著者
三田 朝義 松本 博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.111-116, 1978 (Released:2008-11-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

発酵によってdoughの内部に生成する炭酸ガス気泡の大きさとdoughの内圧の関係が調べられた.発酵20分位まではdough中の気泡の大きさはほとんど変化せず,その数のみが増加した.なおこの過程においてはdoughの内圧が著しく増舶した.発酵20~50分経過するとdough中の気泡の大きさは徐々に大きくなった.一方,内圧の増加速度は小さくなり,発酵40~50分ではほぼ一定となった.発酵50分以上経過すると気泡は合一を起し,その体積は非常に大きくなった.なお発酵50分以上になると内圧は不連続的に減少した.レシチンを添加すると発酵dough中の気泡の大きさは小さくなった.一方,内圧は大きくなった.またレシチンの添加により気泡の合一速度が小さくなった.
著者
松元 文子 松本 ヱミ子 高野 敬子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.348-352, 1960-11-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

1, 手ごねドウとミキシングドウを、ファリノグラム及びエキステンソグラムで比較すると、本質的な根違は別として、電力ごねの力は大きく、手で“よくこねた”場合(200回)においても、その力ははるかに小さく、また、手ごねの場合は、一応均質化されたかに見えるドウについても相当に違いのあることがわかった。ミキサー使用の場合でも、ファリノグラフにおいては、その回転速度によって、著しく製品の質に相違をもたらすといわれているから、電力ごねと手ごねの間の混捏操作に著しい達いのあることを思えば、その相違が更に大きくなることも止むを得ないものと考えられる。1図における抵抗値の変化はミキシング間のドウの性質を示すものであることはいうまでもないから、手ごねにおいては、その出発点(ミキシングタイム0点)における抵抗値が手ごね結果を表わすものとしての意味が大きい。即ち、手ごね0のドウは、対照の30秒ぐらいのドウに相応じ、従って、その後のミキシングによって大いに上昇を示すこと、対照に準ずる。手ごね150、200回のドウ(両者の出発点は一致している)は、その出発点がすでに対照の最高抵抗値に近く、従って、その後のミキシングによる上昇は殆んど示さない。その他のこね回数をみると、大体、20、40は出発点がこね回数0に近く、60、100は200回に近いところから、こね回数60回くらいで一応ドウの均質性を得られるもののように考えられる。手で “ざっとこねる” とは、手ごね60回以前の、まだ均質化されないドウの場合であろう。こね回数と0点における抵抗値の順位に狂いがあるのは、一定基準を保ったとはいえ、手ごねの操作上の違いと本機の再現性の弱さによるものと思われる。又、手ごねに対応するミキシング時間は、ファリノグラムとエキステンソグラムの問では、必ずしも一致しない。これは両者が何れもドウの性格を表わすものであるとはいえ、前者は混捏中のドウの抵抗値を示すものであり、後者はドウの伸張抵抗(いわゆる腰)と伸張度(いわゆる足)を示すもので、それぞれドウのちがう面を表わすものであるからであろう。2.ドウの“ねかし”を軟化による扱い易さの点から、エキステンソグラムでみると、一応まとまる程度にこねたドウでもねかしにより、充分軟化することができ、“こね”と“ねかし”の本質的な相違はあるとしても、ねかしはこね回数を節約することができ、30分までが最も効果的であった。しかし、ねかしにより、一旦軟化したドウは再びこねることで硬化し扱いにくくなるから、ねかし後の成形には注意を要する。実用の場合、ねかし時間の長いもの、成形後に放置するものなどのねかしの効果はドウの本質的な質向上や、製品の組織への影響をねらったものと思われる。
著者
羽間 稔 中野 正則 篠崎 雅史 藤澤 正人 岡本 恭行 柯 昭仁 岡 伸俊 浜口 毅樹 岡田 弘 松本 修 守殿 貞夫
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1047-1050, 1988-06

A case of a 32-year-old paraplegic male who fathered a girl following artificial insemination after an intrathecal neostigmine injection is described. The patient became a complete paraplegic after injury to the spinal cord caused by a traffic accident in 1971, resulting in ejaculatory disturbance. In June, 1984 the first intrathecal neostigmine injection was tried and 2.7 ml of semen was collected and offered to artificial insemination. However, the first to ninth attempt did not result in fertilization. The tenth attempt was made in March 7, 1986, and 3 ml of semen presenting 240 X 10(6) spermatozoa per ml with 5% of motile sperms was collected. This resulted in pregnancy, and the patient's wife delivered a healthy girl weighing 2552 g by cesarean section on November 19, 1986. This is the fourth case of a paraplegic who fathered a child following artificial insemination after an intrathecal neostigmine injection in the Japanese literature.
著者
酒井 智彦 田崎 修 松本 直也 鵜飼 勲 別宮 豪一 高橋 幸利 杉本 壽
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.258-264, 2009-05-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
16

フェノバルビタール大量療法で難治性痙攣をコントロールし得た 1 例を経験した。患者は50歳の男性。熱発・全身倦怠感で発症し, 4 日後に,脳髄膜炎を疑われ,前医へ入院となった。入院後から痙攣発作を認めるようになり,痙攣の持続時間は数十秒から30分程度であった。原因検索を行うと同時に,各種抗痙攣薬で痙攣のコントロールが試みられたが,痙攣の頻度は変わらず,前医第 9 病日に当センターへ転院となった。ミダゾラム,サイアミラール,プロポフォールなどの静脈麻酔薬を併用しつつ,抗痙攣薬で痙攣のコントロールを試みたが,痙攣は消失しなかった。経過中,血清中の抗グルタミン酸受容体IgM-ε2抗体が陽性であることが判明し,自己免疫介在性脳炎が強く疑われた。ステロイドパルス療法が著効しなかったため,フェノバルビタールの投与量を段階的に1,200mg/dayまで増量したところ,血中濃度が60μg/mlを超えたところで痙攣が消失した。その後,他の抗痙攣薬を順次中止し,フェノバルビタールの単剤投与としても,痙攣が再発することはなく,第76病日の脳波でも棘波は消失した。痙攣のコントロールに難渋する症例に対して,フェノバルビタール大量療法は効果の期待できる治療法であると考えられた。
著者
大瀧 宗典 松本 太郎 加野 浩一郎 徳橋 泰明
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.246-252, 2015-10-01 (Released:2016-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

脱分化脂肪細胞dedifferentiated fat cell (DFAT) は成熟脂肪細胞を天井培養することによって得られる多能性を有する細胞である.今回ヒトDFAT を用いた軟骨組織再生の可能性を検討した.ヒトDFAT を3 週間軟骨分化誘導培地にてペレット培養した結果,トルイジンブルーに異染性を示し,アグリカン陽性,II 型コラーゲン陽性の軟骨様組織の形成が認められた.3 週間ペレット培養したヒトDFAT を重症免疫不全マウスの皮下に移植し,移植2 週間後に皮下より摘出すると,より成熟度の高い軟骨様組織の形成が認められた.DFAT は少量の脂肪組織から簡便に大量調製が可能であることから,軟骨再生医療の新たな細胞源として期待できる.
著者
松本 竹久 松田 和之 本田 孝行
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.1053-1058, 2010-10-01

新しい知見 リボソームRNA(ribosome RNA,rRNA)遺伝子は,塩基配列を基に生物の系統分類の指標として用いられる.細菌を対象とした場合,rRNA遺伝子配列がわかれば,インターネット上のデータベースを利用することで細菌検査の経験がなくても,容易に属レベルもしくは菌種レベルでの菌名の推定が可能である.なかでも16S rRNA遺伝子は,菌種の登録の際に遺伝子配列の登録が義務付けられており,各菌種の遺伝子配列データが豊富に存在するため,菌種の同定に利用される.形態学的検査と生化学的性状検査では菌種の同定が困難な場合に,16S rRNA遺伝子配列を用いた検査が実施されるようになり,今までに報告されてこなかった菌種による感染症が報告されるようになってきた.
著者
米ヶ田 宜久 中島 喜代彦 松本 貴子 国中 優治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P1584, 2009

【目的】<BR> 当学院において本年度より地域貢献事業の一環として、転倒予防教室を開催している.内容は転倒に関するアンケート調査・おたっしゃ21によるリスク判定・運動機能検査・1時間程度の講話を行っている.特に参加者に自らの身体状態をできるだけ把握してもらうため、各種検査結果の迅速なフィードバック(以下FBとする)を重視している.そこで、迅速なFBを可能にする為に、Microsoft社のExcel2003(以下Excelと する)を用いて運動機能検査に関する結果の入出力方法を確立したので、検査内容並びに、その手法を報告する.<BR>【方法】<BR> FBする内容は1.血圧・脈拍・BMI等の基本情報、2.握力・下肢筋力、3.ファンクショナル・リーチテスト・外乱負荷・片脚立位を用いたバランス検査、4.歩行能力検査として5m歩行・Time up and Go testである.各種検査は東京都老人総合研究所の測定方法に則して行う.これらの測定結果を講話中に入力し、参加者個人毎にプリントアウトを行う.それらを参加者1人1人に直接、理学療法士が結果の説明を行っている.<BR>ソフトは結果入力シートと結果出力シート、判定用シートで構成される.測定データを結果入力シートに順次入力を行うと、身体運動機能のランクが結果出力シートに瞬時に表示される.ランクは5段階で数値の他に「注意が必要です」「非常に良い結果です」等のメッセージも同時に出力される.カットオフ値は判定用データシートに入力されており、性別・年齢の違いが適宜選択されるように設定されている.また、各々の検査種別の転倒危険境界点と測定結果を比較したグラフも出力され、これらのカットオフ値・メッセージ等は自由にカスタマイズが可能な仕様となっている.<BR>また、各々のデータは1つのExcel ファイルとして保存される.このファイルに保存されたデータを自動処理で読み取り、一覧表にするためのソフトもVBA(Visual Basic for Applications)を用いて開発した.このソフトにより結果をまとめる作業が不要となり、個人データの入力後すぐに統計処理等を可能とした.<BR>【結果と考察】<BR> Excelを用いることで、現在のITスキルを用いたデータの活用が容易となる.つまり直感的な操作を可能とするデータの入出力形式にしたことで、さまざまな病院・施設で簡易に使用でき、誰でも容易にデータの入力・出力が可能であることと、統一性および統合性をもったデータの処理とその蓄積が可能となった.<BR> 今後は利便性の向上を目的に無線LANを利用し、検査をしている現場でデータを入力し、結果の出力を可能にするシステム構築を目指す予定である.
著者
石原 吉明 渡邊 誠一郎 田中 智 山口 智宏 三浦 昭 山本 幸生 平田 成 諸田 智克 坂谷 尚哉 北里 宏平 松本 晃治 薮田 ひかる はやぶさ2LSS データ解析検討チーム はやぶさ2LSS データ作成チーム
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.139-143, 2017

<p>「はやぶさ2」は,C 型小惑星リュウグウ(Ryugu)にランデブーし,母船からのリモートセンシング観測及び小型着陸機によるその場観測を行うとともに,最大3 回の表面物質サンプリングを行うこととなっている.サンプリング地点には,リュウグウそのものや母天体,さらには太陽系形成時の惑星集積過程と物質進化について,最大の情報を得られる場所を選定する必要があるが,選定のために必要となる情報はランデブー後取得されるリモートセンシング観測の結果を待たねばならない.そのため,限られた時間の中で小惑星の特徴を把握し,安全性と科学価値の評価(Landing Site Selection, LSS)を行う手順を確立しておくことは必須である.本稿では,はやぶさ2 プロジェクトが来年に迫ったLSS 本番に向けて実施したLSS 訓練について概説する.</p>
著者
松本 誠一
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.53-63, 1967 (Released:2008-05-27)
参考文献数
19
被引用文献数
6 14

北陸地方に設定した細かい観測網による高層観測資料に基ずき,熱および水収支を1963,1964および1965年の3ケ年分の特別観測期間につき比較した。水蒸気の収束量はこの3冬とも殆んど同じ値を示しているが,降水量は年々非常に変っている。海面からの蒸発および対流輸送量の違いはかなりあるけれども,降水の変動には主として凝結した水分の輸送が関係している。6時間間隔の水蒸気輸入量を領域内の6時間降水量と比較すると,風下側の観測点の降水量とよい関係があることが分る。平均流束による発散で計算すると顕熱増加量は潜熱減少量のほぼ2倍になることが示される.この関係は観測網の大きさに関係なく,とくに雲層内でよく成立っている。差引き過剰の熱エネルギーは対流活動により輸送されているものと考えられる。強い降雪が観測されるときには対流活動が盛んで,海面から補給される熱エネルギーよりも多い熱エネルギーを雲層に輸送していることが示唆される。本研究は北陸豪雪特別研究の一環としてなされたものである。
著者
松本 純 長谷川 勝 松井 景樹
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. D, A publication of Industry Applications Society (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.132, no.1, pp.67-77, 2012-01-01
参考文献数
14
被引用文献数
1 12

In this paper, a novel position sensorless control method for interior permanent magnet synchronous motors (IPMSMs) that is based on a novel flux model suitable for maximum torque control has been proposed. Maximum torque per ampere (MTPA) control is often utilized for driving IPMSMs with the maximum efficiency. In order to implement this control, generally, the parameters are required to be accurate. However, the inductance varies dramatically because of magnetic saturation, which has been one of the most important problems in recent years. Therefore, the conventional MTPA control method fails to achieve maximum efficiency for IPMSMs because of parameter mismatches. In this paper, first, a novel flux model has been proposed for realizing the position sensorless control of IPMSMs, which is insensitive to <i>L<SUB>q</SUB></i>. In addition, in this paper, it has been shown that the proposed flux model can approximately estimate the maximum torque control (MTC) frame, which as a new coordinate aligned with the current vector for MTPA control. Next, in this paper, a precise estimation method for the MTC frame has been proposed. By this method, highly accurate maximum torque control can be achieved. A decoupling control algorithm based on the proposed model has also been addressed in this paper. Finally, some experimental results demonstrate the feasibility and effectiveness of the proposed method.
著者
松本 直人
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2018-IOT-43, no.8, pp.1-4, 2018-09-20

20 世紀末から続くインターネットの普及に伴い,情報システムを支えるデータセンターも規模拡大が続いている.そのような中でデータセンターでは,サーバー技術の発展に伴う単位面積あたりの熱密度増加も顕著になり,これらが持続可能なデータセンターのサービス提供とサーバー収容の課題となってきている.本稿では,これら高密度化するデータセンターにおけるサーバー等計算機向けの冷却方式について,今後も持続可能に成長を続けるために必要とされる方策について考察する.
著者
野里 洵子 宮本 信吾 森 雅紀 松本 禎久 西 智弘 木澤 義之 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.297-303, 2018 (Released:2018-09-26)
参考文献数
24

【目的】緩和ケアの研修・自己研鑽に関するニーズに影響する要因を探索すること.【方法】緩和ケア医を志す卒後15年以内の医師を対象に質問紙調査を行い,満たされないニーズ(以下ニーズ)を5件法で評価した.ニーズは因子分析を行い,各因子の平均点を従属変数,背景要因を独立変数として単変量解析を行った.【結果】対象者284名に対して回答者は253名(89%),初期研修医・緩和ケア専門医などを除く229名を解析対象とした.ニーズは,研究・時間・キャリア・ネットワーク・質・幅広さの6つの因子が同定された.ニーズの因子得点に効果量≥0.4の有意差があった背景要因は,1)認定研修施設に勤務していない,2)勤務先・研修先が大病院ではない,3)施設内緩和ケア医数が2名以下であった.【考察】認定研修施設ではない病院,または小規模,または緩和ケア医の少ない環境で働く若手医師が受ける研修体制の改善は優先度が高い課題と考えられる.
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.163-174, 2003 (Released:2003-12-31)
参考文献数
10

I 型アレルギー疾患治療薬の開発を目的として dimethyl-2-phenoxyethylsulfoniun p-toluenesulfonate 誘導体(1)におけるリード最適化を行った。3-ethoxy, 3-phenoxy, 2,3-diethoxypropoxy 誘導体が、経口投与で誘導ラット同種受身皮膚アナフィラキシー(PCA)の抑制作用を示した。さらに急性毒性とアセチルコリン様作用を考慮し、2-[4-(3-ethoxy- 2-hydroxypropoxy)phenoxy]ethylsulfoniun p-toluenesulfonate (11)を前臨床試験候補化合物として選択した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
Chem-Bio Informatics Society
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.25-38, 2012 (Released:2012-06-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1

スルホニウム化合物の分配係数 logK 値は実測されていなかったので、これまでは置換基の πの計算値のみを用いてQSAR解析を報告してきた。本研究においては、固定相としてオクチルシリル化されたシリカゲルプレート(Merck HPTLC RP-8 F253S)、移動相として 50%(V/V) エタノール水溶液を用いて、抗アレルギー剤である Suplatast Tisilate (IPD-1151) の開発におけるスルホニウム化合物の logK 値を測定した。最適化された化合物 52 および 67 (Suplatast Tosilate)の logKTLC値は、それぞれ 0.07 と 0.06 であった。従って、抗アレルギー剤としてのスルホニウム化合物の望ましい logKTLC の値はほぼ 0 であることが判明した。
著者
多田 幸雄 山脇 一郎 上田 修一 松本 宏 松浦 直資 安本 三治 江田 昭英 堀 幹夫
出版者
情報計算化学生物学会(CBI学会)
雑誌
Chem-Bio Informatics Journal (ISSN:13476297)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.84-93, 2001 (Released:2001-09-28)
参考文献数
12

スルホニウム化合物の物理化学的性質とその生物活性との相関を明らかにする目的で、スルホニウム化合物に特徴的な性質である H-D 交換およびメチル基転移反応速度を調べた。その結果H-D 交換およびメチル基の転移反応速度と急性毒性(LD50)の間に良好な相関があった。医薬品の開発において毒性をコントロールすることは非常に重要なことである。メチル基の高い反応性は急性毒性の面から望ましくない、従ってこれらスルホニウム化合物において、硫黄原子の置換基として不飽和炭素を持たない化合物が毒性軽減の面から望ましかった。さらに、OH 基もしくは COOH 基は大幅に毒性を軽減した。これらの毒性軽減に関する情報は抗アレルギー薬である Suplatast Tosilate の分子設計に用いられた。
著者
垂澤 悠史 松本 真弓 春山 成子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.115, 2010

1. はじめに<BR> 人間活動は自然環境と調和した文化景観を育み、生活・生業の在り方を表す景観地について、当該地域の風土により形成された景観地で日本国民の生活または生業の理解のために欠くことのできないものであり、これらを文化的景観と表現してきた(文化庁)。すでに、春山(2004)は中山間地域の星野村の棚田の文化的景観について、自然環境・人文環境の相互関係の中で成立していることを示し、当該地域の住民のアンケート調査から、「なじみの景観」の中に高い評価点を見出していることも示した。一方、域外からの来訪者の意識の中にはプロトタイプの日本の原風景としての棚田への強い意識の上に文化的景観の咀嚼が認められた。近年では、さらに広い空間を対象として、河川景観に着目して四万十川流域を重要文化的景観として評価されてきているが、必ずしも、河川流域の文化的景観に対しての評価手法が整えられてわけではない。<BR> そこで、今回、三重県、和歌山県、奈良県の県境を流れる一級河川である新宮川(熊野川)流域が世界遺産として登録されている中世以降の信仰地域としての景観を残していることに注目して、河川景観の中に残されている歴史文化的景観のフオトボイス分析手法によって文化的景観の分析を行おうとした。上流地域には林業地域としての景観、神社森を含めた歴史的信仰景観、水運景観が複雑に入り組んでおり、自然災害としての斜面崩壊地、土砂災害などの自然災害と防災に取り組む景観も含まれている。新宮川の美しい自然景観の中に人類の多様な営みの景観が独特に共存しているのである。<BR><BR>2. 景観をとらえる手法について<BR> 文化的景観は局地的な微気候・表層地質と地形・植生などの自然的な環境要素を基層として、この上に成り立っているさまざまな人間の社会的な活動を反映している。ここには、歴史的・民俗的・文化的な要素が複雑に関係生を均衡させている。それらの諸要素の解釈にむけて、将来に向けた河川景観についての評価を考えるために、景観評価を画一的な手法で分析を試みようとした。ここではフオトボイス分析を用いることにした。また、景観評価にかかわり当該地域の住民の心象風景についての聞き取り調査を行った。現地調査は2009年10月、2010年5月に行い、新宮市の教育委員会での資料探査、新宮川河口部から本宮までの河川景観の写真撮影とその解釈を行った。<BR><BR>3. 新宮川(熊野川)の河川流域の中に残る信仰景観<BR> 新宮川下流には速玉神社と神社森、本宮の神社森が重要な信仰空間として上下流に対置している。いずれの社寺地も河川に隣接している。また、日本有数の豪雨地帯を背後に抱えているために、本宮は新宮川の洪水に伴って河道変遷が生じたために、神社社寺地の空間的な立地は大きく変化を受けた。しかし、旧社寺地は神社森として河道近くに保存さており、河川流域の変化を記憶として残している。一方、河川・河道においては、かつての重要な参宮路としての水運のための航路の歴史的な痕跡が残されている。現在、防災施設の設置によって河川景観は大きく変動してはいるが、俯瞰しうる河川景観には信仰景観を大きく感じることのできる空間である。<BR><BR>文献<BR>春山成子編著(2004)棚田の自然景観・文化景観、農林統計協会出版
著者
冨田 雅典 小林 純也 野村 崇治 松本 義久 内海 博司
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第54回大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2011 (Released:2011-12-20)

線量率効果は、線量率が低くなると、総線量は同じでも、生物効果が低くなる現象であり、長い照射時間の間に亜致死損傷の回復が起こるためであると古くから考えられている。しかしながら、低線量率放射線照射下におけるDNA2重鎖切断(DSB)修復の分子機構は、いまだに十分解明されていない。高等真核生物では、DSBは非相同末端結合(NHEJ)と相同組換え(HR)により修復される。我々は、さまざまなDSB修復遺伝子欠損細胞を用いて、線量率効果におけるDSB修復機構の役割について検討を進めている。NHEJに関与するKU70、HRに関与するRAD54、およびKU70とRAD54をともに欠損したニワトリDT40細胞を用い、γ線連続照射に対する影響を解析した結果、低線量率域でもっとも高い感受性を示した細胞はKU70-/-細胞であった。この要因を広い線量率範囲で解析するために、京都大学放射線生物研究センターの低線量長期放射線照射装置を用いて重点領域研究を開始した。これまでの研究から、0.1 Gy/hのγ線照射下において、RAD54-/-、RAD54-/-KU70-/-細胞と比較して、KU70-/-細胞ではより顕著なG2 arrestが起こり、その後アポトーシスが生じることを明らかにした。今後、線量率を下げて変化を解析する予定である。 また、NHEJに関与するDNA-PKcsを欠損したヒト脳腫瘍細胞を用い、低線量率照射後の細胞生存率を解析した結果、照射開始後ある一定レベルまで低下した後は、照射を継続してもそれ以上変化しないことが明らかになった。この結果は、低線量率放射線の生体影響を考える場合、細胞のターンオーバーが重要な要因となることを示している。 低線量率放射線の組織への影響を考える場合、幹細胞への傷害の蓄積性が問題となる。特にdormantな幹細胞では、NHEJが重要な役割を担うと考えられ、NHEJを欠損したマウスの造血系幹細胞が加齢に伴い枯渇することも報告されている (Nijnik et al. 2007、他)。細胞での結果をもとに、低線量率放射線の生体組織影響におけるDNA修復機構の重要性について議論したい。