著者
森崎 玲大 小島 仁志 金澤 朋子 村田 浩一 小谷 幸司
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.597-602, 2020-03-30 (Released:2020-06-09)
参考文献数
17

This study targeted six exhibition zones with different characteristics at the Yokohama Zoo “Zoorasia ,” which grasped visitor satisfaction at each exhibition zone, clarified the relationship between visitor satisfaction and the purpose and attributes of visitors, identified the management and operation issues at each exhibition zone from a visitor satisfa ction perspective, and examined the factors that led to its occurrence. Ultimately, the aim of this study was to discuss a response policy in relati on to the management and operation policy of Zoorasia. The main results of this study are as follows:(1) Visitor attributes are classified into three types. (2) The degree of visitor satisfaction varies by exhibition zone and visitor type. (3) The factors affecting overall visitor satisfaction vary by exhibition zone and visitor type. (4) The management and operation issues (important improving items) vary by exhibition zone. With the above results, the response policy was discussed by relating issues in the management and operation of each exhibition zone with the current management and operation policy.
著者
佐倉 統 平石 界 池田 功毅 中西 大輔 横田 晋大 三浦 麻子 小森 政嗣 松村 真宏 林 香里 武田 徹 水島 希
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

放射線リスクの認知特性と社会内拡散動態を明らかにし、風評被害や差別の抑制に貢献することが目的である。個人の認知的特性を対象とする行動免疫班の実験は、放射線リスクに対する忌避感情が当初の予想より強固で制御困難であることを明らかにした。放射線リスク関連情報のツイッターでの動態を解明するソーシャルメディア班は、放射線についての否定的感情が強力であり、他の災害リスクと異なる拡散パターンを確認した。抑圧的でないリスク管理の方途を考察する社会実装班は、感染症などの過去の風評被害や差別の事例との比較分析やメディア論的考察をおこなった。研究遂行および成果発表は福島の研究者や生活者と共有することを心がけた。
著者
網田 和宏 大沢 信二 西村 光史 山田 誠 三島 壮智 風早 康平 森川 徳敏 平島 崇男
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.17-38, 2014-02-28 (Released:2014-05-28)
参考文献数
45
被引用文献数
2 3

温泉起源流体としての変成流体を探索するために,西南日本の前弧域の中央構造線沿いに湧出する高塩分温泉において,温泉水や付随ガスを採取し化学・同位体分析を行った。その結果,和歌山と四国地域で採取した温泉水試料から,現海水や浅層地下水に比べて水素・酸素安定同位体組成の大きく異なる温泉を見出した。四国地域の温泉起源流体は,Li-B-Cl相対組成やHe同位体システマティクスから,続成流体の一つであることが確認された。一方,和歌山地域の温泉起源流体は,続成脱水流体とは異なるLi-B-Cl相対組成を示し,また高い3He/4He比を有していることから,大分平野で得られたものと同様,その起源が変成脱水流体にあると判断された。和歌山,大分の温泉起源流体と四国,宮崎のそれでは,付随ガスの化学組成において前者がCO2に富むのに対して後者はCH4に富むという明瞭な違いが認められ,また,和歌山と大分の付随ガスに含まれるCO2の大半が,沈み込み帯の火山ガスと同様に,海成炭酸塩に由来するものであることが示された。さらにこれら起源流体のLi-B-Cl相対組成は,続成脱水流体と火山性熱水流体のそれの中間的な値を示した。これらの結果は全て,和歌山と大分の温泉起源流体が,沈み込むフィリピン海プレートより脱水してきた変成脱水流体であることを示唆しているものと考えられた。
著者
森山 至貴
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-18, 2022 (Released:2023-06-30)
参考文献数
24

2021年現在,男性中心社会における男同士の内輪のルールや雰囲気などに批判的に言及するために,アカデミズムの内外において「ホモソーシャル」という概念が多く用いられている.しかしその用法は,しばしばこの概念の出自として言及されるE. K. セジウィックの用法とは異なるようにもみえる.このような状況をさしてホモソーシャル概念の「乱用」と言われたりもする. 本稿では,ホモソーシャルという語の「乱用」に思える多義性を,削ぎ落とすのではなく適切に制御することでこの語をよりよく使うことができると主張し,そのための指針を提示することをめざす.具体的には,セジウィックを中心に,他の論者によるものも含めたこの語の用法の検討を通じて,セジウィックのホモソーシャル概念がその多義性ゆえに説明力をもったこと,したがって,概念の厳密化はむしろ望ましくないことを示す.その上で,セジウィック以後のホモソーシャルの用法を検討することで,セジウィックのホモソーシャル概念を自身の記述の文脈に応じて再形成することが有用である,と主張する.
著者
大谷 吉生 江見 準 森 治朔
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.240-247, 1992-03-10 (Released:2009-11-12)
参考文献数
9
被引用文献数
4 3

円形断面を持つ正負に分極したエレクトレット繊維からなる帯電フィルターの初期捕集効率推定式を, クーロン力, 誘起力, さえぎりが作用する場合について導出し, 実験結果との比較を行うことによりその式の妥当性を検証した.さらに, エレクトレットフィルターの捕集効率の経時変化を, 湿潤空気, 固体粒子, 液体粒子を流した場合について実測し, 集塵性能の安定性について実験的に検討した.その結果.エレクトレット繊維の電荷は湿潤雰囲気中でも安定であることがわかった.また.固体粒子を濾過した場合, 本実験で使用したような1μm程度の微細繊維からなるフィルターでは, 捕集された粒子による電荷の中和速度に比べてさえぎり効果の増加速度が大きいため, 捕集効率は時間とともに上昇することがわかった.しかし, 有機物質からなるミストの濾過にエレクトレットフィルターを用いると, 粒子が無帯電であっても液滴が繊維表面を被うため, 電荷の中和あるいは電界の遮蔽が起こり, 捕集効率は徐々に無帯電フィルターの捕集効率まで低下することが確かめられた.
著者
椎橋 章夫 大橋 克弘 山名 基晴 森 欣司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.791-801, 2007-02-15

鉄道の自動出改札システム(AFC: Automatic Fare Collection system)は,高密度輸送におけるピーク時の乗降客に対応するための高速性と金券である乗車券を処理するため高信頼性が不可欠である.しかし,無線通信方式のIC カード乗車券は旅客の使用方法に依存するため,データの読み取りの不確実,不完全が発生する(これを「データ抜け」と呼ぶ).東日本旅客鉄道株式会社のSuicaシステムでは「データ抜け」が発生してもシステムを止めることなく,データの信頼性を確保できるように「自律分散整合化技術」を導入していたが,その有効性を評価する手法を持たなかった.そこで,東京工業大学森研究室との連携のもと,自律分散整合化技術の有効性を評価する手法として,機能信頼性評価法を研究し,その評価技術を確立した.この結果,得られた最適パラメータをSuica システムに導入し,その有効性を実証した.
著者
森川 岳大
出版者
北海道大学公共政策大学院
雑誌
年報 公共政策学 (ISSN:18819818)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.137-158, 2020-03-31

This paper aims to contribute to the discussion of Japan's end-to-life policy by comparing the institutional framework concerning Advance Care Planning (ACP) and Advance Directive (AD) of elderly people. Upon making the comparative analysis, the paper concludes by making the following policy recommendation for Japan: (1) establishment of the death with dignity act; (2) improvement of decision-making system at the end of life; (3) development of information sharing system for advance directives.
著者
榎本 雅夫 森田 裕司 齋藤 明美 安枝 浩
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.39-44, 2009-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

スギ花粉症の有病率は,日本の「国民病」といえる程に高い.一般的な治療には,マスクやメガネなどを使用したスギ花粉の回避によるセルフケアと第2世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬を用いたメディカルケアがある.しかし,医療機関を受診せず,いわゆる健康食品を利用した「セルフメディケーション」を行っている患者も多い.その1つに,スギ花粉をカプセルに詰めたものがある.2007年2月に,そのカプセル服用後に,アナフィラキシーショックを呈した49歳,女性を経験した.この症例の特異的IgE抗体やヒスタミン遊離試験はスギ花粉に対して陽性であった.内容物に含まれる主要抗原のCryj1量は少なかったが,この製品に含まれるスギ花粉以外にアナフィラキシーショックの原因は考えられず,服用後行ったテニスによる運動誘発アナフィラキシーショックと考えるのが妥当と結論した.
著者
森 靖夫
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1_241-1_262, 2008 (Released:2012-12-28)

This article examines the struggle for the control of the army between the army and political parties.   In prewar Japan only military offices could assume the military ministers. It has commonly been accepted that this rule made it difficult for civilians to control the Army and it was the decisive power resource of the army. However, this view cannot explain why party cabinets between 1924 and 1932 failed to institutionalize civilian control over the army and how the army reacted to the establishment of party politics in this period.   This paper mainly provides two new views. First, in the 1920s, the army agreed reluctantly to give up military minister posts to parties due to the rise of parties. Second, in spite of this compromise of the Army, the Army still maintained these posts because the prime ministers and the army ministers agreed to avoid a rapid rule change and control the army by their leadership.   The failure of civilian control in prewar Japan did not stem solely from formal rules. Party cabinets could develop their power and control the Army by aggressively enforcing formal rules and taking their initiative. Yet, they failed to establish their political supremacy over the Army in the 1920s and it led to militarism afterward.
著者
西川 哲成 和田 聖二 和唐 雅博 田中 昭男 大森 佐與子
出版者
大阪歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

われわれは歯科医療従事者の肺における金属沈着を調べるため,肺癌の歯科技工士の剖検例で得られた肺の各種金属の濃度を熱中性子放射化分析法で測定した.さらに,その他の職種の患者の肺癌剖検例2例および心疾患患者の剖検例3例についても,同様に肺の金属を測定し比較検討した.その結果,歯科技工士の肺には,各種金属(Au,Ag,Co,Cr,Cu)の濃度は他の職種の患者より増加した.これらの金属は歯科用金属としてよく使用されて,またAuやCrはアレルギー,そしてCrは癌の原因物質と考えられていることから,肺への影響が懸念される.つぎに,歯科医療従事者の肺癌リスクとその組織的特徴を調べる目的で,大阪府立成人病センターで悪性腫瘍と診断された60歳以上の男性患者のうち,歯科医療従事者24例を含む4,138例を検索した.癌患者のうち肺癌患者の比率は,歯科医療従事者では41.7%で,歯科医療以外の患者19.7%であった.また,肺癌患者の歯科医療従事者10例の組織型では扁平上皮癌が10.0%,腺癌が80.0%,大細胞癌が0.0%そして小細胞癌が10.0%であり,歯科医療以外の肺癌全患者812名の組織型ではそれぞれ35.3,36.3,5.8および18.0%であった.以上,歯科医療従事者の肺癌発生頻度は高く,その組織型については腺癌が多いことが推察される.また,歯科医療従事者の毛髪に含まれる金属の沈着を調べるため,30歳以上の男性の歯科医療従事者15名(歯科医師9名,歯科技工士6名)と,30歳以上の男性でその他の職業のヒト5名計20名の毛髪を採取し,熱中性子放射化分析法によりAl,Au,Co,CuおよびVの含有量を測定した.その結果,歯科医療従事者の毛髪ではその他の職業のヒトの毛髪と比べ,Al,Au,Co,CuおよびVの含有量は増加した.以上の結果から,歯科医療従事者は肺癌リスクの高い職業であることが推察され,職場環境の改善が望まれる.
著者
森田 弘行
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学論集 = Journal of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13454242)
巻号頁・発行日
no.21, pp.17-28, 2020-03-20

新美南吉の「ごんぎつね」は,現在小学校4 年生の国語の教科書にすべて掲載され,数多くの授業実践が行われている.しかしながら,子供たちが教科書で学んでいる「ごんぎつね」は,草稿の「権狐」と,同じものではない.なぜなら,教科書に掲載されている「ごんぎつね」は,鈴木三重吉の添削によって,大幅に改変された「ごん狐」とほぼ同じものだからである.そこで,本論文では「ごんぎつね」「ごん狐」「権狐」の三つの作品を比較,検討しながら,子供の素朴な疑問に焦点を当て,教師に必要な素材研究について論じた.また,新美南吉の生い立ちや生まれ育った愛知県半田市岩滑の地域社会における伝承や歴史などにも言及しながら論を展開した.
著者
大森 優子 松崎 晋一 中島 雅子 河井 利恵子 岡田 克之 桑島 信
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.319-325, 2016 (Released:2016-12-05)
参考文献数
20

活動性結核が院内で発生した場合には他者への感染拡大が重大な問題となる.2009年当院入院後に感染対策を施行されていない4名の患者から肺結核が診断され,約130人に接触者健診を実施した.この事例を機に60歳以上で喀痰培養を行った入院患者を対象に,抗酸菌検査の依頼がない検体について検査室で抗酸菌塗抹検査を追加し排菌結核患者のスクリーニングを行った.調査期間は2010年9月から2014年12月とした.追加した抗酸菌塗抹検査は2,646検体でありこのうち5検体で結核菌が検出された(全体の0.19%).また介入前後の塗抹陽性肺結核患者12人の比較を行い,抗酸菌塗抹検査を追加する介入によって接触者健診対象者が56人減少し,接触者健診を1人減少させるために要する追加費用は868円であり,接触者健診1人当たりの費用2,933円と比較して安価であった.スクリーニング検査により早期に結核を診断し感染曝露の危険性を低下させることは,結核の院内感染対策として非常に重要である.今回の結果より入院時および入院中の患者から提出されたすべての喀痰検体に抗酸菌塗抹検査を行うことが,活動性肺結核患者の早期発見さらには接触者健診数の減少につながる可能性が示唆された.一方入院後14日以上検体が提出されなかった症例もあり,できるだけ早期に検体が提出されるよう医師を対象とした啓発活動や診断サポート体制の整備も不可欠と考えられた.
著者
遠藤 秀紀 山崎 剛史 森 健人 工藤 光平 小薮 大輔
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-25, 2014

ハシビロコウ(<i>Balaeniceps rex</i>)の咽頭腔と舌骨を三次元 CT画像解析により検討した。咽頭と頭側の食道は,左右両側へ著しく拡大していた。巨大な咽頭と頭側の食道,固定されていない柔軟な舌骨,退化した舌が観察された。これらはハシビロコウがその採餌生態に特徴的な大きな食魂を受け止めることを可能にしていると考えられた。ハシビロコウの咽頭腔領域の構造は,大きな食塊を消化管へ通過させる柔軟な憩室として機能していることが示唆された。また,舌骨,口腔,咽頭腔,頭側の食道腔に左右非対称性が観察された。この非対称性もハシビロコウが大きな魚体を嚥下することに寄与している可能性がある。