著者
佐藤 三久 朴 泰祐 建部 修見 天笠 俊之 櫻井 鉄也 山本 有作 高橋 大介 北川 博之
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

P2Pグリッドとは、従来、各研究組織にある計算資源を共有することが目的であったグリッド技術を、P2P技術を活用しオフィスおよび個人のPCなどの潜在的な計算資源をグリッドの計算資源として活用するものである。本研究の目的は、期待される大量の計算資源による大容量コンピューティングのためのP2Pグリッド基盤を構築・利用する技術を確立し、その有効性を検証することである。1. P2P環境の潜在的な計算資源をグリッドの計算資源として活用するために、多くのPCで利用されているWindowsにおいてLinuxバイナリを実行するためのシステムBEEとUDPによるファイアウォール越えを用いたP2Pオーバーレイネットワークを開発した。さらに、P2P環境における認証機構として、匿名相互証明書とP2P通信を用いる認証方式AUBReX、他のジョブスケジューラと相互に協調し資源を共有する機構について開発した。2. 大容量コンピューティングのプログラミングモデルとして、RPCモデルから広域ネットワーク上の大容量データを効率的に扱うためのデータレイヤOmniStorageを開発し、それを拡張し、多数のノードに分散配置された大量データに対して、グローバルなデータ並列操作を行うプログラミング環境を提案した。また、大規模スケーラブルP2PにおけるXMLデータ管理について、MLデータの内容による検索に着目し,P2Pネットワーク上でXMLデータのキーワード検索を可能にする手法を考案した。3. P2Pグリッド向きのアルゴリズムとして、複素積分を用いた非線形固有値計算アルゴリズムや前処理手法を開発した。また、P2Pグリッドの有望な高性能な計算資源として、ヘテロジーニアスマルチコアであるCellプロセッサを取り上げ、この資源を利用するための数値計算ソフトウエアを実装した。
著者
山田 賢 久留島 浩 岩城 高広 安田 浩 秋葉 淳 趙 景達 佐藤 博信 菅原 憲二 安田 浩
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、北東アジア(具体的には中国・朝鮮、そして日本を対象として想定している)の近代移行期における国民国家の形成について比較研究を行った。それぞれの地域の事例について文献調査を実施したほか、浙江工商大学日本文化研究所、武漢大学日本研究中心の研究者と共同研究会を開催して検討を行った。その結果、北東アジア各地域における国民国家は、それぞれの地域において育まれた近世伝統社会における社会関係を基体として出現したことを明らかにした。
著者
中尾 正博 佐藤 哲夫 冨井 直弥 高山 慎一郎 堀内 貴史 朴澤 佐智子 鈴木 智美 小川 恵美子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.427, pp.49-53, 2010-02-19

超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS: Wideband InterNetworking engineering test and Demonstration Satellite)は,Ka帯のMBAやMPAによる高い送信・受信能力を持ち,小型の地球局で広帯域通信が可能であり,遅延時間が少ないという特徴を持つ衛星である.「きずな」は2008年2月23日に打上げられ,軌道上での初期機能確認試験を行った後,様々な実験を実施してきた.本稿では,宇宙航空研究開発機構(JAXA: Japan Aerospace Exploration Agency)が実施した基本実験結果の概略について紹介する.
著者
佐藤 英次 浅岡 康 出口 和広 伊原 一郎 箕浦 潔 藤原 小百合 宮田 昭雄 伊藤 康尚 居山 裕一 柴崎 正和 菊池 克浩 久保 真澄
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.30, pp.9-12, 2010-07-23

我々はポリマーネットワーク液晶(PNLC)を用いた60インチ型のシースルーディスプレイを開発した。このディスプレイは、TFTパネルと散乱-透過表示を組み合わせた世界初の大型シースルーディスプレイである。また、このシースルーディスプレイとプロジェクタの組み合わせによって実現したカラー表示システムは、他のディスプレイとは一味違うアイキャッチ効果を可能とする。これらのモノクロ表示およびカラー表示のディスプレイは、インフォーメーションディスプレイやデジタルサイネイジ、さらには窓の置き換えのような新しいディスプレイ応用商品への展開が見込まれる。
著者
加納 三千子 安川 悦子 藤井 輝明 西川 龍也 平本 弘子 大庭 三枝 佐藤 俊郎 宮本 賢作
出版者
福山市立女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高齢者の生活の自立と労働をめぐる問題をコミュニティにおける生活の自立システムを構築するという観点から研究を行い、次のような成果が得られた。コミュニティにおける生活のサステナビリティの構築には、(1)多様な人と連帯できる労働の場の確保をめざした地域の自立が重要である。(2)持続的再生産可能な地域資源作りとそれを活かしたコミュニティの再生が重要である。(3)福山市ではその一つとして市街地農業の活性化が重要な役割を担っていると考えられる。
著者
佐藤 恭道
出版者
鶴見大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

フェノールやユージノールなど歯科治療に用いる薬剤が、嗅覚から患者に不安や精神的苦痛を与える可能性が考えられる。そこで一般歯科医院を訪れる患者に、匂いに対するアンケート調査を行なったところ、80%以上の患者が歯科特有の匂いを感じると答えており、その匂いは、約50%が待合室で感じていた。またそれらの匂いによって嘔吐反射を誘発したり、歯痛を思い出させるなどの精神的苦痛を惹起する患者もいた。しかし矯正歯科ではこの様な匂いは感じないとする患者がほとんでであった。一般歯科と矯正歯科における句いの違いは主に根管治療をするか否かによるものと考えられた。そこで一般歯科医院における匂い強度を測定した。玄関の外を基準値として、玄関内、受付、待合室、治療室(入口、中央部、治療椅子)を測定場所にした。匂い強度は歯科医院によって様々であったが、全ての施設で治療椅子での匂い強度が最高値を示し、玄関内が低値を示していた。多くの患者が歯科特有の匂いを感じるとしていた待合室は比較的低値を示していた。全体的には治療椅子に近くなるほど匂い強度は増加傾向にあった。匂い強度が比較的低値を示した待合室で、約50%の患者が歯科特有の匂いを感じていたのは、これから受けようとする治療に対する恐怖や緊張が嗅覚を敏感にしたためではないかと考えられた。また、アンケートから患者は歯科治療をリラックスして行える匂いとして、無臭もしくはアロマテラピーの応用を期待していた。しかし匂いの好き嫌いは個人の経験や成育環境による影響が大きい。そのため誰もが快く感じる香りの摸索には更なる検索が必要であると考えられた。
著者
陳 明石 清水 忠男 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.13-18, 1999-07-31

調査対象となった岐阜県高山市の商店街路は, 私有地と公有地とを取り込み, 同じ舗装を施し, 一体感や広がり感を作り出している屋根付きの歩行者空間である。ここには, 平日, 週末を問わず, 店舗の営業時間に呼応して, 様々な仮設的要素が路上に置かれているのが観察された。それら仮設的要素の置かれ方は商店街の協定に基づいているため, 広い通行空間がほぼ確保され, 歩行者は歩きながら商品を楽しみ, 店内の様子をうかがうことが可能である。この点はアンケート調査においても肯定的に受けとめられていた。この空間は, 行政と商店側が双方の所有地を共同で計画, より幅広い歩行者空間としてデザインし作り上げた公私融合型歩行者空間ということができる。このようななりたちの歩行者空間は, 立場の異る様々な人々の多様な活動を支援し, コミュニケーションを促進する場となり, 商店街を活性化させる一つの有効なあり方を示している。
著者
佐藤 和秀 孔 幼眉 王 喜栄 ぱん 国良 趙 玉友 李 山 荒木 信夫 佐藤 國雄 山口 肇 KONG Youmei WANG Xirong PANG Guoliang ZHAO Yuyou JI Shan 季 山 〓 国良 北村 直樹
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

中国大陸東北部は水循環、大気循環の立場からも日本への大きな影響を有している。中国内においては経済発展に伴う種々の雪氷災害が問題となっている。このような状況の下に日本と中国の共同研究を企画し、中国東北部の雪氷災害に関しての本研究を実施した。本研究による成果の概要は以下の通りである。1.黒龍江省の地勢と気候特性黒龍江省の西北部と北部および東南部に山地があり、広大な松嫩平原と三江平原を有している。黒龍江省は季節凍土と多年凍土が存在し、冬は長くて寒く夏は短い。1月の平均気温は省内の北西から南東にかけて-30℃から-18℃で、7月の平均気温は+18℃から+22℃である。降水時期は夏期に集中し、冬期の降水量は少ない。三江平原北西部の宝泉嶺国営農場に無人気象観測装置を設置し、気温、地温、日射量、風向、風速等の測定を行った。1992年冬期の気温はかなり規則正しい日変化を示し、最低気温-36℃を記録した。そのスペクトル解析は1日と1〜2週間の卓越周期を示した。1〜2週間の卓越周期は日本でもみられた、シベリア高気圧の勢力に影響した季節風の変動に対応するものと考えられる。総距離2000km以上のルートで測定した積雪深分布の単純平均値は約17cmであった(1994年2月の例)。雪質は新雪、クラストで汚れた堅いしもざらめ層、発達した骸晶上のしもざらめ層に区分できた。調査ルート上の積雪は概ね似た構造であったことから黒龍江省の降雪時期と冬期の気象-積雪環境を推定できた。日本と比べ、著しい寡雪で寒冷気候が特徴である。2.雪氷、低温災害特性(1)涎流氷:山地部で湧水が冬期の寒期によって凍結し、氷丘となって発達する。この現象を中国では涎流氷と呼んでいる。これが道路上まで発達して各地で交通障害をもたらしている。本研究でも黒龍江に近い山地部に観測され、幾つかの涎流氷について調査を行った。崖際に発達するもの、平坦地であるが泉や河川などに関連して発達するものなど、場所と発達条件によって幾つかの種類に分類できた。防止対策については、大がかりな対策工法でほとんど解決できると思われるが、中国における雇用等の問題を考えると同時に安価な対策方法をとる必要性を提案した。また防壁などの素材として日本のトンネルなどに使用されている新素材の利用も提案した。(2)地ふぶきと吹きだまり:日本に比べ積雪量は非常に少なく、地ふぶきによる吹きだまりから生じる道路交通障害、及び吹きだまりによる春の畑の耕作の遅れなどが問題となっている。道路地形や並木と吹きだまりの形態の関係を調査した。並木と道路間の距離、道路の高さ、風向を考えた並木の位置などを考慮すれば、かなりの対策となる。また農場地における防風林と風速分布および吹きだまりの関係を測定調査した。本研究の期間では短かすぎ、防風林の構造と適正配置の結論を出せなかった。今後、観測例をふやし継続する必要がある。(3)道路および構造物の凍結特性:哈尓濱から中国国境に至る数カ所で道路および構造物の凍結調査を実施し、橋脚の凍上や建築物のクラック、ダム取水塔コンクリートの劣化が観測された。しかし寒冷地における凍害対策はかなり進んでおり、財政的問題を除けば、基礎の設計や地盤改良技術、コンクリートの配合設計などの技術的問題はかなりクリアされている。(4)酸性雪(雨):黒龍江省の各地で採取した降積雪の化学分析を行った。1994年の例では総サンプル数44のpH単純平均値は61、同時期の長岡のそれは4.7であった。またCa^<2+>とMg^<2+>の含有率が非常に高かった。この地域のアルカリ性の土壌が強風で舞い上がり降積雪中に取り込まれたこと、冬期暖房の主役の石炭の燃焼による灰などの比重の重い煤煙が発生源近くに落下し、アルカリ性を強めたことが推定された。同時に石炭の燃焼によって発生する揮発性の硫黄酸化物などの微粒子は大気中に拡散し長距離輸送され日本にも飛来するものと推定される。今後も国境を越えた共同研究が必要である。その他、凍土地帯のメタン濃度、融雪水の地中浸透と水質変動などに関して多くの知見が得られた。3年間の最後の年である本年度は、共同観測研究結果について日本でシンポジウムを開催し、成果報告書を刊行した。
著者
佐藤 昭人 森本 紳一郎 本多 忠光 豊田 充康 嶋田 誠 藤波 睦代 梶田 昭 中谷 雄三 鈴木 忠 織畑 秀夫
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.470-470, 1984-05-25

東京女子医科大学学会第257回例会 昭和59年2月17日 東京女子医科大学第二臨床講堂
著者
茂木 一司 福本 謹一 上田 信行 苅宿 俊文 刑部 育子 阿部 寿文 下原 美保 佐藤 優香 宮田 義郎 熊倉 敬聡
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

異文化理解・多文化共生の可能性を探る身体・メディア活用型プロジェクトの主要な成果は、(1)日本文化(美術)、身体を基礎にしたアート(学習)、障害児(者)のアート(学習)、プログラミング(cricket, scratch)による創造学習、などのワークショップの開発・実践・評価、(2)カフェ的な空間=オールナタティブスペースの創出と学びの検討、(3)ワークショップにおけるファシリテータ養成プログラムの開発とNPOの教育力の活用、の3点である。(1)では、異文化や多文化を単なる外国文化との交流だけでなく、障害のあるなしも含めた広い概念で捉え直し、日本文化(美術)を基盤にした(ワークショップ型学習には不可欠な)身体性を中心に据えたワークショップ(型学習)の開発・実践・評価を行い、それが表現性や協同性という特色によって、学びを創造的にし、(学校教育を含めた)現代の閉塞的な教育状況において非常に有効であることが実証できた。(2)(3)では、新しい学びの空間(学習環境のデザイン)をカフェという「ゆるやかにつどい語らう場」での学びがやはり現代教育にとって有効であることやワークショップという学びを支えるファシリテータに必要な資質の検討や育成のプログラムを作成した。
著者
佐藤 正幸
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.145-171, 1974

論文序(1) 説明の論理構造的側面 (a) 演繹的側面 (b) 確率的モデル(2) 説明の経験科学的な側面(3) 説明の実際的な側面結びDuring the past three decades, many philosophers and historians have been occupied with the "Analytical Philosophy of History", concentrating on the problem of historical explanation. The work as it has been carried on has yielded much fruit particularly by helping to elucidate the nature of history and historical writing. Being a student of history, it has been to my regret that the above has been primarily restricted to the realm of philosophical concern. And those few historians who have recently shown an interest in the philosophical problem as related to history have moved too rapidly in applying philosophical conclusions to the analysis of their own discipline ; at the cost of systematic ivestigation and analysis, to which their own discipline is deserving. Given the present situation, I would suggest two alternatives in which the current problem could be dealt with. One is through the analysis of "historical imagination" which I believe in the long run is capable of regulating historical writing. The second approach being the "analysis of historiography from a theoretical point of view". While the two above disciplines have a complementary relationship to approach the multitude of problems surrounding the nature of history, this paper will concentrate on the second alternative, particularly as it is applied to those tasks within the confines of the application of theoretical discussion as it pertains to the analysis of historiography. Systematic theory of explanation to the analysis of history requires a three stage structure ; (1) logical stage of explanation, (2) empirical stage of explanation, and (3) actual stage of explanation. While the first stage gives itself to the purely logical or syntactical, which is given by the Hempel-Oppenheim's covering-law theory of explanation, It is in the second stage that the concept of "time" enters first, which because of it's nature, as related to the "law-statement", is divided into three different types; (a) law of succeession, (b) law of coexistence, and (c) law of precedence. It is a primary conclusion of this paper that the central problem is within the core of type (c), the law of precedence. NOTE: The above conclusion has two conditions, given that this law statement is supportable through, (1); the presented works of E. Nagel and R. Rudner; which conclude that this law statement can be reduced to the above (a)'s law statement. (2); That the explanations in this stage are admitted to as a scientific explanation and that these can be reduced to the first syntactical structure. In the concluding third stage, "the analysis of the actual work of history writing" is in my opinion primarily one of "stage reduction". This conclusion was reached following my examination and analysis of W. Dray's work, "Continuous-Series Explanation", to which various types of historical essays are included within the model. A model when given due consideration, in my opinion, reveals a logical analysis that lends itself creditably to the proposition that the third stage can be reduced to the first and second stage's. While many problems continue to plague the serious student of Historical Explanation, it is none-the-less the contention of this paper that far more thrust must be given to the endeavour of reaching the realm of "The Analytical Philosophy of History", a realm I might add which when reached however will provide the much needed light with which to explore the current dimly lit field of the "Theoretical Foundations of Analysis of History Writing for the Establishment of Historography".
著者
佐藤 啓文
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

1.分子内の構造揺らぎを扱うためには、相互作用点モデルに基づく記述が便利である。しかしながら、このモデルは距離空間(Distance Geometry)内での表現であるために、現実の三次元空間との対応が必ずしも容易ではない。このために相互作用点モデルを用いると直感的な理解がしばしば困難になる。典型的な例は溶媒和構造を表す動径分布関数である。これは一次元方向への射影であるために、実際に「どんな水和構造か」という視覚的な理解と常に単純に結び付けられる訳ではない。そこで、我々は相互作用点モデルによる結果(動径分布関数の組)を、通常の三次元空間内の分布関数へ変換する新しい方法を提案した。この方程式では、溶質分子を構成する各原子を中心とした球面調和関数等の角度依存する基底関数系で分布関数を展開する。その結果、単純な線型方程式を解けばよく、従来の類似法で必須となる繰り返し計算等を避けて、簡便に三次元分布関数を決定できる特長がある。また、液体の積分方程式理論はもちろんのこと、分子シミュレーションや散乱実験の解析にも利用できる可能性がある。2.典型的な量子化学的立場では、分子間相互作用は、波動関数・電子分布に基づいて議論される。一方、分子シミュレーションなどの古典的描像では、分子を構成する原子間の相互作用として捉えるほうが一般的であり、直感にも直接訴える。そこで、量子化学的な多体相互作用をMulliken近似に基づいて分解することで、量子化学的な分子間相互作用を原子を単位とした新しい表式を導いた。この方法は、今後構造揺らぎを扱う積分方程式理論を構築していく上で、重要な礎になると考えている。3.キサンチンオキシダーゼによる酸化反応について、量子化学計算や、周辺残基の効果を取り入れたQM/MM型の計算を行い、反応機構を解明した。その結果、従来理論計算によって提案されている機構は、計算手法や実験事実との整合性に問題があることが明らかとなった。
著者
眞鍋 勝司 佐藤 雅彦
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

7日目の黄化エンドウ芽生えから抽出し、ほぼ純粋になるまで精製したフィトクロムA分子を原子間力顕微鏡によって観察した。生の溶液試料をマイカ板に載せ窒素パージによって軽い乾燥状態にしたフィトクロムを観察した結果、像が時間的に変化するので余りはっきりした像は得られなかった。これはAFMのプローブの位置検出に用いている赤色レーザーが試料のフィトクロムの光変換をもたらす結果と考え、軽く固定した分子を観察することにした。Pfr状態で0.1%グルタルアルデヒドにより固定した試料は碁石のような円盤が2個つながった全体として上から見れば雪だるま、あるいは殻つきピーナッツのような像を与えた。像の大きさプローブの大きさが10nmと仮定して計算すると約250kDaになり、フィトクロム・ダイマーの分子量と一致するし、水力学的に測定した値とも矛盾しない。一方Prの状態で固定した試料は碁石状の円盤が2つ重なった、全体として1つの厚い球に近い楕円体の像を与えた。PfrにフィトクロムのN末端から354番目からのDAVLという配列に結合することが分かっている抗エンドウフィトクロムA単クローン性抗体Mep-1をつけてAFM観察した。雪だるま像に1個の抗体が付いた像は観察されたが2個同時に付いたものは観察されなかった。これは抗原に1個の抗体が付いた状態ではもう1個は立体的に結合できなくなっているものと推定される。IgGでなくMep-1のFab'断片を用いた場合も同様に1個しか付かなかった。以上より、フィトクロムAはPrでは薄いほぼ円盤型のものが2個重なった形を形成し、Pfrになるとその円盤が開き、雪だるま型になる。雪だるまを構成する個々の円盤はフィトクロムの単量体に対応するのではなく、2つの円の付け根付近にエピトープ部分が2つ存在する可能性が大きいと解釈している。
著者
佐藤 虎男
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C1)人文科学 (ISSN:03893448)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p1-28, 1975-01

私は、いま、「現象」(かたち)への強い興味をおぼえている。興味では足りない。現象至上の思いといったものをである。かたちこそが、内実の脈動を真正直に伝えてくれるすべてだからである。語はなんらかの音節連続体である。「アタマ」は3音節から成るが、そもそもこの3音節を結合して語とする作用はなにか。それは、意義とアクセント(この場合,語アクセント)である。語アクセントは、意義を意義たらしめるべく(意義を定着せしめるべく)音節を使って語を形成する作用である。この作用は、通常、組織的な傾向を示す。いわゆるアクセントは、この作用の外形ないしは作用上の強い傾向,型をさすことが多い。アクセントを,形態の名とする以前に、まずは作用と解することが有益なのではなかろうか。語の形の決定にあたって、語アクセントがこのように働くのと同様、文の形の決定にあたっては、文アクセントが働く。文アクセントは、文の形を最後的に定着せしめる作用であり、傾向である。この、文アクセントと語アクセントとは,いちおう別段の秩序のもとにありながら、もちろん不可分の密な交渉関係にある。すなわち、文アクセントは語アクセントを駆使し統御する。その統御のしかたには、またそれなりの一定傾向,類型がみとめられる。個人差を越えた、社会的習慣としての傾向がである。方言生活における表現の具体的単位が文である以上、アクセント観察に、文アクセントを先んずべきこと,逸すべきでないことは、自明のことのように思うのである。前稿(「伊勢大淀方言の特殊な文アクセント」大阪教育大学紀要、第22巻、第1部門、55頁)で私は、大淀の方言のナチュラルな文の抑揚を観察し、そこにみとめられる文アクセント諸傾向について述べた。どこの方言についても、なんらかの文アクセント傾向が帰納できると思われるが、大淀の方言の文アクセント傾向のうちのあるものは、当地に比較的近い土地の方言のそれに比して、いちじるしく異態を示している。とくに、話部中の一音節が卓立する傾向が強く、その卓立が,近在方言文アクセントには見られないような位置に現われるのである。その結果、〓に代表されるような特異なアクセント波が把握された。これが、文中のどの話部かに現われると、(文中くりかえし現われればなおのこと)その文アクセントは、特異波に色どられることとなる。ところで、大淀方言の文アクセントが、このように特色の明らかなものでありながら、別に調査した当地の語アクセント状況は、おおむね近畿一般の語アクセント状況に近く、言うところの特異な文アクセントに対応するような語アクセントは、わずかにみとめられるにすぎなかったのである。なぜこうなのであろうか。本稿はそれを承けて、当方言の語アクセントおよびその文アクセントとの関係について考察しようとするものである。具体的な文において、文アクセントは、語アクセントとどのようにかかわっているであろうか。また、語アクセント観察は、文アクセント観察とどのように関連づけられるのであろうか。山野に降り積もった雪の起状は、雪面下の地表の起伏に支えられている。それが淡雪であれば、ほとんど地表の凸凹そのままに雪面をつくるけれども、雪国の深雪は、地表の起伏を蔽いつくして大きくうねる。雪面と地表の相関にお国ぶりがあろう。文アクセント下の語アクセントを見て、よく文アクセントの形象の「自然」を理解することができると思われる。起伏に富んだ雪面の美と真を見るのと、雪面下の状況を認識するのとは、両立させるべきものであろう。従来のアクセント研究界では、結果として語アクセントあるいは文節アクセントに主眼が置かれてきて、文の抑揚、文アクセントについてこれを真正面からとりあげることは、盛んでなかった。少なかった。寺川喜四男博士が「アクセントの基底としての『話調』の研究」(『国語アクセント論叢』昭和26年)に、諸説のいきとどいた紹介整理をしておられるが、そこに見られるような、諸先学のすぐれた指摘、方向づけにもかかわらず、その後今日まで、どれだけ具体的な記述的研究を展開させてきたか、不明にして私は多くを知らない。その中で藤原与一博士と、山口幸洋氏のお二人の、それぞれ独自の、一貫した研究には、教わる所が多い。藤原博士のもっとも近いご発表、,『昭和日本語方言の記述』(三弥井書店,昭和48年)であるが、そこで博士は、櫛生方言の文アクセント傾向と語アクセント傾向とを対比考察していられる。これをさきの比喩をもって言えば、ある地域の雪の起伏に一定の傾向がみとめられるならば、地表の凸凹にも、なんらかの(ほぼ相即対応する)傾向がみとめられるはずである。この、傾向と傾向との対比的把握が、具体文アクセントの基本的理解を可能ならしめるということであろうと思う。大淀方言文アクセントを、このような対比の方法でみた場合には、前稿に述べたように、特色ある文アクセント傾向を説明しうる語アクセントの傾向は、明確にはみとめられなかったのである。もしいま、この事態をこのまま受けとめて解釈しようとすれば、文アクセント上のあの特色ある波立ちは、一種のあだ波のようなもので、傾向というにあたいせぬ微弱なもの、アクセントの基質をなすほどのものでない、ということになるのであろうか。つまり、当地の汎近畿的語アクセントは、当地の汎近畿的文アクセントの優勢に由来するものであって、問題の特異な文アクセントは、いわば偶発的をものにすぎないとすべきものなのであろうか。私の調査によれば、前稿に報告したような文アクセント傾向が、当方言の文アクセントの一特質傾向たりえているのは、明らかな事実と言わざるをえないのである。その後の調査によって知りえたところをここに補えば、大淀のと同似の文アクセント傾向は、南隣の村松(伊勢市村松町)にも見られ、いまのところ、ほぼこの二集落が、問題の文アクセントを特立させているようなのである。志摩は答志島の、鳥羽市桃取の文アクセントもまた、一種独得の文アクセントであることを、ここに思いあわせるならば、大淀方言における特異な文アクセントを、一特質傾向と認めてその存立事情を追求することは、意味あることとされようか。意外に根の深いものかもしれないのである。村松と桃取の文アクセントについては、いくつかの文アクセント例を本稿末尾に(補注)として掲げるにとどめ、くわしくは別の機会にゆする。In the last number, I reported some peculiar intonation patterns in Ise-Oizu dialect. Then, in this paper, I describe the definite patterns of pitch-accent are found in the same dialect.
著者
吉野 博 持田 灯 富永 禎秀 佐藤 威 苫米地 司 深澤 大輔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.風による雪の輸送・堆積現象の解明とその制御に係わる観測、風洞実験およびモデリングの調査建物の形状や想定している気象条件、測定項目などの観点から国内外で過去に行われた研究事例を分類した。また、既往の数値解析事例おける雪粒子のモデル化や乱流モデルについて比較検討した。2.雪面の熱収支、積雪時の市街地表面の熱的特性の変化に係わる観測およびモデリングの調査モデル化に有用な信頼性の高い測定例を収集するとともに、既往の数値モデルの精度、適用範囲を調査し、比較・検討した。3.雪の貯蔵技術に係わる観測、実験及びモデリングならびに雪エネルギー賦存量の予測モデルの調査既往の数値モデルの精度、適用範囲を調査し、比較・検討した。また、これらを高精度に予測するための水分収支モデル等の情報を収集した。さらに、融雪量の算定の基礎となる気象情報に関して、利用可能なデータ・ソースを調査した。4.既存の数値予測モデルの評価1.〜3.の調査結果に基づき、建築・都市空間における雪の飛散・堆積、積雪面の影響下の放射場の影響等を組み込んだ、積雪環境の高精度の数値解析手法を構築するための基礎的資料を整備した。5.数値解析技術の克雪・利雪施設の設計、雪国の居住環境デザインへの応用のための検討既往の克雪・利雪施設、屋根雪処理システム等の設計手法、運用実績を調査し、問題点を抽出した。そして、数値解析を設計プロセスに組み込んだ新たな積雪環境のデザイン手法を確立するために必要とされる開発項目を整理した。
著者
佐藤 修 大木 靖衛
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1、新潟県下の降水の酸性物質の状況:新潟大学積雪地域災害研究センターで行った降水の化学分析結果、新潟県衛生公害研究所の発表した資料を整理し、酸性物質の降下状況を把握した。新潟県の山間部には3〜5g/m^2の硫酸イオンと1〜2gの硝酸イオンが降下している。硫酸イオンは冬の降雪期に多い特徴がある。雪の中の酸性物質は積雪期の温暖な日に流出する。2、沢水・湧水・河川水の変化:沢水・湧水の調査は花崗岩地帯で過去に分析結果のある丹沢湖の周辺で行った。現段階では、沢水・湧水に酸性降下物の影響は見られなかった。新潟県下の沢水の連続観測の機器は現在雪の下で、データ解析は今後のこととなる。河川の水の分析結果を、小林純が行った20年以上前の河川の分析データと比較した。分析誤差範囲内で両者は一致し、新潟県下の河川の流域では平均的な意味では、酸性降下物の影響で化学風化が活発になったとは見えない。3、土壌の酸性化調査:花崗岩地帯の土壌のpHは5〜6の範囲で普通の酸性の褐色森林土壌よりpHが高い。花崗岩地帯の崩壊地の土壌のpHが過去に測定された例は見あたらない。比較の対象がないので、酸性化したかどうかは今回の調査からは結論を出すことができなかった。4、まとめ:チェコ、ポーランド、ドイツでは酸性雨の影響で土壌が荒廃し、崩壊が起こっていると報告されているが、わが国では今回の調査ではその証拠はつかめなかった。おそらくわが国では影響が見られないのは、降水量が多いこと、地形が急峻で水が長時間とどまらないこと等が影響している。