著者
遠里 由佳子 松田 秀雄 橋本 昭洋
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.76, pp.41-44, 1999-09-21

正例として与えられた文字列集合からそれらの特徴を表す極小でかつ既約なパターンの組を求める問題をMINL問題と呼び,パターンの組の数を予め制限することにより,この問題を解く多項式時間アルゴリズムが知られている.同じ機能を持つ遺伝子を同じ文字で表すと,このアルゴリズムは遺伝子クラスタの機能分類に応用できるが,遺伝子の機能は階層的に分類されているため,どの階層の機能分類を使うか指定しないとこのアルゴリズムを適用することができない.そこで,本研究では,パターン間に概念階層を導入し,情報量というパターンの評価基準を使ってMINL問題を近似的に解く多項式時間アルゴリズムを提案し,実際に遺伝子クラスタの機能分類に適用した結果をもとに性能評価を行う.The MINL problem is a problem that finds a minimum and reduced set of patterns explaining a given set of positive example strings. By restricting the number of patterns to be a fixed constant in advance, a polynomial time algorithm that solves this problem is known. This algorithm is applicable to determining gene clusters based on functional classification if genes having the same function are expressed with the same character. However, since gene function is typically classified hierarchically, the above algorithm can only be applied on a single level of the classification hierarchy. In this paper, we extend the MINL problem to cover hierarchical classifications, and propose a novel polynomial time algorithm utilizing entropy to solve the extended problem. In an experiment, we applied our method to gene cluster analysis of actual gene data.
著者
柿本 昭人
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策研究 (ISSN:18818625)
巻号頁・発行日
no.5, pp.20-38, 2011-03

論説近代ヨーロッパは、古代ギリシアを再発見し、民主主義の源流としてアテネを参照してきた。大人=市民として登録されるには、父と、母の父が市民であり、試練と待機の期間を経なければならなかった。そして市民同士が平等な者として議論に参加できるのは、ただ一人の母=大地から生まれたという神話に基づく「生まれの平等」があったからである。安定した大人/子供関係を裏面から支えていたのは、大人になることのない奴隷と女性の存在であった。
著者
森田 健 大中 忠勝 上野 智子 山本 昭子
出版者
福岡女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

ヒトの生体機能が季節により変動することはよく知られているが、原因がはっきりしている例は少ない。また、生体リズムの季節変動についても報告が少ない。季節により生体リズムが変化する機序としては、日長の変化によるリズム同調の変化が考えられる。このことから本研究では、緯度が異なる3地域(高・中・低緯度)及び季節(春・夏・秋・冬)において人々が日常生活の中で受ける光の量及び質の違いを把握し、ヒトはその環境にどのように適応しているのかという環境適応能の観点から分析を行った。その結果、自然の光環境が気候や季節及び緯度により大きく異なることが明らかになった一方、被験者の受光量や活動量は季節や緯度との関係性は低く、むしろ個人の生活スタイルや過ごす場所に依存している可能性も示唆された。しかし生体リズムの指標となるメラトニンリズムには、季節変動及び地域差における特徴が明確に表れた。特に中緯度:日本の秋において、高いメラトニン分泌量及び位相後退の特異的季節変動が認められたが、これが外部の光刺激変化によるのか、また冬に備える内分泌機能の働きによるものなのなど、その原因を明確にすることはできなかった。本研究における調査は、フィールド調査であり、生体リズムに影響する様々な因子の厳密な制御は行っていない。しかし、日常生活における実際の光環境下で確認した本成果は、今後の光環境計画を考える上での基礎的知見を提供するものと考えている。
著者
榎本 昭二 PODYMA KATARZYNA A. 柳下 正樹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本年度においては、昨年発表されたヘパラネース遺伝子のシークエンスをもとに、培養口腔癌細胞株および、患者から得られた口腔癌組織内におけるヘパラネースの発現について検索を行い、その転移能との相関についても調べた。さらに、研究計画どおり、培養扁平上皮癌細胞株におけるヘパラナーゼの活性とMMP2、9、MT-MMPの発現との相関も調べた。用いた培養細胞それぞれのヘパラネースmRNAの発現量は、活性レベルとほぼ相関していることがわかった。ヘパラナーゼの酵素活性を、定量PCR法を用いて、簡便に測定できることが示唆された。術前からリンパ節転移が存在した症例、原発が制御されても術後9ヶ月以内にリンパ節転移を確認した症例のなかでヘパラナーゼ陽性例数を見ると、前者には57.1%で陽性、また、後者では、100%陽性であった。また、発現レベルとともに転移率の上昇が見られた。以上より、ヘパラネースが、口腔癌において、リンパ節転移能と関連する重要なマーカーの1つになる可能性が期待できる。さらに、培養扁平上皮癌細胞株における、MMP2,MMP9,MT1-MMP,TIMP2の発現を定量し、そのヘパラネース活性とマトリジェルにおける浸潤能の相関についてしらべたところ、それぞれの細胞の浸潤能に対し、独立したMMPの発現レベルとヘパラネース活性を有しており、とくに大きな相関は見出されなかった。現在、昨年クローニングしたラットヘパラネースの抗体の精製を完了させ、また、in situハイブリダイゼーション法による、組織内のヘパラネース発現パターンを検索しており、マウス実験転移モデルと組み合わせて、がん転移機構における、ヘパラネースの機能の分析を続けていく予定である。
著者
神邊 靖光 生馬 寛信 新谷 恭明 竹下 喜久男 吉岡 栄 名倉 英三郎 橋本 昭彦 井原 政純 高木 靖文 阿部 崇慶 入江 宏
出版者
兵庫教育大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

幕末から明治維新を経て「学制」領布に至る間、幕藩体制下に設立された藩校と、明治初年の藩校・明治新政府の管轄下に設けられた諸学校と、の教育の目的・内容・方法の変化・相違点は学校の組織化にあるということを課題とし、この課題を実証的に解明すること、その過程に見出される教育の本質・属性の連続・非連続の問題も併せて考究することを意図してこの研究は進められた。藩校は江戸後期に急増するが、士道の振気と、藩財政の窮乏を打開するために儒教倫理にもとづく教育による人材の育成を目的として設立されたという点では、共通の課題を持っていた。しかし藩校の制度の定型はなく、また各藩の教育外条件は一様ではなかったので、250に及ぶ藩校は、250の様態をもっていた。更に洋学の受容、外圧という条件が加わると、学ぶべき洋学の選択、外圧の影響の強弱によって藩校は多様化を一層進めてゆくことになった。加えて幕末の国内情勢の二分化により、学校観も多様化した。幕末までの学校は、制度・組織を先例に倣って類似的に完結されていたが、外国の規制度に関する知識を直接に或は間接的に学ぶことによって、更に明治新政府の対藩政策によって学校改革の必要に迫られる。そのため伝統的な閉鎖的・個別的な性格から脱皮しなければならなくなり、自律的に或は他律的に共通性をもった相似的なものへと変化していった。このような経緯・動向が「学制」に示された、組織化を推進しようとする学校制度の実施を容易ならしめたのである。本研究は藩校教育を核として、幕末維新期の教育の各領域における組織化の過程を今後も継続してい くことになっている。平成2年3月、3年3月に、幕末維新期の学校調査、昌平坂学問所、5藩校、郷学校、数学教育、医学教育、お雇い教師に関する11編の報告を発表した。平成4年には、藩校、儒学教育、数学教育、芸道教育に関する報告をおこなう。
著者
松本 昭彦 Matsumoto Akihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.85-92, 2009

『枕草子』第二十三段「すさまじきもの」の段には、験力を持った祈祷僧が、物の気を患った者の治療のため、憑り坐しに物の気を移らせようとして加持するのだが、全く効果が表れず、あくびをして横になってしまう、という「すさまじきもの」の一例がある。従来これは「加持に疲れ、何の効き目もないのに倦み飽きて眠くなってしまった験者(祈祷憎)の、やる気のなさを象徴する〈あくび〉」と解釈されてきたが、『古今著聞集』巻六・第二六六話、『栄花物語』巻二十九「たまのかざり」などによると、加持場面での病人のあくびは、物の気が治る兆候として現れており、本段における清少納言の筆致なども考慮すると、験者への皮肉を込めて、「本来あくびが期待される病人ではなく、験者がしてしまう」という文脈に読むべきである。
著者
月本 昭男 佐藤 研 山我 哲雄 市川 裕 澤井 義次 鎌田 繁 池澤 優 河東 仁
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究はユダヤ教,キリスト教,イスラム教における神観につき,比較宗教史的観点から、4.で述べるように、四つの側面から実証的総合研究を行った。そのうち、(1)「古代ユダヤ教における一神教成立の解明」については、下ガリラヤのテル・レヘシュ遺跡発掘調査により、古代イスラエル最初期の宗教に関する実証的なデータが発見され、成果の一部はV国際宗教史会議(トロント大学、2010年8月)および「国際ガリラヤ会議」(立教大学、2011年5月)で公表した。(2)~(4)の課題の研究成果については、以下の報告4を参照されたい。