著者
神尾 幸則 稲葉 行男 渡部 修一 小山 基 大江 信哉 林 健一 千葉 昌和
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1634-1638, 2002-10-01
被引用文献数
10

症例は84歳の女性.脳梗塞の既往があり,心房細動,うっ血性心不全で近医通院中.腹痛,嘔気が出現し,イレウスの診断で入院となった.大腸内視鏡検査でイレウスの原因が直腸S状部の2型腫瘍のためであると判明したため,経肛門的に腫瘍口側にイレウスチューブを留置した.肝機能異常のため手術を延期していたが,入院20日目,腹痛出現,翌日には腹膜刺激症状を認め,緊急手術を施行した.開腹すると膿性腹水が骨盤内を中心に貯留しており,腹膜炎の原因は腫瘍直上の口側腸管の穿孔と判明した.手術はハルトマン手術を施行した.標本を切開したところ,癌腫の口側腸管に線状潰瘍とPTP包装薬剤を認めた.最近,PTP(press through package)誤飲による消化管損傷が増加しているが、大腸穿孔の例は本邦では5例と少なく.直腸穿孔は本症例が本邦初の報告である.
著者
稲葉 洋子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.486-491, 2009-10-01

近年,国立大学図書館では所属する大学の理念や目標・計画のもと,図書館も一部局として成果を上げ,かつ利用者への多様なサービス活動を展開していくことが求められている。だが,運営に関わる予算が厳しくなってきている現在では,図書館職員一人ひとりが企画をし,予算を獲得する能力が必要とされてきている。本稿では,国立大学法人化以降,国立大学図書館職員が置かれている状況と,その中でどのように自らスキルアップをして能力を高めていけばよいのか,現場から提案していく。
著者
野﨑 哲 稲葉 基高
出版者
一般社団法人 日本病院総合診療医学会
雑誌
日本病院総合診療医学会雑誌 (ISSN:21858136)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.409-413, 2023-11-30 (Released:2023-12-08)

症例は70代男性。来院3年前, 右冠動脈病変, 左前下行枝病変に対し経皮的冠動脈ステント留置を施行された。ムカデ咬症後, 全身の紅斑と掻痒及び呼吸困難感を自覚し救急搬送された。ムカデ咬症によるアナフィラキシーと診断された。アドレナリン投与後も呼吸困難感持続し, モニター心電図上 II 誘導でST上昇認めた。12誘導心電図で II,III,aVf のST上昇を認め急性冠症候群を疑った。緊急冠動脈造影直前に心停止となったが心肺蘇生術で心拍再開した。冠動脈造影で右冠動脈の完全閉塞を認めた。以前に留置されたステント部に透亮像を認め,ステント留置処置を行った。本症例は虫咬症,アレルギー反応を契機にステント内血栓,いわゆるKounis症候群Type3を発症したと考えられた。虫咬症という比較的頻度の高い傷病でも,アレルギーからアナフィラキシー,急性冠症群を合併する可能性を十分に念頭に置き診療することが肝要である。
著者
稲葉 継雄
出版者
九州大学
雑誌
大学院教育学研究紀要 (ISSN:13451677)
巻号頁・発行日
pp.185-208, 1998

Minami Jiro, whose term of office (7th; 1936-42) was only the third longest among the eight Governor-Generals of Korea, next to Saito Makoto's (3rd; 1919-27, 5th; 1929-31) and Terauchi Masatake's (1st; 1910-16), is nevertheless evaluated as "the most unforgettably atrocious Governor-General in the history of Japanese colonial rule of Korea. "Minami, who was in office during the time of Sino-Japanese War (1937-1945) and the World War II (1939-1945), gained notoriety for a series of hard-line policies aimed at kominka, or making Imperial Japanese subjects of the Korean race, such as the enforced worship at Shinto shrines, the exaction of the Pledge of Imperial Subjects, the promulgation of the Name Order (so-called soshi kaimei; K. ch'angssi kaemyong), the educational reforms under a new Rescript on Education, and the mass recruitment of young Koreans. It goes without saying that Minami's subordinates played indispensable roles, assisting him and sometimes even taking initiative, in enforcing these policies. This study focuses on Shiobara Tokisaburo, Chief of the Education Bureau, because it is quite effective to trace his words and deeds for clarifying the facts about Minami's policies, especially in education. Although Miyata Setsuko has painstakingly dealt with the general view of kominka policies and the structural relations among them in her numerous works, her approach is not of educational history. It is the goal of this article to further investigate the educational issues of colonial Korea that has been discussed by Miyata and others.
著者
千葉 百子 篠原 厚子 稲葉 裕 中山 秀英 林野 久紀 小出 輝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.406-410, 1990-10-20 (Released:2014-11-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

体重減少, 全身倦怠感, 筋力低下を主訴として受診, ゲルマニウムを飲用していたことが判明した症例, および神経痛治療の目的でゲルマニウム含有粉末を摂取していたため精査を希望して受診した症例の2例について検査し, 次のような結果を得た. 1) 2症例ともに測定した組織, 臓器中に高濃度のゲルマニウムが検出された. この結果はゲルマニウム含有物質の服用歴を裏付けるものである. 2) ゲルマニウムの中毒作用として腎障害が知られているが, 症例1においては臨床的ならびに病理組織学的に横紋筋融解による明らかな急性尿細管壊死が認められた. 3) ゲルマニウムの中毒作用として筋力低下, 筋萎縮が知られているが, 今回の結果では筋肉内にゲルマニウムを検出し得なかったことから, 筋肉内蓄積性のものではないと考えられる. 4) 毛髪, 爪は経口的に摂取したゲルマニウムの排泄経路の一部である.
著者
稲葉 昭英
出版者
日本離婚・再婚家族と子ども研究学会
雑誌
離婚・再婚家族と子ども研究 (ISSN:24357235)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2-19, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
27

本研究の目的は,離別母子世帯における非同居父と子との交流が子にどのような影響を及ぼすのか,を検討することである.無作為抽出にもとづく確率標本データを用いて,中学校3 年生の子のいる母子世帯について,非同居父と子との会話頻度,非同居父から子へのサポートが子の自己肯定感に及ぼす影響を計量的に検討した.会話頻度,サポートどちらの項目も欠損値が過半数を占めていたが,欠損値を含めておこなった分析,欠損値を示したデータを除外して無回答傾向を統制しておこなった分析,いずれにおいても女子においては父と「友達のこと」について会話する頻度が高いほど,また父が「自分のことをわかっている」と思えるほど,有意に自己肯定感が高い傾向が示された.ただし,以上の傾向は男子には示されなかった.非同居父は女子に対して表出的なサポートの提供者として少なからぬ役割を有し ているように思われる.このことは,非同居父と子との関係の継続が子どもにとって利益となる可能性を示している.
著者
赤林 英夫 妹尾 渉 敷島 千鶴 星野 崇宏 野崎 華世 湯川 志保 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 山下 絢 田村 輝之 繁桝 算男 小林 雅之 大垣 昌夫 稲葉 昭英 竹ノ下 弘久 藤澤 啓子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究では、経済格差と教育格差の因果関係に関するエビデンスを発見するために、親子を対象とした質の高い長期データ基盤を構築し、実証研究と実験研究を実施した。さらに、経済格差と教育格差に関する国際比較研究を実施した。具体的には、テスト理論により等化された学力データを活用し、学力格差と経済格差の相関の国際比較、親の価値観が子どもの非認知能力に与える影響の日米比較の実験研究、子ども手当が親の教育支出や子どもの学力に与える影響に関する因果分析等を実施した。
著者
阿部 泰郎 稲葉 伸道 山崎 誠 福島 金治 末木 文美士 岡田 荘司 川崎 剛志 近本 謙介
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の中心的対象である真福寺大須文庫の聖教典籍について、当初の方針にもとづき、基幹となる聖教を、全115合中50合まで調査を行い、カードに再訪し、そのうち40合まで、すなわち教相書の全てと事相書の前半部分にっいてデータ入力を終えた。そのうち20合までは報告書に略目録を収めた。調査の過程で発見した貴重な文献については、その一部を臨川書店『真福寺善本叢刊』第2期に影印翻刻と解題を付して、既に9巻を公刊している。本研究期間中には、『伝記験記集』『真福寺古目録集二』『法儀表白集』『伊勢神道集』『聖徳太子伝集』『中世先徳著作集』『性霊集注』の7巻が刊行された。本研究において真福寺の聖教典籍のうち、特に平安鎌倉期の諸宗の章疏や記録および神祇書については、二世信瑜を介した東大寺東南院伝来の文献群であることが明らかになり、中世真言教学興隆の中心的学僧であった頼瑜の著作群と併せて、真福寺の蔵書の価値が一層解明された。調査の一環として、未整理の大量の断簡について、平成16年度から予備調査を試み、その大半を閲覧し複数の分野で重要な文献を発見し、復原を試みた。その本格的な整理に、次年度からの科研費により着手を予定するが、これにより悉皆調査の基礎が築かれる。真福寺を軸として、中世寺院の経蔵が形成し蓄えた知的体系についての解明と歴史・宗教等諸学の研究との連携が進展し、その文献学一目録学的研究の重要性について学界共通の認識が醸成されつつある。特に説話文学会シンポジウム・ワークショップなどで文庫の保存の意義を社会に向けて発信した。なお関連する中世文学研究上の主題にっいて、本科研費の支援を得て毎年度公開研究集会を開催し、多大な成果を挙げた。勧修寺大経蔵聖教の調査については、入力されたデータの原本による確認を継続して遂行し全体の30%が完了している。
著者
宮原 祥吾 原田 健次 新海 陽平 稲葉 泰嗣 荒牧 勇
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.111_1, 2017 (Released:2018-02-15)

近年、脳の局所的な構造が運動・認知スキルと関連するという報告が相次いでいるが、スポーツ選手を対象とした報告は少ない。そこで本研究は、野球熟練者の投球コントロール能力と関連する脳部位の構造的特徴を明らかにすることを目的とした。C大学野球部のピッチャー9名(右利き)に対し、的の中心点を狙った右投げ投球、左投げ投球をそれぞれ30球ずつ行わせた。それぞれの条件について的中心からの平均距離を計算した。すべての被験者のT1強調MRI脳画像を計測し、Voxel Based Morphometry解析により、それぞれの投球条件において、的中心からの距離と脳灰白質容積の相関のある脳部位を同定した。その結果、いずれの条件においても、的中心からの平均距離と右頭頂葉の灰白質容積に有意な正の相関関係が認められた。頭頂葉は、空間的な運動制御に重要な役割を果たす脳部位であり、投球コントロール能力に頭頂葉の構造的発達が重要であることが示唆された。
著者
中川 裕美 稲葉 美穂 後藤 祐充 笹舘 夏来 三宅 敏恵 小林 敦子 鈴木 貴博 下澤 達雄
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.654-660, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
16

血中カリウム(potassium; K)値は腎機能などによって変動するが,体内での変動とは別に,検体の溶血や採血時のクレンチングなどの条件によって偽高値を示すことがある。今回,これらに問題はなく一過性に高K血症をきたした症例を経験した。この症例ではカリウムを多く含む食事の影響が推測されたため,その検証を行ったので報告する。同意が得られたボランティア12名を対象に,患者から聞き取りを行った内容と同様の食事を摂取させ,食前,食後1時間,2時間で血清Kと尿K,尿クレアチニン(creatinine; CRE)を測定した。個人別の変動では,12名のうち2名において血清K値が食後1時間で0.7 mmol/L上昇,食後2時間の尿K/CREが60 mmol/g·CRE上昇した。また,血清K値は食前の値に対して食後1時間**,2時間*で有意に上昇し,尿K/CREは2時間**で有意に上昇した(*p < 0.05, **p < 0.01)。12名のうち5名で血清K値が0.3 mmol/L以上上昇しており,この群では食後1時間の尿Kの排泄量が少なく食後2時間で大きく増加していることより,K排泄が遷延していると考えられた。今回の検討で,健常者においても短時間で食後の血清K値の上昇を認めたことから,臨床像と乖離のある高K血症においては採血手技や検体の取り扱いの確認だけでなく,食事内容や食後の時間経過の聞き取りも重要であると考えられた。
著者
塩崎 賢明 阪東 美智子 川崎 直宏 稲葉 剛 見上 崇洋 岡本 祥浩 川田 菜穂子 鈴木 浩
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集・実践研究報告集 (ISSN:2433801X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.25-36, 2018

本研究は,2006年に制定された住生活基本法とそれにもとづく一連の住宅関係法制を「住生活基本法体制」とし,その到達点を明らかにすることを通して,人間らしい住まいと環境を享受できていない居住弱者の実態を明らかにし,居住弱者をなくし国民の住生活の向上を図るうえでの課題を導こうとした。住生活基本法と住宅セーフティネット法の法的性格を検討し,ホームレス,若者,被災者等の居住弱者の実態を明らかにし,居住貧困に対して住生活基本法体制及びそのもとにある住宅セーフティネット法とその改正の施策について評価を加えた。
著者
村越 友紀 望月 善子 渡辺 博 稲葉 憲之
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-94, 2011-03-25

10 代妊娠を「防ぐべきである」という視点ではなく,出産を目指す10 代妊婦に共感し,母性意識の発達を促し,セルフケアできるよう援助していくための方法を探索することを目的として,1998 年から10 年間に当センターで出産した10 代妊婦138 名を対象に承諾を得た85 名に対し,アンケート調査を実施した (回収率45.9%).妊娠時の心境としては妊娠を肯定的に受け止めていた者が76.9%であったが,出産時には92.3%と増加していた.現在の相談相手は母親,夫,友人であり,育児,金銭面の相談が主であったが,相談相手すらいない状況下,一人で育児を行っている者もいた.10 代での妊娠出産をよかったと71.8%が判断していたが,10 代出産のデメリットは経済的不安,知識の少なさが挙げられた.思春期には性行動,妊娠,出産そして育児など長いスタンスの知識提供と現況を把握理解した上での支援体制が必要と考える.
著者
倉岡 紗樹子 高橋 索真 豊澤 惇希 石田 正也 香川 朋 榊原 一郎 泉川 孝一 石川 茂直 和唐 正樹 稲葉 知己
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.237-242, 2018 (Released:2018-03-20)
参考文献数
16

症例は87歳の女性.大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎が疑われ,プレドニゾロン40mg/dayの投与が開始され,1週間後より大量の暗赤色便を繰り返すようになった.上部消化管内視鏡検査にて,胃十二指腸粘膜は粗造で浮腫状,広範囲に白苔を伴い,極めて易出血性であった.胃十二指腸からの生検病理組織にて多数の線虫様虫体を認め,便検査にて多量の糞線虫を確認し,糞線虫症と診断した.イベルメクチン9mg/dayの2週間連日投与を行い,全身状態は改善を認めた.免疫抑制療法に伴う消化管出血では,腸管寄生虫症は留意されるべき病態と考える.特に,広範囲の粘膜表層に炎症を認めた場合は,粘膜生検が寄生虫疾患の診断に有用である.