著者
水嶋 崇一郎 諏訪 元 平田 和明
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.97-113, 2010 (Released:2010-12-21)
参考文献数
60

成人期縄文人の四肢骨骨幹部は現代日本人より断面が太く扁平であることが知られている。本研究では,胎生8ヶ月から生後3ヶ月にわたる縄文人と現代日本人の主要四肢骨を用いて,骨幹中央部の各種の断面特性値を群間比較することにより,従来指摘されてきた頑丈性と扁平性の成因について改めて考察した。資料は縄文人49個体,現代日本人185個体の上腕骨,橈骨,尺骨,大腿骨,脛骨,腓骨を用いた。内部断面計測では高精細のマイクロCT装置を導入した。解析においては各四肢骨の骨幹長を相対的な年齢指標とみなし,骨幹長を共変量とする共分散分析を実施した。その結果,全身の四肢骨にわたり,縄文人の骨幹は一貫して現代日本人より外径が太く,断面上の骨量が多く,力学的に頑丈な傾向にあり,さらには二集団の断面拡大パターンの間に有意な違いはないことがわかった。二集団の外部形状と骨分布形状は胎児・乳児期を通じてほとんど変化しておらず,大半の四肢骨の断面示数において有意な集団差は認められなかった。ただし,縄文人の大腿骨の外部形状は一貫して現代日本人より前後方向に扁平であることがわかった。本研究では,成人期縄文人で指摘されてきた骨幹部形質のうち,外径の太さ,骨量の多さ,さらに大腿骨骨体上部の相対的に前後径が短い(内外側方向に長い)扁平さに関しては,既に胎生期にそれらの傾向が存在し,発生初期におけるパターン形成の影響が示唆された。
著者
川口 修 平田 靖 若野 真 山本 民次 陸田 秀実
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.1043-1050, 2011 (Released:2011-12-16)
参考文献数
13
被引用文献数
2 6

江田島湾を対象に,カキ養殖モデルを構築し,カキ筏から負荷される有機物量を「ヨクセイ」,「イキス」および「ノコシ」と呼ばれる養殖実施形態別に見積もった。これにより,カキ養殖によって海底に負荷される有機物総量は年間 13.5 kg P eta−1 d−1 であり,筏台数の多い「ヨクセイ」によるものが大きいことが明らかとなった。一方,筏単位では,「ノコシ」の負荷量が「ヨクセイ」の 1.5 倍と大きかった。また,「ノコシ」は負荷量/生産量比が最も大きいことから,環境に対する負荷が大きい養殖実施形態であると結論された。
著者
篠野 雄一 平田 史生
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.39, no.9, pp.951-954, 1973-09-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

We investigated the relation between ATP degradation and muscle elasticity of frozen raw tanner crabs with the following results: (1) When boiled after thawing, muscle fibers decreased in elasticity. This was also seen at an early thawing stage and was related with the rapid degradation of ATP. (2) The freezing rate did not change the content of ATP and related compounds. (3) When the meat was stored at -20°C, the levels of ATP and related compounds gradually varied with the period of storage. However, at -30°C, -40°C or -80°C, ATP levels and muscle elasticity remained unchanged. (4) When the meat was left at 5°C for 25 hr after death, ATP breakdown occurred. (5) The initial concentration of ATP in muscle is useful as a chemical index of quality. It is suggested that ATP itself may have some effect on the action of proteolytic enzymes.
著者
鶴田 修 坂本 功 大橋 好光 平田 俊次 岡部 潤一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.72, no.613, pp.73-80, 2007-03-30 (Released:2017-02-25)
参考文献数
9
被引用文献数
5

In recent years, the research on the damage and response displacement performance of the building of a large earthquake, for example, the Hyogoken Nanbu earthquake, are widely proposed. On the other hand, a lot of researches on the damage evaluation of the high-rise building after the earthquake are reported. However, report of research of wooden houses are few, hoped for. To the radical of this background, this research proposes the index of the relevance of finish material damage and structure damage by the static-shear-loading test of wooden house bearing walls with finish material, and reports the verification result of the validity of the index by full-scales wooden house vibration tests.
著者
内田 学 平田 博紀 堀井 希依子 Manabu Uchida Hirata Hiroki Horii Kieko
巻号頁・発行日
vol.11, pp.93-106, 2013-03-31

現在、家電量販業界では、熾烈な戦いが繰り広げられている。本稿ではその中でマーケットリーダーのヤマダ電機と人材教育に定評があるヨドバシカメラを採りあげる。ヤマダ電機とヨドバシカメラの戦略はマイケル・E・ポーターの3 つの基本戦略に照らし合せると、現在のところ、それぞれコストリーダーシップ戦略、差別化戦略を採って成功している。本論文では、両社のそれぞれの戦略について詳述し、さらに今後の激変する環境の中で両社が採っている戦略をどのような変化させていくのかを検討する。
著者
伊佐 亜希子 藤本 真司 平田 悟史 美濃輪 智朗
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.395-399, 2011 (Released:2012-01-01)
参考文献数
19
被引用文献数
4 8

微細藻類の実用的な炭化水素抽出技術であるヘキサン抽出法,水熱前処理を付加したヘキサン抽出法,超臨界二酸化炭素抽出法,およびDME抽出法の4通りの抽出技術で,同一のボツリオコッカス属の藻類脱水ケーキ(水分含量70 %)から炭化水素1 MJを抽出した場合の投入エネルギーを算出した。4通りの抽出技術で,文献値から設定した条件における投入エネルギーは0.73~1.83(MJ/MJ-炭化水素)の範囲で回収エネルギーの70 %以上を占めていた。投入エネルギー低減の観点から各抽出技術の問題点と改善点を考察し,湿藻体から抽出効率を高めるための研究開発,抽出媒体のロス率を最小限にする装置設計,および熱回収装置や動力回収装置の効率を高める技術開発が重要であることを明らかとした。
著者
平田篤胤
出版者
巻号頁・発行日
vol.[2],
著者
佐々木 孝輔 平田 章 井上 智雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.260-269, 2016-01-15

イラストは,読者を引きつけると同時に文書などの可読性を高めることができるが,だれでも作成できるものではないため,需要が大きいコンテンツの1つである.従来,高品質かつ高価格で,イラストを必要とするクライアントの要望に応じ最適なイラストがプロのイラストレータによって提供されてきた.これに対して本研究では,クライアントの要望に則したイラストを描画能力を問わない複数人で作成することを目的とし,線画イラスト作成をマイクロタスク化し,それをクラウドソーシングにより実行する線画イラスト生成手法を考案した.本手法では1枚の写真を原図とし,複数の一般ワーカが原図を見ながら少しずつ線を描き加えることで,1枚の線画を生成する.本手法による線画イラスト生成の実験から,実際に線画イラスト生成が可能であることが確認できた.Illustration is a key factor to attract document readers. However not everybody can make it in good quality. Thus illustration has high demand. Although conventionally clients request skilled creators to draw illustrations with good rewards, there exists huge needs for less expensive illustrations. We propose a novel method of generating such illustrations by crowd-sourced microtasks. In this method, a basic drawing is generated by unskilled crowd workers from one photograph. Experimentation to study the feasibility of the proposed method indicated positive result.
著者
平田篤胤
出版者
巻号頁・発行日
vol.[3],
著者
平田 昌弘 鬼木 俊次 加賀 爪優 Berhe Melaku
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-89, 2017

<p>本稿の目的は,エチオピア北部中高地のアファール牧畜民を対象に,1)アファール牧畜民の現在の食糧摂取のあり方とその特徴を把握し,2)食料摂取の視座から牧畜の生業戦略を考察し,3)社会・経済の変化が食料摂取や牧畜の生業戦略にどのような影響を及ぼしているかについて考察することにある.食糧摂取パターンの特徴は,1)朝にラクダの生乳を摂取する傾向にあること,2)コムギ粉を用いた料理が多用され,3)コムギ,生乳,酸乳,バターオイルが重要な食材となっており,4)肉と野菜は日常では全く,もしくは,ほとんど利用しておらず,5)近年では食事内容が多様化し,6)食事は親戚や友人と共食することが常であることである.栄養摂取量の特徴は,1)エネルギー摂取量的に約70 %が外部から供給されたコムギ粉などの食料であり,2)自給した食料のほとんどは生乳・乳製品によっており,特に脂肪とタンパク質の半分ほどが生乳とバターオイルから供給され,3)コムギ粉と生乳・乳製品に大きく依存した食体系ではあるが,必要なエネルギー量,タンパク質と脂肪は充足しているとまとめることができる.アファールの農牧民や遊牧民の事例は,家畜を飼養する目的が,家畜を殺して,肉を食べることにではなく,家畜を生かし留めて乳を得て,生乳・乳製品を摂取することにあることを示している.牧畜という生業の本質がここにある.以前は,乳・乳製品への食料依存度は80%ほどであった.今日,流通が盛んになり,近郊の市場で大量の食料品が販売されるようになって,外部からの購入食料に大きく依存するように変化してしまった.流通整備と経済の自由化という社会・経済の変化が,家畜を屠殺せず,生かし留めながら,その乳を利用し,必要最小限を外部社会に依存する牧畜から,家畜は交換材としての傾向を強め,多品目の外部購入食料へと大きく依存する生業構造へと変化させてきている.</p>
著者
平田 敦義
出版者
筑波大学大学院博士課程教育学研究科
雑誌
教育学研究集録 (ISSN:03867927)
巻号頁・発行日
no.25, pp.35-43, 2001-10-01

1. はじめに 本論文の目的は、児童生徒の在学関係論のうち、特殊部分社会在学契約論および学校自治関係在学契約論について、意義と課題を明らかにするものである。在学関係とは、児童生徒と学校との法的関係のことをいい、 ...
著者
佐藤 勝 林 敦子 加登 基弘 新田 裕 並河 勇 白木 雅文 勝谷 芳文 岩山 幸雄 平田 健一 木村 健一
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.407-415, 1985-06-28
被引用文献数
2 2

ヒトの口腔内には鞭毛虫類としてTrichomonas tenax (T. tenax)が生息し,歯周疾患の進展と共にその検出率が高くなることが経験的に知られている。しかし本原虫は培養,純培養が困難であるため,その病原性や生物学的性状は不明である。我々はT. tenaxの培養用に新培地を開発し,この培地がT. tenaxの分離,増殖にも優れていることを確認したので今回は,ヒトの歯肉縁下歯垢中における本原虫の分布と検出率を疫学的に調査した。その結果,T. tenaxの検出率と,被検者の年齢,ポケットの深さ,歯肉炎の程度および歯垢集積量の間には密接な関連性が認められた。また歯周療法がT. tenaxの消長に及ぼす影響を検討したところ,臨床症状の改善に伴ってT. tenaxの検出頻度は低下した。
著者
瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ ギニゲ サミタ 宮原 勇治 平田 幸夫 深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.524-533, 2008-10-30
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的はスリランカの12歳児DMFTの多寡に有意な歯科保健行動要因と社会経済的要因を確定し,重要な少数の予測要因に絞ることである.データはスリランカ国の西プロビンスの949名の学童からなる.3名の歯科医師がWHOの基準によって歯科健康診査を行った.DMFTを0と1以上の2区分にした指標を多重ロジスティック回帰分析(MLRA)の従属変数として用いた.MLRAの独立変数は4種類の歯科保健行動(4-DHBs),すなわちショ糖含有の食品もしくは飲料,歯磨き習慣,フッ化物歯磨剤使用,定期的歯科医療機関受診等,10種類の社会経済的要因からなっている.その結果,変数減少法によるMLRAで最終モデルと各変数のオッズ比が得られた.DMFTの分布は指数関数的な減少傾向を示した.男女間および3民族間のDMFTの違いは有意でなかった.フッ化物歯磨剤がDMFTに関連した最も影響力の強い保健行動であり,一方,最も重要な社会経済的要因は民族の違いであった.4-DHBsの組合せの違いは伝統的な宗教的な慣習や嗜好に由来するように思われ,う蝕に対して時に相加的効果,時に相殺的効果を及ぼすと考えられる.対象プロビンスとスリランカ全体の経済的発展に伴って将来のう蝕が増加する可能性は関連データの不足のため否定できない.それゆえ,今回明らかになったう蝕の要因をモニタリングし,西プロビンスの非常に低いDMFTの原因を解明するための疫学的研究が必要である.
著者
平田 直之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.352-358, 2016-05-14 (Released:2016-07-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

デスフルランは,血液/ガス分配係数が従来の吸入麻酔薬の中で最も低く,速やかな麻酔作用の発現と早期の覚醒,回復が可能であり,本邦でも広く用いられるようになってきた.高齢患者,肥満患者やさまざまな合併症を有する患者においても,デスフルランの有用性については多くの報告がなされている.一方,デスフルランを含めた吸入麻酔薬は,非生理的化学物質であるがゆえに,各臓器に対する薬理作用を十分に把握した上で使用することが望ましい.本稿では,デスフルランが呼吸,循環,中枢神経,内分泌代謝系,骨格筋へ及ぼす基本的な薬理学的作用を概説し,他の吸入麻酔薬との相違点や使用上の注意点について述べる.
著者
田中 好一 平田 克己 伊澤 悟 堀 三計
出版者
公益社団法人 日本設計工学会
雑誌
設計工学 (ISSN:09192948)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.41-50, 2017 (Released:2017-01-05)
参考文献数
8

The handbell that enjoys performing the bell as a percussion instrument in the group is performed actively in the school, in the church, and in the community circle. Moreover, it is paid to attention as the music therapy. However, many of marketed hand bells are made of the bronze. So, the hand bell in the bass region becomes large, heavy, and expensive. Everyone can not readily enjoy. The researchers study to make the hand bell that is suitable for the purpose of use such as light, easy to use, and comparatively cheap. We also study the suitable material for the use of the hand bell. In the present study, the influence of the processing error on the pitch has been shown using the self-made handbell of pitch of C#7.
著者
平田 佳代子 佃 守 古川 滋 河野 英浩 河合 敏 榎本 浩幸 小勝 敏幸 三上 康和 陰里 ゆうみ 稲葉 鋭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.48-56, 1997-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

慢性副鼻腔炎患者44例に対してレボフロキサシン少量長期投与 (100mg/日, 8週間) を行い, 臨床効果を検討した. 投与8週目の著明改善と改善を合わせた改善率は, 自覚症状では鼻漏29%, 後鼻漏41%, 鼻閉42%, 頭重・頭痛52%, 嗅覚障害53%, 他覚所見では鼻粘膜の発赤30%, 鼻粘膜の浮腫42%, 鼻汁の量55%, 鼻汁の性状61%, 後鼻漏70%であった. 自覚症状, 他覚所見, 臨床症状の総合評価でのt検定では有意な改善を見 (P<0,001), 副鼻腔X線所見でも明らかな改善を認め(P<0.001), 副作用は全くみられず, この治療法の有用性が示された. 臨床症状の改善率は投与4週目より8週目が高かつた. また鼻汁の細菌検査では細菌学的効果と臨床症状が相関せず, レボフロキサシン少量長期投与の効果には抗菌作用以外の作用機序の関与が示唆された.
著者
原田 和生 黒野 友理香 長澤 沙弥 小田 知佳 那須 雄大 若林 孝俊 杉本 幸裕 松浦 秀幸 村中 聡 平田 收正 岡澤 敦司
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.D17-036, (Released:2017-10-26)
参考文献数
16
被引用文献数
5

根寄生植物は重要農作物に寄生し収量を低下させるため,世界の食糧生産に深刻な被害を及ぼしている.近年,我々は放線菌Streptomyces ficellusの生産するノジリマイシン(NJ)が根寄生植物種子の発芽を阻害することを見出した.本研究ではS. ficellusのNJ生産性向上を目指した培地改良,および未精製培養物の根寄生植物防除剤としての適用可能性について検討した.従来のNJ生産培地に使用されていたPharmamedia™を他の汎用的な培地成分に置換したところ,マリンブロスによりNJ生産量が向上した.4日間培養を行ったところ,培地中のNJ含量は710 mg/Lに達し,従来の17倍まで向上した.得られた培養液を各寄生植物種子に処理したところ,NJ 標準溶液と同等の発芽阻害活性を示した.本研究で示した当該培養法は根寄生植物防除剤生産開発につながると期待される.