著者
菅原 敬 中村 文子 神林 真理 星 秀章 三上 美代子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.23-31, 1994-09-30
被引用文献数
2

エゾカワラナデシコ(ナデシコ科)には両性花をつける株に混じって雌花のみをつける株が見られることが知られている。しかし, このような雌雄性の分化(雌性両全性異株性)にともなって, この植物の両性花と雌花との間で花の形態や開花習性, 送粉や交配にかかわる特性にどのような差異が生じているのか, また野外での種子や果実の形成, 花粉媒介者はどのようなものか, などについてはほとんど知られていない。そこで, 性型の異なる二つの花の基本的特性を明らかし, 野外での送粉や繁殖の様子を探ることを目的に, 青森県内の2つの集団を用いて調査を進めてきた。両性花と雌花との間には, 花の付属器官(花弁やがくなど)における大きさの違いが認められるが, 開花習性の上でもいくつかの興味深い違いが認められた。その一つは, 花柱発達時期(雌性期)のずれである。雌花では, 開花時にすでに花柱を高く伸ばして柱頭組織を発達させ, 受粉可能な状態にあるが, 両性花では雌性期が開花から2,3日後であった。もう一つは, 開花期間における雌性期の長さで, 雌花では両性花よりもかなり長い雌性期をもっていることが明らかになった。これらは, 雌花の受粉の機会を高めているように思われる。しかし, 野外での果実あたりの種子の生産数は必ずしも両性花より高くなく, 同様な性型を示す他の植物とはやや異なる状況であった。
著者
武田 麻由子 相原 敬次
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.107-117, 2007-03-10
被引用文献数
7

丹沢山地の大気中のオゾンがブナ(Fagus crenata)に及ぼす影響を明らかにするため,ブナ林衰退地に近接する西丹沢犬越路隨道脇(標高920m)において,ブナ苗を用いたオープントップチャンバー法による野外実験を2002〜2004年に実施した。活性炭フィルターでオゾンを除去した浄化空気を導入した浄化チャンバー(平均オゾン濃度0.011ppm)及び現地の環境大気を導入した環境大気チャンバー(平均オゾン濃度0.046ppm)に2年生の丹沢産ブナ苗を移植し,3成長期間にわたって育成することにより,葉のクロロフィル含量(SPAD値),光化学系IIの最大光量子収率(Fv/Fm),樹高,根元直径,葉数,冬芽数,乾燥重量に対するオゾンの影響を検討した。オゾンにより,SPAD値は2成長期目の秋以降,3成長期目は全般にわたって有意に低下し, Fv/Fmは3成長期目の秋以降有意に低下した。樹高は3成長期目の秋以降,根元直径は3成長期目の夏以降有意に減少した。全乾燥重量は,3年間の累積的なオゾン曝露(6ヶ月間のAOT40が合計で88.7ppm・h)により浄化チャンバーよりも61.3%低下した。また,オゾンによる早期落葉が観察された。環境大気チャンバー内で育成したブナ苗の冬芽数は3成長期目終了時に有意に減少し,本実験を継続していれば、次年度以降にはさらに生長が抑制される可能性が示された。本実験の結果より,丹沢山地の大気中のオゾンがブナの生長生理に阻害的に働いていることが明らかになった。
著者
俵原 敬
出版者
浜松医科大学
巻号頁・発行日
1993-11-05
被引用文献数
2

浜松医科大学学位論文 医博論第158号(平成05年11月05日)
著者
田中 剛 川本 真一 上原 敬太郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.255, pp.91-96, 2011-10-14
参考文献数
14

業務システムのコスト削減や柔軟性向上のため,クラウドコンピューティングの本格的利用が加速しているが,今後さらなる普及に向けて,よりセキュアなサービスの提供と低コスト化が必要である.多数のテナント企業をホストするクラウドにおいてセキュリティを高めるには,テナント間の分離性の保障が重要である.また,低コスト化に向けては,少ない機器で多くの企業をホストしつつ,テナントの負荷変動に対応してリソース割り当てを動的に変更する動的高効率運用と,自動化による運用管理コストの削減が必要である,本稿では,テナント間の分離性保障,動的高効率運用,および運用管理コスト削減の三つの課題を解決する統合運用管理技術を提案する.
著者
平原 敬三 安藤 直子 松石 哲郎 鈴木 信夫 寺尾 俊彦 倉田 宗司
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
薬学雑誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.108, no.9, pp.p860-866, 1988-09

The addition of sodium oleate to antithrombin III (ATIII) produced complexes of ATIII and oleic acid by varying the acid concentration. During immunoelectrophoresis, ATIII shifted to the anode in the presence of sodium oleate. The reactivity of ATIII with anti human ATIII serum lowered as the sodium oleate level increased. However the reactivity with antibody obtained by immunization of rabbits with the mixture of sodium oleate and ATIII, was not lost on the immunoelectrophoresis. In acrylamide gel electrophoresis, ATIII separated into 6 bands with an increase in sodium oleate. The binding ratio of ATIII to heparin-Sepharose decresed in the presence of sodium oleate. In acrylamide gel isoelectrofocusing, the subtypes of ATIII having pI 5 showed high affinity to oleic acid. These high affinity subtypes also showed high affinity to heparin and thrombin. In fibrinogen agarose electrophoresis, ATIII lost its antithrombin activity depending on the increase of sodium oleate. By the determination of free fatty acids (FFA) in ATIII purified from normal plasma, we found that FFA would bind to ATIII in the normal plasma. Scatchard plot analysis indicated 7.6 binding sites of oleic acid per ATIII molecule. The results suggested that ATIII lost its activity by conformational change or interference in the thrombin binding site, and that the subtype of ATIII having pI 5 could be a significant carrier of plasma FFA.
著者
堀 貞喜 石田 瑞穂 青井 真 井上 公 大久保 正 岡田 義光 小原 一成 笠原 敬司 木村 尚紀 熊谷 博之 汐見 勝彦 関口 渉次 根岸 弘明 野口 伸一 松本 拓己 山水 史生 藤原 広行 功刀 卓 浅野 陽一 関根 秀太郎 廣瀬 仁 松原 誠 安逹 繁樹 伊藤 喜宏 針生 義勝 松林 弘智 松村 稔 宮川 幸治 山品 匡史 坂無 雅子 雷 楓 伊東 明彦 岩田 知孝 ト部 卓 川勝 均 木下 繁夫 工藤 一嘉 纐纈 一起 佐藤 春夫 佐藤 比呂志 武井 恵雄 中尾 茂 平田 直 平原 和朗 堀家 正則 松澤 暢 山北 聡 綿田 辰吾 山野 誠
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所年報 (ISSN:09186441)
巻号頁・発行日
vol.15, pp."I-12"-"I-16", 2004-09-06

地震調査研究推進本部の総合基本施策(「地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策(平成11年4月23日)」)、及び調査観測計画(「地震に関する基盤的調査観測計画(平成9年8月29日)」、「地震に関する基盤的調査観測計画の見直しと重点的な調査観測体制の整備(平成13年8月28日)」、「地震に関する基盤的調査観測等の結果の流通・公開について(平成14年8月26日)」)等に基づき、高感度・広帯域地震観測施設と強震観測施設を整備し、観測網の維持・管理・運用を行う。これら基盤的観測網と防災科研の在来地震観測網から得られるデータの収集・処理を行い、気象庁、大学等のデータと合わせて蓄積・流通・公開を行う。また、防災科研が海外に整備した観測施設についても、円滑な維持・管理とともに、観測方式の高度化を行いつつ、データの収集・処理・蓄積・公開を行う。さらに、各観測網から得られるデータを用いて、高度な地殻活動のモニタリングを実施し、地震活動状況の推移を判断するための研究成果を創出する。
著者
矢野 重信 小宮 克夫 加藤 昌子 塚原 敬一 佐藤 光史
出版者
奈良女子大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1991

当研究室では生体中での酵素系の作用機序を念頭において、アミノ酸や糖質などの生体関連物質と遷移金属イオンとの相互作用に対して配位立体化学的に詳細な検討を行い、それらに高度な立体化学制御機能を賦与することを目指し研究を進めてきた。本研究では、我々のこれまでの蓄積を基盤にして、分子識別能を有する金属錯体を設計し立体化学制御に関する知見を広げ、さらに当研究室で独自に開発した金属錯体の化学修飾法を用いて金属錯体を機能素子とする高分子錯体等の高機能性複合系の開発を目指し研究を行った。まず光学活性なポリアミンとエチレンジアミン二酢酸型配位子の混合配位Co(III)錯体の立体化学制御機構について詳細に検討した。その結果複数個の配位窒素原子に対するアルキル基の位置選択的置換により金属錯体の絶対配置を高度に制御できることを明らかにした。また分子間の水素結合を介する分子識別能を有する金属錯体の設計を目指して、二糖のNi(II)グリコシルアミン錯体の合成とキャラクタリゼーションを行った。良好な結晶が得られたD-マルトース錯体についてX線結晶構造解析を行った。その結果、二糖分子内での水素結合が見られた他、錯体分子が糖ユニットの水酸基間での水素結合を介して二量化していることが判明し、金属錯体による分子識別能の発現にとって重要な知見を得た。さらに非配位の水酸基を有するポリアミノポリカルボン酸を配位子とする陰イオン性Co(III)錯体に対し、当研究室で独自に開発したクリプタンド可溶化法を用いる各種酸無水物との反応により錯体の非配位の水酸基を反応点とするエステル化に成功した。脂肪酸無水物の場合には水中でミセル形成能を示す金属錯体をヘッドグループとする新規界面活性剤の開発に成功した。さらに高分子化可能なクロトン酸およびメタクリル酸残基が連結した錯体の合成にも成功した。以上の知見を基に金属錯体の高電子化について検討している。
著者
藤原 敬一
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.39, pp.42-46, 1999-06-25

マルチメディアの出現などのメディア多様化をすすめた伝達技術の進展は、マスメディア企業の競争戦略に大きく影響することになった。コンテンツと伝達機能を強化し、競争優位を獲得するというマスメディア企業の行動が顕著になっている。米国の放送メディアの動向からは、差別化およびシナジー効果が期待できるコンテンツを獲得し、伝達範囲を広げる方向で伝達機能を強化するという傾向がみられる。また、コンテンツの生産・加工と伝達機能が一貫したシステムをとっているため、コンテンツを獲得する場合には、伝達機能の獲得を含んだ垂直統合という形態が共通してみられた。一方、欧米の新聞社の企業行動からは、新聞というメディアの言論性の高いコンテンツの優位性を強化しながら、電気通信系メディアの伝達機能を補完的に強化して即時性を高めるという傾向がみられた。
著者
入谷 忠光 井原 敬能 片岡 実 大家 隆弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SST, スペクトル拡散 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.378, pp.37-40, 1998-10-30
被引用文献数
1

日本の交通事故による死亡者が年間1万人であり, このうち交差点での出会い頭の事故が40%で, そして0.5秒速くブレーキかけることができれば50%の, また1秒ならば90%の事故が防げると言われている.このようにブレーキ操作を速くかけることを目的とした新しい車車間通信を提案する.すなわち各車両は現在の位置, 速度, ブレーキなどの情報を周りの車に電波で知らせると同時に, 他の車両と信号機の状態を受信する.各車両は周波数が異なる放送局であり, 同時に他の車の電波を受信する方式なので, アドレスを割り付ける必要が無い.マルチパスに打ち勝つために周波数ダイバーシティを用いたFSK方式で, しかも同期が容易な方法を提案する.
著者
邑田 仁 東馬 哲雄 田中 伸幸 秋山 弘之 林 蘇娟 米倉 浩司 菅原 敬 根本 智行 永益 英敏 遊川 知久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ミャンマーに延べ6回18人を派遣し合計5282点の標本資料を採集した。その他地域から補足的に収集した標本、および従前の「南ヒマラヤの植物多様性」調査で収集した標本資料等を合わせて分子系統解析を含めた系統分類学的解析を行い、新分類群を含む多数のミャンマー新産植物を発見した。このうち45新産植物、1新属、6新種はすでに論文等で公表した。この結果南ヒマラヤ地域の植物相は日華区系の西端としての特徴を示すと同時にインド区系の東端やインドシナ区系の北西端としての性格をもっていることが再確認され, 区系地理学的境界領域としてのより精度の高い解析の必要があることが明らかとなった。