著者
橋本 優実 PANKAJ KAMDAR Radhika 松井 理 橋本 光正 松本 義久 岩淵 邦芳
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.102, 2011

アポトーシスに陥った細胞において、XRCC4はカスパーゼ3あるいは7で切断され、DNA ligase IV結合領域を含むが核移行シグナルを欠いた35 kDaのN末断片(以下pN35)となることが知られている。本研究では、XRCC4断片化のアポトーシスにおける役割を調べた。<BR> マウスリンパ腫L5178Y細胞由来XRCC4欠損細胞株M10細胞をスタウロスポリン(以下STS)で処理してアポトーシスを誘導した。アポトーシスは、カスパーゼ3の活性化あるいはアポトーシス特異的DNA断片化(TUNEL法)を指標に検出した。<BR> M10細胞に野生型XRCC4を発現させた細胞株(M10-XRCC4)をSTS処理すると、pN35が検出されたが、カスパーゼで切断されない変異型XRCC4(XRCC4 D265A)を発現させた細胞株(M10-D265A)ではこの断片は検出されなかった。このときM10-XRCC4でのみ、アポトーシスの増強と、カスパーゼ3上流に位置するカスパーゼ8および9の活性化体の増加がみられた。STSによるアポトーシスに対する増強効果は、M10細胞にpN35を発現させても認められなかったが、核移行シグナルを付加したpN35を発現させると認められた。M10-XRCC4と M10-D265Aの両細胞において、 XRCC4とDNA ligase IVは、アポトーシスの進行に伴い核から核外へ移行した。<BR> 以上より、カスパーゼによるXRCC4のN末断片化はアポトーシスに必要であることが確かめられた。pN35は核内に存在する時にアポトーシス増強作用を発揮することが明らかとなった。アポトーシス増強の機序としては、pN35によるカスパーゼ8および9の活性化の促進が考えられた。一方、アポトーシスの進行に伴うXRCC4とDNA ligase IVの核外移行には、XRCC4のN末断片化は必要ないことが示された。<BR> なお、M10細胞は文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して理研BRCから提供された。
著者
松本 直樹
出版者
追手門学院大学
雑誌
追手門経済論集 (ISSN:02883783)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-17, 2013-09-30
著者
松本 実 田辺 明 栗山 美子 森山 徳長 石川 達也
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.296-299, 1992-09-20
被引用文献数
1

日本の歯科医師団体の発祥は,東京における明治26年11月の『歯科医会』に端を発する.この会は次第に発展し,ついには現在の日本歯科医師会となる母体となった.本会が明治28年に,発行した小冊子『歯牙保護論』は,業権の確立と一般庶民への啓蒙を目的としている.明治初年に桐村,伊沢,高山らの先覚者が執筆した一連の歯科衛生啓蒙書のうち,歯科医師団体が発行した本書の書誌学と,歯科医会の志向していたところの詳細を本論文で解析した.
著者
朝隈 英昭 藤島 宏之 村本 晃司 矢羽田 第二郎 牛島 孝策 松本 和紀 粟村 光男
出版者
福岡県農業総合試験場
雑誌
福岡県農業総合試験場研究報告 (ISSN:13414593)
巻号頁・発行日
no.33, pp.24-28,63, 2014-03

「甘うぃ」は,中国系キウイフルーツ「ゴールデンキング」の自然交雑実生の中から選抜した品種である。育成地(福岡県筑紫野市)における開花盛期は5月中旬,収穫適期は10月下旬であり,いずれも「へイワード」より早い。果皮色は明褐色で,果肉色は黄~黄緑色である。果形は長楕円形で,果実重は150g程度と大果である。糖度は17~18度と高く,良食味である。5℃で3ヶ月程度貯蔵できる。
著者
松本 治朗
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.141-147, 2012-07-21 (Released:2017-07-21)

神戸市にて実施されている9ヶ月の乳児検診の方式に従い、同検診を筆者の診療所で受けた母児83例を対象とした。検診時に母親の笑いの感情についてフェイス・スケールを利用して評価した。これにより笑いの感情を持つ母親52人(笑い群)および笑いの感情を持たない母親31人(非笑い群)の二群に分けた。この両群において子育て上どのような違いがあるのかについて分析を試みた。すなわち早期産の発症、母親の心配事の有無、分娩様式、出生時および9ヶ月における児の体重、喫煙の有無、あやすと初めて笑った時期、授乳方式に違いはないかについて検討した。その結果、母親がよく笑う感情を持っていることと子育ての心配が少ないこと、および育ちも健やかなこととの関連性が示唆された。
著者
梅原 康湖 辻 直子 冨田 崇文 谷池 聡子 川崎 正憲 奥村 直己 高場 雄久 松本 望 河野 匡 丸山 泰典 尾崎 信人 工藤 正俊
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.207-215, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】外来大腸内視鏡検査におけるプロポフォールを用いた意識下鎮静法の安全性・有用性と患者満足度について検討する.【方法】外来大腸内視鏡検査を受けた80歳未満,ASA2以下の患者661人を,鎮静剤希望者と非希望者にわけた.鎮静剤希望者はプロポフォール単独群とミタゾラム+ペンタゾシン群に無作為に振り分けた.プロポフォール単独群241例ミタゾラム+ペンタゾシン群236例非鎮静群184例について呼吸循環器系への影響,回復時間,患者満足度,帰宅後の問題点について検討した.【結果】プロポフォール単独群で血圧の低下,ミタゾラム+ペンタゾシン群で心拍数,酸素飽和度の低下を有意に認めたが,一過性で重大な合併症はなかった.プロポフォール単独群の回復時間は短く,高い患者満足度が得られ,帰宅後の問題点も少なかった.【結論】外来大腸内視鏡検査の意識下鎮静法ではプロポフォールが第一選択と考えられた.
著者
松永 佳世子 大岩 久美子 請井 智香子 早川 律子 正橋 鉄夫 松本 義也 伊藤 富士子 辻 麻里 安積 輝夫 戸谷 良造
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.1016-1022, 1984 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5

今回第2報として1, 778名の乳児保育者の手荒れの状態とその解決策の一手段となり得る紙おもつの現状につきまとめ報告した。7月現在手が荒れていると答えた母親は25.3%であったが, 出産後手荒れがひどくなったものは55.5%であった。紙おむつを常時使用している乳児は1.1%で少ないが, 全く使用しない乳児は12.9%で, 他のものは, 外出時, 夜間に使用していた。紙おもつは価格が高すぎる (57.0%), むれやすい (31.7%), かぶれやすい (31.4%) との意見が多い反面, 衛生的 (18.1%), 外出時便利 (84.1%), 特にむれない (10.8%), とくにかぶれない (15.7) などの意見が存在した。紙おむつ常時使用者のおむつかぶれの頻度は特に高くなかった。
著者
南 篤志 劉 成偉 田上 紘一 松本 知之 Jens Christian Frisvad 鈴木 秀幸 石川 淳 五味 勝也 及川 英秋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral34, 2015 (Released:2018-10-01)

ペニトレムA(1)は、Penicillium crustosumなどの糸状菌から単離されたインドールジテルペンである(図1)1。同菌は、酸化度や修飾様式が異なる構造類縁体{ペニトレムB-F(2-6)}に加えてパスパリン(7)2、PC-M5(8)、PC-M4(9)なども生産する3, 4。1は、パキシリン(10)やアフラトレム、ロリトレムなどの多くのインドールジテルペンと同様に7をコア骨格とする一方、インドール環上にある4-6縮環骨格や8員環エーテルなど他のインドールジテルペンではみられない特徴的な構造を有する(図1)。その特異な化学構造は有機合成化学者からも注目され、4については全合成も達成されている5。一方、その生合成については、標識化合物の投与実験などから1-6が生合成後期における酸化的修飾によって構築されると推定されていたものの6、骨格構築機構については不明であった。最近我々は、麹菌異種発現系を用いることで17種の遺伝子が関与するペニトレム生合成マシナリーの解明に成功し、特徴的な骨格構築機構を含む生合成経路の解明に成功した7。本討論会ではその詳細を報告するとともに、我々が改良してきた麹菌異種発現の有用性についても議論したい。ペニトレム生合成遺伝子クラスターの同定 ペニトレム生合成マシナリーの解明へ向け、生合成遺伝子の探索を試みた。予想生合成中間体である7の生合成に関与する遺伝子(paxGCMB)8を指標としてペニトレム生産菌(P. simplicissimum9)のドラフトゲノムデータを精査したところ、ptmGCMBを含む15個の読み枠から構成される生合成遺伝子クラスター(cluster 1:図2)を見いだした。しかしながら、酸化的な修飾反応を触媒する酵素遺伝子が明らかに不足していたため、遺伝子クラスターの分断が示唆された。分断した遺伝子クラスターを同定するためにRNA-Seqによる発現解析を生産/非生産条件で行ったところ、4種の酸化酵素遺伝子と1種のプレニル基転移酵素を含む遺伝子クラスター(cluster 2:図2)を新たに見いだした。1と同じ分散型生合成遺伝子クラスターはfusicoccin10、austinol11などで報告されているが、いずれも類縁化合物の相同遺伝子もしくは経路特異的な遺伝子を指標としてゲノムデータから探索されたものである。これに対して本結果は、植物由来の天然物と同様、発現解析が糸状菌天然物における分散型遺伝子クラスターの同定において有効であることを示す結果であると考えている。 麹菌異種発現系を利用したペニトレム生合成マシナリーの解明 最近我々は麹菌を宿主とした異種発現システムに着目し、代表的な糸状菌由来二次代謝産物であるインドールジテルペン7,8,12、テルペン13、ポリケタイド14の生合成マシナリーの再構築と物質生産を行ってきた。本手法の特徴は、①導入した遺伝子の確かな機能発現、②生合成経路の同定と物(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
今村 文彦 杉浦 康平 齊木 崇人 松本 美保子 山之内 誠 黄 國賓 さくま はな 尹 聖喆 曽和 英子 Fumihiko IMAMURA Kohei SUGIURA Takahito SAIKI Mihoko MATSUMOTO Makoto YAMANOUCHI Kuo-pin HUANG Hana SAKUMA Seongcheol YUN Eiko SOWA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2014
巻号頁・発行日
2014-11-25

本報告は、アジアンデザイン研究所の活動としてアジアの山車文化についてデザイン的視点から調査、研究を進めるものである。研究所では開設以来、アジア各地域でみられる祭礼の多様な山車の造形的特徴、象徴性、世界観、その仕組みと社会や環境との関係性などについて、継続的に取り組んできた。2013年度は第2 回国際シンポジウムを開催した。アジア各地に分布する舟形の山車とそこにみられる蛇や鳥のモチーフやデザインの象徴性、神話性をめぐって、ミャンマー、タイ、日本からの報告を中心に活発で意欲的な議論を重ね、アジアの山車の構成原理についての興味深い知見を得ることができた。さらに山車イメージと密接に関連する山や木の造形を巧みに表現しているインドネシアの影絵ワヤン・クリに用いられるグヌンガンについて、現地で調査を実施し、その造形的特徴、使用法や構成原理等が明らかになった。また日本で活躍するバリ島の人形遣い(ダラン)を招き、バリ島のワヤン・クリについての研究会および上演会を開催した。これらの一連の活動により、アジアの山車と山、木などとの関連性について把握し、アジアのデザイン語法を解明する手がかりを得ることができた。
著者
松本 祐子
出版者
聖学院大学
雑誌
聖学院大学論叢 (ISSN:09152539)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.133-143, 1999-03-25

Ursula Le Guin's The Tombs of Atuan is full of sexual imagery. The half-ring hidden in Tenar's dark underground world like an enormous womb is connected with the other half brought from the outside by Ged, which suggests fertilization. The romance between Ged and Tenar, however, does not follow as expected. Since the Tombs of Atuan is one volume of the series whose hero is Ged, Tenar, as a minor character, seems to be left alone and driven away from the stage at the end of the story so that Ged may continue his heroic adventure. It is never the weakness of women, however, that Le Guin lays emphasis on. The extraordinary power which fills the underground world of "Nameless Ones" symbolizes the unlimited energy of the nameless women oppressed for generations. Tenar, who combines directly opposed images of "a captured lady" and "the monster Minotaur", has acquired authority by accepting the conventional system, but her way of life is thoroughly passive. Tenar, as Arha, "the Eaten One", is robbed of her true name and personality and forced to be ignorant in exchange for false authority; then her oppressed curiosity is released by Ged and, with this as a trigger, Arha's identity collapses and that of Tenar's is restored instead. Tenar is charmed with Ged's magic power which is obtained by knowing the true nature of things, but in Tehanu, the last volume of "The Earthsea Quartet", the fact is shown that the magi's power obtained by neglecting their own sex is not the one Tenar should aim for. Le Guin attempts to give a new definition of power, describing an ordinary woman who struggles to be a perfect woman and have power and responsibility at the same time. The Tombs of Atuan is the story of beginning in which Tenar begins to walk in order to get power as a woman by leaving another self who was the innocent and ignorant "vessel of evil".
著者
尾形 昭逸 実岡 寛文 松本 勝士
出版者
日本草地学会
雑誌
日草誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.34-42, 1985
被引用文献数
2

暖地型飼料作物ダリスグラスCV.九州5号(Da),ローズグラスCV.カタンボラ(Ro),バヒアグラスCV.コモン(Ba),ソルガムCV.スィート(SS),ソルガムCV.ランチャー(Rs),トウモロコシCV.スノーデント1号(Zm),シコクビェ(Am),ハトムギ(Ha)を自動潅水装置で土壌水分をpF1.7,pF2.3,pF2.8の3水準に調節した水分処理区と無潅水区を設けた実験圃場下で栽培し,地上部・根部生育量,葉の水ポテンシァル,気孔抵抗,無機成分含有率を測定し,暖地型飼料作物の水ストレス耐性の草種間差と水ストレス耐性機構の解析を行なった。1)最高収量区に対する無潅水区の地上部相対生育量は,Da>Ro≧Ba>Rs>SS>Zm>Am>Haの順に大で,水ストレス耐性はDa,Ro,Baで高く,Zm,Am,Haで低く,Rs,SS,で中間的耐性を示した。2)水ストレスによりDa,Baの根重は増加,Ro,Zm,SS,Haでは低下し,その低下割合は水ストレス耐性の低い草種で大であった。また,水ストレスにより根部乾重/地上部乾重比(R-T比)は,水ストレス耐性の高い草種でより高い傾向にあった。3)葉の水ポテンシャルは,水ストレスにより低下し,その低下は,Da<Am<Ba<Rs<SS<Ha<Ro<Zmの順に大で,水ストレス耐性の低い草種の葉の水ポテンシャルの低下は大であった。4)気孔抵抗は,水ストレスにより増加し,その増加は,Zm>Ha>Rs>SS>Am>Ba>Da>Roの順に高く,水ストレス耐性の低い草種の気孔抵抗の増加は大であった。5)無機成分吸収量は水ストレスにより低下し,その低下割合は水ストレス耐性の低い草種で大であった。また,水ストレス耐性の低い草種ではカリ,カルシウム,マグネシウムに比較し,窒素,りん吸収量の低下が大であった。
著者
河崎 隆文 打越 大成 岩本 健嗣 松本 三千人 米澤 拓郎 中澤 仁 徳田 英幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.3, pp.1-8, 2015-02-25

全国の道路で老朽化が進行している.そのため,自治体による道路の維持管理がより一層求められているが,点検には特殊な車両が必要になり,そのコストが負担となる.また,車両の数が限られていることから,一度に点検できる範囲に限度が生じ,広域における点検が困難である.そこで,自治体の所有するごみ収集車やコミュニティバスなどの公用車の利活用によって,コストの低減や点検の広域化を図るため,本研究では特殊な車両を使用しない道路の点検手法を実現する.本稿では,路面標示の状態収集に着目し,天球カメラと半天球カメラを用いて路面標示を撮影し,その画像から擦り切れの有無を検出する手法を提案する.本稿の実験では天球カメラの RICOH THETA と半天球カメラの QBiC D1 を使用し,それぞれ車両に取り付けて走行した際の撮影と検出実験を行った.
著者
丸山 温 松本 陽介 森川 靖
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.427-432, 1996-11-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
21

樹冠上部の葉は,重カポテンシャル差によって常に下部と比べて乾燥状態におかれている。'この乾燥に対する適応を明らかにするため,スギ成木の梢端部と最下部の葉について,水分特性と形態的特徴の季節変化を調べた。梢端部の葉では,圧ポテンシャル(Ψp)を失うときの水ポテンシャル(ψWtip),飽水時の浸透ポテンシャル(ψSsat)が最下部と比べて低く,Ψpを維持しやすい特徴を持っていた。また,梢端部の葉では空隙の発達が抑制され,葉の単位体積当りの水分量も最下部と比べて多かった。すなわち,水分特性だけでなく,形態的にも梢端部の葉は乾燥に適応しており,このことがスギが高い樹高まで育つ重要な要因になっていると考えられる。
著者
柳原 崇男 北川 博巳 大森 清博 北山 一郎 松本 泰幸
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.6, 2008

【目的】本研究はロービジョン者の夜間歩行を支援するために、夜間の低い照度下でもロービジョン者が歩きやすくなる方法として、電柱等に取り付けたLED照射装置から光を照射し、道路面に連続したマークを用いた誘導方法を提案する。そこで平成19年に県道明石宝塚線歩道にて、LED照明を用いた誘導システムの実証実験を実施した。本研究の目的はこのLED照明を用いた夜間歩行支援システムの効果や課題を明らかにすることである。【方法】ロービジョン者21名に対し、上記で提案しているLEDを用いた誘導システム(以下:LED誘導マーク)に加え、市販の地面に埋め込むタイプのLEDも併設し、歩行実験を行った。実験方法はそれぞれの歩行速度、有効性等に関するアンケート調査を実施した。また、LED誘導マーク、埋め込み型LEDの有効性を把握するために、誘導システムが設置されていない区間(以下:LEDなし)も歩行してもらった。【結果】LED誘導マーク、埋め込み型LED、LEDなし区間20mの歩行時間と偏軌距離を比較した。その結果、歩行時間に関しては、埋め込み型LEDが一番早くなっていたが、統計的な有意差はなかった。偏軌距離に関しては、LEDなし(42.60cm)に比べて、LED誘導マーク(10.75cm)、埋め込み型LED(12.5cm)を用いることによって、より直線的に歩いていることがわかった。また、アンケート調査より、LED誘導マーク等のシステムのない場合と比べて、「歩きやすさ」だけでなく、「心理的負担の軽減」にも効果があることがわかった。【結論】歩行実験から歩行速度にはあまり大きな変化はないが、より直線的に歩行できていることがわかった。このことよりも、誘導性だけでなく、より安全な歩行を支援するという効果が見られた。意識調査より、LED誘導マークの設置間隔5mよりも埋め込み型LEDの設置間隔2mの方が高評価であるが、歩行速度、偏軌距離ではほぼ同程度の結果となっている。このことよりも、5m程度の間隔でも誘導性能は高いことがわかる。