著者
渡辺 由加利
出版者
札幌市立大学
雑誌
札幌市立大学研究論文集 = SCU journal of Design & Nursing (ISSN:18819427)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31-38, 2014-05-31

本研究の目的は,妊娠末期にある夫婦の情緒的関係に関連する要因を検討することである.対象は,初妊婦とその夫で妻202名,夫155名であった.重回帰分析を行った結果,妻と夫に共通の要因は,結婚満足度(妻β=0.533,夫β=0.442),出産育児の会話(妻β=0.215,夫β=0.221),結婚前の妊娠(妻β=0.132,夫β=0.209)であった.妻にのみ影響があった要因は,自尊感情(β=0.139),会話時間(β=0.147)であり,夫にのみ影響があった要因はソーシャル・サポート(β=0.147)であった.この違いは妻と夫の情緒的関係の受けとめ方に影響すると考える.妻と夫ともに出産育児の会話は,情緒的関係にポジティブに影響していることから,コミュニケーションを維持・促進するための支援の重要性が示唆された.また,結婚前の妊娠は,夫婦の情緒的関係にネガティブに影響しており,情緒的関係を築くうえでリスク要因として捉え,援助することが重要である.The objective of this study was to investigate factors that affect the marital emotional relationship in late pregnancy. Study subjects included 202 vives and 155 husbands. Multiple regression analysis showed that factors affecting the marital emotional relationship that were important to both the wife and husband were:satisfaction with marriage (wife, β=.533;husband, β=0.442), conversation about childbearing and rearing (wife, β=0.215; husband, β=0.221), and pregnancy before/after marriage (wife, β=0.132;husband,β=0.209). Factors affecting the marital relationship that were important to wives were self-esteem (β=0.139) and conversation time (β=0.147), and to husbands were social・support (β=0.147). Differences between wives and husbands in their attitude towards the emotional aspect of the martial relationship exist. Conversation during pregnancy had a positive effect on the emotional relationship and it was thought that conversation between partners is important in maintaining communication. Pregnancy before marriage had a negativeeffect on theemotionalaspect ofthemaritalrelationship and was thereforeconsidered a risk factor for developing negative emotional relationships; these relationships require support and counseling.
著者
渡辺 直明 桑原 誠 桑原 繁
出版者
東京農工大学
雑誌
フィールドサイエンス (ISSN:13473948)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.31-35, 2003-03-25

FM草木のヒダナシタケ目菌類の調査記録をまとめた。FM草木内で採集され,FM大谷山施設棟に保管された標本は21科59属88種であった。西田(1963)や群馬県立自然史博物館(1998)の菌類リストの報告と比較すると,未記録のものが11種あった。
著者
田中 義行 細川 宗孝 渡辺 達夫 三輪 哲也 矢澤 進
出版者
京都大学農学部附属農場
雑誌
京大農場報告 = Bulletin of Experimental Farm Kyoto University (ISSN:09150838)
巻号頁・発行日
no.21, pp.9-14, 2012-12

トウガラシは,ナス科トウガラシ(Capsicum)属の植物である。Capsicum属は約25種の野生種と5種の栽培種から構成されている(Bosland and Votava 1999)。栽培種は,C.annuum,C.baccatum,C.chinense,C.frutescens,C.pubescensであり,このうちC.annuumが世界中で最も広く栽培されている。日本でも栽培されている品種はほぼ全てC.annuumであり,'鷹の爪'などの辛味品種やピーマンと呼ばれる非辛味品種群もこの種に属する。C.baccatumは南アメリカを中心に栽培がみられる。C.chinenseは熱帯地方で広く栽培されており,激しい辛味を呈するものや芳香性に富んだ品種がある。激辛のグループに属することが知られている'ハバネロ'もC.chinenseである。C.frutescensは,C.chinenseと非常に近縁な種であり,日本では沖縄県の一部で栽培がされている。C.pubescensは南アメリカの山間部で栽培されており,「Rocoto」とも呼ばれる。トウガラシには多様な果実の色・形・大きさなどがあるが,最も顕著な特徴は果実が有する激しい辛味である。トウガラシの辛味の原因となる主要な成分は,無色の脂溶性アルカロイドのカプサイシンである。トウガラシ果実には,カプサイシンに加えてジヒドロカプサイシン,ノルジヒドロカプサイシン,ホモカプサイシン,ホモジヒドロカプサイシンなどの同族体が存在しこれらを総称してカプサイシノイドと呼ぶ。カプサイシノイドには,体熱産生作用,脂肪代謝促進作用など様々な生理作用があることが知られており,香辛料として利用されるだけでなく健康機能性成分としても注目されている。トウガラシは辛味の有無によって辛味品種と非辛味品種に区別されている。しかし辛味品種といっても,'ハバネロ'のような激辛品種から僅かに辛味がある低辛味品種まで様々な辛味程度の品種が存在し,また環境条件によって辛味を発現する'シシトウ'のような品種も存在する。辛味発現の機構を理解することは,トウガラシ育種において重要である。しかしトウガラシ果実の辛味発現は,遺伝的要因と環境条件が影響し複雑であり,体系的な理解には至っていない。近年の分子遺伝学的研究により,辛味発現の制御機構の一端が明らかになりつつある。ここでは,我々の結果も含めて,トウガラシ果実の辛味発現を制御する遺伝子に関する最近までの知見を紹介する。
著者
有賀 智也 渡辺 みどり 千葉 真弓
雑誌
日本看護福祉学会誌 (ISSN:13444875)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.101-114, 2014-03

本研究は、精神科病院に入院した認知症高齢者のBPSDに対する症状の軽減を図る精神科看護師の具体的な関わり方を明らかにすることを目的とした。認知症高齢者看護に携わる10名の看護師を対象とし、BPSDを軽減させるために具体的にどのような関わりを実施しているのかを調査した。その結果、BPSDの症状を示す『幻覚への対応』、『妄想への対応』、『徘徊への対応』、『興奮・暴力への対応』の4領域が得られた。重度BPSDを有する認知症高齢者への対応は、入院前からの経験、生活史に関する情報の収集、観察、アセスメントを継続する。それをもとに、適切な対応方法を個別に見出し、非薬剤的介入を実施する。しかし、個別的な対応を尽くしてもBPSDの軽減や消失が図れない場合は、適切な時期、適切な量の薬剤の使用、興奮を助長する過剰刺激を遮断しBPSDを鎮めるための隔離・拘束が必要となる。このような手順を経た関わりが重要となる。(著者抄録)
著者
奥田 稔 高坂 知節 三宅 浩郷 原田 康夫 石川 哮 犬山 征夫 間口 四郎 新川 秀一 池野 敬一 松原 篤 稲村 直樹 中林 成一郎 後藤 了 小野寺 亮 遠藤 里見 亀井 民雄 室井 昌彦 馬場 廣太郎 島田 均 舩坂 宗太郎 大橋 伸也 鄭 正舟 小澤 実佳 八木 聰明 大久保 公裕 後藤 穣 服部 康夫 上野 則之 柏戸 泉 大塚 博邦 山口 潤 佃 守 池間 陽子 坂井 真 新川 敦 小林 良弘 佐藤 むつみ 山崎 充代 藤井 一省 福里 博 寺田 多恵 小川 裕 加賀 達美 渡辺 行雄 中川 肇 島 岳彦 齋藤 等 森 繁人 村上 嘉彦 久松 建一 岩田 重信 井畑 克朗 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 増田 佐和子 村上 泰 竹中 洋 松永 喬 上田 隆志 天津 睦郎 石田 春彦 生駒 尚秋 鈴木 健男 涌谷 忠雄 宮國 泰明 夜陣 紘治 森 直樹 田頭 宣治 宮脇 浩紀 青木 正則 小林 優子 高橋 正紘 沖中 芳彦 遠藤 史郎 池田 卓生 関谷 透 奥園 達也 進 武幹 前山 忠嗣 恒冨 今日子 増山 敬祐 浅井 栄敏 土生 健二郎 中崎 孝志 吹上 忠祐 角田 憲昭 渡辺 隆 野口 聡 隈上 秀伯 吉見 龍一郎 茂木 五郎 鈴木 正志 大橋 和史
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.633-658, 1996-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
21

通年性アレルギー性鼻炎患者211例を対象に, KW-467910mg/日 (KW群) の有効性, 安全性および有用性をoxatomide 60mg/日 (OX群) を対照薬として多施設二重盲検群間比較試験により検討した.最終全般改善度の「改善」以上は, KW群61-6%, OX群57.6%で, 両群間に有意差は認められなかつたが, 同等性の検証を行った結果, KW群はOX群と比較して同等ないしそれ以上と考えられた. 概括安全度の「安全性に問題なし」と評価された症例は, KW群68.0%, OX群61.4%で, 両群間に有意差は認められなかった. 主な副作用症状は両群とも眠気であった. 有用度の「有用」以上は, KW群54.9%, OX群50.5%であり両群間に有意差はなかったが, KW群の方がやや有用率が高かった.以上の成績より, KW-4679は通年性アレルギー性鼻炎に対して, 臨床的に有用性の高い薬剤であると考えられた.
著者
渡辺 克益 松村 一
出版者
克誠堂出版
雑誌
形成外科 (ISSN:00215228)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1021-1029, 2008-09
著者
上島 隆秀 高杉 紳一郎 河野 一郎 禰占 哲郎 岩本 幸英 河村 吉章 小野 雄次郎 山下 正 渡辺 睦 林山 直樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1086-E1086, 2007

【目的】我々は株式会社ナムコ(以下,ナムコ)と共同で,高齢者でも安全かつ容易に下肢・体幹筋トレーニングが可能なゲーム機「ドキドキへび退治RT」(以下,へび踏み)を開発した。今回,ゲームプレイ中の脳血流変化を測定し,ゲームによる脳機能活性化について検討したので報告する。<BR>【方法】被験者は健常成人男性8名(平均年齢38.8歳)であった。脳血流変化は,前頭前野における酸素化ヘモグロビン(以下,oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン,総ヘモグロビンの初期値からの変化量を,近赤外分光法にて測定した。測定機器は島津製作所製OMM-2001で,測定用プローブを前頭部に装着した。解析は,oxy-Hbの最大値および最小値から脳血流変動値を算出し,その値について比較検討した。実施したタスクは,「ワニワニパニックRT」(ナムコ製,以下ワニ叩き),「へび踏み」及び下肢筋力増強運動(以下,下肢筋トレ)とした。測定肢位は,「ワニ叩き」では立位,「へび踏み」及び下肢筋トレでは椅坐位であった。測定時間は,タスク実施60秒,タスク実施前に安静20秒,タスク実施後に安静40秒の計120秒とした。下肢筋トレは,重錘負荷による膝伸展運動であり,頭位の変化による影響を最小限にするため,被験者にはいずれのタスクにおいても可能な限り頭を動かさないように指示した。なお,被験者には事前に十分な説明を行い,同意を得た上で測定を実施した。<BR>【結果】前頭前野における脳血流変化は,個人差が大きく一般化できる特徴は見いだせなかったが,下肢筋トレに比べゲームにおいて,より大きな脳血流変化を生じる傾向が認められた。また,ゲーム経験の程度により,被験者間の特徴の違いも認められた。<BR>【考察】従来の業務用ゲーム機の多くは主に上肢を使うものがほとんどであるが,「へび踏み」は開発当初より下肢・体幹筋の活発な活動を狙っている。介護予防対策の一つとして,腸腰筋や前脛骨筋の強化が重要であるが,「へび踏み」は,楽しみながらこれらの筋肉をトレーニングすることが可能である。前頭前野は意欲や感情の中枢とされ,前頭前野の活性化は認知症予防対策としても注目されている。今回,脳血流変化に個人差が認められたことから,一律にゲーム機を使用するのではなく,個別対応としてゲーム機選択を行うのがよいのではないかと考える。<BR>【まとめ】ナムコと共同で開発したゲーム機の効果について,脳血流変化の観点から検討した。今後,本ゲーム機使用による介入効果についても研究を進めたい。
著者
尾崎 庄一郎 渡辺 裕 星子 知範 水野 晴雄 石川 勝敏 森 春樹
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.733-738, 1984-02-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
20 24

The toxicity and tumor affinity of 5-fluorouracil (1) have been modified by the introduction of acyloxyalkyl group (s) at the 1-, 3- or 1, 3-position (s) of 1. 1-Acyloxyalkyl-5-fluorouracil (3), 3-acyloxyalkyl-5-fluorouracil (4) and 1, 3-bis (acyloxyalkyl)-5-fluorouracil (5) were obtained by three methods : i) the reaction of α-chloroalkyl carboxylate (2) with 1, ii) the reaction of alkylidene diacylate with 2, 4-bis (trimethylsilyloxy)-5-fluoropyrimidine, iii) partial hydrolysis of 5. Compounds 3, 4 and 5 showed antitumor activity.
著者
三浦 真弘 花岡 創 平岡 裕一郎 井城 泰一 磯田 圭哉 武津 英太郎 高橋 誠 渡辺 敦史
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

林木は、異なる環境に種苗を移動した場合、成長等形質に影響する可能性が懸念される。このため、主要林業用樹種のスギでは、環境条件や天然分布の情報を基に種苗配布区域が設定され、種苗の移動が制限されてきた。一方、林木育種事業により設定された次代検定林の調査データとGISデータを利用して特定地域内の林木の移動による影響評価の解析を行ってきたところ、確かに移動の方向により不利益が生じる場合が認められるものの、影響を生じない場合もあることなどが明らかとなった。しかし、日本では共通系統を利用して異なる環境間の大規模植栽試験の実施とその詳細な影響評価について報告例がなく、広域の種苗移動による影響の有無について不明なままである。本研究では、全国各地のスギ精英樹27クローンを用いて、全国9カ所の苗畑で2年間の成長を調査し、産地および植栽場所による成長への影響を評価した。これらのデータを元に種苗を移動した場合のスギの影響評価について検討を行い、現行の種苗配布について議論を行う。
著者
白井 謙太朗 中島 啓介 渡辺 章充 川野 豊 佐久間 啓 吉田 尊雅 宮田 理英 田沼 直之 林 雅晴
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.447-451, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
18

インフルエンザ菌 (Hib) による劇症型髄膜炎の1男児例を経験した. 症例は4歳男児. 生来健康であったが, 発熱, 嘔吐を来し傾眠傾向となった. 発症12時間後より細菌性髄膜炎の治療を開始したが, 急激な脳腫脹から脳ヘルニアを来し臨床的な脳死状態となった. 本症例は急性脳症と類似した臨床経過・画像所見を示し, さらには発症1日目の髄液で炎症性サイトカインが著しい高値を呈していた. 文献的考察から, Hibによる劇症型髄膜炎には, DIC (disseminated intravascular coagulation) ・多臓器不全型と急性脳腫脹型があり, 本例はサイトカイン・ストームによる急性脳腫脹型であると考えられた.
著者
清水 弘之 HO John H.C. KOO Linda C. 藤木 博太 松木 秀明 渡辺 邦友
出版者
岐阜大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

ホンコンでは、わが国と比べ鼻咽頭がんの罹患率が高く、EBウィルスと関係、あるいは塩魚との関係が注目されてきた。しかし、一般集団のEBウィルスへの感染率は日本、ホンコンとも極めて高く、EBウィルスのみでは、日本とホンコンとの差、あるいは発病すめ者としない者の差を説明しきれない。つまり、別の因子の介在している可能性が充分に考えられる。今回、気道内の細菌のプロモ-ション活性に注目して、研究を実施した。ホンコン・バプティスト病院へ通院中の鼻咽頭がん患者5名(男子4名、女子1名、年齢40ー68歳)の鼻咽頭部から粘液を採取、直ちにGAM寒天培地を用い、好気・嫌気両方の条件で37℃、48時間培養を行った。また、コントロ-ルとして、同病院で働く職員を5名(男子3名、女子2名、年齢36ー64歳)選び、鼻咽頭部粘液を同様に培養した。それぞれの培養菌体を一旦凍結乾燥したのち、その溶解物を用い、プロテインキナ-ゼC、^<32>PーATP、Ca、フォスファチジルセリンの存在下で、ヒストンに取り込まれる^<32>Pの量を測定することにより、プロテインキナ-ゼCの活性を観察した。プロテインキナ-ゼCの活性(mU/10μg)は次の通りであった(平均値と標準偏差):鼻咽頭がん患者からの検体の好気培養…20.0 ±11.0鼻咽頭がん患者からの検体の嫌気培養…13.2 ±11.0対照者からの好気培養………5.18 ±6.16対照者からの嫌気培養………10.4 ±17.16つまり、好気培養・嫌気培養の結果とも、鼻咽頭がん患者からの菌体の方で高い活性値が認められ、特に好気培養でその傾向が顕著であった。また、ホンコンにおいては、女性の喫煙率が低いにもかかわらず、女性肺がんが高率であり、一般集団での慢性の咳・痰も日本の約10倍と推定されている。そこで慢性痰を有する女性3名の喀痰を37℃、好気および嫌気条件下で48時間培養後、一旦凍結乾燥し、以下の燥作を行い、nonーTPAタイププロモ-タ-であるオカダ酸クラスが示す、プロテインキナ-ゼの活性作用を検討した。すなわち、凍結乾燥菌体を酵素で消化、凍結乾燥後、メタノ-ルで抽出し、その抽出液をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解する分画Iと、その沈渣である分画II、さらにメタノ-ル抽出の沈渣をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解した分画IIIに分け、酵素活性への影響を観察した。好気培養で発育した菌は、どの分画においてもプロテインキナ-ゼの活性作用であるオカダ酸様作用を示さなかった。しかし、2名から得た嫌気培養発育菌は比較的強い活性(特に分画Iにおいて)を示した。分離同定の結果、その菌は Streptococcus sanguis であることが判明した。以上、鼻咽頭患者の腫瘍部あるいはその近辺から採取した細菌の菌体(あるいはその分泌物)に何らかのプロモ-ション活性を示すものが存在する可能性を示唆する結果を得た。しかし、診断後時間経過の短い患者を選んだが、既にがんが発生した後の鼻咽頭部からの菌の分折であり、がん発生以前の状況は不明のままである。また、ホンコンの肺がん患者10例から喀痰を採取し、凍結乾燥を終えているので、慢性の咳・痰を有する患者の成績と比較すべく、分折を継続中である。
著者
多田 正大 橋本 京三 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.24-29, 1984

潰瘍性大腸炎の病態生理の一面を知る日的で, ラジオカプセル法 (NationalTPH-101型) を用いて本症患者13名の各病期の直腸内圧を測定し, 直腸の運動量を内圧面積 (内圧曲線と基線で囲まれた面積) で表わした.その結果, 活動期において内圧面積は健常者よりも統計学的に有意の差で低下していた.特にpatient yearが4年以上と長くなり, 病変範囲も全大腸型の重症例ほど内圧面積は小さくなり, 緩解期でも健常者よりも低下していた.ネオスチグミンによる刺戟後の運動量の変化 (S/R) をみると, patient year4年以上, 全大腸型の活動期では健常者よりも高値を呈し, これらの症例では刺戟に対して過敏に反応すると考えられた.