著者
渡辺 弥生
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
no.50, pp.87-104, 2004

本研究は、公立小学校3年生の2クラスを対象に、社会的スキルを育むサイコ・エデュケーションとしてのVLF(Voice of Love and Freedom)実践を用いた場合と従来型の副読本を利用した道徳実践を行った場合とで、児童の社会的スキルの向上に違いがあるかどうかを比較検討した。VLFプログラムは、①自他の視点の違いへの気づき、②自分の気持ちを相手に伝える力、③他人の気持ちを推測する力、④自分と他人の葛藤を解決する力、を育てることが意図されており、絵本を教材とした4つのステップから構成される体験型の思いやり育成プログラムであった。パートナー・インタビュー、ロールプレイなど多様な活動が盛り込まれている。アセスメントは社会的スキル、共感性の質問紙と情報分析力を明らかにする絵カードが用いられた。実践の授業前と授業後で社会的スキルの変化を検討したところ、実践クラスにおいて社会的スキルの効果が認められたほか、絵の分析における視点の変化も明らかになった。
著者
渡辺 弥生
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
no.54, pp.77-94, 2006

本研究は、公立小学校1年生から6年生の全学年を対象に、ソーシャルスキルを育むサイコ・エデュケーションとしてのVLF(Voices of Love and Freedom)思いやり育成プログラムを実践し、児童のソーシャルスキルの向上に学年差及び性差、教師の視点と生徒の視点に違いがあるかどうかを比較検討した。VLFプログラムは、①自分の気持ちを相手に伝える力、②他人の気持ちを推測する力、③自分と他人の葛藤を解決する力、を育てることが意図されており、絵本を教材とした4つのステップから構成される体験型の思いやり育成プログラムである。パートナー・インタビュー、ロールプレイなど多様な活動が盛り込まれている。アセスメントはソーシャルスキルの自己評価尺度と教師評定、さらに、役割取得能力テストが用いられた。その結果、授業前と授業後でソーシャルスキルの変化を検討したところ、学年差および性差、教師と生徒間の評定の違いが明らかになったほか、ほぼ全学年で効果が認められた。
著者
田浦 扶充子 島谷 幸宏 小笠原 洋平 山下 三平 福永 真弓 渡辺 亮一 皆川 朋子 森山 聡之 吉冨 友恭 伊豫岡 宏樹 浜田 晃規 竹林 知樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_153-I_168, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

本研究は,都市の流域すべての場所で雨水の貯留・浸透を,良質な緑を増やしながら多世代が協力し,分散型水管理が実現される持続的な都市ビジョン「あまみず社会」を提案し,その有効性や実現可能性を検証するものである.そのため,都市の空間構成要素である個人住宅と中学校を取り上げ,安価で魅力的な貯留浸透の方法を考案,計画し,実装を試みた.「あまみず社会」の概念に基づいた魅力的な実装や要素技術は,治水・利水機能に加え,環境面,防災面,活動の広がりなど多面的な価値があることが明らかとなった.加えて,「あまみず社会」の実社会への普及に向け,多面的で重層的な働きかけを網羅的に試みることが有効であり,想定以上の広がりが得られることが確認された.
著者
中原 竜二 海野 進 渡辺 一樹
出版者
静岡大学地球科学教室
雑誌
静岡大学地球科学研究報告 (ISSN:03886298)
巻号頁・発行日
no.18, pp.p25-57, 1992-07
被引用文献数
2

伊豆半島と伊豆大島の間の海底には40ケ所以上の地形的高まりが存在して, そのほとんどは海底火山体と考えられている。1991年4月27日から5月1日にかけて海上保安庁水路部によって, この海域に存在する海山の頂上, 約30ポイントから約60個の火山岩, 砂岩, 火山噴出物と砂などから成る集塊岩などがドレッジされた。Na_2O+K_2O-FeO^*(全FeO)-MgO図(AFM図)で示される全岩化学組成から, ドレッジされた火山岩は, よりアルカリ元素に富み, 低いFe/Mg比をもつ局アルカリソレアイト系列と, よりアルカリ元素に乏しく, 高いFe/Mg比をもつ低アルカリソレアイト系列とに分かれる。両系列はその地球化学的, 岩石学的特徴が, それぞれ東伊豆単成火山群, 伊豆大島火山と似ている。これらの高アルカリソレアイト系列の岩石と東伊豆単成火山群から得られる火山岩は低アルカリソレアイト系列の岩石及び伊豆大島火山から得られる火山岩よりもより高いZr/Y比をもっている。マントルの部分溶融の程度が高いほどZr/Y比は低くなる。したがって高アルカリソレアイト系列の岩石と東伊豆単成火山群の本源マグマは低アルカリソレアイト系列の岩石と伊研大島火山よりもマントルの部分溶融の程度の低いマグマに由来していると思われしる。また, 高アルカリソレアイト系列の岩石と東伊豆単成火山群の岩石のZr/Y比はかなり広い組成領域をもち, マントルの部分溶融の程度にもかなりの差がある。この違いはN-type MORBのソースマントルが4〜10%分別部分溶解を起こすことによって説明できる。Zr/Y比の地域変化を見ると, 東伊豆単成火山群(海底火山も含む)は系統的な分布を示さず, 部分溶解の程度も場所によってさまざまであると思われる。したがって東伊豆単成火山群が同一の部分溶解したマントルダイアピールに由来するというモデルは成立しない。
著者
田島 祐規子 満尾 貞行 渡辺 雅仁
出版者
横浜国立大学国際戦略推進機構
雑誌
ときわの杜論叢 = The journal of Tokiwanomori (ISSN:2188739X)
巻号頁・発行日
no.5, pp.41-88, 2018-03

本学では英語教育部を実施母体として、英語統一試験としてTOEFL-ITP テストが、2001年度より幾度かの大きな見直しは行われたものの、この間途切れることなく継続して行われてきた。試験が実施された過去17 年間を振り返り、この試験について報告書をまとめ今後の本学の英語教育上の指針としたい。本稿では、英語統一試験について以下の3 つの観点より分析を行った: 1) 導入とその経過、2) 統計分析、3) 再履修者の学習状況。これらの報告と分析により、この学内統一試験が本学の英語教育における中心的な意義を担っていることを明確に確認するものである。第1 章:横浜国立大学において英語統一テストが開始された経緯および経過と、平成13年度から平成28 年度までのその16 年間の具体的運用についての記録を記述している。そして、平成23 年度から本格的に始まったTOEFL Level 1 の各学部間の得点比較を最後に行い、次章のより詳細な統計分析へと橋渡しをしている。第2 章: 2011 年度から2016 年度のスコア結果をまとめた。毎年のように平均得点は伸びているが、まだまだ国際的な水準とは言えない。各学部に見合った指導を研究しつつ、より良い効果的な教育プログラムを目指していく必要がある。目的は、無論、学生たちの英語力を伸ばすこともだが、一人ひとりの将来を見据えた外国語学習への自律性を育てていくことにある。第3 章: 再履修者の学習分析より、現行のe ラーニングによる授業は、限られた人的リソースという点では経費上の効率性が高い。また、非同期的な学習を可能にするe ラーニングの特性ゆえ、学習者により多くの学習機会を与えている。しかし、e ラーニング学習成功の可能性は学習者の自律性に大きく依存しているので、この点が再履修者コースを完了して単位を取得する上での大きなハードルとなっている。
著者
水野 敬 佐々木 章宏 田島 華奈子 堀 洋 梶本 修身 渡辺 恭良
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第126回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.833, 2015 (Released:2015-07-23)

本邦の国民の約4割は6ヶ月以上疲労が続く状態、慢性疲労状態にある。慢性疲労は、さまざまな疾患発症に寄与するため未病状態といえる。よって、慢性疲労克服法の創出は健康社会形成の一助となる。われわれは急性疲労・慢性疲労・疾患関連疲労の分子神経基盤を探究しつつ、疲労回復に資する抗疲労介入研究を推進している。本講演では、癒される森林などの風景画像による生理心理指標に基づく疲労軽減効果について紹介する。疲労負荷作業中に、風景画像を呈示することで、疲労に伴う1)脳波における覚醒度低下の抑制効果、2)認知機能における注意制御パフォーマンス低下の抑制、3)自律神経における交感神経活動亢進の抑制および4)疲労感上昇の抑制効果が得られることを明らかにした。よって、実際の自然風景の眺望が困難なオフィス環境下においても、これらの風景画像を活用することにより疲労軽減効果が得られ作業効率を維持することが可能となる。本成果を一例とする科学的検証法に立脚した抗疲労ソリューションを実生活空間へ提供・還元していくことが、健康社会実現のための具体的方策の創出、健康科学イノベーションの本格的展開に導くと期待している。
著者
中川 幸恵 石川 祐一 渡辺 啓子 朝倉比 都美 西村 一弘 藤井 文子 林 進 今 寿賀子 井上 小百合 貴田岡 正史 増田 創 米代 武司
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.813-819, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
17

栄養指導の糖尿病改善効果は指導頻度を高めるほど得られやすいと考えられている一方,糖尿病罹病期間が長くなるほど得られ難くなることも知られている.本研究では,栄養指導の糖尿病改善効果に対する指導頻度の影響が罹病期間に依存するか否かを調査した.281病院に通院する2型糖尿病患者725名を対象とし,管理栄養士による栄養指導の開始時と6ヶ月後の臨床データを収集した.HbA1cは罹病期間が長い者に比べ短い者の方が(P<0.001),指導頻度が低い者に比べ高い者の方が(P<0.001)改善した.指導頻度依存的なHbA1c改善効果は長期罹病患者でも認められた(P<0.05).ロジスティック回帰分析を用いて年齢,性別,糖尿病家族歴,糖尿病薬の変更,HbA1c初期値,罹病期間で補正したところ,指導頻度はHbA1c改善の有意な規定因子になった(P<0.001).高頻度な栄養指導は,糖尿病患者の罹病期間に係わらず病態改善効果を高めることが判明した.
著者
橋本 賢一 笠巻 祐二 芦野 園子 奥村 恭男 久保 公恵 杉村 秀三 中井 俊子 渡辺 一郎 斎藤 穎
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.16-21, 2006

背景: 両心室ペーシング( B V ) 療法は薬剤抵抗性心不全患者に有効な治療法であるが,必ずしも心臓突然死を減少させるとは限らない.一方μVレベル T-wave alternans(TWA)は心臓突然死の予知に対する有用性が示されているが,BV療法がTWAに及ぼす影響に関する検討は少ない.目的: 今回われわれは, 両室 pacing(BiP) , 右室 pacing(RVP),左室 pacing(LVP)を施行し, TWAに及ぼす影響について検討した.対象と方法: 連続7 例( 男性5 ) , 陳旧性心筋梗塞1 例, 拡張型心筋症6 例( EF31±7% ) を対象として行い, TWAの検出は,各ペーシングモードにおいて HR70~120bpmまでペーシングレートを漸増させTWAの測定を行った.結果: 平均 Valt は BVP,RVP および LVP で 193±0.6, 0.92±0.5および 1.45±0.8(p<0.01vs RV). alternanas ratioはBVP, RVPおよびLVPで 11.9±4.83, 4.83±2.9および 6.5±2.2. TWA陽性率は BVP,RVPおよびLVPで 71%(5/7), 67%(4/6)および 50%(2/4)であった.結語:BVPによる高いTWA陽性率は再分極の不均一性の増大をもたらす可能性が示唆された.
著者
渡辺 淳志 濱田 真輝 田鹿 安彦 宮崎 一秀 川畠 弘子
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-25, 2015 (Released:2015-01-23)
参考文献数
13

要旨:症例は31 歳女性.予定帝王切開術後にメチルエルゴメトリン内服開始.分娩後5 日目に雷鳴様頭痛の後,全身痙攣が出現した.MRI,MRA にて多発性脳梗塞と脳血管狭窄を認め,可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)による脳底動脈先端症候群を疑いシロスタゾール,エダラボン,ベラパミルにて加療を行った.第40 病日のMRI にて脳血管狭窄は改善し,RCVS と確定診断となった.後遺症として四肢不全麻痺,構音障害,嚥下障害などを認めmodified Rankin Scale 4 の状態にてリハビリテーション目的に転院となった.RCVS は転帰良好例が多いとされるが,脳底動脈高度狭窄症例は後遺症を残すリスクファクターである可能性があり早期の治療を検討するべきと思われる.また,片頭痛既往がある分娩後患者のメチルエルゴメトリン投与に関してはRCVS 発症のリスクを考慮し慎重に検討するべきであると思われる.
著者
渡辺 圧美 内田 武司 古谷 進
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.21-36, 1968-05-28 (Released:2009-10-16)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

1. 古遠部鉱山大黒沢西部OL3ループ坑内水中からチオ硫酸塩を酸化するTh.ferrooxidansが分離された.2. 鉄酸化バクテリア (F.ferrooxidans) による第一鉄の酸化は接種菌量の大きいほど促進される.接種量1.0ml/100ml (培地) では11日間の培養で, 培養初期のFe2+濃度の70%がFe3+に転換されたにすぎなかつたが, 2.0mlの接種では99%がFe3+に転換された.そして4.0~10.0mlと接種が大きくなると, 第一鉄の酸化は一段と促進され, 8日間の培養で97~99%がFe3+に転換された.3. 鉄酸化バクテリアの銅耐性は硫酸銅の濃度を順次高めた培地での培養の繰り返しによつて遂次増大し, 25g/lの銅 (Cu) 濃度に耐性が増大した.4. 鉄酸化バクテリアは第一鉄を酸化するのみならず, 硫黄も酸化する能力を持つが, 多量の硫黄が存在すると第一鉄の酸化は抑制される.5. 鉄酸化バクテリアによる第一鉄の酸化におよぼす有機物の影響を追求したところ, 尿素およびペプトンは0.2%以上の濃度において第一鉄の酸化およびバクテリアの増殖に阻害的影響を示した.グルコースは添加量の増大につれてバクテリアの増殖を促進せしめた.しかし, 0.1%以上の濃度になると, 第一鉄の酸化に阻害的影響を示した.6. 鉄酸化バクテリアのチオ硫酸塩の利用については明らかでなかつたが, 鉄硫黄酸化バクテリア (Th.ferrooxidans) はチオ硫酸塩をよく利用して増殖し, そして硫黄酸化バクテリア (Th.thiooxidans) はチオ硫酸塩を利用する力が小さかつた.7. 鉄硫黄酸化バクテリアおよび鉄酸化バクテリアはエネルギー源として黄銅鉱を利用することができた.鉄硫黄酸化バクテリアは50日間の振とう培養で黄銅鉱中から86%の銅を溶出し, 鉄酸化バクテリアは68%の銅を溶出した.しかし, 硫黄酸化バクテリアは黄銅鉱からの銅の溶出には影響をおよぼさなかつた.
著者
二村 正 石田 茂資 渡辺 巌 Tadashi NIMURA Shigesuke ISHIDA Iwao WATANABE 船舶技術研究所運動性能部 船舶技術研究所運動性能部 船舶技術研究所運動性能部
出版者
運輸省船舶技術研究所
雑誌
船舶技術研究所報告 (ISSN:0495775X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.233-264, 1996-02

Capsizing and re-righting performance of three types of sailing yachts, IOR racer type, conventional type and intermediate type, was experimentally investigated in beam transient waves with various wave heights. The effect of CG height, existence of mast and flooded water volume on the critical wave height for capsizing and for re-righting was examined. It was characteristic in the capsizing motion of the models with mast that the rolling motion almost stopped just after the mast plunged into the water because of the hydrodynamic impulsive force on the mast. The stopping heel angle was almost independent of hull forms and model conditions. As a result the static stability vanishing angle, θv, was crucial for capsizing even in flooded conditions. As for re-righting motion θv was also crucial. It was clarified that the IOR racer type yacht is easier to capsize and harder to re-right because of its small θv value even if it has large GM. The way of improving the capsizing resistance was discussed. Lowering the center of gravity or attaching a small float on top of the mast could be an easy and effective way to prevent capsizing disaster because that leads to a large θv value. The flooded water, in general, enlarged θv, that made the models capsize-resistant. But for re-righting motion the relation between the critical wave height for re-righting and θv was complicated, because the water prevents the motion of the models at the same time. The probability of capsizing and re-righting in a sea state with ISSC spectrum was examined. Moreover the capsizing duration time was calculated as a safety index. It was reconfirmed again by the probabilistic approach that θv is very important for the safety of sailing yachts. θv of 120 degrees was proposed as an safety criteria.
著者
渡辺 象 上嶋 権兵衛 鈴木 美智代 大塚 照子 中野 清剛
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.217-223, 1990 (Released:2006-07-06)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

多国語習得者の失語症の一例を報告した。症例は68歳,女性。9歳より26歳までシンガポールで生活したため英語が堪能となった。 58歳まで貿易会社に勤め,その後自宅で学生に英語を教えており英語を使用する機会は多かったが日常会話は日本語であった。 69歳時,脳梗塞により失語症となった。発症当初,発語は全く認められなかったが,回復するに従って英語が日本語よりも良好な結果を示した。多国語習得者の失語症については,欧米では多くの報告があり,その回復の過程において母国語から回復するというRibotの説,日常語が良好とするPitreの説,感情的要因を重視するMinkowskiの説が有名であるが本例ではこのいずれにも当てはまらず,母国語でもなく日常語でもなく特に感情的要因が強かったとも考えられない英語の方が良好な回復を示し,日本語の失語症と欧米の失語症とは回復の過程において異なる要因が存在する可能性があると考えられた。
著者
筒井 昭仁 瀧口 徹 斎藤 慎一 田村 卓也 八木 稔 安藤 雄一 岸 洋志 小林 秀人 矢野 正敏 葭原 明弘 渡辺 雄三 小林 清吾 佐久間 汐子 野上 成樹 小泉 信雄 中村 宗達 渡辺 猛 堀井 欣一 境 脩
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.329-341, 1994-07-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
35
被引用文献数
4

著者らは, 日本における飲料水中フッ素濃度とエナメル斑の発現状況の関係を明らかにすることを目的に, 1978年以来, 東北, 関東, 甲信越地方で飲料水中フッ素濃度の測定を継続的に行ってきた。その結果, フッ素濃度の変動が少なかった7つの天然フッ素地域を確認した。水道給水系は26あり, フッ素濃度は0から1.4ppmの範囲に分布していた。フッ素濃度を確認してきた地域に生まれ, 当該の水道水を利用して育った小学5, 6年生1,081名を対象に, 1987年歯牙フッ素症検診を行った。歯牙フッ素症の分類にはDeanの基準を使用した。また, 非フッ素性白斑についてもDean基準の白濁部面積算定基準を準用して分類した。確認された歯牙フッ素症はいずれもmild以下の軽度のものであり, very mild以上のフッ素症歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間に有意な正の相関関係 (r=0.485, p<0.05) が認められた。また, 非フッ素性白斑歯所有者率と飲料水中フッ素濃度との間には有意な負の相関関係 (r=-0.429, p<0.05) が認められた。全エナメル斑発現状況と飲料水中フッ素濃度の間には特別な傾向は認められなかった (r=-0.129, ns)。CFIは0.04から0.30であり公衆衛生上問題のない地域と判定された。この度の研究結果は, わが国の歯牙フッ素症に関する疫学研究において不足しているとされていたデータ部分を補うものであり, わが国の至適フッ素濃度研究に寄与するものであると考察した。
著者
渡辺 義雄 深津 忠泰
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:03743470)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.75-78, 1957-02-01

現在わが国でテレビ録像装置として使用されているのはG・P・L社製のものであるが, 今回ラジオ東京では八欧電気と共同してオーリコン・スーパー1200を用いたキネスコープレコーダー(16mmフィルム用)を完成した.本質的には従来のものと相違はないが, T・V・Tシャッターを用いていることによる問題もあり, 以下に装置の概要, 構成と共にその説明をしたいと思う.
著者
渡辺 誠 村上 雅彦 小沢 慶彰 五藤 哲 山崎 公靖 藤森 聡 大塚 耕司 青木 武士
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.647-651, 2015 (Released:2016-09-10)
参考文献数
18

炭水化物含有飲料水 (CD) の胃内容排出時間を超音波検査にて検討する.健康成人被験者4例 (男女各2例,平均年齢52歳) に対して,水,6.2% CD (ポカリスエット®),12.5% CD (100mlあたり6.3gのブドウ糖末を付加したポカリスエット®) を,中7日隔日で各々400ml全量摂取し,腹部超音波検査にて胃幽門部面積 (PA) を経時的に測定した.全例,各飲料水の摂取は可能であった.水では,45分で摂取前のPAと同等になった.6.2% CDでは60分で全例,摂取前のPAと同等になった.12.5% CDでは,4例中2例において摂取後60分で,また90分で残り2例も摂取前のPAと同等になった.健康成人被験者において,400mlの12.5% CDは,摂取後90分以内に胃から排泄された.全身麻酔導入2時間前までの12.5% CD摂取は可能であることが示唆された.
著者
川添 航 坂本 優紀 喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 松井 圭介
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.47-62, 2018

本研究は茨城県大洗町におけるコンテンツ・ツーリズムの展開に注目し,ツーリズム形態の転換に伴う観光空間への影響,及びその変容の解明を目的とした。大洗町は観光施設を数多く有する県内でも有数の海浜観光地であり,2012年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として新たな観光現象が生じている地域である。大洗町においては,当初は店舗・組織におけるアニメファンへの対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて,商工会の主導により積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れ,多くのアニメファンを来訪者として呼び込むことに成功した。宿泊業においては,アニメ放映以前までは夏季の家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は夏季以外の1人客の割合が大きく増加するなど変化が生じた。コンテンツ・ツーリズムの導入によるホスト・ゲスト間の関係性の変化は新たな観光者を呼ぶ契機となったことが明らかとなった。