著者
西 祐樹 生野 公貴 南川 勇二 中田 佳佑 大住 倫弘 森岡 周
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.21-22, (Released:2023-02-08)

本研究では,しびれ感を呈する中枢神経系疾患におけるしびれ同調経皮的電気神経刺激(TENS)の効果を検証した.しびれ感を呈する脳卒中患者2名,脊髄損傷患者2名,多発性硬化症患者1名の5名における上肢計8部位を対象とした.介入手続きは,マルチプルベースラインデザインを採用し,ベースライン期,介入期,フォローアップ期を28日間の間で設定した.介入期は7日間とし,しびれ感に同調したTENSを1日1時間で実施した.各期において,しびれ感の強度をNRSにて毎日聴取した.症例間効果をケース間標準化平均値差,症例内効果をTau-Uにて算出した.その結果,症例間効果では,しびれ感はしびれ同調TENS介入期に有意に改善し,その効果量も高いことが示された.また,フォローアップ期においても,その効果は持続していた.一方,症例内効果は全症例において介入期で高い効果量を認めたが,脊髄損傷患者1名の両手指は同一疾患の他症例と類似した重症度にもかかわらず,フォローアップ期で有意な改善を認めなかった.中枢神経障害によるしびれ感に対するしびれ同調TENSの一定の有効性を示唆されたが,介入効果に関わる要因について詳細な調査が必要である.
著者
吉田 英爾 柳澤 宏昌 田辺 雅幸 森本 泰臣 伊地知 雅典 小池 大介 Paul Boyadjian Tamas Liszkai
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.580-584, 2021 (Released:2021-08-10)

NuScale社が開発している小型モジュール炉(SMR)は,2020年8月にNRCがFSERを発行し,米国における標準設計認証を取得している。NuScale SMRは受動安全系を備えており,設計基準事故のみならず設計基準を超過する事故においても運転員操作に頼らずに事故収束が可能で,また公衆への社会的リスクも大幅に低減できる,革新的な軽水炉である。米国においては,従来の軽水炉との違いを考慮し,適用規定の除外等,合理的に許認可プロセスを進めている。本報では,NuScale SMRの特徴と,日本国内導入に向けた安全規制の在り方についての課題を提起している。
著者
岡 明彦 天野 祐二 内田 靖 香川 幸司 高取 健人 北嶋 直人 園山 浩紀 多田 育賢 楠 龍策 福庭 暢彦 大嶋 直樹 森山 一郎 結城 崇史 川島 耕作 石原 俊治 木下 芳一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.1804-1813, 2013 (Released:2013-10-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

保存的加療にて軽快した餅による消化管障害(イレウス,潰瘍)の8例を報告した.既報を含めた検討では,餅による消化管障害には,次のような特徴がある.(1)イレウス,穿孔,潰瘍がある.(2)50~60歳代の男性に多く,義歯や早食いが誘因となる.(3)発症数は10月から増え1月に最も集中.(4)イレウスでは腹膜刺激症状,穿孔をともないやすい.(5)硬くなった餅はスネアで破砕可能.(6)餅のCT像は「均一」な「高濃度」であり,CT値は145HU前後である.
著者
大磯 毅晃 石坂 健彦 森崎 耕一 小谷地 進太 浅川 尚熙 国武 陽子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.131-133, 2020-08-31 (Released:2020-12-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

1989年の千葉東金道路建設の際にトウキョウサンショウウオの生息地が確認され,1993年から1995年にかけて同道路近傍に代替産卵池の整備がなされた。2016年から2020年にかけて,その整備効果を把握することを目的として,地元大学との共同で同池及び周辺地域において産卵状況調査を行った。その結果,同池周辺地域において既存産卵水域は乾燥化などによる消失が多くみられた。一方,同池では年間平均100個以上もの卵塊が確認された。以上より,当池は整備後20年以上経過した現在も,なお効果を十分に発揮しており,道路建設により整備したビオトープが地域個体群の維持に欠かせないものとなっていることが示唆された。
著者
阿曽 三樹 島雄 周平 岩崎 和美 井上 忠典 森村 司 岡田 しのぶ 三原 基之
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.352-358, 1989-04-01 (Released:2012-03-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

自家感作性皮膚炎1例, 尋常性乾癬4例, 計5例の患者に0.05% difluprednate軟膏30∼60g/dayを単純塗布し, 血清11-OHCS値, 末梢循環好酸球数, 血糖値の変動並びに臨床効果を観察した。外用中, 血清11-OHCS値は40g/day塗布3例中2例で明らかな低下が認められたが, 30g/day, 60g/day塗布各1例では低下は認められなかつた。末梢循環好酸球数は30g/day, 40g/day各1例で明らかに減少した。血糖値は40g/day 1例で一過性に上昇した。臨床効果は非常に優れていた。Difluprednate軟膏はその臨床効果と比較すると, 副腎皮質機能抑制作用は軽度であり, 臨床効果と全身作用の分離を示すコルチコステロイド外用剤と考えられた。
著者
糸川 嘉則 斉藤 昇 森井 浩世 矢野 秀雄 小林 昭夫 木村 美恵子
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本総合研究はマグネシウムの疾病予防に及ぼす影響について調査研究、実験的研究、臨床的研究など多方面から検討を加えたものである。食事調査の研究では単身赴任者など種々な階層についてマグネシウム摂取量を算出したが、どのグループの推奨摂取量の300mg/日に達せず、日本人はマグネシウム不足状態にあることが示唆された。動物実験ではマグネシウム欠乏状態が他のミネラルのアンバランスを起こすことが解明された。即ち、マグネシウム欠乏ラットはマンガン欠乏、鉄欠乏が誘発されることが解明された。また、高リン食ラットでは副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、腎臓カルシウムの沈着、活性型ビタミンD_3が減少が起こるが、食餌中マグネシウム量を増加させるとこのような異常が改善することを明らかにした。寒冷に暴露された綿羊では血漿中マグネシウム濃度が上昇した。血漿中マグネシウム濃度とクレアチニン濃度の間に正の相関が認められたことより、腎臓の糸球体濾過量の減少が血漿マグネシウム濃度の増加の一因になったと思われる。PTH分泌が増加している5/6腎臓摘出ラットではマグネシウム欠乏により高カルシウム血症が認められた。また、マグネシウム欠乏腎不全ラットでは低カルシウム液の還流により、PTH分泌が上昇することを認めた。SHRSPを用いた研究では飲料水にマグネシウムを添加して与えると、脳血管障害の発展を防止することを解明した。臨床的な研究では女性の高血圧患者と糖尿病患者では尿中マグネシウム、カリウム、アルドステロン排泄量の間に密接な関連があることが観察された。シクロスポリン誘発低マグネシウム血症では血清マグネシウム濃度が低下し、尿中マグネシウム排泄量も減少した。しかし、リンパ球マグネシウム濃度は増加した。シクロスポリンはマグネシウムを細胞内に流入させる作用がある。陸上長距離選手は運動により尿中マグネシウム排泄量が低下した。
著者
森田 英明 大矢 幸弘
出版者
国立研究開発法人国立成育医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

疫学研究から衛生的な環境になったことがアレルギー疾患数の増加に繋がっている可能性が示唆されているが、そのメカニズムは不明な点が多い。衛生的な環境を作り出す契機一つとして合成洗剤の一般家庭への普及が挙げられるが、興味深いことに、アレルギー疾患の有病率の増加はこの合成洗剤が爆発的に普及した時期と一致している。そこで本研究では、環境塵中に界面活性剤が高濃度に存在する場所の特定、アレルギー性炎症惹起につながる界面活性剤の種類の同定、コホート研究を用いた環境塵中の界面活性剤の濃度とアレルギー疾患発症の関連性の検証を通じて、環境塵中の界面活性剤のアレルギー疾患発症への関与の詳細を明らかにすることを目指す。
著者
窪寺 恒己 天野 雅男 森 恭一 青木 かがり 篠原 現人 西海 功 大泉 宏 庄司 隆行
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中深層性大型イカ類に関しては、特殊水中ビデオカメラ・ライトを開発し深海の環境を乱すことなく、それらの行動生態を記録し生物量の推定を試みた。2011年には小笠原沖でNHKと共同して有人潜水艇から世界初となるダイオウイカの生態観察・撮影に成功した。一方マッコウクジラに関しては、加速度マルチロガーと超小型水中カメラロガーを直接取り付けることにより、潜水中の行動を3Dで捉えることに成功し、餌となる大型イカ類を追跡・捕獲する行動パターンを明らかにした。また、深海の腐肉食性ベントスの蝟集実験を行い、蝟集物質の科学的組成を解析するとともにベントス群集の時間的変遷を明らかにした。
著者
室城 智志 中谷 隼 栗栖 聖 森口 祐一 花木 啓祐
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.II_221-II_228, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
37
被引用文献数
3

関東地方における耕地へのソーラーシェアリング(農地において営農を継続しながら太陽光発電を行う技術)の導入を検討する.作物類別に遮光への適応性が異なることを考慮し,パネルの設置比率と減収率の関係を定式化した.また,農作物の作付面積に対して,許容される減収率や地域の系統連系の空容量などの制限因子を考慮した発電ポテンシャル量を推計した.推定の結果,関東地方におけるソーラーシェアリングの導入賦存量は定格容量で65.1GW,年間発電量は69,118GWh/年であった.制約条件を考慮した導入ポテンシャルの算出結果から,電力系統への連系に関する制約条件によって最も強い制約を受けることが分かった.地域全体の収量を維持する制約条件では,農作物の導入優先度を設定し,減収分は各都県内の耕作放棄地で営農を再開することで導入ポテンシャルは最大化されることがわかった.また,ソーラーシェアリングは従来の耕作放棄地における通常太陽光発電設備の導入以上のポテンシャルを持つことが明らかとなった.
著者
森 数馬 岩永 誠
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.495-509, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
101
被引用文献数
2

While enjoying music and other works of art, people sometimes experience “chills,” a strong emotional response characterized by a sensation of goose bumps or shivers. Such experiences differ from having goose bumps as a defense response or from shivering in reaction to cold temperatures. The current paper presents the phenomenon of music-induced chills and reviews the chill-related emotional response, autonomic nervous system activity, and brain activity. It also reviews the musico-acoustic features, listening contexts, and individual differences that cause chills. Based on the review, we propose a hypothetical model regarding the evocation of music-induced chills. Furthermore, we investigate the strong emotional response associated with chills by exploring the relationship between music-related chills and non-music-related chills, and discuss future research directions.
著者
森永 康子 福留 広大 平川 真
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.109-115, 2022-03-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
29

Despite a large gender gap, life satisfaction among women has been nearly equal to or even higher than that among men in Japan. We investigated the relationship between life satisfaction and system justification using two existing datasets and two preregistered surveys administered to Japanese adults (total N=2,833), employing two scales—system justification for gender disparity in annual personal income (Existing dataset 1 and Survey 1) and gender system justification (Existing dataset 2 and Survey 2). In line with previous research, we found that life satisfaction among women was nearly equal to (Existing datasets 1 and 2 and Survey 1) and significantly higher than (Survey 2) that among men. Contrary to our prediction, women were less likely to endorse system justification than men across four datasets. However, as expected, we found a palliative function of system justification among women across four datasets—women who strongly justified the existing system displayed higher life satisfaction than women who weakly justified it.
著者
工藤 慎一 桑原 保正 Zoltán Korsós 市来 弥生 森田 将史 浅野 泰久 中村 泰之 田辺 力
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.135-137, 2014-10-05 (Released:2019-04-25)
参考文献数
9

We observed egg-brooding behavior in two Japanese millipedes, Eutrichodesmus elegans (Miyoshi, 1956) (Polydesmida: Haplodesmidae) and Cryptocorypha sp. (Pyrgodesmidae), under field conditions. In the former, females remained curling the body around the soil-made mound-like egg-chamber (containing eggs) constructed on dead leaves in the litter. In the latter, a female brooded an egg-mass under the bark of a decaying fallen log.
著者
桜井 雄太 森 貴久
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.11-15, 2016-03-31

We investigated whether Japanese land snails like hydrangea in rain season, which is a typical image for Japanese. Wesurveyed five sites in Uenohara, Yamanashi, central Japan, to collect land snails and record vegetation between May andJuly, 2006. We found more than 400 snails of eight species, most of which were Euhadra peliomphala and Acusta despectasieboldiana. E. pelimphala were found on leaves of hydrangea more frequently than expected from vegetation at the sites,whereas A. despecta sieboldiana were frequently found on other leaves of plants than hydrangea, cherry and Poaceae grass.We also tested whether E. pelimphala prefer hydrangea leaves to cherry or Poacea leaves by experiments in a laboratory, andfound no preference of hydrangea to other species. These findings suggest that the image of land snails on hydrangea duringrain season is a biologically correct image at least for E. pelimphala , but the snail is not necessary prefer hydrangea leavesmuch better to other plants.
著者
三浦 麻子 鳥海 不二夫 小森 政嗣 松村 真宏 平石 界
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.NFC-A_1-9, 2016-01-06 (Released:2016-01-08)
参考文献数
27
被引用文献数
8

In this article, we investigate “retweeting in Twitter” or information transfer behavior in social media to figure out some characteristics of our information processing behavior in emergency situation from social psychological perspective. We made an exploratory log analysis of Twitter focusing on the relationship between diffusion of disaster information and user's emotional response on them. Disaster-related tweets which were retweeted over 10 times around the time of the Great East Japan Earthquake were extracted and emotional words in them were categorized and counted. Frequently retweeted tweets tended to include more negative (anxious or angry) or active emotional words than positive or inactive words. As results of multiple and quantile regression analyses, negative (especially anxious) or active emotional words in tweets had a significant effect on the increase of retweeting regardless of a kind of disasters. The results were discussed in terms of the difference with those based on common tweets.
著者
森田 善仁 讃岐 美智義 世良 昭彦 木下 博之
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.111-116, 2003-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

心停止をきたした脚気心症例を経験し,PCPS下に,ビタミンB1を静注し救命しえた。48歳男性。ショック,呼吸困難のため当院に緊急搬送された。来院時,重篤な循環不全と代謝性アシドーシスを認めた。カテコラミンや重炭酸ナトリウム投与,IABPによる循環補助によっても症状の改善を認めず,心臓カテーテル検査中,心停止をきたしたためPCPSを導入した。諸検査後,心筋梗塞,肺梗塞,心タンポナーデを否定し,病歴から脚気心を疑った。ビタミンB1100mgを静注後,2時間でアシドーシスの改善がみられ,6時間で循環動態が安定したためPCPSを離脱した。原因不明のショック,アシドーシスでは,脚気心を疑い,速やかにビタミンB1を投与するべきである。