著者
稲葉 瑛志 Inaba Eiji
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 = Jinbun Ronso: Bulletin of the Faculty of Humanities, Law and Economics (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.1-13, 2022-03-31

本論は、20世紀ドイツの作家・思想家エルンスト・ユンガーの初期思想を、ヴァイマル共和国の「危機」に対する応答として明らかにする試みである。歴史学者デートレフ・ポイカートは「古典的近代」の病理論のなかで、過度な近代化のもたらした光と闇を鮮やかに描き出した。しかしその議論においては、経済危機という実体があまりにも重視されることによって、この時代の経験的次元における「危機」の複雑性が単純化されてしまったのである。本論は、「危機」概念の3つの意味内容を検討し、そこに従来見落とされてきた「危機」の「ユートピアの精神」を分析の中心に据え、ユンガーの初期作品を読み直すことを試みた。とりわけユンガーの歴史観、思考法、構想について考察し、黙示録的歴史観、「好機としての失敗」の思考法、「技術の完成」の秩序構想を抽出した。
著者
川田 伸一郎 下稲葉 さやか 平田 逸俊
出版者
独立行政法人 国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館研究報告A類(動物学) (ISSN:18819052)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.97-118, 2022-05-20 (Released:2022-05-20)
参考文献数
62

Rokuro Nagasawa was a student in University of Tokyo under Professor Isao Ijima. He was involved in editing a zoological magazine named “Dobutsugaku Zasshi”, then the official journal of the Zoological Society of Tokyo, but his subsequent life is not well documented. We conducted bibliographic surveys to evaluate Nagasawa’s achievements. He entered the University of Tokyo in 1907 and was in charge of editing “Dobutsugaku Zasshi” from 1911 to 1917. After that, he suddenly disappeared from the Zoological Society of Tokyo and moved to Vancouver, where he worked as an editor-in-chief of Japanese newspapers. He wrote many newspaper articles under the pen name of “Nanbokusei”. Prior to moving to Canada, he also wrote under the pen name of “N.S. Sei”. He returned to Japan before World War II, and worked as a high school teacher in Kyoto. He then moved to Hyogo prefecture and wrote and edited the local history of the area.
著者
野津田 雄太 高橋 健一 稲葉 通将
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.83-92, 2015-12-09

1990年頃から国内で理系離れが問題視されている.しかし,理系離れの要因として明確なものは存在しない.その分析に寄与するため,文系・理系の大学生の日常生活の習慣や科目の得意・不得意などの状況を調査した.本研究では,著者が所属する大学の学生を対象にアンケート調査を実施し,データマイニング手法を用いて,科目の履修・嗜好などの傾向から文系・理系への進路選択と相関のある要因と,学生の生活習慣から文系・理系学生の日常の傾向について考察を行う.用いたデータマイニング手法は決定木,主成分分析,ベイジアンネットワークである.分析の結果,小学校・中学校からの得意・不得意科目や日常生活における学生の嗜好と学生の文理に相関があることが分かった.
著者
稲葉 隆政
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.107-134, 1987-05

資料紹介
著者
香川 俊宗 手塚 宏史 稲葉 真理
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.326-333, 2015-09-18

音楽ゲームは計算機とプレイヤーが合奏し曲を完成させるもので, プレイヤーが演奏するパートを 原曲から分離・抽出し, プレイヤーのアクションを指示する譜面を作成することが難しいことが知られて いる. 本研究ではよい譜面の自動生成のための重要音抽出を目指す. 音楽の中で繰り返し現れるフレーズが 重要な部分であると考え,suffix tree を利用してフレーズを抽出する頻出頻度を利用した重要音抽出法を提 案・実装し,メロディ,ハーモニー,リズムそれぞれに適用し,譜面に使用する楽曲を構成し,ユーザーテ ストを行った.
著者
千葉 隆司 貞升 健志 長島 真美 熊谷 遼太 河上 麻美代 浅倉 弘幸 内田 悠太 加來 英美子 糟谷 文 北村 有里恵 小杉 知宏 鈴木 愛 永野 美由紀 長谷川 道弥 林 真輝 林 志直 原田 幸子 藤原 卓士 森 功次 矢尾板 優 山崎 貴子 有吉 司 安中 めぐみ 内谷 友美 神門 幸大 小林 甲斐 長谷川 乃映瑠 水戸部 森歌 三宅 啓文 横山 敬子 吉田 勲 浅山 睦子 井田 美樹 上原 さとみ 小野 明日香 河村 真保 小西 典子 小林 真紀子 齊木 大 下島 優香子 鈴木 淳 西野 由香里 村上 昴 森田 加奈 吉丸 祥平 木本 佳那 新藤 哲也 堀田 彩乃 小林 千種 大塚 健治 吉川 聡一 笹本 剛生 稲葉 涼太 小峯 宏之 佐伯 祐樹 坂本 美穂 塩田 寛子 鈴木 淳子 鈴木 俊也 高久 靖弘 寺岡 大輔 中村 絢 成瀬 敦子 西山 麗 吉田 正雄 茂木 友里 飯田 春香 伊賀 千紘 大久保 智子 木下 輝昭 小杉 有希 斎藤 育江 高橋 久美子 立石 恭也 田中 優 田部井 由紀子 角田 徳子 三関 詞久 渡邊 喜美代 生嶋 清美 雑賀 絢 鈴木 仁 田中 豊人 長澤 明道 中村 麻里 平松 恭子 北條 幹 守安 貴子 石川 貴敏 石川 智子 江田 稔 岡田 麻友 草深 明子 篠原 由起子 新開 敬行 宗村 佳子 中坪 直樹 浜島 知子 野口 俊久 新井 英人 後藤 克己 吉原 俊文 廣瀬 豊 吉村 和久
出版者
東京都健康安全研究センター
雑誌
東京都健康安全研究センター研究年報 (ISSN:13489046)
巻号頁・発行日
no.71, pp.39-46, 2020
著者
稲葉 洋平 牛山 明
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.144-152, 2020-05-29 (Released:2020-06-27)
参考文献数
27

2020年 4 月から完全施行された改正健康増進法は,望まない受動喫煙をなくすために施設の類型・場所ごとに対策を実施することで対応している.しかし,加熱式たばこは経過措置として,飲食可能な喫煙室での使用が認められている.その理由として加熱式たばこは日本で販売が開始されてから期間も短く,喫煙者の健康影響,受動喫煙に関しても科学的な根拠の蓄積が少ない状況が上げられる.この加熱式たばこは,加工されたたばこ葉を携帯型の装置で加熱することによって発生する煙(エアロゾル)を吸引するたばこ製品である.このたばこ製品は,燃焼を伴わないために紙巻たばこから発生する有害化学物質の発生量を抑制する.2014年に販売開始されたIQOSをはじめとする加熱式たばこの主流煙(エアロゾル)は,燃焼由来の有害化学物質が90%近く削減されている.しかし,低減されていない有害化学物質も存在している.特に加熱式たばこのエアロゾルの有害化学物質の数はそれほど低減されていないため,加熱式たばこを使用する限りは化学物質の複合曝露は継続されている.依存物質のニコチンは,加熱式たばこと紙巻たばこは同等の含有量が報告されており,加熱式たばこ喫煙者の禁煙は望めない.一方で,加熱式たばこ喫煙者について健康影響評価をまとめたところ,紙巻たばこから加熱式たばこへ変更することによって有害化学物質のバイオマーカー量は90%近く低減されている成分と,50%程度の削減にとどまるバイオマーカーも確認された.さらに,健康影響を指標とするバイオマーカーについては,削減されているという報告と統計的に有意差が認められないといった報告があった.これまでの研究成果から,加熱式たばこの使用によって有害化学物質の曝露量の低減は確認されているものの,健康影響の改善までは確定していない.現在,加熱式たばこに関する研究報告は,たばこ産業からの報告が多くされている.公衆衛生機関や中立的な立場の研究者から加熱式たばこの長期的な利用による健康影響に関する研究報告が積み上げていくことが急務である.
著者
八井田 朱音 大塚 理子 山田 安咲紀 中野 和彦 松井 久美 関本 征史 稲葉 一穂 伊藤 彰英
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7.8, pp.341-350, 2020-07-05 (Released:2020-11-07)
参考文献数
25
被引用文献数
2

キレート固相抽出法を併用するICP-MS法により,多摩川の中流域から河口域までの15地点で採水した河川水試料を分析し,Sc,Y及びPmを除く14元素の希土類元素を定量した.分析結果をPAAS(Post-Archean Australian Average Shale)で規格化して希土類元素存在度パターン(希土パターン)を作成して考察したところ,多摩川では中流域の下水処理放流水合流地点から河口域までの試料で,Gdの存在度が隣接する他の希土類元素よりも明らかに高いGdの濃度異常が定常的に確認された.この濃度異常は,MRI造影剤として人体に投与されたGd化合物により引き起こされることが確認されており,Gd濃度を約20〜25年前の文献値と比べると,中流域と河口域の2地点について,それぞれ2〜4倍,3〜4倍の濃度であった.したがって近年,多摩川河川水においてはGd濃度が上昇していることが明らかになった.さらに,Gdの濃度異常について国内外の他の文献値と比較するために,Gdの濃度異常をGd異常度として数値化し,多摩川の潜在的人為汚染の現状を評価した.その結果,本研究で分析した多摩川中流域河川水のGd濃度及びGd異常度の最大値は,これまでの国内河川水の文献値と比較して最も高く,国外河川水のすべての報告値を含めて比較しても,ドイツのハベル川に次いで高いことが明らかになった.
著者
篠原 厚子 千葉 百子 武内 裕之 木下 勝之 稲葉 裕
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.418-425, 2005-11-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

Objective: The relationships between element concentrations and sperm parameters in semen samples were investigated.Methods: Semen samples (n=113) were donated voluntarily by male partners of infertile couples. The concentrations of fourteen elements (Na, K, P, Ca, Zn, Mg, Fe, Cu, Se, Mn, Sn, Co, Ni, and Cd) in semen were determined by atomic absorption spectrometry, fluorometry, or colorimetry. Element concentrations in seminal plasma and in sperm were also measured.Results: Element concentrations in semen were in the order Na>P, K>Ca>Zn>Mg>>Fe>Cu, Se>Mn>Sn, Ni, Co, Cd. When the samples were divided into two groups in terms of sperm concentration and number, the Se concentration in semen with normal parameter values (sperm concentration≥20×106 and sperm number≥40×106), 99.4±37.4ng/ml, was higher than that in semen with abnormal parameter values (sperm concentration≤20×106 and/or sperm number≤40×106), 72.1±33.9ng/ml (p<0.001). A clearer positive correlation between the Se concentration and the sperm concentration was observed in the sperm portion (r=0.853, p<0.001) than in semen (r=0.512, p<0.001) and seminal plasma (r=0.292, p=0.003). Statistically significant correlations were also observed between the concentration of Se, P, Zn, Cu, Fe, or Mn in semen, the sperm portion or seminal plasma and the sperm concentration, semen volume or abnormal morphology, although correlation coefficients were small.Conclusion: Among biologically essential elements in semen of infertile males, Se was a good indicator of sperm concentration; however, other trace elements did not indicate clear relationships between their concentrations and sperm parameters.
著者
稲葉 通将 大畠 菜央実 高橋 健一 鳥海 不二夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2392-2402, 2016-11-15

本研究では,人狼ゲームにおけるプレイヤの発話内容を表現するタグを設計し,それらのタグを人狼BBSにおけるプレイヤの発話に付与し分析を行った.分析では,襲撃対象,および処刑対象の決定にプレイヤごとの発話の傾向がどのように影響するのか,また,ゲーム全体のコミュニケーションの傾向とゲームの勝敗の関係について調査した.分析の結果,人間側,人狼側の各プレイヤが自陣営の勝利のために効果的なコミュニケーション戦略,および特定のコミュニケーションとプレイヤの行動の関係が明らかとなった.We focus on a communication game "Werewolf". Our final objective is making a werewolf player agent. In this paper, as a first step, we analyze this game using players' utterances. We define a tag set that describes player's dialogue act and annotate utterances in the Werewolf BBS with these tags. By using these annotated utterances, we analyze the relationships between the trend of the types of the utterances and decision-making and victory or defeat. The results of the analysis clarify effective actions in werewolf in order to win.
著者
稲葉 直也
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.112, pp.2040, 2019-08-31 (Released:2019-09-05)

本稿は,ラーニング・コモンズ設置等に代表される,館内利用方針の変換を伴う施設改修の効果を検証するために,大学図書館の館内利用量(利用時間)を推定することで,館内利用の変化を量的に評価する手法を提案する。2018年8月から9月に行われた早稲田大学中央図書館2階のラーニング・コモンズ改修工事を対象に実証調査を行い,改修に期待する効果を事前に館内利用量を測定することで予測し,改修後に館内利用の変化の有無を確認することで,想定通りの改修の効果が表れているか検証と評価が可能であることを明らかにした。
著者
稲葉 洋子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.64-70, 2008-02-01

世界の文化を比較研究するファイル資料としてアメリカ・イェール大学で開発され,現在も世界中で利用されているHuman Relations Area Files (HRAF)がある。国立民族学博物館は1976年HRAFの正会員となり,大学共同利用機関としてファイル情報の提供や利用法の研修会を開催し,利用促進や広報に努めてきた。また,館内においてはHRAFを研究に活かしていくだけでなく,標本資料や文献図書資料等所蔵資料の分類にHRAFの分類法の一つであるOWC分類を付与している。紙ファイルからWeb版に媒体変更しつつあるHRAFは会員数を着実に増やしているが,民博でもより研究に活かしてもらう方法を考える時期にきていると考える。
著者
池田 志斈 真鍋 求 小川 秀興 稲葉 裕
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, 1990

全国アンケート調査から得られた単純型およおび劣性栄養障害型表皮水疱症患者の身長・体重の値を統計学的に処理し,全国平均の値と比較した.その結果,1)単純型では女性の身長が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い.しかし女性の体重,男性の身長・体重には有意の差を認めない.2)劣性栄養障害型では,男女とも身長・体重が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い,などが示された.本疾患々者の成長発育状態及び栄養状態を把握し,十分な栄養を補給を行うことがなされるならば,本疾患々者の予後が比較的良好となることが期待できるものと思われる.