著者
古崎 晃司 江上 周作 松下 京群 鵜飼 孝典 川村 隆浩
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2E6GS302, 2022 (Released:2022-07-11)

「ナレッジグラフ推論チャレンジ」は説明可能性を有したAI技術の体系化と普及促進を目的とした技術コンテストである.このチャレンジでは,知識グラフとして表現された推理小説を用いた「1.犯人の推定」と「2.推定理由の説明」をタスクとしている.提供する知識グラフは,説明生成に用いられることを念頭に,対象とする小説の追加や知識グラフとして記述する内容の検討等の改良を重ねてきた. 本研究では,これまでの考察をもとに,説明生成に利用することを想定した知識グラフ構築におけるガイドラインを提案する.推論チャレンジで公開している8つの短編推理小説を対象とした知識グラフを元に記述内容の修正方針を検討し,10項目からなる知識グラフ構築のガイドライン案を作成した.さらに作成したガイドラインをそれら8つの知識グラフに適用し,その妥当性の検討を進めている.本発表ではガイドラインの概要と知識グラフに適用して得られた知見を報告する.
著者
松下 武矢 葉山 恵利 中島 龍星
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.275-280, 2022-08-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
21

【目的】回復期脳卒中患者の膝伸展筋力と病棟歩行自立の関連を調査し,そのカットオフ値を決定すること。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中片麻痺患者。麻痺側,非麻痺側,および両側を組み合わせた膝伸展筋力が,歩行自立と関連するかを二項ロジスティック回帰分析で検討した。また,Receiver operating characteristic curve, Youdenインデックスにより,歩行自立のカットオフ値を算出した。【結果】解析対象者は658名(年齢中央値74歳,女性45%)で,歩行自立群は393名(60%)であった。歩行自立に対して膝伸展筋力は独立して関連しており(P<0.001),カットオフ値は麻痺側,非麻痺側,両側合計でそれぞれ,0.631 Nm/kg, 1.010 Nm/kg, 1.621 Nm/kgであった。【結論】回復期脳卒中患者において膝伸展筋力は歩行自立の判断基準となり得る。
著者
松下 光宏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.31-46, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
12

接続辞「ものの」はこれまで「PもののQ」のPとQの事態の特徴や両者の関係でとらえた意味や用法の説明が中心であった。本稿では,「PもののQ」文より1つ前の文・節との連接という観点から,「PもののQ」の使用文脈の特徴と「Pものの」の役割を論じる。さらに,「PもののQ」を用いる際の文法上の必要条件についても述べる。その特徴は次のとおりである。 ・「PもののQ」は直前の文・節がPとは連接せずQと連接し,Qが直前の文・節と同じ主題について事態を述べるという文脈でよく用いられる。「Pものの」は直前の文・節とQが表す事態について,その文脈の流れには沿わないPという事態も存在することを注釈として表す。 ・「PもののQ」はPの主題がQの主題と同じものか,Qの主題に従属するもの(Qの主題の部分,Qの主題の行為,Qの主題の程度や方法など)という条件を持つ。
著者
濱口 儒人 藤本 学 長谷川 稔 小村 一浩 松下 貴史 加治 賢三 植田 郁子 竹原 和彦 佐藤 伸一 桑名 正隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1837-1843, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)

抗U3RNP抗体は代表的な抗核小体型抗体の1つであり,全身性強皮症に特異的とされる.今回われわれは,金沢大学皮膚科で経験した抗U3 RNP抗体陽性全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)8例(女性6例,男性2例,発症時の平均年齢44歳)における臨床症状,治療,予後について検討した.病型分類ではdiffuse SSc(dSSc)が4例,limited SSc(lSSc)が4例だった.全例でレイノー症状を認め,指尖陥凹性瘢痕,手指の屈曲拘縮,びまん性の色素沈着を伴う例が多く,dSScでみられる皮膚症状を高率に有していた.一方,内臓病変に関しては,1例で強皮症腎を発症したものの,肺線維症や肺高血圧症,心病変など重篤な臓器病変を有する頻度は低かった.6例で皮膚硬化に対し中等量のプレドニゾロンが投与され,皮膚硬化の改善がみられた.観察期間中に死亡した症例はなかった.欧米では,抗U3 RNP抗体陽性SScはdSScの頻度が高く,肺線維症や肺高血圧症,心筋線維化による不整脈や心不全,強皮症腎などの重篤な臓器病変を有することが多いと報告されている.また,その予後は抗トポイソメラーゼI抗体陽性SScと同等で,予後不良例が少なくないことが知られている.したがって,本邦における抗U3 RNP抗体SScは欧米の症例と比較し,皮膚症状は類似しているものの臓器病変は軽症であると考えられた.しかし,抗Jo-1抗体陽性の抗ARS症候群を合併した症例や強皮症腎を生じた症例もあり,抗U3 RNP抗体SScの臨床的特徴についてさらに多数例での検討が必要と考えられた.
著者
江上 周作 鵜飼 孝典 太田 雅輝 川村 隆浩 松下 京群 古崎 晃司 福田 賢一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.SWO-057, pp.05, 2022-08-05 (Released:2022-08-10)

ナレッジグラフのトリプルに出典,文脈,時間等の様々なメタデータを付与するメタデータ表現モデル(MRM)が複数提案されている.本研究では同一のナレッジグラフに対して異なるMRMを適用したデータセットを作成し,ナレッジグラフ埋め込み手法によるリンク予測の精度評価を行うことで,各MRMの特性を埋め込みの観点から分析する.

2 0 0 0 1.皮膚筋炎

著者
松下 貴史
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.9, pp.2135-2141, 2023-08-20 (Released:2023-08-20)
参考文献数
14
著者
松下 達彦 陳 夢夏 王 雪竹 陳 林柯
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.62-76, 2020-12-25 (Released:2022-12-26)
参考文献数
32

本研究では日中対照漢字語データベースを開発した。日本語の語彙における,漢語 (字音語) の日中両語の意味対応パタンを文化庁 (1978),三浦 (1984) を参考に6種類に分類した結果,頻度上位2万語のうち,50%が漢語で,漢語の70% (全体の35%) が同形語で,30% (全体の15%) が非同形語であること,同形語7,074語のうち,82% (全体の29%,漢語の58%) が同形同義で,18% (同形語の6語~5語に1語) が同形類義や同形異義といった要注意の語であること等が明らかになった。本データベースは語の検索などで直接利用できるほか,J-LEX (菅長・松下,2014) のような語彙頻度プロファイラーへの搭載によって,文章の語彙的負荷の母語別表示機能や,対象者母語別のリーダビリティ計算,中国語母語学習者にとっての要注意点を表示する機能への応用が期待される。
著者
服部 明徳 大内 綾子 渋谷 清子 佐藤 和子 細谷 潤子 中原 賢一 西永 正典 亀田 典佳 土持 英嗣 松下 哲 折茂 肇
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.360-365, 2001-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
7
被引用文献数
3 4

介護負担度に影響する因子を明らかにする目的で, 老年者の問題行動の有無や介護者自身の要因と介護負担度との関連をバーンアウト・スケールを用いて検討した. 対象は当院総合内科に入院した65歳以上の患者のうち, 家族が何らかの介護をしていた73例 (男性31例女性42例, 平均年齢82.7±6.9歳) で, 主たる介護者へのアンケートにより, 患者・介護者の属性や一日の介護時間, 徘徊などの問題行動の有無などを調査した. また, アンケートには Pines のバーンアウト質問項目が含まれ, 計算式からバーンアウト・スコアを算出した. 介護者の属性では, 約3割が配偶者であり, 介護者が高齢であるとバーンアウト・スコアは有意に高値となった (p<0.01). これに加えて介護者自身の健康状態に基づき介護負担を重く感じるほどバーンアウト・スコアは高値となった (p<0.001). 老年者の問題行動のうち, 夜間の介護が必要 (p<0.05), 監視が必要 (p<0.01), そして介護拒否 (p<0.01) があるとバーンアウト・スコアは有意に高値となった. バーンアウト・スコアを説明変数とする重回帰分析では, 老年者の Basic ADL・問題行動・介護者自身の要因のうち介護者自身の健康状態による介護負担, 夜間の介護そして排泄の介助が独立した因子でバーンアウト・スコアの約4割を説明し得た (R2=040: p<0.0001). 介護保険サービスの導入によって, 上記の家族の介護負担を重くしている要因が改善され, バーンアウト・スコアを低下させるか検討することが今後必要である.
著者
松下 博宣 東京情報大学看護学部
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-11, 2022-09-30

本研究は,下総台地に鎮座する下総七年祭神社,藤原時平神社,天満宮等の配置形象に含意される意味を探索的に特定することである.下総三山の七年祭りに参加する9社,八千代市の時平神社4社,ならびに下総地域に点在する天満宮,天神社を実際に訪れ,神社の位置をGoogleマップ上にプロットして,神社群の位置(緯度,経度,標高)を特定し,各神社の由緒書を収集し,関連する史料を分析した.その結果,①三山七年祭神社パラレログラム,②八千代時平系神社群トライアングル,③天満宮ラインA,B,④下総道真信仰系レクタングルという神社の呪術的配置形象が空間的に構成されていることが明らかになった.本研究の発見にもとづき,これらの神社の配置形象が,同地域に特有の水害リスクを暗黙的に示唆する可能性について論考した。
著者
兼山 達也 阪口 元伸 中島 章博 青木 事成 白ヶ澤 智生 丹羽 新平 松下 泰之 宮崎 真 吉永 卓成 木村 友美
出版者
一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会
雑誌
レギュラトリーサイエンス学会誌 (ISSN:21857113)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.225-236, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
49

リアルワールドデータ (RWD) は製薬業界にとってもはや欠かせないツールである. マーケティング目的のみでなく, アンメットニーズの探索, エンドポイントの妥当性検討や患者層の特定など臨床試験のデザインや, 試験を実施する国や地域, 施設の選定や組入れ計画などの実施可能性の検討, 医療技術評価やアウトカム研究などに幅広く利用されている. サイズも大きく企業からアクセス可能なレセプトなどの医療管理データベース (DB) が主に用いられているが, その他の電子医療記録や患者レジストリなども同様に有用である. 日本製薬工業協会 (製薬協) のタスクフォースで2015年夏にデータサイエンス (DS) 部会加盟会社を対象にアンケートを実施したところ, 回答が得られた会社のうちおよそ半数ですでに社内に日本のDBを保有しているか, ウェブツールを通じてアクセス可能であった. 実際, すでに多くの研究結果が各社から, またアカデミアとの共同研究として公表されている. 若手DS担当者が産官学で話し合うDSラウンドテーブル会議でも臨床試験デザインにRWDを応用した事例が共有された. これらの事例は必ずしも論文として公表されず, 社内の意思決定に応用されるものであるので, このような機会に事例を学べることは特に貴重である. RWDの安全性評価への応用は, 来年度からDB研究がPMSのオプションの1つとなることからあらたに注目されている. しかし従来のPMSがすべての目的にかなうものではなかったのと同様にDB研究がすべてを満たせるものでもなく, 目的に応じた研究計画が必要なことはいうまでもない. ほぼ全国民をカバーするナショナルデータベース (NDB) は有益な疫学研究ツールとなり得るが, 企業の研究者は基本的に直接利用できない. 製薬協から申出に従ってある一月のデータを表形式にまとめたものが提供される予定であり, 特定の薬剤に関する結果としてのみでなく, 他のDBの外部妥当性の担保としても貴重なデータとなることが期待されている.
著者
加茂 文吉 松下 宗一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.2, pp.123-131, 2023-02-01

一般的に10人程度といったグループでのレッスンが行われているエレクトリックギターの授業クラスでは,個々の学習者の状況を正確に把握し,的確なアドバイスを与えることは容易ではない.授業内における録画あるいは録音では事後の評価に時間を要することに加え,機材の管理コストが授業運営における大きな負担となってしまう.そこで本研究では個々の学習者に腕時計型運動センサデバイスを装着させることで,レッスン内の演奏運動を全て記録し,演奏技量獲得の様子を可視化するシステムの開発実験を行った.ギター演奏技巧としては,音楽表現における重要な基礎技巧の一つであるアクセント付きコードストローク奏法を取り上げ,学習者の利き腕側での運動信号から演奏リズムの正確さ,アクセントの鋭さ,及び演奏運動の形態をPC画面におけるシンプルな操作にて評価することができる.音楽系専門学校における各1時間計5回にわたるギターレッスンクラスへの適用実験を行った結果,17名の学習者における技量獲得の状況を客観的に可視化することができた.また,数値データによる振り返りにより教育者と学習者が演奏技量に関する情報を共有することにつながった.
著者
大井 一浩 井上 農夫男 金子 真梨 道念 正樹 松下 和裕 山口 博雄 戸塚 靖則
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR JAW DEFORMITIES
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-7, 2010-04-15 (Released:2012-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
1

The purpose of this study is to evaluate the incidence, risk factors and postoperative nausea and vomiting (PONV) in patients who underwent orthognathic surgery.The subjects were 139 patients aged 17-52 years (47 males and 92 females) who underwent orthognathic surgery in the Hokkaido University Hospital from January 2001 to December 2003. Ninety-four Sagittal splitting ramus osteotomy (SSRO), 34 Le Fort I osteotomy and SSRO (Le Fort I+SSRO), and 11 surgically assisted rapid palatal expansion (SARPE) were performed. Anesthesia was maintained with sevoflurane and nitrous oxide in oxygen. There were no cases of maxillomandibular fixation. The factors investigated included age, gender, type of surgery, amount of bleeding, operation time, anesthesia time, anesthesia induction drugs, fentanyl dose and incidence of PONV. A statistical study was performed using logistic regression analysis to confirm the statistical significance among age, gender, amount of bleeding, operation time, anesthesia time, difference of anesthesia induction drugs, fentanyl dose, and incidence of PONV. A Chi-square test for independence was used to confirm the statistical significance between the type of surgery and incidence of PONV. Differences were considered significant for a P<.05.Nausea was observed in 44.6% females and 17.1% males. The incidence of nausea was significantly higher in females. A significantly higher amount of vomiting was observed in 23.5% of Le Fort I+SSRO compared with 7.4% of SSRO and 9.1% of SARPE. Statistically significant differences for vomiting were also noted in the operation time and anesthesia time.
著者
松尾 晶穂 岩切 鮎佳 松下 範久 田端 雅進 福田 健二
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.254-261, 2022-10-01 (Released:2022-11-29)
参考文献数
34

ウルシの種子は,物理的休眠と生理的休眠を併せ持つ複合休眠状態にあると推測されている。ウルシ種子の発芽率を向上させるために,発芽促進に効果があると報告された方法を種子の物理的休眠と生理的休眠の打破に分けて評価した。ウルシ種子の物理的休眠の打破には,濃硫酸への60~120分の浸漬,または内果皮の一部除去が有効であった。濃硫酸に90分浸漬した後の種子では,種子の2カ所から吸水が始まることが観察された。濃硫酸浸漬後の種子に対する生理的休眠打破の方法としては,4~12週間の低温湿層処理が有効であった。しかし,内果皮を一部除去した後に低温湿層処理した種子は発芽しなかった。濃硫酸に90分浸漬させた後に8週間の低温湿層処理を行った種子の発芽率(73.2±2.7%)は,濃硫酸浸漬処理と低温湿層処理を単独で行った場合(それぞれ,0.8±1.0%,0.4±0.9%)や無処理の場合(0.0±0.0%)の発芽率よりも有意に高く,二つの処理を組み合わせた方法がウルシ種子の発芽促進に有効であることが確認された。
著者
ボイクマン 総子 根本 愛子 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.175, pp.146-154, 2020-04-25 (Released:2022-04-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

プレースメント用のスピーキングテストは,大勢が短時間で受験でき,判定が簡便で,信頼性や妥当性の高いテストが理想である。そこで,筆者らはテストタスクと,ルーブリックと音声サンプルによる判定ツールの開発に着手した。テストの信頼性や妥当性を検証するため,開発した判定ツールを用いて初級から上級の受験者32名の「断り」のタスク結果を日本語教師4名に判定してもらう実験を行った。判定結果は,プレースメント時の読解などの受容能力より産出能力を示す作文と,リスニング要素を含むSPOTとの相関が高かったことから基準関連妥当性を一定程度満たしていると言える。判定者間の一貫性や相関も高く,受験者1名あたりの判定時間が1~2分であったことからも,本タスクと判定ツールは,簡便で一定の信頼性も確保できていると言える。ただし,中級の判定は初級や上級より難しいことがうかがわれた。
著者
黒崎 亜美 松下 達彦
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.46-56, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

会話や作文の語の産出には,意味理解のほか文脈や連語等の知識が必要な上,既知語彙の検索の過程を経ねばならず,理解と異なる能力が必要である。そこで,中上級の韓国語母語の日本語学習者を対象に語彙の自由想起の実験を行ない,以下の諸点を示した。①中上級の韓国語母語の日本語学習者は日本語母語話者に比べ高頻度のプロトタイプ的な語を使用し,低頻度語彙の産出が少ない。②中上級の韓国語母語の日本語学習者は,第一言語(韓国語)の語彙の自由産出において,第二言語(日本語)より低頻度の語彙を産出し,日本語母語話者の第一言語(日本語)と語彙頻度レベルに差はない。③中上級の韓国語母語の日本語学習者の自由想起の語彙産出は文法テストや制限付き産出確認テストの結果と相関はなく,語彙の自由産出の発達は制限付き産出の発達に比例しない。④制限付き産出ができた語を自由想起できない場合,その語と語義の一部が重なる語を,自由想起することがある。以上の結果から,自由発表語彙を増やすには,語彙を検索・使用する機会を多くすることが必要だと考える。