著者
小林 敬一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.297-305, 1995-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
15

Various resources can be used to prevent from forgetting things: for example, habitual actions to use external memory devices, metamemory knowledge of external memory devices, script knowledge for planning, and others' aids. The availability of the resources is not equal for anyone, however. The purpose of the present study was to examine developmental changes in contents of the available resources and the relationships among the resources for elementary school children in their homes. The questionnaires concerning the resources were administered to seventy second graders, sixty-six fourth graders, seventy-one sixth graders, and their parents. As results, the children's knowledge increased with grades, while parental aids decreased with grades. Significant (marginally significant) correlation between children's knowledge and parental aids were found in fourth graders only. Moreover, there was a significant (marginally significant) correlation between children's habitual actions to put the room in order and children's script knowledge in fourth and sixth graders, although differences in habitual actions among graders were not significant.
著者
原田 脩平 加藤 仁志 栗林 朋宏 轟木 信彦 吉澤 和真 松澤 正
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.F3P3585, 2009

【目的】マッサージにおいて効果が大きいとされている血液循環改善について検討した.本研究では下腿にマッサージを施行し,その前後の末梢側(足背)と中枢側(大腿)それぞれの皮下血流量の変化を明らかにすることを目的とした.<BR>【対象】対象者は循環障害などの疾患に問題のない健常大学生15名(男子9名,女子6名,平均年齢20.7±1.3歳)とした.ヘルシンキ宣言に基づき全対象者に同意を得た.なお,本研究は群馬パース大学の研究倫理委員会の承諾を受けて実施した.<BR>【方法】対象者を背臥位にして,マッサージ施行前後で末梢・中枢側の皮下血流量と血圧を測定し比較した.皮下血流量を測定するプローブは末梢側では足背,中枢側では大腿前面中央に貼付した.マッサージ試行の3,2,1分前のデータを測定し,基準値を決定した.続いて左下腿部に10分間マッサージを施行し,終了直後,5,10,15,20分後のデータを測定した.手技は下腿全体へ軽擦・圧迫・揉捏法を施行した.また,マッサージ施行前後に最大・最小下腿周径を測定し比較した.統計学的分析はWilcoxonの符号付順位検定にて行った.<BR>【結果】マッサージ施行後に末梢側・中枢側共に血流量が増加した(p<0.05).両者の変動は類似しており,5分後に減少し再び上昇した後,徐々に下降した.収縮期血圧において施行直後に低下がみられ,その後に大きな変動はなかった(p<0.05).下腿周径は最大・最小共に,施行後に減少した(p<0.05).<BR>【考察】マッサージ施行後に血流が増加したのは,マッサージにより滞っていた末梢側の血液が中枢側へ送られ,施行部の静脈管やリンパ管が空虚になり,そこへ新しい血液が急激に流れ込んだために血流量が上昇したと考えた.また,血流の変動は血流の上昇により中枢側へ流れ込んだ血流が滞り,血流量は5分後には施行前に比べ減少した.その後,滞っていたリンパ液が徐々に左静脈角で静脈に吸収されたことでリンパの流れが再び改善し,血管の周囲に張り巡らされているリンパ管による圧迫も軽減したことで,10分後の血流は再び上昇したと考えた.中枢側と末梢側による血流変化量については,同様な変化を示したため,浅・深膝窩リンパ節より上位のリンパ本幹で滞っていることが示唆された.血圧については,マッサージ施行により静脈環流量,心臓への血液流入量が増加した.それに伴い一回拍出量や心拍出量も増加したことで圧受容器が感知し,血管を拡張させた.これにより血管抵抗が低下し,血圧が低下したと考えられた.下腿周径において,施行前 後で有意にその値が低下したのは,末梢に滞っていたリンパ液が中枢側に還流されたためと考えた.本研究により,皮下血流量の上昇,血圧の低下,下腿周径の減少が認められたため,マッサージの血液循環の改善は認められた.
著者
川島 崇 川本 峻頌 積田 大介 下山 翔 宗政 一舟 友松 祐太 林 邦興 高木 友博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1E201, 2018 (Released:2018-07-30)

近年,インターネット上でユーザに対して店舗の紹介を行うサービスが増えてきている.各サービスでは同時に,ユーザの嗜好に合った店舗を表示させる分析が幅広く行われてきている.推薦の分野ではユーザのクリック情報が十分に存在する時には協調フィルタリングが高い性能を誇る.一般的にユーザ×アイテムの行列を作成した際データスパースの問題が発生するので新規ユーザに対応することが難しい.また十分にデー タが得られなかった場合,バンディットアルゴリズムなどを応用しているケースが見られる.バンディットアルゴリズムは各アームを十分に試行してそれぞれから報酬を得ることで学習を進めていくためアイテム数が多くなった場合に全てを学習するのは実質的に不可能である.新たなユーザが出てきた時に十分にデータを集める必要性は協調フィルタリングと同様の問題がある.上記の問題を解決すべく本稿では強化学習の価値関数の更新に多層ニューラルネットを用いた深層強化学習による推薦システムの提案を行う.
著者
林 玲子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.331-336, 2012 (Released:2012-07-05)
参考文献数
23

分娩の痛みは個人差があるが,陣痛の刺激により母体の血圧上昇,過呼吸を生じるような場合は二次的に臍帯血管の収縮,子宮胎盤血流低下をきたし,さらには間接的に胎児への酸素供給低下などの影響を起こしうることがわかっている.よって硬膜外麻酔による無痛分娩は,母体の痛みを取り除くだけではなく胎児に起こりうる二次的な悪影響を防ぐことが可能である.母体への硬膜外麻酔が与える胎児・新生児への影響は直接的,間接的なものが考えられるが,臍帯血流の維持を念頭に硬膜外麻酔による合併症の早期発見がなされるような麻酔管理が行われていれば,麻酔の利点を最大限に胎児・新生児に還元することが可能である.
著者
森 文秋 丹治 邦和 若林 孝一 三木 康生
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ストレス顆粒は、ストレス状況下で、RNAとRNA結合タンパク質によって細胞質に形成される。神経変性疾患においてRNAからタンパク質への翻訳過程を制御することで、異常たんぱくの産生ならびにタンパク質の異常凝集を防ぐとされる。本研究では、多系統萎縮症患者ならびに正常対照の剖検脳組織、αシヌクレイノパチーの細胞モデル、さらに、シヌクレイントランスジエニックマウスを用いて、ストレス顆粒ならびに細胞内分解系に関連するタンパク質の動態を検討した。多系統萎縮症のαシヌクレイン封入体の形成過程、神経細胞死との関連を明らかにすることで、多系統萎縮症の予防治療戦略の可能性を示した。
著者
磯部 裕 小林 薫 柴山 健爾 石井 幹十
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.18, no.20, pp.19-24, 1994
被引用文献数
2

W-VHS VCR has been developed as a next generation consumer VCR in response to Hi-Vision and NTSC signals. This VCR has a high picture quality using new video signal processing technologies by new Metal-coated tapes, TCI signal processing and Temporal Emphasis. It has an excellent cost/performance ratio as a Hi-Vision VCR developed on the basis of the VHS system.
著者
佐藤 洋介 高尾 昌幸 近藤 拓也 大森 茂樹 斉藤 剛史 三宅 英司 門馬 博 倉林 準 八並 光信
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0271, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 我々は、第46回日本理学療法学術大会でバドミントン選手において、股関節内転可動域は立位での回旋動作に影響することを報告した.体幹の動作解析は、前後屈における腰椎骨盤リズムなど矢状面上の解析が多く報告されているが、回旋動作の動作解析を報告したものは少ない状況である.体幹の回旋動作は日常生活、スポーツでも頻繁に行われる動作であり、同動作で症状を訴える症例は臨床でもよく経験する.それらの症例を前にして、体幹の回旋動作に影響する因子を知っておくことは、障害予防・パフォーマンス向上においても重要であると思われる.本研究は、健常成人を対象に回旋動作の2次元動作解析を行い、メディカルチェック(以下、MC)との関連性を明らかにし、評価・治療の一助とすることを目的とした.【方法】 対象は立位における体幹回旋動作で痛みが生じない健常成人47名(男性37名、女性10名、平均年齢25.4±3)とした.静止画撮影は、デジタルカメラ(HIGH SPEED EXILIM EX-ZR 10BK、CASIO)を用い、反射マーカを両側肩峰・両側第5肋骨・両上前腸骨棘の計6点に貼り、正面から行った.運動課題は、足隔を肩幅に開いた静止立位から体幹の立位最大回旋動作を行った.運動課題時は、体幹回旋時に肩甲帯の前方突出を防ぐため、上肢を固定した.さらに口頭にて足底全面接地、両膝関節伸展位保持を指示し、確認しながら計測を行った.得られた画像に対して画像処理ソフトウェアImageJで各反射マーカの座標を求め、肩峰・肋骨・上前腸骨棘レベルにおいて静止画像と体幹回旋後の画像から左右のマーカの直線距離を算出し、三角関数を用いて回旋角度を求めた.MCは、関節可動域表示ならびに測定法:日本リハビリテーション医学会(以下、ROM)に準じた方法で、座位体幹回旋、股関節内転、股関節内旋(背臥位)の可動域を測定した.さらに腹臥位で膝関節90度における股関節内旋(以下、股関節内旋(腹臥位))可動域を測定した.得られた座位体幹回旋、股関節内転、股関節内旋(背臥位)の可動域は、関節可動域の参考可動域を基準として、制限がある群とない群の2群に分類した.股関節内旋(腹臥位)の可動域はこの計測データにおける中央値を基準に、制限がある群とない群の2群に分類した.体幹の立位最大回旋動作時の肩峰・第5肋骨・上前腸骨棘の各レベルに対する回旋角度について、一元配置分散分析を行い、要因の主効果が認められた場合に多重比較検定を行った.有意水準は危険率5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属法人における倫理委員会の許可を得た.対象には、ヘルシンキ宣言をもとに、保護・権利の優先、参加・中止の自由、研究内容、身体への影響などを口頭および文書にて説明した.同意書に署名が得られた対象について計測を行った.【結果】 座位体幹回旋制限群と股関節内旋(腹臥位)制限群の双方は、肩峰、第5肋骨、上前腸骨棘の各レベルにおいて有意差を認めた(P<0.05).股関節内転可動域制限群は、肩峰レベルでのみ有意差が認められた(P<0.05).背臥位での股関節内旋可動域制限群は各レベルで有意差を認めなかった.【考察】 前回報告したバドミントン選手における傾向と同様に、体幹の立位最大回旋動作は、股関節内転が参考可動域より下回ることで、制限を受けることが認められた。体幹の立位最大回旋動作と股関節内旋(腹臥位)とで関連性が認められた.股関節内旋(腹臥位)は、測定肢位が股関節中間位であり、股関節周囲の軟部組織における緊張が、立位と同様である点が反映したものと考えられた.股関節内旋(背臥位)と体幹の立位最大回旋動作で関連性が見られなかったのは、股関節内旋可動域(背臥位)は股関節屈曲位で測定するため、軟部組織の緊張や股関節面の適合度が立位での回旋動作と異なったためと考えられた. 今回の結果では、座位体幹回旋と股関節内旋可動域(腹臥位)と、体幹の立位最大回旋動作との関連が考えられた.股関節内旋可動域(背臥位)は立位での体幹回旋動作と関連しないと考えられた.体幹の立位最大回旋動作は、股関節中間位における関節面適合度と股関節周囲における軟部組織の影響が及ぶと考えられた.同じ股関節の運動で、肢位によって関連性に差がみられたことから、各種作業やスポーツ動作それぞれに応じた姿勢で評価しなければ動作を反映しているとは言い難く、姿勢に合わせた評価・治療が重要であると考えた.【理学療法学研究としての意義】 体幹の回旋動作は日常生活、スポーツ動作でも頻繁に行われる動作である.今回の実験結果から、立位での体幹回旋動作は体幹回旋可動域と腹臥位での股関節内旋に着目していく必要性が示唆された.
著者
山本 麻里子 井出 直仁 北島 信三 大林 正和 淺田 馨 松島 暁 伊藤 政治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.11, pp.1479-1483, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
17
被引用文献数
5

Empagliflozin reduces blood glucose levels independently of insulin secretion by reducing glucose reabsorption in the proximal renal tubules through inhibition of sodium-glucose cotransporter 2 (SGLT2). Because SGLT2 inhibitors have a different mechanism of action to conventional antidiabetic drugs, recommendations have been issued about the management of specific side effect such as ketoacidosis, urinary tract infection, and genital infection. There have been some reports of SGLT2 inhibitor-associated euglycemic diabetic ketoacidosis (euDKA), but there have been few reports about euDKA in patients with type 2 diabetes using SGLT2 inhibitors while on a low-carbohydrate diet. Here we report a patient who developed euDKA after starting a very low-carbohydrate diet while taking empagliflozin. A 51-year-old man was hospitalized with nausea and vomiting, and investigations revealed metabolic acidosis. euDKA was diagnosed from the information about medications in his drug notebook and a history of eating a low-carbohydrate diet (1900 kcal, consisting of 5.7% carbohydrate, 21.1% protein, 47.3% fat and 25.9% alcohol) for 4 d. The patient improved after infusion of acetated Ringer's solution with 5% glucose and administration of regular insulin. It is necessary for physicians and pharmacists to thoroughly inform patients about the side effects of SGLT2 inhibitors such as ketoacidosis, urinary tract infection, and genital infection. Patients should also be advised about the higher risk of euDKA associated with a low-carbohydrate diet while taking SGLT2 inhibitors.
著者
小林 雄一郎
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2017年度は、申請書に記した研究計画に則り、ライティングおよび自動採点および自動フィードバックに関する先行研究の調査と整理にあたった。その作業の結果、本研究課題と関連し、学術的にも有用であるものを選定し、2018年度中にliterature review論文を投稿・発表する予定である。また、ライティングの自動評価に向けて、語彙や文法に関する項目だけでなく、談話に関する項目に関する研究を行った。具体的には、母語と習熟度の異なる学習者のデータを定量的に分析することで、ライティングにおける談話能力の発達と、発達過程における母語の影響を調査した。この調査に関しては、Corpus Linguistics 2017で研究発表をしたのち、Journal of Pan-Pacific Association of Applied Linguisticsに論文として発表した(Developmental patterns of metadiscourse in second language writing)。そして、自動評価に関する技術的な研究として、Conference of the International Federation of Classification Societies 2017において、機械学習を用いたテキスト分類に関する発表を行った(Automated speech scoring: A text classification approach)。統計学・情報科学のオーディエンスが多く来場し、言語学・言語教育の学会とは異なる議論や情報交換ができ、有益な示唆を得た。
著者
峯木 真知子 小林 正彦
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.53-57, 2000-02-20

卵黄球の大きさは卵黄の部位や鶏卵の品種の違いによって異なる(峯木と小林,1997 ; 峯木,1999)。卵黄球の大きさと卵の大きさの関係を調べた。また,卵黄一個中にどのくらいの数の卵黄球が包み込まれているのかを検討した。大きさの異なる市販卵を用い,重量を量り加熱した。加熱した卵黄の外層部,中層部,内層部に存在する卵黄球の横断面積,最大幅,最大長を画像処理技術で測定した。卵黄球の横断面積は,3.20×10^3〜9,88×10^3μm^2で最大幅は60〜99μ,最大長は71〜124μであった。外層部の卵黄球は中層部より小さく,内層部は中層部より大きかった。卵黄球の大きさは全卵の重量および卵黄の重量と正の相関があった。1個の卵黄に含まれている卵黄球の数を,卵黄と卵黄球の体積から計算した。その結果,卵の大小にかかわらず,卵黄球,の数は約1.8×10^7個であった。小さい卵には小さい卵黄球が,大きい卵には大きい卵黄球が存在した。
著者
大和 広明 浜田 崇 田中 博春 栗林 正俊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.197-212, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本論文の目的は,長野市を対象にヒートアイランド現象と冷気湖および山風との関係について,土地利用から求めた都市化率と標高に着目して明らかにすることである.寒候期の晴天静穏夜間の100事例を対象に日没時刻を基準とした気温のコンポジット解析をした.日没後2時間半以降に気温が都市部で高く郊外で低い,明瞭なヒートアイランド現象の気温分布が見られた.日没後数時間後には冷気湖も発達し,日出前まで冷気湖の底に明瞭なヒートアイランド現象を伴う気温分布が確認された.長野市中心部では山風が吹いている時に,中立に近い都市境界層が形成されていた.山風による力学的混合により都市境界層が維持されていた可能性が考えられた.また,日没後6時間過ぎ以降は郊外から都市に向かう冷気の流れの存在が示唆され,この流れが冷気湖の底でヒートアイランド現象の強さを若干弱めるものの,ヒートアイランド現象の気温分布を維持していたと考えられた.
著者
林 研
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.621-645, 2014-12-30 (Released:2017-07-14)

ジェイムズの学説「信じる意志」は、情的本性に基づく信仰を正当化する試みだが、何でも好きなように信じてよいということではない。想定されているのは「生きた」仮説を信じるか疑うかの葛藤状態であり、そこでの実践倫理が問題なのである。人間心理において、蓋然性と望ましさは分離し難く、証拠なしには信じない態度も実は誤謬への恐怖に基づく。その一方で、人間本性には証拠がなくとも信じる暗黙の合理性がある。それならば倫理的基準としては証拠よりも、プラグマティズムが要請する帰結の整合性の方が相応しいとジェイムズは考える。さらに、宗教は「事実への信仰がその事実を生み出す助けになりうる」命題であり、その真理性を検証するにはまず信じなければならない。つまり、ジェイムズの言う「信じる」は盲信ではなく、整合性を検証しつつ真理を生み出すことである。この場合、救いを求める者にとっては、信じることが懐疑に優越すると言うことも可能になる。
著者
奥野 勉 上野 哲 小林 祐一 神津 進
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.85-89, 2013-05-25 (Released:2013-06-27)
参考文献数
8

目的:ガラス製品を製造する工場では,作業者は,炉,溶融ガラスなどの高温の物体が発生する強い可視光へ曝露される.ブルーライトと呼ばれる短波長の可視光への曝露は,網膜障害(photoretinopahy)を引き起こす可能性がある.本研究の目的は,ガラス製品の製造に伴って発生するブルーライトを定量的に評価することである.対象と方法:クリスタルガラス工芸品を製造する工場において,炉の内部の壁と発熱体,および,炉内に置かれたガラス材料の分光放射輝度を測定した.炉は,2基の再加熱炉,3基の溶解炉,1基の竿焼き炉を調べた.測定された分光放射輝度から,ACGIHの許容基準に従って,実効輝度を計算し,これを許容値と比較した.また,それぞれの光源について,分光放射輝度を黒体の分光放射輝度と比較し,その温度を求めた.結果:測定された実効輝度は,0.00498–0.708 mW/cm2srの範囲にあった.実効輝度は,1,075–1,516 ℃の温度の範囲において,温度と共に急速に上昇した.それぞれの光源の実効輝度は,同じ温度の黒体の実効輝度とほぼ等しかった.考察:炉の内部の壁と発熱体,および,炉内に置かれたガラス材料の実効輝度は,1日の曝露時間が104 sを超える場合の許容値である10 mW/cm2srの十分の一以下であった.したがって,これらの光源を見たとしても,網膜障害の危険性はないと考えられる.ただし,光源の温度が約1,800 ℃以上である場合には,実効輝度は,許容値を超えると推定される.このような高温の光源がガラス製品の製造の現場にある場合には,ブルーライトによる網膜障害の危険性があると考えられる.
著者
五十里 洋行 後藤 仁志 小林 祐司 藤原 聖史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_853-I_858, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1

大規模な津波が海岸堤防を越流する際には裏法肩近傍において顕著な圧力低下が生じ,それによって被覆ブロックが離脱・流出することが知られている.本現象の再現計算においては,激流中を運動するブロックを追跡する必要があり,これまでに十分に再現可能な三次元数値モデルは存在しなかった.そこで,本研究では,移動物体の追跡の容易な粒子法を用いた数値モデルの開発を行う.本数値モデルでは,極端な負圧の発生によるtensile instabilityに対応するために圧力ノイズの低減を目的とした高精度スキームを導入するが,それに若干の修正を加えることで計算時間を5~6割程度に短縮した.本数値モデルの適用により,堤防裏法面に設置された被覆ブロックが堤越流の作用によって回転しながら離脱・流出する過程が良好に再現された.
著者
小林 保
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第51回理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
pp.116, 2001 (Released:2002-05-10)

構造力学における荷重は単位の異なる3種類がある。超関数を用いればこれらを統合して表示でき、集中力はディラック関数の特異点で表示される。超関数の理論は、ディラック関数の特異点について、「関数値は存在しない。」と説明するのみであり、集中力の存在感が希薄になっている。筆者は、超関数の特異点の特徴を「定積分の集中」と把握することを提案する。これを用いて、「関数擬値」を定義し、「材軸線に沿う座標と関数擬値の対応」により、荷重の分布を表示する。
著者
田中 隼人 小鳥居 英 横澤 賢 若林 楓芽 木本 和代 佐野 恵子
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.26-41, 2015-02-28 (Released:2018-03-30)
被引用文献数
1

Diverse aquatic organisms are living in the immediate freshwater environments such as the rice field, pond and ditch. This study reports a freshwater ostracod fauna of rice field and spring from Fuji and Fujinomiya, Japan. We found 14 species (13 genera), and Pseudocandona pratensis (Hartwig, 1901) is newly recorded from Japan. The morphological characters, distribution in Japan, and taxonomic remarks are provided for these species. And also five species were given the new Japanese name. We discussed on the distribution of Dolerocypris ikeyai Smith and Kamiya, 2006 and Stenocypris hirutai Smith and Kamiya, 2006 found from rice field. Both species has been reported from runoff of spring, seeps, interstitial environment. We regarded their reduced swimming setae on antenna as an adaptive character to shallow and gently water flow. Population of rice field of this two species could be originated from the source of an irrigation channel, and they might be incidentally stayed in the rice field.
著者
松島 公望 林 明明 荒川 歩
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
pp.1730, (Released:2019-10-21)
参考文献数
38

This study examined the relationship between Christian religious consciousness (CFC) and subjective well-being for Japanese Christians. Members of the Roman Catholic Church (status of denomination: Believers, n=58; Leaders, n=61) and of the A subgroup of the Holiness Church (status of denomination: Believers, n=646; leaders, n=102) participated in the research. Based on factor analysis, we developed a scale of CFC that contained three factors: “Christian doctrine-based belief,” “norms of religious activities,” and “relationship with other church members.” Hierarchical multiple regression analysis on CFC and subjective well-being showed that the people who had high “Christian doctrine-based belief” or a high “relationship with other church members” have high subjective well-being, and that they were partially influenced by subjective well-being among denominations. However well-being was not influenced by status of denomination. These results indicate that subjective well-being rests largely on CFC, although a small portion of it rests on the type of denomination.
著者
小林 伸生 Nobuo Kobayashi
雑誌
経済学論究 (ISSN:02868032)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.399-423, 2009-12-15