著者
高橋 純 高坂 貴宏 前田 喜和 森谷 和浩 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.317-327, 2014

韓国の公立小学校の1人1台の情報端末の導入初期段階において,1名の教員の3時間分の算数科の授業を対象に,活用されたICTの種類や時間,授業過程や授業形態の特徴の検討を行った.その結果,1)教員は,93%の授業時間でICTを活用しており,最も活用時間の長いハードウェアは大型提示装置であり,ソフトウェアは授業支援システム(81%)であった.2)教員が授業支援システムで最も活用した機能は,ペン描画と児童のデジタルノート一覧と提示であり,限られた機能が多用されていた.3)児童は,57%の授業時間でタブレットPCのみを活用しており,最も活用時間の長いソフトウェアは授業支援システム(90%)であった.4)授業過程は,導入,展開,まとめといった我が国でも典型的にみられるものであった.展開では2〜4回の課題解決学習が繰り返し行われていた.5)授業形態では,一斉指導が最も長く(58%),次いで個別学習(29%)であった.
著者
余田 成男 林 祥介 伊賀 啓太 石岡 圭一 田中 博 冨川 喜弘 中野 英之 前島 康光
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.405-412, 2006-05-31
被引用文献数
1

AGUは毎年何件かの特定のテーマについて50〜100人規模のチャップマン会議を各地で開催している.今回,Robinson(Univ. Illinois)と余田(京都大学)がコンビーナーとなり,2006年1月9〜12日,ジョージア州サバンナで「地球流体中のジェットと環状構造」に関するチャップマン会議を,KAGI21,NSFとの共催で開催した(第1図に会議のポスター[figure]).Allison(NASA/GISS),Baldwin(NWRA),林(北海道大学),Haynes(Univ. Cambridge),Huang(LDEO),Rhines(Univ. Washington),Thompson(Colorado State Univ.),Vallis(Princeton Univ.)の8氏をプログラム委員に招いて,2年以上をかけて準備してきた会議である.日米をはじめ13か国から70余名の参加者があり,(A)大気中のジェット,(B)海洋中のジェット,(C)大気の環状変動,(D)惑星大気のジェットと環状流,(E)地球流体力学的にみたジェット,の5つの広範だが関連深い話題について,レビュー講演(6件),招待講演(22件),および,ポスター発表(40余件)を行った.レビュー講演は,各分野で主導的な役割を果たしてきたMcIntyre(Univ. Cambridge),Lee(Pennsylvania State Univ.),Marshall(MIT),Wallace(Univ. Washington),Allison,Rhinesの6氏にお願いした.この会議のハイライトの1つは,太平洋域の高分解能数値シミュレーション(Nakano and Hasumi,2005)で予言的に見出され,観測データで発見された海洋中の多重東西ジェット構造である.木星型惑星に見られる多重の環状流との類似性や,回転球面上の2次元乱流中におけるジェット形成メカニズムとの関連など,幅広い分野の研究者を巻き込んで熱い議論がなされた.また,傾圧擾乱による対流圏界面亜熱帯ジェットの維持過程が南極周極流のそれと力学的に相似な現象と認識しうる(基本場の傾圧性が南北加熱差によって維持されるか,海面での摩擦応力によって維持されるか,の違いはあるが)という話題も,地球流体力学的普遍性を具体的に示す好例であった.さらに,周極ジェット気流の時間変動が特徴的に環状パターンを示すという認識が,環状"mode"であるかどうかは措いても,天候の延長予報や今世紀中の気候変化予測などにも役立ちうる可能性が指摘され,実用的応用的な興味も喚起した.この機会に,KAGI21で開発した地球流体力学計算機実験集(Yoden et al., 2005)のCDを参加者全員に配布した.これは,地球流体力学の基本的な数値実験演習問題をパソコンでインタラクティブに実行し,計算結果のアニメーションを見ることができるソフトウェアである.会議終了後すでにいくつかの好意的な反応を得ており,希望者には無償で配布中である.サバンナは米国南部の観光小都市であり,会場となったホテルの近くにも昼食・夕食をみんなで食べられるレストランが多くあった.気のあった仲間同士で出かけてゆっくりと科学的な議論を続けたり,また,それぞれの近況情報を交わしたりできた.最終日のパーティーでは,McIntyre氏が飛び入りでPV song(ビートルズの"Let It Be"の替え歌)を歌い,皆の喝采を浴びた.英国あたりでは, IPVといっていた頃から歌われてきた替え歌のようである.今回の会議後,林氏が火付け役,McIntyre氏が先導役(掻き混ぜ係?)となって歌詞に関するメールのやり取りが続いた.原作のHall(CNRS),Thuburn(Univ. Exeter),さらにはHoskins(Univ. Reading),Wallace,Palmer(ECMWF),Emanuel(MIT)氏らビッグネームも加わって盛り上がり,その統一版が完成した.第2図[figure]に歌詞を掲載するので,PVファンは味わっていただきたい.http://www.lthe.hmg.inpg.fr/~hall/pvsong/pvsong.shtmlには,Hall氏の演奏もある.次節以降は,プログラム委員の林氏,および,参加者有志(アイウエオ順)の報告である.
著者
前田 強 松島 寿冶 岡本 英司 奥村 冶 飯野 聖一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ
巻号頁・発行日
vol.95, no.526, pp.119-124, 1996-02-21
被引用文献数
1

カラーフィルタを備えた液晶パネルをMIM(Metal-Insulator-Metal)アクティブマトリクス方式で駆動することを前提に、高画質で表示色数の多い反射型カラー液晶ディスプレイを開発した。本報告では、液晶モード、下側ガラス基板による視差の影響、カラーフィルタ特性、カラーフィルタ配置、反射板特性等について検討した結果を述べる。
著者
仲里 到 倉科 巧 前田 伸悟 木村 雅巳 夏目 隆典 武田 尊徳 中村 有希 竹中 良孝 野口 千春 海田 長計
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.134, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 当院では、理学療法標準プログラムを作成しH21年4月より運用している。理学療法標準プログラムとは、詳細な理学療法プログラムを組み込み、フローチャート・ステップアップ方式を導入した治療プログラムである。当院の特徴として毎年10名以上の新人セラピストが入職している。そこで、経験年数を問わず、提供する理学療法にばらつきが出ず、一定の質を保った理学療法を提供する事を目的に作成された。この理学療法標準プログラムの効果について検証を行った。 【対象と方法】 対象は、H19年4月からH22年12月までの3年間に当院整形外科に入院し、人工股関節全置換術を施行、理学療法介入があった症例のうち、後方視的にデータ収集が可能であり、創傷治癒に関わる術後感染や合併症のある症例は除外した70症例とした。方法は、群間分けを理学療法標準プログラム導入前の症例(以下A群)、50症例51股(男性14名・女性37名、年齢65.3±9.7歳)、理学療法標準プログラム導入後の症例(以下B群)、19例19股(男性6名・女性13名、年齢69.9±9.2歳)とした。入院前基本情報は、年齢、BMIとした。治療効果のアウトカムをT-cane歩行150m獲得までの日数(以下杖歩行獲得期間)、在院日数として、当院における理学療法標準プログラムの効果を検証した。統計処理は、R-2.8.1を用いてマン・ホイットニーのU検定を使用し群間比較を行なった。危険率は5%及び1%とした。なお、当院の倫理委員会より承認を受け実施した。 【結果】 入院前の基本情報としてA群とB群のBMI、年齢に有意差を認めなかった(p>0.05)。杖歩行獲得期間の平均はA群21.3±10.6日、B群10.6±3.0日で有意差を認めた(p<0.01)。在院日数の平均はA群34.2±10.1日、B群27.0±4.3日で有意差を認めた(p<0.01)。 【考察】 B群の杖歩行獲得期間と在院日数は短縮した。理学療法標準プログラムを導入する事で、患者個人の機能的、能力的な評価を着実に行い、期間ごとのステップアップ基準を設けることでリハビリの進行状況が確認できる。そのため、遅延した場合は、再評価を行い適切な治療を選択することで機能、能力が向上し杖歩行獲得期間、在院日数が短縮した。これらの結果より、当院における理学療法標準プログラムは一定の効果が得られたと言える。今後の課題として、経験年数が浅いセラピストとそうでないセラピストで杖歩行獲得期間や在院日数の短縮に有意差があるか検証していく。
著者
成瀬 一明 前田 由美 太細 孝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.15, pp.27-34, 2002-02-16
被引用文献数
3

携帯電話を利用したモバイルインターネットの爆発的な普及により全人口の40%、PCを上回る5000万人ものインターネット利用層が形成された.本研究では2001年10月インターネット上でアンケートを行い、幅広い年齢層を対象に通話/メール/Webなどの利用状況やECサービスの利用実態、新サービスの利用意向などのデータを収集し分析した。調査の結果、携帯電話によるオンライン有料情報の利用経験は3割を超えモバイルインターネットサービスとして定着していること、逆に通信販売などショッピングの利用経験はPCインターネット利用者の10分の1以下に留まっていること、などがわかった。さらに公共サービス適用への期待、支払いのトラブルや個人情報保護など、モバイルECの普及に向けて解決すべき課題を明らかにした.As a result of the explosive growth of the mobile Internet in Japan, approximately 50 million people, or 40% of the population, are considered recently accessing the Internet via their cellular phones. This rate exceeds that of those who access the Internet with their PCs. In October 2001, we conducted an online/Internet questionnaire for various age groupes to collect data concerning the cellular phone usage including the primary way of use (for calls, e-mail, or Web accesses), the use of E-Commerce services, and the needs for new services. The results of this questionnaire survey revealed that 30% of the cellular phone users had experiences in purchasing online information service have been established as mobile Internet services. On the other hand, the survey suggested that only a small number of cellular phone users used E-Commerce services such as shopping products: less than 10% of the PC users who purchased products via internet. In addition to the expectation for public services, the survey revealed that such problems as methods of payment, security of personal infomation, had to be solved for a further development of the mobile E-Commerce.
著者
前山 史朗
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.58-65, 2004-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2
著者
丸田 栄一 但馬 重俊 廣谷 芳彦 前田 義美 西井 諭司 東 敏夫 山路 昭 紀氏 汎恵 平岡 栄一 三牧 孝至 田川 哲三 藪内 百治
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.398-402, 1985-10-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
15

Phenytoin (PHT) fine granule, which has the same bioavailability as the tablet, has recently been marketed. We projected a change of PHT dosage form from usual powder to fine granule. In view of the fact that 97% of PHT products prescribed and marketed are available in fine granules, 50% PHT preparations were produced in hospital pharmacy. 5 kinds of preparations using various lactoses as diluents were prepared and tested for their quality. Among them, the preparation from Aleviatin fine granule passing through a 42-mesh sieve and EFC lactose showed the best results in the mixing property and various sense tests. The change to this dosage form and its bioavailability tests were carried out by a cooperation of doctors and pharmacists. Serum PHT levels of all patients, assayed by EMIT method, showed a 20% to 30% increase after the administration of the new preparation (50% PHT fine granule with EFC lactose).
著者
渡邊 実 佐野 健太郎 高前田 伸也 三好 健文 中條 拓伯
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J100-B, no.1, pp.1-10, 2017-01-01

近年,FPGAは家電製品,自動車,そして宇宙システムと幅広い用途に使用されている.しかし,2000年代前半まで,FPGAはASICと比較して性能が低く,試作,テスト,研究用途に用いられただけで,量産品に対してはコストあたりの性能に秀でたASICが多用されてきた.これが変わるのが2000年代後半であり,FPGAは最先端のプロセスが利用できる数少ない集積回路の一つとなり,高性能な製品を生み出す主役の座に躍り出た.その代表的なものの一つにFPGAを利用したハードウェア・アクセラレータがあり,その有効性については,MicrosoftがBing検索に用いるデータセンターに対してFPGAを用いたサーバーを開発したり,Intel社がXeonプロセッサにFPGAを実装する等,もはや疑う余地がなくなったと言える.そして今日,FPGAベンダーは開発に多大な工数を要したハードウェア記述言語(HDL)の代わりに,C++からFPGAへの回路実装が可能な汎用的な高位合成ツールの提供を開始している.このような皆高位合成ツール時代のFPGA開発において,各企業が他社との優位性を確保するためには,これら万人向けに作られた汎用高位合成ツールやベンダーから提供されるHDL開発環境等を活用するだけでなく,汎用ツールの弱点を補完でき,より高性能な製品をより少ない工数で開発できる特定用途向けのツール群が必要になる.本論文では既に広く有効性が認知された汎用的な高位合成ツールではなく,まだ認知度が低いが日本で独自に開発が進められる「日の丸」ツール群を紹介する.
著者
前田 健
出版者
神戸大学法学部
雑誌
神戸法学雑誌 = Kobe law journal (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.1-42, 2016-09
著者
古木 春美 水足 久美子 前川 嘉洋 野上 玲子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.847, 1992 (Released:2014-08-12)

既往歴として肝硬変,糖尿病,及びアルコール依存症を有する,55歳男子の両下腿に生じた,Aeromonas sobriaによる壊死性筋膜炎の1例を経験した.発症前に生食した魚介類からの経口感染の可能性が考えられた.
著者
河野 愛史 浦辺 幸夫 前田 慶明 笹代 純平 平田 和彦 木村 浩彰 越智 光夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101040-48101040, 2013

【はじめに、目的】 膝関節の靭帯損傷はスポーツで頻発する外傷のひとつであり,なかでも膝前十字靭帯(以下,ACL)損傷は発生頻度が高い.治療には靭帯再建術の選択が一般的で,術後は関節可動域の改善や筋力増強などの理学療法が必要になる.筋力増強の効果判定のひとつとして大腿周径が用いられるが,臨床では大腿周径の回復と筋力の回復が一致しない症例を経験する.一般に,四肢周径は筋や骨の発達状態の把握に役立ち,筋力と有意な相関があるとされ(渕上ら,1990),筋力の発揮には筋量などの筋的要因や運動単位の動員などの神経的要因が影響し,筋力増強はそれらのいずれか,または両者の変容によるものとされる(後藤,2007).本研究の目的は,ACL再建術後の筋力の回復に筋量の回復がどの程度影響するのかを大腿周径と筋力を測定することで検討し,かつそれらを測定する意義を明確にすることである.【方法】 広島大学病院にてACL再建術(STG法)を受け,術後12ヶ月以上経過した初回受傷患者106名(男性50名:平均27.9±11.3歳,女性56名:平均24.8±11.2歳)を対象とした.大腿周径は膝蓋骨上縁から5,10,15,20cmを術後6,12ヶ月時に測定し,非術側に対する術側の割合(以下,患健比)を求めた.筋力測定はBIODEX System3(BIODEX社)を用いて,術後6,12ヶ月時に60°/s,180°/sの角速度での膝関節伸展,屈曲筋力を測定し,患健比を求めた.統計処理は術後6,12ヶ月の各時期での大腿周径と筋力の関係をPearsonの相関分析を用いて検討し,危険率は5 %未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座倫理委員会,広島大学疫学研究に関する規則に基づき実施した.対象には本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た.【結果】 大腿周径の患健比は,術後6,12ヶ月で,男性は5cmで97.1%,98.1%,10cmで95.9%,96.9%,15cmで95.7%,96.9%,20cmで96.4%,96.9%,女性は5cmで97.2%,98.2%,10cmで96.4%,96.4%,15cmで96.3%,96.6%,20cmで96.5%,97.6%であった.筋力の患健比は,術後6,12ヶ月で,男性は60°/sでの伸展筋力は67.2%,77.1%,屈曲筋力は80.9%,83.7%,180°/sでの伸展筋力は75.7%,81.6%,屈曲筋力は85.3%,86.5%であった.女性は60°/sでの伸展筋力は69.1%,82.6%,屈曲筋力は84.3%,89.8%,180°/sでの伸展筋力は77.5%,86.2%,屈曲筋力は87.8%,92.6%であった.大腿周径の患健比と筋力の患健比は,術後6ヶ月で,男性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,60°/s,180°/sでの屈曲筋力と周径20cm,女性は180°/sでの伸展,屈曲筋力と周径20cmとに有意な正の相関を示した(r=0.29~0.48).術後12ヶ月で,男性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,女性は60°/s,180°/sでの伸展筋力と周径5,10,15,20cmそれぞれと,60°/s,180°/sでの屈曲筋力と周径5cmとに有意な正の相関を示した(r=0.28~0.45).【考察】 男性は術後6,12ヶ月,女性は術後12ヶ月で大腿周径の患健比と膝伸展筋力の患健比の間に有意な相関を示したことから,膝伸展筋力の回復に大腿周径すなわち大腿部の筋量の回復が影響し,術後12ヶ月ではその影響が大きいと考える.しかし,女性は術後6ヶ月で大腿周径の患健比と60°/sでの膝伸展筋力の患健比の間に有意な相関を示さなかった.これは,女性はもともと男性に比べて大腿部の筋量が少ないため(Abeら,2003),筋量が筋力に反映されにくいことや,術後6ヶ月は筋量の回復が不十分で神経的要因の回復により筋力が回復したことなどの可能性が考えられる.以上より,ACL再建術後に大腿周径および膝伸展筋力を測定することで,筋力の回復のどの程度が筋量の回復によるものかを評価でき,回復状況を把握することでリハビリテーションプログラムの再考につながる.また術後12ヶ月では筋量が筋力にある程度反映しているため,大腿周径がスポーツ復帰の指標のひとつとして有用である可能性が示唆されたが,例外もありこのような症例には注意が必要である.【理学療法学研究としての意義】 ACL再建術を受けたスポーツ選手のスポーツ復帰時期を決定するために筋力の回復は重要で,男性は術後6,12ヶ月と大腿周径および筋力が順調に回復する傾向にあるが,女性は各時期での回復状況に特に注意し運動療法を行うべきである.
著者
室谷 直子 前川 久男
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.51-59, 2005-03

本研究では、読み障害児においてワーキングメモリ(WM)と読みプロセスとの関連性を明らかにすることを目的とした。読み障害児10名、生活年齢対照群26名、読みレベル対照群20名にWM課題としてリーディングスパンテスト(RST)とリスニングスパンテスト(LST)、および5つの下位項目から成る読み検査を実施し、各々の相関係数を算出した。その結果、両対照群においては各々RSTとLSTとが有意な相関を示した項目はほぼ同じであったのに対し、読み障害児ではRSTは文理解と、LSTは推論と有意な相関を示した。このことから、健常児ではWM課題の実施手続きの違いが読みとの関係性にあまり影響しないのに対し、読み障害児では能動的な音読を伴う条件(RST)ではWMを介して統語的な処理が促進され、受動的な聞き事態(LST)ではWMを介して推論といった意味内容の統合・調整の関わる処理が促進される可能性が示唆された。
著者
飯塚 博幸 安藤 英由樹 前田 太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.432, pp.15-18, 2012-02-02

本稿では自己と他者の違いに焦点を当てる.動作を行っている主体が自分であるという感覚を運動主体感と呼ぶが,この運動主体感が視覚と触覚と運動の感覚の統合においてどのように形成されているのかを明らかにすることを目的としている.この問題を扱うに当たり,他者にくすぐられるとくすぐったいが,自分で自分をくすぐることはできないことを利用する.実験では,視覚刺激を操作することで自分でくすぐっているにも関わらず,くすぐったくなることを示し,運動主体感について議論する.
著者
松本 隆之 北川 貴士 木村 伸吾 仙波 靖子 岡本 浩明 庄野 宏 奥原 誠 榊 純一郎 近藤 忍 太田 格 前田 訓次 新田 朗 溝口 雅彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-49, 2013-07-15

メバチThunnus obesusおよびキハダThunnus albacaresは三大洋の熱帯域を中心に温帯域にかけて広く分布し,日本をはじめとする各国により漁獲され,マグロ属魚類の中でもっとも多獲さる重要種である。大型魚,特にメバチは主としてはえなわ漁業で,小型魚はまき網,竿釣り等の漁業で漁獲される。日本沿岸においては,小型の竿釣り,曳縄等の漁業でも漁獲されており,それらの漁業にとっても重要な魚種である。しかしながら,これら2種については資源の減少もしくは低水準での推移が見られ,その動向には注視する必要があり,また,資源学的研究の強化,およびより精度の高い資源評価が望まれる。そのためには,移動,遊泳行動等の生物学的パラメーターのより詳細な解明も必要である。