著者
小野 憲司 赤倉 康寛 神田 正美
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

2011年の東日本大震災によるサプライチェーンの寸断から我が国のモノづくり産業が全国規模、世界規模で操業停止した経験に鑑み本研究では、震災の影響が著しかった自動車産業サプライチェーンのモデル化と、災害がサプライチェーンに及ぼす負のインパクトの測定、サプライチェーンマネジメント(SCM)改善策の効果の評価を行った。SCM改善策の評価結果は、①部品在庫の積み増しの効果は低い、②部品調達は海外よりも国内への分散化が効果的、③災害によって生じたサプライチェーンの隘路に対する共同復旧支援の効果は高い等の結果が得られ、我が国の製造業全般の災害時SCMのあり方に示唆を与えるものとなった。
著者
福田 将義 大坪 倫代 徳山 理恵 山田 透子 村野 竜朗 加藤 知爾 井上 大 清水 寛路 小田柿 智之 岡宮 聡 村田 直樹 小倉 祐紀 竹縄 寛 芝 祐信
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.44-47, 2009-12-10 (Released:2013-07-29)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

内視鏡的大腸ポリープ切除術について,後出血の危険因子および後出血予防処置としてのクリッピングの有効性について検討を行った。2004年から2007年の4年間に,当院にて施行した1049病変について解析を行った。出血例は26病変に認められ,出血率は2.5%であった。病変部位,病変の大きさ,病変形態,切除方法,組織型,クリップ施行の有無について検討を行った。後出血の要因として,病変部位としては左側結腸,大きさは15mm以上,病変形態は広基性または10mm以上の有茎性,切除方法は分割切除,組織型は腺癌であった。クリッピングの有効性については,施行例・非施行例での背景が異なっており,有効性を示すためには施行規準を設けた前向き研究が必要と考えられた。
著者
都倉 信樹
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.3_20-3_25, 2005 (Released:2006-06-16)
参考文献数
2

JABEE has making efforts to set up an accreditation system for engineering education in Japan. This article tries to check the system as a business model. A new direction is proposed.
著者
小倉 正基 今枝 裕二 阿部 光 富田 正身 福田 卓民
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102095, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】足関節の可動性が低下することで立位姿勢のアライメント異常や歩行バランス低下、歩容の異常などが生じるといわれている。しかし身体機能の低下にともない歩行が困難となり、日常生活での起立や移乗に介助を要するような高齢者を対象とした足関節の可動性に関する報告は少ない。足関節の背屈制限は、起立や移乗の介助量増加や動作能力向上の阻害因子にもなり、引いては離床機会の減少につながると考えられ、自立歩行や立位が困難であっても可動性を維持する必要のある関節であると考える。今回、足関節の可動域が生活に与える影響を検討することを目的に、療養病床における高齢障害者の生活状況と足関節背屈制限の関係について調査した。【方法】対象は2012年8月に当院在院中の708名(男性:161名、女性:547名、平均年齢88.0歳)とした。生活状況は障害高齢者の日常生活自立度に準じ、A群(81名)、B群(328名)、C群(298名)の3群に分け(Jは該当者無し)、それぞれの左右足関節背屈可動域(膝関節屈曲時および伸展時)を測定し、その平均値を比較した。統計処理はt検定を用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】研究は院内で検討し承諾を受け、対象者またはその家族に研究の目的と方法を説明し同意を得た。【結果】膝屈曲時の足関節平均背屈角度は、A群は右16.7±8.1°/左16.2±8.2°、B群は9.4±9.7°/9.0±9.7°、C群は-6.1±18.2°/-6.0±18.3°であり、膝伸展時においてA群は右5.5±6.0°/左4.9±6.5°、B群は-0.7±8.7°/-0.3±8.6°、C群は-13.9±16.6°/-14.4±16.5°であった。足関節背屈角度は膝屈曲時および伸展時ともにA群とB群、B群とC群との比較において有意に減少していた。【考察】加齢にともない足関節背屈可動域は減少する傾向にあるとされているが、今回の調査では生活状況により3群に有意な差がみられ、A群に比べB・C群の足関節背屈制限が著明であった。B群は移動が車椅子主体であり、移乗動作を自立または介助により行なうものの、日中は座位中心で膝関節屈曲位、足関節底背屈0°前後の肢位で過ごす時間が長いと思われ、歩行のような連続した足関節底背屈運動の機会がないことによる足関節周囲筋の伸張性低下が考えられる。また、膝伸展時の平均背屈角度は0°を下回っており、移乗時に立位をとる際にも膝関節は完全伸展位にならず、二関節筋である腓腹筋が十分に伸張されていない場合が多いものと考えられる。また長時間の座位保持による影響から足関節周囲に浮腫がみられることも多く、足関節可動域制限の発生因子となっている可能性がある。C群は日中の臥床時間が長く、足関節は底屈位のまま保持されていることが多い。自動・他動での関節運動の機会が少なく、筋や腱の伸張性低下が生じやすい状況にあると考えられる。沖田らは弛緩位で不動化された骨格筋は伸張位で不動化された場合より短期間で筋長が短縮したと報告している。また不動の期間が長期化することにより骨格筋だけでなく、関節包や靱帯などにも器質的変化をきたすとされている。C群では-60°以上の背屈制限を呈する者もみられ、器質的変化が関節包や靱帯などに及んでいる可能性もあると考える。今回は横断的な調査であり、経時的な変化や効果的な介入については今後の課題である。B群はC群の予備軍と捉え、離床し車椅子に乗車するだけでは足関節の可動性は低下する可能性があるため、足関節周囲筋の収縮・弛緩を引き出しながらの立位練習による伸張性の維持、足関節自動運動やストレッチなどの積極的な介入が必要と考えられる。また対象者の能力を最大限に活かせる介助方法の指導により、日常生活動作で機能維持を図ることも重要である。当院ではC群の対象者でもリスクを考慮しながら可能な場合は立位練習を実施している。離床機会が減少し臥床傾向になると短期間で背屈制限が生じる可能性もあるため、常に身体状態を把握し、立位練習やストレッチなどで足関節の可動性維持を図る必要があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】今回の調査結果は、療養病床における足関節背屈制限の状況を生活状況別に示し、これからの検証と介入の必要性を示すことができたものと考える。理学療法の分野として今後は経時的な変化を追うこと、積極的な介入による効果判定を示すことが必要であると考える。
著者
國澤 洋介 高倉 保幸 國澤 佳恵 武井 圭一
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.8-11, 2014 (Released:2014-02-05)
参考文献数
7

臨床場面での気づきや疑問点を整理し,客観的に捉えて分析していく能力を高めることは,臨床家である我々理学療法士の責務である。症例検討は,この職責を全うするための手段として有用であり,日々の理学療法業務の中から意識的に実践していく必要がある。より有意義な症例検討を行い,理学療法士としてステップアップするためには,臨床活動で生じた興味や疑問にどのように着目していくのか,着目した症例を通して得られた知見をどのように整理するのか,より良い診療を実践していくための手段として臨床研究や症例検討をどのように提示し他者の意見を得るのかが重要と考える。
著者
吉田 省造 岡田 英志 土井 智章 中島 靖浩 鈴木 浩大 田中 卓 福田 哲也 北川 雄一郎 安田 立 水野 洋佑 宮﨑 渚 森下 健太郎 牛越 博昭 竹村 元三 白井 邦博 豊田 泉 小倉 真治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.129-135, 2015

症例は50歳代の男性, キノコ狩りに行きキノコを焼いて食べた翌日に下痢・嘔吐などの消化器症状を自覚し近医を受診. 血液検査にて肝逸脱酵素上昇を認め入院となった. 翌日の採血で肝逸脱酵素の著明な上昇 (AST 5,000台, ALT 5,000台) を認め, 当院に搬送となった. 問診によりドクツルタケ摂取による肝障害を疑った. 入院当日より肝性脳症を認め, 昏睡型急性肝不全と診断. 挿管・人工呼吸管理として, 肝不全治療と同時に毒素除去, 高分子除去を目的として急性血液浄化療法を行った. 入院5日後に肝性脳症は改善し呼吸状態は良好で抜管, 経過良好にて入院9日後に転院となった. ドクツルタケ中毒における血液浄化療法は否定的な意見が多いが, 今回は肝不全を呈したドクツルタケ中毒に対し, 血液浄化療法を行い救命し得た. ドクツルタケの中毒を疑った場合には, 早急な血液浄化療法が有効である可能性が高いと考えられた.
著者
木下(小室) 友香理 門倉 利守 数岡 孝幸 穂坂 賢 中田 久保 KOMURO Yukari KINOSHITA KADOKURA Toshimori KAZUOKA Takayuki HOSAKA Masaru NAKATA Hisayasu 東京農業大学短期大学部醸造学科 東京農業大学応用生物科学部醸造科学科 東京農業大学短期大学部醸造学科 東京農業大学短期大学部醸造学科 東京農業大学短期大学部醸造学科 Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Fermentation Science Faculty of Applied Bio-Science Tokyo University of Agriculture Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture Department of Brewing and Fermentation Junior College of Tokyo University of Agriculture
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.100-106,

花から分離した酵母(以下,花酵母)の分類学的性質を調べる目的で,生理学的試験と染色体DNA電気泳動を行った。また,各花酵母の醸造特性を知るため,清酒小仕込み試験を行ない,製成酒の一般成分と香気成分分析を行った。その結果,花酵母13株は,清酒酵母K-9株と同様に,メレジトースおよび硝酸塩を資化せず,クエン酸塩無添加のビタミン欠培地で増殖し,イーストサイジンに対する抵抗性を有した。TTC染色は赤色,アルシアンブルー染色は白色~淡青色であった。染色体DNA電気泳動パターンは,第VI染色体が長く,第III染色体と接近した清酒酵母K-9株と同じ泳動パターンを示した。また,高泡形成試験では全株が高泡を形成しなかったことより,花酵母13株は高泡を形成しない清酒酵母タイプであった。清酒小仕込み試験の結果,花酵母はカプロン酸エチル生成タイプ(ND-4株,AB-2株),酢酸イソアミル生成タイプ(BK-1株,MR-4株,SN-3株,GE-1株,KAF-2株,KS-3株,ST-4株,SUNF-5株),双方をバランスよく生成するタイプ(HNG-5株,NI-2株,CAR-1株)に大別できた。また,有機酸組成分析の結果,前報4)のAB-2株,KS-3株,MR-4株に加え,CAR-1株,GE-1株,KAF-2株,ST-4株,SUNF-5株による製成酒はリンゴ酸含有量が高いことが明らかとなった。花酵母による製成酒は吟醸香成分であるカプロン酸エチルおよび酢酸イソアミル生成量が多く,リンゴ酸の割合が高い有機酸組成を持つことから,多様化する消費者嗜好に対応する清酒開発を可能にすると思われる。
著者
倉石武四郎 [著]
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
1939
著者
柳澤 慧 高橋 陸 中村 文彦 住谷 陽輔 飯田 良 新田 明央 倉 千晴 戸口 侑 小島 遼人 藤吉 隆雄
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.145-154, 2015-12

記者発表による市民への情報伝達過程では,情報はおおむね研究者,広報担当者,ジャーナリスト,市民の順で伝わる.そこで,記者発表に関与する専門職と考えられる研究者,広報担当者,ジャーナリストの役割を考え,情報伝達過程における課題と解決策を博士後期課程1 年次の大学院生の視点から考察した.市民に研究成果を届ける記者発表をする理由は二つある.税金を原資として運営する研究の市民に対する説明と,「トランス−専門知」が関わる領域での社会の意思決定のための情 報提供である.ここで記者発表をめぐる課題は六つ挙げられるだろう.研究成果の間違った理解と伝搬,研究成果の強調,社会からの関心の研究成果以外への集中,研究者個人と組織の立場の相反,研究不正や倫理的問題の発覚,そして,市民・ジャーナリスト・科学者の態度の違いである.これらの課題の解決策はおおむね,それぞれの専門職としての役割の認識と倫理教育,情報のフィードバック回路の形成に大別できる.ここから,記者発表に関わる三者の役割の違いを認識したうえで, 規範と現実の食い違いは生じるとの前提でシステムの設計をするのが重要である.そして,その設計において大事なことは認識のずれを許容し吸収する仕組みの準備である.そのためには,バッファーとしての役割を担う中間的専門家が活動できる基盤が必要である.
著者
森 健太郎 松村 純 藤井 亮介 清水 砂希 宮地 諒 西 祐生 中野 希亮 米倉 佐恵 出口 美由樹 荒木 茂
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】我々は石川県で活動しているスポーツ選手を対象に身体機能チェック,セルフエクササイズの指導を平成25年4月より行っている。今年度からはGrayCookが考案したFunctional Movement Screen(以下FMS)を用い,評価した。FMSとは7つの動作パターンをスクリーニングすることにより,動きの制限や非対称性を特定し,ランク付けが可能となるもので,トレーニングを行う選手の障害リスクを予測するための指標となると提唱している。今回そのFMSで得られた結果について報告する。【方法】対象は,石川県で活動している実業団や高校部活動などの現役選手74名(平均19.5±6.5歳。男性47名,女性27名)であった。競技種目別人数はレスリング14名,ハンドボール11名,卓球7名,アルペンスキー7名,テニス6名,ソフトテニス6名,自転車競技6名,ソフトボール5名,フットサル3名,人力飛行機2名,その他水泳,バスケットボール,バレーボール,スキージャンプ,ダンス,マラソン,バドミントンが1名ずつであった。選手の運動パターンの質を評価するためFMSを実施した。FMSは選手に7つの動作をしてもらい,それぞれ0から3点で点数化する。採点基準として3点はFMSのテスト基準に沿った正しい動作パターンを行うことができる場合。2点は動作パターンを行うことができるが,代償や誤ったフォーム,アライメント不良が認められる場合。1点は動作パターンが不完全でFMSの基準に沿った動作ができない場合。ただし痛みがある場合はすべて0点となる。Gray Cookは不良なパターンがみられる1点以下の被験者は障害のリスクが高い可能性があると述べており,今回は3点と2点をリスク無し群,1点と0点をリスクあり群とした。7つの動作は,基礎的な動作パターンとして主に可動性を評価するショルダーモビリティリーチング,アクティブストレートレッグレイズの2種目,主に安定性を評価するトランクスタビリティプッシュアップ,ロータリースタビリティの2種目の計4種目を挙げており,さらに応用的動作パターンとしてディープスクワット,ハードルステップ,インラインランジの3種目を挙げている。【結果】結果①:7つの動作テストを通してリスクあり群は63名(85.1%)であり,そのうち痛みがあった選手は22名(29.7%)であった。結果②:7つの動作テストの内訳をみると,リスクあり群が最も多かったテストは,トランクスタビリティプッシュアップで40.5%。2番目はロータリースタビリティで37.8%。3番目はディープスクワットで31.1%。以下ショルダーモビリティリーチングは27.0%。ハードルステップは16.2%。アクティブストレートレッグレイズは12.2%。インラインランジは5.4%。の順であった。結果③:リスクあり群を動作テスト項目ごとにみていくと,基礎的な動作パターンの可動性の項目,安定性の項目,応用的動作パターンの項目の中では安定性の項目が62.2%で最も多かった。可動性の項目の中では,ショルダーモビリティリーチングでリスクあり群が最も多かった。結果④:基礎的な動作パターンの中ではアクティブストレートレッグレイズが応用動作パターンの中ではインラインランジで最もリスクなし群が多かった。【考察】結果①より,現在は診断名がついておらず,医療的介入を受けていないにもかかわらず,動作テストによって痛みが出る選手が29.7%おり,現役の選手でも痛みのある中,トレーニングを続けていることがわかった。さらに現在,痛みはないが将来的に障害を起こす可能性のある選手が55.4%いることがわかった。この選手たちはパフォーマンスに関しての指導は受けていたが動作の質への意識や,基本的な運動に関しては指導を受けていないため,理学療法士の個別の介入の必要性があると考えられる。結果②,③,④から体幹やコアの反射的な安定性が低下した選手が多かったことが考えられる。近年,コアエクササイズがよく推奨されているが,今回のスクリーニングでは点数が低かったテストでは肩甲帯の安定性も必要となるため肩甲帯,コア,骨盤を反射的に安定させながら動作を行う能力の低下も問題に繋がると考えられる。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場では筋力やスピードなどパフォーマンスの量的評価が重要視されているが,FMSは運動パターンの質を評価することにより障害のリスクを予測するものである。動作をスクリーニングすることにより,将来の障害のリスクの可能性がある選手を発見するための標準化されたテストとして有用であると考え,予防を目的とした理学療法を実施するための一助となり得るのではないかと思われる。
著者
吉田 雅行 荻野 和功 小倉 廣之
出版者
Japan Association of Breast Cancer Screening
雑誌
日本乳癌検診学会誌 = Journal of Japan Association of Breast Cancer Screening (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.223-229, 2013-07-20
参考文献数
2

浜松医師会は平成16年度にマンモグラフィ検診導入,精度管理の一環で毎年報告しているが,その成績と課題から,乳がん検診の医師会(地域医療)の役割を考察した。【対象と方法】従来の医師会型で初年度50歳以上・偶数年齢・視触診+MLO,2年目以降40歳代・二方向撮影を追加した。二次読影はマンモグラフィ講習会B以上2名(1名はA)の合議制とし,無料クーポン券は平成21年より開始した。結果より課題を明らかにし,医師会員のアンケート調査から医師会(地域医療)の役割を検討した。【結果と考察】受診者数は初年度3,145人,2年目6,525人,21年度は無料クーポン券で倍増した。受診率も平成20年度16.8%から無料クーポン券で30%へ上昇し,23年度37.9%だが50%には遠い。『検診に二人誘って50%(ぱー)』ポスターで受診者教育を展開している。要精検率は初年度10.1%と高いが,徐々に低下し5~6%前後を維持している。乳がん発見率は初年度0.45%,その後0.20~0.29%と概ね良好である。しかし,精検未受診率未把握率は平成21年度以降30%以上で,精度管理上問題である。医師会,行政,検診実施者間の協議会が必要である。さらなる受診率向上には,病診連携と患者の健康管理を担う"かかりつけ医"に,受診勧奨と患者家族の啓発が期待される。【結語】旧浜松市の乳がん検診の課題は高い精検未把握率と低い受診率であり,精度管理の協議会開催と医師会員の"かかりつけ医"としての受診勧奨に期待される。
著者
廣岡 知 山口 達也 渡部 利文 山本 順也 城代 邦宏 保田 尚俊 塚田 和彦 小池 克明 朝倉 俊弘
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.133, no.5, pp.98-106, 2017-05-01 (Released:2017-05-31)
参考文献数
12

In addition to hydrological characterization of water-sealed type underground rock caverns, their mechanical stability is constantly monitored by measuring several properties, such as earthquake-induced vibration, strain, and tilt. Among them, tilt measurement is the most accurate monitoring method for rock deformation because of the tiltmeter's high resolution of 10-9 rad, which enables the detection of minute deformations caused by earth tide, rock responses to earthquake, change in atmospheric pressure, and artificial disturbance by operation. This study aimed to correctly extract these responses from long-term tilt data measured by a high precision tiltmeter at the Kushikino station and clarify the mechanism of tilt change as a result of deformation of rock mass. Tilt changes due to a small change in the gas phase pressure at the top of the rock cavern, approximately 10 kPa pressure fluctuation, were analyzed and discussed. The gradient response due to the gas pressure change was extracted from the measurement data by BAYTAP-G, and its magnitude was identified as 2 to 8 nrad, which was almost the same tilt response magnitude observed at an issuance of stored crude oil. This tilt response to the increase in tank gas pressure was numerically confirmed to originate from minute elastic deformation of rock masses, by using finite element method. Because fluctuation of the gas phase pressure can be continuously monitored, the effectiveness of tilt measurement was proved as a minute strain sensor for deformation of the water-sealed type underground rock cavern.
著者
松本 遥子 山内 賢幸 小倉 加奈代 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.8, pp.1-8, 2009-07-09
参考文献数
4
被引用文献数
1

本稿では,それぞれに流速が異なる複数の時間流を持つチャットシステムを提案し,その初期的な試用結果について報告する.時間には,一方向に一定速度で流れる物理的なクロノス時間と,流速が一定ではない主観的で心理的なカイロス時間の 2 種類がある.従来のチャットシステムはクロノス時間のみを採り入れていたが,本研究ではカイロス時間も取り込み,人の忘却作用による議論内容の自動的な精練と類似した機能を有する,新たなチャットシステムを構築する.冗談などの議論の本筋とは関係ない逸脱発言は高速に時間が経過する時間流上で発言し,議論の本筋と密接に関連する発言は低速に時間が経過する時間流上で発言する.これにより,タイムリーかつ気軽に逸脱発言を発言でき,しかもこれらの逸脱発言はすみやかに現在のログのビュー内から消えるため,議論の本筋に沿った発言の可読性が向上する.初期的な試用実験の結果,ユーザは流速の違いを自然に受け入れ,速い時間流上で逸脱発言をしつつ,遅い時間流上で議論の本筋に沿った発言をなし,期待通りに精練された議論ログが得られることが示された.We propose a novel chat system that has multiple streams of time whose velocities are different, and demonstrate a pilot study and its results. It is said that there are two types of time: Chronos time and Kairos time. Chronos time is physical time that passes monotonically and constantly, while Kairos time is psychological time whose speed changes. Although the ordinary chat systems have been based only on Chronos time, we attempt to incorporate Kairos time into the chat system so as to obtain an automatic refinement function of records of a discussion deriving from a human's forgetting ability. A user submits a digression like a joke on a fast stream of time, while he/she submits an important opinion on a slow one. The utterances on the fast stream quickly go out from the view of the chat log (forgotten), while those on the slow stream remain within the view for a while. As a result, he/she can casually and timely express any tiny questions and jokes, and the readability of the log of the main topic is improved. From results of a pilot study, we found that users naturally accepted the multiple different streams of time. They submitted digressions on the fast stream, while they submitted the important opinions on the slow stream. As a result, a refined chat log can be obtained as expected.
著者
久保田 清 張 戈 羽倉 義雄
出版者
広島大学生物生産学部
雑誌
生物生産学研究 (ISSN:1341691X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.135-143, 1993-12

各種食品のクッキング、殺菌など食品を各種変換、処理する装置を設計し、制御化を行っていくためには、食品のクッキングなど変換、処理する非等温実験を行って、得られる実験データからアレニウス式における速度パラメータを設定していくことが必要になることがある。これまでにジャガイモのクッキング速度式の設定を例として、非線形最小二乗法を用いる方法(久保田ほか, 1981, 1988)と、簡便な手法を用いる方法(岡崎ほか, 1991, 1992, 張ほか, 1993-B)とを用いる研究を行ってきた。本研究では、これまでに示してきた簡便な手法について比較検討を行った。本研究で提案した改良したクッキング値を用いる方法は、簡便な事法の一方法としてクッキング値を用いるこれまでに利用されてきている方法よりも有用であった。岡崎により提案された修正クッキング時間を用いる方法(岡崎ほか, 1992)も有用な方法であった。In order to design and to control various food transforming apparatuses such as for the chemical reactions, cooking, sterilization and so on of food materials, it is necessary to determine the Arrhenius' rate parameters from the non-isothermal experimental data of cooking and so on of food. In previous papers, we have studied the cooking rate equations of potato by various methods such as non-linear least square method (KUBOTA et al., 1981, 1988) and simple methods (OKAZAKI et al., 1991, 1992, ZHANG et al., 1993-B). In this paper, we investigated the determination of the rate parameters in non-isothermal processes by using simple methods proposed in previous papers. The modifyed cook value method in this paper was useful for finding the rate parameters in cooking rate equations. The corrected cooking time method (OKAZAKI et al., 1992) was useful too as simple method.
著者
緑川 知子 登倉 尋実
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.421-427, 1992-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

暑熱放射熱存在下での帽子の防暑効果について明らかにし, それが温熱生理反応に与える影響を調べることを目的に, 環境温28℃においてコントロール値をとったのちに, 人工気候室の環境温を約15分かけて35℃に上昇させるとともに, 400Wの陽光ランプ2個を用いて, 被験者の後ろ上方50cmの位置から, ランプが後頭部表面に直角にあたるように (Fig.1参照) 60分照射した.これと同時に着帽時には着帽した、鼓膜温・直腸温・皮膚温・心拍数・発汗速度・帽子表面温度・衣服内気候を測定し, 着帽時と無帽時について比較した.得られた主な知見は次のとおりである.(1) 鼓膜温ならびに直腸温のレベルと上昇度は, 着帽時に比べ無帽時に有意に高くなった.(2) 頭部表面温は無帽時には着帽時に比べ, 上昇速度が速く有意に高いレベルになった.(3) 着帽時に比して無帽時に, 発汗が速く始まり発汗量も多かった.熱が頭部に流入した結果, 帽子表面温と頭部表面温が上昇した (Fig.3) が, 着帽により熱の流入を防ぐ効果が現れて, そのレベルは着帽時に低い値になった.その効果は, 鼓膜温, 直腸温にも同様の変化をもたらし, 着帽時においてこれらの値は低くなった (Fig.2).無帽時の鼓膜温が37℃にほぼ達したとき (15分目), 鼓膜温のレベルに有意差が現れたとともに発汗が認められた.発汗開始は, 無帽時に15.3±2.3分で, 着帽時の22.2±3.4分より有意に速かった (Fig.4).鼓膜温が37℃に上昇すると, いずれの条件においても発汗が観察された.そして, 無帽時に鼓膜温のレベルが高かったために, 発汗中枢の活動が高くなり, 発汗量はすべての被験者において無帽時に多い値が得られた (Fig.4).本実験において無帽時には熱流入が多かったが, これに対して放射, 対流, 伝導による熱放散だけで熱平衡を保つことができなくなったために, 蒸発による熱放散を増加させるために発汗が生じて蒸発による熱放散を行った.発汗が速く始まって蒸発による熱放散が増加したので直腸温に差が現れるのが遅れた (25分目) と考えられる.鼓膜温のレベルと上昇度が着帽時に比べ無帽時に有意に高くなったのは, 無帽時に頭部表面温の上昇速度が速くレベルが有意に高く保たれたことと関係している.放射熱が後頭部上方50cmから加えられたために頭部表面温が上昇し, 上矢状静脈洞・横静脈洞・海綿静脈洞から流入した静脈血が加温されて, 鼓室近くを上行する内頸動脈血が内頸静脈血液と対向流熱交換により加温されたために, 鼓膜温が上昇したと考察した.