著者
渡辺 幸一
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.129-139, 2016

ビフィズス菌は,主にヒトや動物の腸管から分離されるグラム陽性の多形性桿菌であり,系統分類学的には<i>Actinobacteria</i>門の<i>Bifidobacteriaceae</i>科に属する6属58菌種で構成される.なかでも<i>Bifidobacterium</i>属は,50菌種10亜種で構成され,その中心を占めている.微生物の分類体系は,菌種同定や分類法の技術の進歩と密接な関係にある.DNA-DNA相同性試験(DDH)法は,1960年代から用いられ,現在でも菌種を区別するための最も重要な基準である.一方,16S rRNA遺伝子配列データに基づく系統解析は,煩雑な操作と熟練を必要とするDDHに替わる菌種分類の標準法として位置づけられている.しかしながら,16S rRNA遺伝子単独では菌種の分類同定が不可能である菌種グループが数多く存在する.近年,ハウスキーピング遺伝子の塩基配列に基づく多相解析法[Multilocus Sequence Analysis(MLSA)あるいはTyping(MLST)]および全ゲノム塩基配列の相同性(ANI)など,DDH法を補完・代替する分類方法が開発されている.ここでは,ビフィズス菌の分類法の現状と動向について解説する.<br>
著者
藤本 潔 羽佐田 紘大 谷口 真吾 古川 恵太 小野 賢二 渡辺 信
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

1.はじめに<br><br>マングローブ林は、一般に潮間帯上部という極めて限られた環境下にのみ成立することから、温暖化に伴う海面上昇は、その生態系へ多大な影響を及ぼすであろうことが予想される。西表島に隣接する石垣島の海面水位は、1968年以降、全球平均とほぼ同一の年平均2.3mmの速度で上昇しつつある(沖縄気象台 2018)。すなわち、ここ50年間で11.5cm上昇した計算となる。近年の上昇速度が年10mmを超えるミクロネシア連邦ポンペイ島では、マングローブ泥炭堆積域で、その生産を担うヤエヤマヒルギ属の立木密度が低下した林分では大規模な表層侵食が進行しつつあることが明らかになって来た(藤本ほか 2016)。本発表は、本年2月および8月に西表島のマングローブ林を対象に実施した現地調査で見出された海面上昇の影響と考えられる現象について報告する。<br><br>2.研究方法<br><br>筆者らは、西表島ではこれまで船浦湾のヤエヤマヒルギ林とオヒルギ林に固定プロットを設置し、植生構造と立地環境の観測研究を行ってきた。今回は、由布島対岸に位置するマヤプシキ林に新たに固定プロット(幅5m、奥行70m)を設置し、地盤高測量と毎木調査を行った。プロットは海側林縁部から海岸線とほぼ直行する形で設置した。地盤高測量は水準器付きポケットコンパスを用い、cmオーダーで微地形を表記できるよう多点で測量し、ArcGIS 3D analystを用いて等高線図を作成した。標高は、測量時の海面高度を基準に、石垣港の潮位表を用いて算出した。毎木調査は、胸高(1.3m)以上の全立木に番号を付し、樹種名、位置(XY座標)、直径(ヤエヤマヒルギは最上部の支柱根上30cm、それ以外の樹種は胸高)、樹高を記載した。<br><br>3.結果<br><br> 海側10mはマヤプシキのほぼ純林、10~33mの間はマヤプシキとヤエヤマヒルギの混交林、33~50mの間はヤエヤマヒルギとオヒルギの混交林、50mより内陸側はほぼオヒルギの純林となっていた。70m地点には立ち枯れしたシマシラキが確認された。立ち枯れしたシマシラキは、プロット外にも多数確認された。<br><br> マヤプシキは直径5㎝未満の小径木が46%、5~10cmが37%を占める。20m地点までは直径10cm未満のものがほとんどを占めるが、20~33mの間は直径10cmを超えるものが過半数を占めるようになる。最大直径は23.3cm、最大樹高は5.7mであった。ヤエヤマヒルギはほとんどが直径10cm未満で、直径5cm未満の小径木が74%を占める。最大直径は47m付近の13.8cm、最大樹高は5.7mであった。オヒルギは直径5cm未満の小径木は少なく、50~70mの間では直径10cm以上、樹高6m以上のものがほぼ半数を占める。最大直径は19.9cm、最大樹高は11.1mに達する。<br><br>地盤高は、海側林縁部が標高+28cmで、内陸側に向かい徐々に高くなり、45m付近で+50cm程になる。45mより内陸側にはアナジャコの塚であったと思われる比高10~20cm程の微高地が見られるが、一般的なアナジャコの塚に比べると起伏は小さい。この林の最も内陸側には、起伏の大きな現成のアナジャコの塚が存在し、そこではシマシラキの生木が確認された。立ち枯れしたシマシラキはアナジャコの塚であったと思われる起伏の小さな微高地上に分布していた。<br><br>4.考察<br><br> シマシラキはバックマングローブの一種で、通常はほとんど潮位の届かない地盤高に生育している。立ち枯れしたシマシラキはアナジャコの塚上に生育していたが、近年の海面上昇に伴いアナジャコの塚が侵食され地盤高を減じたため、冠水頻度が増し枯死した可能性がある。船浦湾に面する浜堤の海側前縁部にはヒルギモドキの小群落が見られるが、近年海岸侵食が進み、そのケーブル根が露出していることも確認された。このように、全球平均とほぼ同様な速度で進みつつある海面上昇に対しても、一部の樹種では目に見える形での影響が現れ始めていることが明らかになった。<br><br>参考文献<br>沖縄気象台 2018. 沖縄の気候変動監視レポート2018. 藤本潔 2016. 日本地理学会発表要旨集 90: 101.
著者
坂本 優紀 渡辺 隼矢 山下 亜紀郎
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.43-57, 2020 (Released:2021-02-28)
参考文献数
20

本稿では,長野県上伊那地域でみられる筒系噴出煙火の三国を地域文化として捉え,三国の伝播と利用形態の変容を明らかにした。伊那谷における三国は江戸時代に三河地方から伝わったとされ,各地域の神社の祭りで奉納されるようになった。現代でも駒ヶ根市以南では,主に神社の秋祭りで奉納され神事としての役割を担っている。第二次世界大戦後になると三国の利用地域が拡大し,それまで三国の北限であった駒ヶ根市より北にある宮田村と箕輪町で三国が放揚され始めた。宮田村では1962年に在来の祭礼に組み込まれる形で三国が奉納されるようになった。当初は祭礼を盛り上げることが目的であったものの,現在では神事としての意義づけがされている。一方,箕輪町では2000年代に地域イベントで放揚され始め,現在も神事としての役割はない。このように三国の拡大過程においてその意義づけは対象地域ごとに異なり,各地域それぞれの選択と解釈がなされていることが明らかとなった。
著者
青木 成美 吉野 嘉那子 渡辺 哲也 渡辺 文治 岡田 伸一 山口 俊光
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.74, 2007

視覚障害者に広く使われている既存スクリーンリーダの漢字詳細読みの説明表現は、これらを使用する成人や中・高校生にとって理解しにくいものが少なからずあるといわれてきた。そこで、われわれはこれらに関して検討を行ってきたのでその結果のひとつを報告する。<br> 今回の報告で検討を行った漢字は、常用漢字1945文字から教育漢字1006文字を引いた939文字である。また、単語親密度を主たる指標とし、これら漢字の詳細読みをも新たに作成した。そして、この詳細読みの評価のため大学生を対象に漢字書き取り調査を行った。<br> 結果は、親密度の高い単語を含む詳細読み群は、親密度の低い単語を含む詳細読み群より有意に高い平均正答率が得られた。これは、調査対象者が大学生であったが、理解しやすい詳細読みを作成するにあたっては単語親密度をひとつの指標とすることが有効であることが示された。<br> 今回の調査では、サ変動詞化する名詞を名詞のまま呈示する場合と、動詞として「する」を付けて呈示する場合の正答率も比較した。しかし、両者の間には有意差がみられなかった。
著者
寺嶋 芳江 渡辺 智子 鈴木 亜夕帆 白坂 憲章 寺下 隆夫
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.170-175, 2009

シイタケ培地へトレハロースを0.5,1,2,3,4%添加して栽培し,子実体の収量,トレハロース含有量,鮮度保持,食味への影響を試験した。その結果,収量には有意差のある変化を生じなかったが,0.5,1,2,3%添加培地から1回目に発生したMサイズ以上の子実体の個数割合が多くなった。無添加に比べて,2,3,4%添加培地からの子実体のトレハロース含有量は3回目までのいずれの発生回でも多くなった。鮮度については,2%添加ではいずれの発生回でも高い保持効果が認められ,特に4%添加では1回目に有意に高かった。官能検査では,2%と3%添加の場合に摂取時の「香り」,「食感」,「味」と「総合評価」が比較的高かった。
著者
渡辺 智子 土橋 昇 高居 百合子 大政 謙次 田中 浄 鈴木 彰
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.7-16, 1993
被引用文献数
1

ナメコ栽培におけるO<SUB>3</SUB>暴露(対照区およびO<SUB>3</SUB>試験区:0.03ppm区,0.1ppm区,0.3ppm区)の影響を化学成分面から検討した. <BR>O<SUB>3</SUB>暴露により有意に増加した成分は,傘では水分,脂質,炭水化物,V.B1およびV.C,柄では水分およびV.C,全子実体では水分,脂質およびV.Cであった.O<SUB>3</SUB>暴露により有意に減少した成分は,傘では重量,タンパク質,灰分,Fe, Na, KおよびZn,柄では重量,灰分,KおよびZn,全子実体では重量,灰分,Na, KおよびZnであった. <BR>O<SUB>3</SUB>暴露濃度との間に有意な正の相関を示したものとして,傘では水分および脂質,柄では水分,タンパク質およびV.C,子実体では水分と脂質およびV.B<SUB>2</SUB>であった.O<SUB>3</SUB>暴露濃度との間に有意な負の相関を示したものとして,傘では重量,タンパク質,灰分,NaおよびZn,柄では重量,炭水化物および灰分,全子実体では重量,灰分,NaおよびZnであった. <BR>通常環境(対照区)の栽培において,ナメコの傘は柄に比較して,炭水化物以外のすべての一般成分,Fe, Na, K, Zn, V.B<SUB>1</SUB>, V.B<SUB>2</SUB>およびV.Cを多く含有していた.
著者
渡辺 豊子 喜代吉 夏子 山田 光江
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.293-300, 1992
被引用文献数
2

生地の製法・材料の配合・生地の分量の異なるケーキを150~200℃(10℃間隔)で焙焼し、その温度履歴を焙焼温度別、製法・分量別に検討した。さらに焙焼中の膨化過程をみることにより製品の形状に与えた影響についても検討した。その結果1.中心温、周囲温とも焙焼温度が高いほど温度上昇は早く、短い時間で安定(1分間に1℃以上温度が上昇しなくなる)した。2.中心温、周囲温とも温度勾配はスポンジ120g>スポンジ190g>パウンド190g>となり、スポンジ同士では生地分量が多いほど生地温の上昇が遅れたが、容量190g同士のスポンジとパウンドでは泡が少なく油脂量が多いパウンドの方が生地温の上昇が遅れ、両者の製法の違いが大きく影響しているものと思えた。3.周囲温安定までを第1期、中心温安定までを第2期、焙焼終了までを第3期とすることによって、製法別に各期の特徴を明らかにすることができた。4.スポンジは第1期にほぼ膨れ終わり(最終ケーキ高さの93~103%)、第2期でも僅かに膨らむが第3期では焼き縮みがみられ、平らなケーキに焼き上がった。5.パウンドは第1期における膨らみは最終ケーキ高さの77~84%であり、第2期においても膨らみ続け山型のケーキとなった。また第2期における膨らみが大きな変化である場合には上面に割れ目が生じ、焙焼温度が高いほど山型は顕著になった。6.今回の条件では、スポンジは160℃付近、パウンドは180℃付近が色と膨れ具合からみて適切な焙焼温度であると判断し得た。
著者
渡辺 敦子 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-76, 2004
参考文献数
63
被引用文献数
1

生物多様性の保全という社会的要請に応えることを目的とする保全生態学が集積する知見は,一定の整理を経た後に実社会を動かす政策に反映されることが必須である.ここでは,数年前から生物多様性保全に関わる政策にめざましい進展が認められる日本と,以前から環境保全に関わる先進的な政策を実践しながらも生物多様性条約を批准していない米国について,生物多様性保全上重要な課題のうち,「絶滅危惧種の保全」,「外来種対策」,「遺伝子組み換え生物のバイオセーフティ」にかかわる政策を社会的環境とその歴史的背景および,法的な整備と運用の現状の面から比較・考察した.米国において比較的早くから自然保護・生物多様性保全に資する政策が発展した要因としては,一つにはヨーロッパからの植民と建国以来の激しい自然資源の収奪や大規模な農地開発による生態系の不健全化に直面して醸成された自然保護思想や市民運動の隆盛があった.それと併せ,バイオテクノロジーの発展との関連で生物多様性の経済的価値を強く意識した産業界の思惑および生物学者の政策意思決定への積極的な関与などがあったといえる.それに対して,日本における保全政策は1993年の生物多様性条約への加盟をきっかけとし,過去10年間に関連法整備が進められ,それら法制度整備の有効性に関する評価・改善は今後の課題である.しかし,国内の生物多様性の衰退が急速に進んでいる現状を鑑みると,保全生態学には自然科学としての科学的な厳格さに加え,政策意思決定へのより効果的な寄与が求められるといえよう
著者
松林 由里子 渡辺 一也 川越 清樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_249-I_256, 2014 (Released:2014-12-12)
参考文献数
22

近年増加する集中豪雨が社会基盤施設に与える影響と,今後の水管理および設計基準強化への提案を示すため,2013年8月9日に秋田,岩手県で発生した集中豪雨による鉄道盛土の流出と流木による河道閉塞の被害調査解析結果を示し,今後必要となる対策の検討を試みた.これらの被災事例は,小規模河川に接した保全重要度の高い社会基盤施設において,河積不足に関わり,被災地域の地形や土地被覆,河川上流域の土砂,斜面,樹林などの特徴によって複合的に生じた被害であり,小規模河川の整備優先度や河川改修率の低さに影響を受けていることが明らかとなった.また,今後の被害低減のためには,施設周辺の複合的要素に関する豪雨時の実績データの蓄積と,解析による知見の整備が必要であるという結論を得た.
著者
澤 祥 坂上 寛之 隈元 崇 渡辺 満久 鈴木 康弘 田力 正好 谷口 薫 廣内 大助 松多 信尚 安藤 俊人 佐藤 善輝 石黒 聡士 内田 主税
出版者
Japanese Society for Active Fault Studies
雑誌
活断層研究 (ISSN:09181024)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.26, pp.121-136, 2006

We conducted a tectonic geomorphological survey along the northern part of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line (ISTL) with support from the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology of Japan as one of the intensive survey on ISTL fault system. This survey aims to clarify the detailed distribution of the slip rates of this fault system, which provides the essential data set to predict the coseismic behavior and to estimate the strong ground motion simulation. In order to achieve this purpose, the active fault traces are newly mapped along the northern part of the ISTL through interpretations of aerial photographs archived in the 1940s and 1960s at scales of 1: 10,000 and 1: 20,000, respectively. This aerial photo analysis was also supplemented and reinforced by field observations.<BR>One of the remarkable results by using this data set is a large number of, here 84, photogrammetrically measured landform transections to quantify the tectonic deformations. We could calculate vertical slip rates of the faults at 74 points, based on the estimated ages of terraces (H: 120 kyrs, M: 50-100 kyrs, Ll: 10-20 kyrs, L2: 4-7 kyrs, L3: 1-2 kyrs). The vertical slip rates distributed in the northern part of the study area show 0.2-5.5 mm/yr on the L terraces (less than 20 kyrs) and 0.05-0.9 mm/yr on the M and H terraces (more than 50 kyrs). The vertical slip rates of the faults located in the central and southern part of the study area are 0.2-3.1 mm/yr.
著者
渡辺 満 鮎瀬 淳
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.215-222, 2009-04-15
参考文献数
33
被引用文献数
2

リンゴ果実に接種した<I>P. expansum</I>の,マイコトキシン産生量に及ぼすリンゴ品種および果実成分の影響を検討した.<BR>(1) 日本のリンゴ主要5品種への<I>P. expansum</I>(ATCC 36200)の接種によるパツリン産生量は,「ジョナゴールド」が「ふじ」よりも有意に多かった.「つがる」「さんさ」「王林」でのパツリン産生量は「ジョナゴールド」よりも少なく「ふじ」よりも多かったが,いずれも他品種の産生量と有意差はなかった.腐敗果から分離した3菌株を使用した3品種のリンゴへの接種試験では,「ジョナゴールド」が「ふじ」および「王林」よりもパツリン産生量が多かった.<BR>(2) パツリン同様果実で産生の恐れのあるシトリニンは2回の接種試験,エクスパンソリデスA/Bは1回の試験で,品種間での産生量の違いは認められなかった.<BR>(3) パツリン産生量と相関の認められたリンゴ果実成分は,全ポリフェノール量とリンゴ酸量であった.それに対して,パツリン産生量と全遊離アミノ酸量との間には負の相関関係が認められ,糖含量との間には相関関係は認められなかった.<BR>これら結果から<I>P. expansum</I>によるリンゴ果実でのパツリン産生には,リンゴ品種および複数の果実成分が影響することが示唆された.
著者
川和田 達也 渡辺 亮
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.133-137, 2016 (Released:2018-01-29)
参考文献数
7
被引用文献数
1

電気自動車の動力源となるバッテリーの劣化は航続距離の減少を招く.本発表では充電中にバッテリーを冷却することで劣化の抑制を試みる.冷却に要する電気料金と劣化抑制によるバッテリーコストの削減からバッテリー冷却の効果を費用の観点から検証し,充電中のバッテリー冷却の有用性を示す.
著者
木下 英樹 渡辺 真通 齋藤 忠夫
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.78-88, 2008-06-15 (Released:2009-09-10)
参考文献数
40

プロバイオティック乳酸菌は、宿主に対する様々な有益な生理的効果が報告されている。とくに、ヒト消化管への付着は、それらの諸作用を十分に発揮するために非常に重要な要素である。当研究室において、消化管ムチンの末端に発現している「血液型抗原」を認識する「血液型抗原認識性乳酸菌」が発見され、A型認識性レクチン様タンパク質としてSlpAが同定された。一方、病原菌(ピロリ菌など)も血液型抗原を認識することが知られており、多くの病原菌で血液型と感染発症の関連性が注目されている。最近、当研究室では強固にヒト大腸粘液層に結合していたLactobacillus plantarum LA 318株の菌体表層にグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)を見いだし、本酵素が血液型AおよびB抗原に結合することを発見した。また、結合には特徴的な血液型三糖構造が重要であることが判明し、GAPDHのN-末端側半分のNAD binding domainが付着に関与している可能性が示された。プロバイオティック乳酸菌の中でも、血液型付着能の特に高い選抜された「血液型乳酸菌」の利用により、将来的には血液型病原菌の競合的阻害や排除だけでなく、血液型抗原を同一レセプターとする食中毒原因菌や特定の腸疾患原因菌の排除を通して、各種疾病の予防や治療にも役立てられる可能性を確信している。