded batter every 15 min. Frying was continued until the flavor score of the oil had dropped to 3. A sensory evaluation of the frying oil and each fried food was then carried out. The life span of the frying oil to reach the flavor score of 3 was slightly longer with breaded batter than without using the batter coating. The color of the frying oil did not exhibit any degradation, especially when potato was fried. It was difficult to judge the degradation by the appearance of each fried food coated with breaded batter. However, the flavor score of the frying oil corresponded to the flavor score of the fried foods coated with breaded batter. The flavor and taste of the foods fried in the oil with a flavor score of 3 were not good. These results suggest that the flavor score of frying oil is useful to determine the life span of frying oil when a breaded batter coating is used.
著者
伊藤 華子
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.454, pp.241-244, 2004-03-29

用紙を登録し写真入り名刺作り/和紙の雰囲気を生かし趣味用に
著者
渡辺 貞夫 渡辺 重信 伊藤 和敏
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-53, 1983-02-20
被引用文献数
1

国内で広範囲に多用されている水田除草剤(CNP, クロメトキシニル, ベンチオカーブ, モリネート)の汚染実態調査を, 相模川(神奈川県)で採取した淡水魚について実施した.これら除草剤の水田への使用は, 田植時期に限定されるため, 調査を7月に行ない, 他の時期の汚染レベルと比較した.昭和55年7月に採取した4魚種(オイカワ, カマツカ, コイ, フナ)すべてからCNPが, また2魚種からベンチオカープが検出された.CNPの残留レベルは0.055ppmから0.61ppmの範囲で, ベンチオカーブは0.02ppmおよび0.10ppmであった.昭和56年7月採取した4魚種(オイカワ, アユ, フナ, ブラックバス)に, CNPが0.046ppmから0.88ppm, ベンチオカーブは0.04ppmから0.11ppmの範囲で検出され, 昭和56年の調査結果とほぼ同程度であった.しかし, 昭和56年9月採取した魚には, これら除草剤はいずれも不検出あるいは微量しか検出されなかった.今回の調査結果から, CNPの生物濃縮係数は420∿8, 000, ベンチオカーブは20∿100と想定された.しかし, これら除草剤の淡水魚への蓄積残留は比較的短期間であると考えられた.クロメトキシニルおよびモリネートは, いずれの検体からも検出されなかった.
著者
伊藤 俊之 芦崎 能広 木村 淳一 森垣 努
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.96, pp.85-90, 2006-09-15

ブロードバンドの普及により、ビデオ通話を用いて遠隔相談や遠隔手続きを実施する環境が整いつつある。我々は従来対面で実施していたこれ等の業務を遠隔で実現する、アイコンタクトを用いた高精彩映像による遠隔相談システムや、TV会議システムを用いた遠隔手続きシステムを開発した。遠隔相談システムでは、相談業務を円滑に実現するアイコンタクトを用いた高臨場感なビデオ通話機能等を、遠隔手続きシステムでは手続き業務を円滑に実現する高品質なビデオ通話機能などを実現した。開発したシステムをデモシステムや実システムとして運用し、遠隔相談業務や遠隔手続き業務が実際に運用可能なことを確認した。With the expansion of broadband networks, remote consultation and contract systems, using high quality video communication, have become increasingly possible. We develop "Faca-to-Face" Video Call Center System for remote consultation and contract system. It realizes high realistic video communication for consultation and contract. We also evaluate that these systems could be applied as remote consultation and contract services.
著者
前田 義信 伊藤 尚 谷 賢太朗 佐藤 輝空 加藤 浩介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.63-68, 2011-05-13
参考文献数
27
被引用文献数
1

社会問題のひとつである"いじめ"は強者から弱者に対して行われる従来型の一方的な攻撃から,対等な他者との間で加害者と被害者が流動的に入れ替わる双方向の攻撃へとその性質を変容させつつある.当事者はいつ自分が被害者になるか予想することもできない不安を常に持ち,それゆえ対等な他者からの承認を常に必要とする"フラット"な関係が築かれるようになった.また流動性ゆえに,教育者をはじめとする支援者も対策に頭を悩ませている.そこではどのような事態が生じているのか?本稿では,エージェント,価値,エージェントが起こす行動,相互作用で構成される形式的な人工学級モデルを提案し,マルチエージェントシミュレーションによってその現象を調べる.相互作用を繰り返すことによって自分が見出す価値数がゼロになった経験を有するエージェント(いじめ被害者)と,他のエージェントから反感性の行動を連続的に受け続けたエージェント(いじめ被害者の候補=潜在的いじめ被害者)を定義し,その状況を調べた.その結果,交友関係における対立回避i,相補性やべき乗分布に従ういじめの特性が観察され,支援者によるいじめ発見の困難さとの関連性を考察した.
著者
西脇 巨記 本多 弓[ジ] 岸川 博隆 田中 宏紀 谷脇 聡 成瀬 博昭 伊藤 和子 梶 政洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.789-793, 1997-03-01
被引用文献数
19 29

症例1は75歳の男性で, 粘血下痢便を主訴として他院に入院, 潰瘍性大腸炎の診断にて諸検査施行し, 大腸に穿孔を認め緊急手術を施行した. 摘出標本よりアメーバ虫体を認め当院転院となった. 症例2は28歳の男性で, 粘血下痢便を主訴とし他院通院し潰瘍性大腸炎の診断にて投薬を受けていたが改善しなかったため, 当院を紹介され便培養にてアメーバを認め入院となった. 入院後2日目に腹痛増強し, 腹部単純写真にてfree-airを認め緊急手術を施行した. アメーバ赤痢は男性間の同性愛行為により伝播し近年増加傾向にある疾患である. いったん穿孔すると非常に予後の悪い疾患となるため粘血下痢便を主訴として来院する患者に対しては本疾患を念頭にいれる必要があると考え報告した.
著者
中田 五一 伊藤 壽美代
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.82-93, 1955
被引用文献数
1

1) 1952年5月から1953年4月に至る1年間, 京都市右京区太秦, 安井小学校々庭において, New Jersey型light trapによる周年採集を行つた.2) 採集現場は市街地帯と農耕地帯の境界附近にあり北側は人家が密集し, 他の三方は水田である.3) 上記期間中に終夜採集を41回実施し, 総計5属19種8655個体の蚊が得られた.4) Culex pipiens (32.6%), Culex tritaeniorhynchus (29.0%), Anopheles sinensis (26.0%)の3種が圧倒的に多く, Culex vishnui (9.0%), Culex bitaeniorhynchus (1.4%), Culex rubithoracis (0.7%), Armigeres subalbatus (0.4%)の諸種は少いながらも構成上無視しがたい地位を占める.他は0.1%以下であつた.5) Culex pipiensは3, 4月には越冬雌が散発的に採れ, 5月中旬から雄が出現し, 以後11月下旬まで概ね連続して採集され, 従つて活動期間が最も長い.最高頂は6月下旬に認められる.6) Culex tritaeniorhynchusは5月下旬から雌が, 6月中旬から雄が出現を開始し, 7月下旬最高頂に達し, 9月下旬に急激に消失する.7) Anopheles sinensisは3, 4月に雌が散発的に出現, 5月中旬から雄が現われる. 7月上旬から急増し, 下旬に最高頂に達し, 10月上旬に姿を消す.8) Culex vishnuiは6月下旬から雌が, 7月下旬がら雄が現われ, 8月中旬最高頂に達し, 9月末に消失する.9) Culex bitaeniorhynchusは6月上旬に雌が始めて採れ.その後約1ヵ月間採れず, 7月中旬から9月下旬までは概ね連続的に出現する.最高頂は7月下旬に認められる.10) Culex rubithoracisは7月中旬から9月中旬まで概ね連続的に少数宛出現し, 8月中下旬に雄が稍々多くなる.11) Armigeres subalbatusは8月末から10月中旬まで採集され, 9月20日前後が最も多い.12) その他の諸種は, 概ね不連続に少数宛採集され, 消長様相を把握することは困難である.13) 各種の最盛期の間には多少のずれがあり, 全体として季節的"すみわけ"の傾向が認められる.14) 以上の成績を一応従来の知見と比較した結果, 蚊成虫の季節的消長は採集地点附近の環境や調査方法によつてかなり異つた様相を示す場合が多く, 到底緯度や気象の差だけでは説明し得ない.15) 季節的消長に関する研究の窮極の目的は, 各種の蚊のpopulation増減と環境要因の季節的変動との間の因果関係を探究することであり, その手がかりは, 個々の成績間における共通点を集約することよりも, むしろ相違点の分析的検討によつて与えられると思う.16) 以上の他light trap採集法の方法論的考察を行つた.
著者
伊藤 浩司 池上 由美 石井 康之
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.55-63, 1991-04-30
被引用文献数
3

南九州低地における暖地型永年草地の中秋から初冬までの利用と翌春の再生との関係を明らかにする目的で本実験を行った。1987年度にはグリスグラス(以下,Dgと略称),バヒアグラス(Bg)及びローズグラス(Rg)を用いて,処理区として11月27日から2月12日にわたり,未展開葉の摘出部と展開生葉の1/2とを剪除した区及び生葉の全てを剪除した区とを設け,個体光合成能力(Pa)の変化を調べた(実験1)。1988年度にはDgを用いて,10月8日,11月1日及び12月20日からそれぞれ1月23日まで約10日間隔で生葉をすべて剪除した各処理区を設けて,Pa,地上部乾物量(Dw)及び茎数(Tn)などの変化を調べた(実験2)。Dg及びBgでは,剪葉程度が弱いほど(実験1),また,この剪葉期間が短いほど(実験2),12月下旬までのPaが大きく,それに伴って翌春の再生時のPaが大きいという関係があった。越冬性の低いRgではこのような関係はなかった。他方Dgでは,12月下旬までのPaが大きいほど12月下旬の稈の乾物重が大きいため再生時におけるDw,Tn及びPaの増大速度が大きかった。しかし12月20日から剪葉を始めた区の再生状況は無処理区と大差なかった(実験2)。従ってDgやBgのように越冬性の高い草種では12月下旬までの光合成は翌春の再生に重要であり,これらの草地を利用する場合には,中秋から初冬の利用を避けて最終刈り取りを12月下旬とすることが生産性を高める一つの手段と考えられる。