著者
横山 めぐみ
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p><はじめに></p><p></p><p>入院中の患者さんが,在宅復帰に求める事の1つに排泄自立があげられることが多い。尿閉・頻尿などの排尿障害,また入院中やむをえず尿道カテーテルを挿入し抜去後に排泄障害をきたし入院期間が延長をされることがある。当院では,泌尿器科医師・看護師・療法士による排尿ケアチーム(以後ケアチーム)を立ち上げ,入院中,尿道カテーテル抜去後に伴う尿失禁・尿閉等の下部尿路障害を生ずると見込まれる方・排尿障害がある方へ包括的な排泄ケアの取り組みを始めた。介入は始まったばかりだが現場から排泄ケアの現状を報告させて頂く。</p><p></p><p></p><p></p><p><方法></p><p></p><p>大腿骨頚部骨折で当院入院・手術された方のうち平成28年7月よりケアチームが介入した入院患者(以下対象患者)7名(うち尿道カテーテル挿入・抜去者6名),女性7名,平均年齢87.86歳,ケアチーム介入時と退院時のFIM・厚生労働障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)(以下自立度)の経過をおい,ケアチーム介入前の同対象入院患者12名(同年4月~6月入院患者・男性1名女性11名,平均年齢83.33歳)の比較を行った。</p><p></p><p></p><p></p><p><結果></p><p></p><p>対象患者は,ケアチーム平均介入3回,尿道カテーテル挿入者の挿入平均日数12.3日,導尿を必要とした人数6名,尿意回復はFIM項目尿意利得:平均1.57(-1・0が3名)。入院時・退院時の利得は,自立度1.75,FIM20.8,FIM項目別で尿意1.78便意1.08移乗トイレ2.86トイレ2.71下更衣2.71,ケアチーム介入後は自立度2.43,FIM25.1,FIM項目別で尿意1.57便意1.43移乗トイレ1.00トイレ2.33下更衣2.92となった。介入前では,尿意自立8名,動作修正自立以上は6名。介入後は尿意自立に至った4名がFIM項目移乗トイレ・トイレ・下更衣が修正自立~自立となった。</p><p></p><p></p><p></p><p><結語></p><p></p><p>今回ケアチーム介入前後で尿意利得に著明な差は認められなかったが,自立度・FIMの点数では利得が認められた。ケアチームの早期介入により看護師へ排泄への意識づけ,療法士が適切な排泄用具・環境の設定を行うこと,トイレの時間誘導の徹底により排泄・移乗回数増大により排泄動作自立への1つの要因になったと考えられる。</p><p></p><p>排尿の失敗は自尊心・自信の低下,不安や自己嫌悪をもたらしその人のアイデンティティをも揺るがせない問題で患者さんの今後の生活を大きく左右される可能性がある。排尿自立は,在宅生活再開の鍵であり,ケアチームの介入により総合的にアセスメントし包括的な排泄ケアの充実と療法士の個別の患者さんへのアプローチが必要となる。排尿障害において,排尿機能のみでなく多様な運動機能障害を有している点から療法士による姿勢・体幹評価を含めたより包括的な関与や個々の症例に合わせた運動指導が重要と考える。患者さんの状態は様々であり,介入早期から療法士は各々に対し理学療法,姿勢・動作確認,排泄用具の決定・環境調整,トイレ時間誘導の適切な介入を行い早期自立へ導くことが望ましいと考えられる。</p>
著者
桝本 妙子 山田 陽介 山田 実 中谷 友樹 三宅 基子 渡邊 裕也 吉田 司 横山 慶一 山縣 恵美 伊達 平和 南里 妃名子 小松 光代 吉中 康子 藤原 佳典 岡山 寧子 木村 みさか
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.390-401, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
43
被引用文献数
6

目的 地域在住自立高齢者の転倒リスクとその関連要因および性差を検討した。方法 京都府亀岡市の65歳以上の全高齢者の中で要介護 3 以上を除く18,231人に対して2011年 7~8 月に行った自記式留め置き式質問紙調査への回答者13,159人のうち(回収率72.2%),要支援・要介護認定者を除く「自立高齢者」12,054人について分析した。調査票は個別に配布し郵送で回収した。調査内容には,基本属性,鳥羽らによる転倒リスク簡易評価指標 5 項目,日常生活圏域ニーズ調査基本チェックリスト25項目,老研式活動能力指標13項目を用い,高齢者の諸機能や生活機能の低下の有無を示す 9 つの指標(①運動機能,②低栄養,③口腔機能,④閉じこもり,⑤物忘れ,⑥うつ傾向,⑦ IADL,⑧知的能動性,⑨社会的役割)で調査した。分析は,性,年齢別の転倒リスクとその関連要因および性差をカイ二乗検定とロジスティック回帰分析により把握し,9 つの評価指標を独立変数,年齢と教育年数を共変量,転倒リスクを従属変数とするロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行って各要因による転倒リスクへの独立した影響を性別ごとに分析した。結果 本調査回答者の過去 1 年間の転倒率は20.8%で,転倒リスク高群は26.6%であった。転倒リスクは,男女とも加齢とともに高くなり,女性はすべての年齢層において男性よりも高かった。また,男女とも,すべての評価指標と転倒リスクとの関連がみられ,それぞれの要因を調整した結果では,男性は運動機能,低栄養,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に,女性は運動機能,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に有意な関連がみられ,運動機能低下は男女とも最も強い要因であった。性差では,低栄養,口腔機能は男性の方に,IADL,知的能動性は女性の方に転倒リスクとの関連が強かった。結論 地域在住自立高齢者の 5 人に 1 人は過去 1 年間に転倒を経験し,4 人に 1 人は転倒リスクを有していた。転倒リスクと 9 つすべての評価指標との間に有意な関連がみられ,とくに男女とも運動機能低下が最も大きかった。また,転倒リスクに影響する要因に性差がみられ,性別を考慮した支援策が必要と示唆された。
著者
吉村 美紀 加藤 陽二 新田 陽子 横山 真弓
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.95-99, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
17
被引用文献数
5 1

野生シカ肉の有効活用を目的として,オスジカ,メスジカの肉重量および栄養成分の差異について検討した。試料は,兵庫県丹波地域において2010年9月,11月,12月に捕獲したニホンジカを使用した。オスジカの平均体重は46.4 kg,肉重量は16.7 kg,歩留率は35.6%,栄養成分は100 gあたりタンパク質21.2 g,脂質0.4 gを示した。メスジカの平均体重は36.3 kg,肉重量は13.1 kg,歩留率は35.7%,タンパク質20.5 g,脂質0.7 gを示した。メスジカは,オスジカより小さいが,肉の歩留率は同等で,脂質量は増加傾向にあった。オスジカ,メスジカとも捕獲月による肉重量および栄養成分値の差異は小さかった。肉の部位別では,オスジカ,メスジカともモモとスネの重量割合が高く,肉の部位間での栄養的特徴の違いは小さかった。
著者
横山 士吉 益子 信郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.637-645, 2000

分子構造の繰返しに, アゾベンゼン色素を有するデンドリマーが高い分子内組織性を有し, 超分極率を有効に増幅していることを示した. 分子集合体から発生する2次非線形光学現象の起源は, 反転対象中心のない分子配向構造であるので, デンドリマーが分子内で高度に組織化し1軸配向を有していることが明らかとなった. 本研究では超分極率の測定をHyper-Rayleigh散乱法で行い, 解析したデンドリマーの2次非線形光学特性は, 溶液中における分子コンホメーションに反映している. したがって, デンドリマーの分子組織構造が, 分子内の自己組織化によって構築されていることを示すとともに, 観察した超分極率の増幅がデンドリマー組織体によって発現した特異な現象であることを示した. 本誌では, 以上の結論に併せて, 詳細を量子化学的に考察する目的でデンドリマーの3次構造と非線形光学現象について分子動力学計算と分子軌道計算を用いて解析した.
著者
澤 由貴 周本 剛大 横山 岳生 三井 一鬼 兼島 孝
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-19, 2020
被引用文献数
1

<p>掻痒性皮膚炎をシクロスポリンA(CyA)で治療していた,去勢オス,8歳のスコティッシュフォールドが慢性の消化器症状を主訴に来院した。A/G比の低下,抗猫コロナウイルス(FCoV)抗体価の上昇を認めたため,免疫力低下からのFCoV持続感染を疑いCyAを休薬した。その後,掻痒の管理が困難になったためにオクラシチニブを使用したところ,消化器症状は改善して抗FCoV抗体価も低下した。しかし1年半後に腎臓に腫瘤を認めリンパ腫と診断したため使用を休止した。オクラシチニブは猫の掻痒性皮膚炎に効果を示すが,高用量投与時の免疫抑制には注意すべきだと考えられる。</p>
著者
三上 泰正 川村 陽一 横山 裕正
出版者
青森県農林総合研究センター
巻号頁・発行日
no.41, pp.23-44, 2007 (Released:2010-04-05)

水稲新品種‘まっしぐら’は、青森県農業試験場(現青森県農林総合研究センター)において、「中生」熟期でいもち病抵抗性と障害型耐冷性が強い極良食味品種の育成を目標に、‘奥羽341号’を母、‘山形40号’を父として人工交配を行い、その後代から育成された粳種である。1999年から‘青系138号’の系統名で「あおもり米優良品種の選定試験(水稲奨励品種決定調査)」に供試され、2005年3月に奨励品種に指定された。‘まっしぐら’の出穂期は‘むつほまれ’より1日程度‘ゆめあかり’より1?2日程度遅く、成熟期は‘むつほまれ’並で、‘ゆめあかり’より2?3日程度遅く、熟期は「中生の早」に属する。草型は「偏穂重型」で、稈長は「短稈」、倒伏抵抗性は「強」である。穂孕期の障害型耐冷性は「やや強」で、いもち病抵抗性は「強」である。収量性は‘ゆめあかり’よりやや高く、‘むつほまれ’よりやや低い。玄米千粒重は‘むつほまれ’よりやや重く、玄米品質は‘むつほまれ’並である。食味は、‘むつほまれ’より明らかにまさり、‘つがるロマン’並の「上中」である。
著者
横山 秀史 永田 茂 山崎 文雄 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.450, pp.181-187, 1992-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
20

緊急時の人間行動を定量化するための指標として, 動線のフラクタル次元を用いることを提案し, 迷路を用いた被験者実験の結果と, 過去の火災事例に適用して有用性を検討した. その結果, フラクタル次元が, 脱出時間, 歩行距離, 行動範囲などで評価できない人間行動の複雑さの度合を定量的に表していることがわかった.
著者
市川 武志 福永 守高 牧野 国雄 横山 敦士 山田 敏郎
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.265, 2001

シリコンウェハスライス工程はLSI製造の精度向上のために非常に重要である.ウェハ軸と結晶軸のずれをもたらすため,シリコンウェハのそりは深刻なトラブルとなる.この軸ずれは後の研磨では解消できない.このような現象についての数値解析は有用と思われるが,そのような報告は今のところない.著者らは連成熱_-_応力マトリクスを用いた新しい有限要素モデルを提案する.そのモデルでは,スライスされた要素の熱伝導と剛性はゼロになる.切削熱がそりの第一の原因と仮定された.切削により発生する熱は,実験と数値解析の温度を比較することで求めた.200ミリウェハのそりは数値解析より4.21マイクロメートルと見積もられた.300ミリウェハについては3.7-8.5 マイクロメートルのそりと見積もられた.数値解析の結果は切削熱が小さければ,そりも小さくなることを示した.切削熱がシリコンの破壊と摩擦により発生すると考えられる.数値解析結果は破壊熱が主たる原因であると示唆した.

1 0 0 0 OA 日本古典

著者
横山青娥 著
出版者
長崎書店
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1943
著者
横山 寿
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.125-144, 2019
被引用文献数
2

<p> アジア原産のシジミ属二枚貝が1920年代に北アメリカに侵入し,その後,南アメリカ,ヨーロッパに拡散した。1980年代には日本国内にも侵入し,世界各地の生態系や経済に負の影響を及ぼしてきた。この問題への関心を喚起するため,どこを原産地とする何というシジミが,どのように,なぜ新地への侵入に成功し,分布を拡大させ,在来生態系や地域経済にいかなる影響を及ぼしてきたのか,いかなる対策が必要かを2報に分けて解説する。第1報の本報では分類の問題点,外来シジミの起源,侵入・拡散経路の推定に寄与した形態と遺伝子分析による系統分類および侵入・拡散のメカニズムを概説した。最近の系統分類研究の成果は次のとおり:1) 形態のみでは種,系統を同定できない;2) 雄性発生する雌雄同体,淡水性の数系統が外来種となっている;3) 在来のマシジミと外来のタイワンシジミ間の形態・分子遺伝学的差異は微小であり,両種はごく近い近縁種か,前者は後者の一系統と推定される。生息場所,形態,核型,精子形態,生殖様式,ミトコンドリア・核の遺伝子マーカーの分析により,外来シジミの系統,起源と侵入・拡散経路の一端が明らかになりつつある。</p>
著者
瀬戸 夕輝 佐戸川 弘之 佐藤 洋一 高瀬 信弥 若松 大樹 黒澤 博之 坪井 栄俊 五十嵐 崇 山本 晃裕 横山 斉
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.140-143, 2011-05-15 (Released:2011-08-24)
参考文献数
9

症例は83歳男性.2006年に,他院にて高度房室ブロックに伴うAdams-Stokes syndromeのため左鎖骨下から経静脈的にペースメーカー(pacemaker : PM)(DDD)を移植された.2008年にPM電池留置部の創部離開を生じた.滲出液の培養は陰性であり,PMの金属によるアレルギー性皮膚潰瘍疑いと診断された.PM電池をpolytetrafluoroethylene(PTFE)シートで被覆し左鎖骨下に移植されたが再び創部の離開を生じ,対側の右鎖骨大胸筋下にPM再移植術を受けた.その後,電池感染のためPM電池を摘出された.高度房室ブロックによる徐脈を認めたため,同年12月10日当院紹介となり救急搬送された.同年12月18日に全身麻酔下に季肋部正中切開による心筋リード植え込み術(VVI)を施行した.感染による縦隔洞炎のリスクも考慮し小切開としたため,心室リードのみの留置とした.また皮膚部分で生じやすいPM金属との免疫反応を予防するためにPM電池とリードの両方をPTFEシートで被覆し,PM電池は腹直筋下に留置した.術後経過は良好で創部離開を認めなかった.また術後4カ月後のパッチテストではニッケルとシリコンに対してのアレルギー反応を認めたため,本症例の皮膚離開がPMの素材に対するアレルギーが原因であったと診断した.PM素材に対するアレルギー患者へのPM電池植え込み術の1例として報告した.
著者
河田 雅圭 杉本 亜砂子 牧野 能士 丸山 真一朗 横山 潤
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近年発見されたC. elegans の姉妹種であるC. inopinataを用いて、体長の進化に寄与した遺伝子を特定することを目的とした。二種間で大きな体長の差が生じるL4幼虫期と成虫期で、発現パターンが、種間で異なる遺伝子として2699遺伝子が検出された。6種の線虫のうち、C. inopinataの系統でのみ正の選択圧が42の遺伝子で検出され、その中に、daf-2があった。daf-2は細胞膜で発現するインスリン受容体で、C. elegansの変異体は体サイズが大きくなることが知られ、daf-2遺伝子の進化が体サイズの進化に対して大きな影響をもつ可能性が示唆された。
著者
川幡 穂高 横山 祐典 黒田 潤一郎 井龍 康文 狩野 彰宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.35-45, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
34

炭酸塩を主たるテーマとしてIODP(統合国際深海掘削計画)では4航海が実施された.310次航海でのタヒチ島の結果によると,融氷パルス(Melt water pulse=MWP)-1Aの海水準の上昇は12-22mだったが,融氷パルス-1Bは観察されなかった.325次航海では,グレートバリアリーフで更新世のサンゴ礁掘削が行なわれた.最終氷期最盛期(LGM:20,000年前)には,水温は5℃以上降温していた.307次航海は,北西太平洋の深海サンゴの内部を初めて掘削した.サンゴマウンドの発達の開始は,現代の海洋大循環が大西洋で確立した更新世の最初期に地球的規模で寒冷化した環境変動と相関していた.320/321次航海では,過去5300万年間の時間レンジをカバーする赤道太平洋の深海底より一連の堆積物が採取された.炭酸塩の沈積流量に基づき新生代の赤道域の炭酸塩補償深度(CCD)変化が復元された.
著者
加来 信広 中村 道利 高下 光弘 八塚 知二 松元 雅彦 真角 昭吾 宮原 正樹 中山 巌 駄阿 勉 横山 繁生
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.1568-1572, 1993-09-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
6

Two cases of sacrococcygeal chordoma, were surgically treated in our hospital. One case was discovered after investigation of an episode of bruising on the hip, and the other case was diagnosed two years after the excision of rectal cancer that had no specific histological features.Both cases had partial destruction of sacral bone in the lateral plain X-ray film of the pelvis and a defined mass anterior to the lower sacrum was seen on MRI. We performed complete excision of tumor using the posterior approach and retained the unilateral S3 nerve. Postoperatively there was no neurological disturbance except the symptom of slight residual urine.
著者
大毛 宏喜 竹末 芳生 横山 隆
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.320-324, 2002-11-26
参考文献数
23
被引用文献数
6

術後感染対策として閉鎖式ドレーンの有用性と問題点について検討を行った. 当科で開放式ドレーンをルーチンに用い, 1週間前後留置していた1992年と, 原則として閉鎖式ドレーンを用い, 排液量が少なければ48時間で抜去するとの基本方針に沿った2000年とを比較して, ドレーンの使用状況, ドレーン感染およびcolonizationの頻度, さらに分離菌を検討した. 1992年は開腹手術症例148例全例に開放式ドレーンを挿入していたのに対し, 2000年には118例中37例 (31.4%) でドレーンを使用せず, 使用した症例でも多くは閉鎖式で, 開放式ドレーンを使用したのは全体の5.1%にすぎなかった. その結果, 1992年はドレーン感染 (4.7%), colonization (22.3%) を合わせて27.0%認めたが, 2000年は合わせて14.8%と有意に減少した (p<0.05). 特に閉鎖式ではcolonizationを11.1%に認めたのみで感染例はなかった. 分離菌も外因性感染であるMRSAは7.4%から1.7%, コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は12.2%から1.7%といずれも有意 (p<0.05) に減少した. ドレーン自体の感染減少に加え, 閉鎖式であるためにガーゼ交換が不要となり, 標準予防策を励行する意味からも, 院内感染対策として有用であったと考えられた. 留置期間は, 1992年に開放式を9.6±2.7日留置していたのに対し, 2000年は閉鎖式では4.2±1.5日, 開放式でも4.3±3.1日と短縮していた. 膵手術などでは比較的長期間ドレナージが必要であり, 半閉鎖式ドレーンで対応した. またドレーンの早期抜去により縫合不全の際の対処が懸念されるが, 1998年1月から2001年12月までの4年間に3例の縫合不全に伴う骨盤内膿瘍を経験し, いずれもCTガイド下ドレナージにより, 再手術や人工肛門造設を要することなく治療可能であった. 閉鎖式ドレーンは感染対策として有効であり, 今後は我が国でも, 閉鎖式ドレーンの利点を生かした使用が望まれる.
著者
横山 香
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 = Memoirs of Nara University (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.47, pp.1-17, 2019-02

" ドイツ語の"heile Welt"(「無傷の世界」)は、「ユートピア」という意味で肯定的に用いられると同時に、通俗性を批判するクリシェとなっている。 その"heile Welt"を描く代表格としてLudwig Ganghofer(1855-1920)がいる。彼は、彼の描く「郷土」「高地」「農村」のイメージから、ドイツ・ナショナリズムの体現者とされ、こういったイデオロギー批判的言説は、いまなお学術界に根強くある。 一方ジャーナリズムのGanghofer像は、ナチス時代から戦後を通じた彼の「郷土映画」と関連している。1950年に出版された詩集から広まった"heile Welt"は、戦後のドイツ的アイデンティティの再構築と関わった「郷土映画」における表象そのものであった。 しかし1960年代になり、「郷土映画」などの復古的な1950年代の文化は批判にさらされ、それとともにGanghofer が描く"heile Welt"も欺瞞的な「キッチュ」とされていくようになった。 このように"heile Welt"とは、ドイツの歴史的、文化的背景があって、初めて理解可能な言い回しなのである。"
著者
蔭山 正子 横山 恵子 坂本 拓 小林 鮎奈 平間 安喜子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.131-143, 2021-02-15 (Released:2021-02-26)
参考文献数
18

目的 精神疾患のある親をもつ人を対象とし,小・中・高校時代の体験および学校での相談状況を把握することを目的とした。方法 精神疾患のある親をもつ人の会に参加したことのある240人を対象とし,ウェブ上のアンケート調査を実施した。小・中・高校時代の体験,学校での相談状況,子どもの頃に認識した教師の反応,学校以外での援助などを質問した。分析は単純集計を行い,学校内外の相談歴について回答者の年代で比較した。自由記載は内容の抽象度をあげて分類した。結果 120人から回答を得た。年齢は20歳代から50歳以上まで幅広く,女性が85.8%だった。精神疾患をもつ親は,母親のみが多く67.5%であり,親の精神疾患推定発症年齢は,回答者が小学校に入るまでが73.1%だった。 ヤングケアラーとしての役割は,小・中・高校時代で親の情緒的ケアが最も多く57.8~61.5%が経験し,手伝い以上の家事は29.7~32.1%が経験していた。小学生の頃は62.4%が大人同士の喧嘩を,51.4%が親からの攻撃を経験していた。周囲が問題に気づけると思うサインには,親が授業参観や保護者面談に来ない,いじめ,忘れ物が多い,遅刻欠席が多い,学業の停滞があった。しかし,サインは出していなかったとした人は小・中・高校時代で43.2~55.0%であった。回答者が認識した教師の反応では,精神疾患に関する偏見や差別的な言動,プライバシーへの配慮不足などで嫌な思いをしていた。家庭の事情や悩みを気にかけ,話を聞いて欲しかったという意見が多かった。 学校への相談歴のなかった人は小学生の頃91.7%,中学生の頃84.5%,高校生の頃で78.6%だった。相談しなかった理由としては,問題に気づかない,発信することに抵抗がある,相談する準備性がない,相談環境が不十分というものがあった。相談しやすかった人は,すべての時期で担任の先生が最も多かった。30歳代以下の人は,40歳代以上の人に比べて小学生や高校生の頃に学校への相談歴がある人が有意に多かった。結論 精神疾患のある親をもつ子どもは,支援が必要な状況にありながら,支援につながりにくい子どもたちであった。学校では,子ども自身が家庭の問題に気づけるような働きかけが必要である。教師はまず子どものことを気にかけ,話をよく聞くことが求められる。
著者
杉山 英子 横山 伸
出版者
長野県短期大学
雑誌
長野県短期大学紀要 = Journal of Nagano Prefectural College (ISSN:02861178)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.19-25, 2010-12

Eating disorders are medical psychiatric and social problem among adolescent girls and young adult women. The severe situation surrounding the eating disorders is recognized in Japan, because the prevalence of the patients is probably increasing, and the onset is getting younger. However, medical resources are limited in the current Japanese health care system. Thus, the effective prevention is also necessary for the eating disorders as well as other life-style diseases. Nutrition education may be contributable to prevent the disordered eating behaviors. In this review, we introduced the prevention trials developed and performed in western countries and Japan to date, and discussed the possibility of nutritional education for contributing to the prevention of the eating disorders.
著者
横山 智
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2010年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.38, 2010 (Released:2011-02-01)

1.はじめに 発表者は、東南アジアのナットウに興味を持ち、これまで研究報告が存在しなかったラオスのナットウを調査し、中国雲南省からの伝播ルートとタイからの伝播ルートが混在していることを明らかにした。しかし、先行研究では、タイのナットウ(トゥア・ナオ)は、ミャンマーのナットウ(ペポ)と同じグループと論じられている。 そこで本研究では、2009年に実施した北タイとミャンマーの市場調査とナットウ製法調査をもとに、発酵の際に菌を供給する植物に着目して、ミャンマーおよび北タイのナットウの類似点と相違点を解明することを目的とする。 2.販売されているナットウの種類 北タイで製造されるナットウは、(1)粒状、(2)ひき割り状、(3)乾燥センベイ状の3種類に大別することができる。ただし、日本の「納豆」と同じ「粒状」ナットウは、現地の市場で見かけることはほとんどない。北タイでは、タイ・ヤーイと称されるシャン人(ミャンマーのシャン州出身)の村では見ることができるが、それ以外の市場では、「ひき割り状」か「乾燥センベイ状」しか売られていない。 一方、ミャンマーで製造されているナットウは、多様性に富んでいる。北タイに多い「ひき割り状」と「乾燥センベイ状」以外に、シャン州のムセーの市場では、油で揚げて甘い味付けをしたもの、豆板醤のようなソースをからめたもの、そして乾燥したものなど、「粒状」を加工したナットウが多く売られていた。さらに「ひき割り状」を一度乾燥させた後に蒸かして円筒状に形を整えた珍しいナットウも売られていた。しかし、日本の「納豆」のような糸引きナットウは、2009年の調査で訪れたシャン州内の市場では少なかった。ところが、バモーより北のカチン州に入ると、シャン州で見られたような加工された「粒状」ナットウよりも、糸が引く日本の「納豆」と同じ「粒状」ナットウの比率が高くなり、カチン州都のミッチーナ市場では、強い糸が引く「粒状」ナットウがほとんどであった。 3.ナットウの製法と地域的特徴 北タイとミャンマーのナットウの製法は基本的に同じである。大豆を水に浸した後、柔らかくなるまで煮て、その後、プラスチックバックや竹カゴに入れて数日間発酵させれば、「粒上」のナットウができあがる。なお、どの地域でも発酵のために種菌を入れることはない。その後、粒を崩し、塩や唐辛子などの香辛料を混ぜて「ひき割り状」のナットウとし、さらに「乾燥センベイ状」の場合は、形を整えて天日干しする。この製造工程のなかで、地域的な差異が見られるのが、菌の供給源となる植物の利用である。 シダ類(未同定)とクワ科イチジク属は、ヒマラヤ地域で製造されているナットウの「キネマ」でも利用されていることが報告されており、カチン州との類似性が見られた。またシダ類は、シャン州でも利用されているため、ヒマラヤ地域の「キネマ」とミャンマー全域の「ペポ」との類似性も見いだすことができよう。そして、チークの葉およびフタバガキ科ショレア属の利用という視点からは、シャン州と北タイに類似性があることが判明した。 本研究の結果は、以下のようにまとめることができる。北タイとミャンマーのシャン州で大規模に「乾燥センベイ状」ナットウを生産している世帯では、発酵容器に竹カゴは用いられず、肥料袋のようなプラスチックバックに煮た大豆を数日間保存するだけであり、菌の供給源となる植物も入れない。 形状と糸引きの強弱に関しては、シダ類やイチジク属を用いているヒマラヤ地域とカチン州は「粒状」が多く、糸引きも強い傾向がある。チークやショレア属の葉を用いるシャン州や北タイは、多くが「乾燥センベイ状」で、粒状の場合でも糸引きが弱いことが明らかになった。 4.おわりに 本研究では、これまでの議論とは視点を変えて、菌を供給する植物に焦点をあて、植物利用からナットウ製法の地域区分を実施することを試みた。それの結果、これまで全く議論されていなかった、ミャンマーとタイでの類似点と相違点、そしてミャンマー内での類似点と相違点を解明できた。これらの結果をもとに、未だ達成できていない中国側での植物利用調査を進めることが出来れば、東南アジアのナットウが中国からの伝播かどうかを議論する際の重要な手がかりになると思われる。