著者
窪田 哲也 窪田 直人 門脇 孝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.85-88, 2008 (Released:2008-02-14)
参考文献数
14

血管内皮は,さまざまな生理活性因子を産生・分泌することによって,血管の収縮・拡張,細胞増殖,白血球接着阻止,血小板接着・凝集阻止などの抗炎症作用や凝固線溶系などの調節を行っている.血管内皮機能が障害されると,動脈硬化の初期病変が形成され,最終的には我が国の死因の第一位を占める動脈硬化性疾患(心筋梗塞,脳梗塞など)の発症につながると考えられる.この血管内皮機能をつかさどる分子の一つとして血管内皮型NO産生酵素(endothelial NO synthase: eNOS)が重要な働きをしていると考えられる.インスリンはこのeNOSをリン酸化し,活性化することによって血管内皮機能を調節していると考えられている.eNOS欠損マウスでは,血管内皮機能障害に加えて,インスリン負荷後の骨格筋の血流低下により,骨格筋のインスリン抵抗性を発症することが報告されている.さらに,血管内皮細胞がインスリンのバリアー機構として働き,インスリン抵抗性モデル動物では,特に骨格筋においてこのバリアー機構が破綻していることが報告されている.本項では,インスリンの血管内皮機能の調節,インスリン抵抗性発症における血管内皮の役割を中心に概説したい.
著者
窪田 哲也 窪田 直人 門脇 孝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.2, pp.85-88, 2008-02-01

血管内皮は,さまざまな生理活性因子を産生・分泌することによって,血管の収縮・拡張,細胞増殖,白血球接着阻止,血小板接着・凝集阻止などの抗炎症作用や凝固線溶系などの調節を行っている.血管内皮機能が障害されると,動脈硬化の初期病変が形成され,最終的には我が国の死因の第一位を占める動脈硬化性疾患(心筋梗塞,脳梗塞など)の発症につながると考えられる.この血管内皮機能をつかさどる分子の一つとして血管内皮型NO産生酵素(endothelial NO synthase: eNOS)が重要な働きをしていると考えられる.インスリンはこのeNOSをリン酸化し,活性化することによって血管内皮機能を調節していると考えられている.eNOS欠損マウスでは,血管内皮機能障害に加えて,インスリン負荷後の骨格筋の血流低下により,骨格筋のインスリン抵抗性を発症することが報告されている.さらに,血管内皮細胞がインスリンのバリアー機構として働き,インスリン抵抗性モデル動物では,特に骨格筋においてこのバリアー機構が破綻していることが報告されている.本項では,インスリンの血管内皮機能の調節,インスリン抵抗性発症における血管内皮の役割を中心に概説したい.<br>
著者
佐々木 道史 曽我 和哉 市川 尚 窪田 諭 阿部 昭博
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報システムと社会環境(IS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.120, pp.23-29, 2008-11-25
被引用文献数
1

近年,学校教育現場には広く協同学習を取り入れる事例が増えているが,単に手法のみを導入してもグループ内に有意な相互作用は生起しがたい点が課題として挙げられる.本研究では,高等学校の授業において協同学習を行う際のグループ編成に着目し,相互依存関係に配慮した効果的なグループ編成を支援するための情報システムの在り方について考察する.Recently, application cases of cooperative learning on educational sites have increased. However they have been pointed out difficulty of effective interaction in learning group. In order to conduct effective cooperative learning on a class of high school, this paper describes a grand design and its prototype of support information system to organize learning groups taking interdependence relationship into consideration.
著者
上山 義人 山口 奈緒子 窪田 泰夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

ヒト頭髪in vivo実験系を確立する目的で、単離ヒト頭髪毛包の凍結保存法を検討した。採取したヒト頭皮から眼科用ハサミ、ピンセットにて機械的に毛包を単離し、そのままSCIDマウスに移植する群と一旦凍結してから移植する群に分けた。直ちに移植する群は、その場で移植し、凍結群はDMSO添加細胞凍結用保護培地に浸漬して凍結用チューブに入れ、ドライアイスにて凍結し、液体窒素中に一週間以上おいて、BALB/cA-nu,scidマウス背部皮膚へ移植した。両群(凍結保存群92本、未凍結群58本)で毛包の生着率を比較したところ、凍結群27.2%、未凍結群27.9%で、凍結保存による差は認められなかった。組織学的にも差違は認めなかった。このように、単離ヒト頭髪毛包は通常の細胞凍結技術の応用で比較的簡単に凍結保存が出来ることが判明した。そのため、上記の方法で凍結保存しておけば、計画的な移植実験が可能となる。移植成功率が1/4-1/3と考えると、一匹に10本程度の移植をしておけば、ほぼ2本のヒト頭髪を持った免疫不全マウスが得られるということになり、十分、実用に耐えうる。以上の結果が得られたため、年齢、性、部位、疾患別に整理して、“単離ヒト頭髪バンク"を作ることを試みた。しかしながら、最近の剖検率の低下、特に、頭部の剖検体数の低下、臨床におけるインフォームド・コンセントの難しさなどの問題があり、現在までのところ、総数11例に止まっている(いづれも健常人の頭髪、男女ほぼ同数、部位別には側頭部が多い)。次に、この実験系を用いてヒト頭髪に対すエナント酸テストステロンの影響を調べたところ、投与群5本の内2本において毛幹の脱落を認め、生着した毛包にも組織学的に退行変性の像を認めた。しかし、変化の全くなかった毛包も認められたため、今後の検討が必要である。
著者
小西 秀樹 岡本 哲和 吉岡 至 廣川 嘉裕 脇坂 徹 窪田 好男
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小泉政権以降、中央政府および地方政府における政策形成の場で、重視される価値がどのような変容を遂げているのかを明らかにすることが本研究の目的である。事例研究のひとつの結果としては、ポピュリズム的価値の重要性の高まりが、政策の形成と実施におけるNPOの役割増大および住民投票の増加と関係している可能性があることが示唆された。一方で、2008年大阪府知事選挙時に実施したサーベイ調査では、有権者のポピュリズム的指向およびネオリベラリズム的指向のどちらもが、投票意思決定に影響を及ぼしていなかった。これら2つの価値がいまだ優勢である可能性は高いものの、一方でそれが退潮していく兆しがあることが明らかにされた。また、市町村合併や首長選挙についても政治的・政策的価値の変化をみることができた。
著者
窪田 充見 手嶋 豊 大塚 直 山田 誠一 水野 謙
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

無形の利益が侵害された場合の損害賠償における損害の把握と賠償額の決定に関して、(1)損害論のあり方(水野)、(2)延命利益の賠償(大塚)、(3)自己決定権侵害における損害賠償(手嶋)、(4)純粋財産損害の賠償(山田)、(5)慰藉料請求権の内容と機能(窪田)の各テーマについて、各担当者が、我が国の判例と学説ならびに比較法的な状況を分析し、研究会においてその分析と解釈論的な提案を検討するという形で共同研究を進めた。その結果、(1)損害論のあり方においては、担当者より、従来の裁判例の分析を踏まえたうえで、口頭弁論終結時までの「プロセスにおける不利益状態」を類型ごとに規範的・金銭的に評価したものを損害と捉えるという従来の損害=事実説対差額説という図式に入らない損害概念の把握が提案された。(2)延命利益の賠償については、近時の最高裁判決を、延命利益論、割合的因果関係論、確率的心証論、機会の喪失論、救命率に応じた救命可能性の侵害論などの最近の理論的枠組の中で、どのように位置づけるのかを検討した。(3)自己決定権侵害における損害賠償においては、医療における自己決定権侵害を理由とする損害賠償額の決定について、従来の裁判例のマクロ的ならびにミクロ的な分析がなされ、具体的にどのような衡量要素によって賠償額が決まっているのかが析出された。(4)純粋財産損害の賠償については、この問題が、権利構成の法秩序に組み込まれてこなかった問題であるとして、裁判例の検討を手がかりとして、一般財産の状態自体が被侵害法益となるのではないかとの解釈論的提案がなされた。(5)慰藉料請求権については、ドイツ法の判例の展開を分析し、慰藉料の機能の拡張に関する問題が精神的損害固有のものではなく、損害賠償法一般の役割の問題として位置づけられるべきものに変遷してきたことを分析した。
著者
井村 賢治 川原 央好 松尾 吉庸 窪田 昭男 福沢 正洋 鎌田 振吉 高木 洋治 岡田 正
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.815-821, 1990

Anthropometric measurements of 171 postoperative children, who had radical operations for neonatal surgical diseases from 1974 to 1985 in our institutions, were performed. Twenty-two percent of those out-patient children were classified as stunted (H/A<95%), and 26% as wasted (W/H<90%) according to Waterlow's classification. About 40% of the children had mild protein-energy malnutrition, although theier visceral protein status was preserved. In paticular, wasting was noted in patients with congeital esophageal atresia, abdominal wall defects and Hirschsprung's disease, while stunting was noted in patinets with congeital duodenal atresia. The usefulness of H/A and W/H for evaluating the long-term prognosis of post-operative children is discussed.
著者
大島 光昭 長友 武志 窪田 拓男 田野 仁 岡島 毅 佳山 良正
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.396-401, 1988-03-20
被引用文献数
2

1986年4月17日刈り取りの生育期のイタリアンライグラスから天日乾草およびサイレージを調製するとともに,これを破砕後,生重の50%を脱汁して得た搾汁粕(プレスケーキ)からも同様の方法で乾草およびサイレージを調製し,それらの栄養価をヤギによる4×4のラテン方格法で比較した。天候不順により,乾燥に5日を要した。サイレージ品質は,いずれも優れていた。プレスケーキの一般成分組成は原料草に比し粗繊維が多く,他の成分が少なかった。粗蛋白質,粗脂肪およびNFEの消化率は,サイレージよりも乾草で,また原料草よりもプレスケーキで低かった。そしてこれらの差が,乾物および有機物の消化率やTDNおよび可消化エネルギー含量に反映された。粗繊維の消化率は,飼料間に有意差が認められなかった。ヤギの窒素蓄積率は,原料草の乾草およびサイレージとプレスケーキサイレージの間に差がなく,プレスケーキ乾草のみが劣った。以上の結果は,プレスケーキを貯蔵する場合,悪条件下で天日乾燥すると著しい栄養価の低下を招くが,サイレージではその程度が低く,プレスケーキサイレージの消化性は原料草乾草と等しく,その窒素のヤギによる利用性は原料草乾草のみならず,消化率でやや優る原料草サイレージとも変わらぬことを示している。よって,プレスケーキと原料草の栄養価を比較する場合,貯蔵法をも考慮に入れる必要があろう。
著者
窪田 杏子
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

(1)論文として、以下の題目でこれまでの成果をまとめ、雑誌にて発表した。『Tumor necrosis factor receptor-associated protein 1 regulates cell adhesion and synaptic morphology via modulation of N-cadherin expression』Kubota K.et al.Journal of neurochemistry(2009)110,496-508(2)上記の論文ではカドヘリンによる細胞間接着がうつ病発症に関与する可能性が示唆されたが、分子レベルでの詳細な解明には至っていない。近年、微小管上を移動するモータータンパク質による輸送の破綻が精神疾患の発症に寄与する可能性が報告されている。さらに、当研究室において新たに微小管上を移動するモータータンパク質とカドヘリン複合体との関わりが見出されたことから、本年度はそのカドヘリンと微小管上を細胞接着部位へと移動することが考えられるKIFC3について詳細な検討を行った。結果、・KIFC3結合タンパク質Xを同定した。・KIFC3またはタンパク質Xの発現を抑制すると細胞間接着に異常が認められた。よってカドヘリンによる細胞間接着の制御に微小管上を運行するモータータンパク質が関わっていることが新たにわかった。この知見は精神疾患発症機序のみならず、細胞間接着の異常によって引き起こされる他の疾患の治療法開発においても大変重要なものである。
著者
窪田 健太郎 佐野 栄一 メチアニ ヤーヤ ムバラク 尾辻 泰一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.313, pp.41-46, 2009-11-22

光波と電波の中間周波数領域であるサブミリ波領域、いわゆるテラヘルツ波領域は、医療やセキュリティー検出器としての応用が期待されている。その際にコンパクト、チューナブル且つコヒーレントな固体テラヘルツデバイスが必要とされている。この要求を満たすために、半導体デバイスのテラヘルツギャップを克服するプラズモン共鳴を用いたテラヘルツエミッターが提案されている。実験による検証とともに、テラヘルツエミッターの物理的原理を解析するための方法も必要となってくる。ここでは、光パルス照射に伴うプラズモン共鳴を用いたデバイスの応答を、モンテカルロ法を用いて解析したので報告する。
著者
米田 耕造 窪田 泰夫 荒木 伸一 中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アトピー性皮膚炎は、掻痒の強い湿疹病変を主とする難治性皮膚疾患であり、フィラグリンタンパク質の遺伝子異常による。ロリクリンはフィラグリンと同様、表皮角層細胞の辺縁帯の主成分である。ロリクリン遺伝子の変異による疾患(亜型ボーウィンケル症候群)の臨床症状は、掌蹠角化症を合併した魚鱗癬であり、フィラグリン遺伝子機能喪失変異により生じる尋常性魚鱗癬の臨床症状に酷似している。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎の動物モデルを作製し、その病態に関与するロリクリンの果たす役割を解析し、創薬に役立てることである。その目的に向けてわれわれはロリクリンノックアウトマウスを作製した。
著者
中村 満紀男 二文字 理明 窪田 眞二 鳥山 由子 岡 典子 米田 宏樹 河合 康 石田 祥代
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、インクルーシブ教育の社会的背景と理論的基盤について、アメリカ合衆国・英国・北欧について検討した。インクルーシブ教育(インクルージョン)は、先進風・途上国を間わず、国際機関や各国の中央政府が支持している現代における世界的な教育改革運動であるが、その真の意味は必ずしも正確に把握されていない。同時に、インクルーシブ教育運動が世界的に拡大してきた背景とそれを支えている理論についても、共通的基盤と多元的部分に整理して解明されていない。この複雑さが整理されないまま、インクルーシブ教育が差異ではなく、障害のみに焦点化して捉えられる場合、日本における特別支援教育に例示されるようにインクルーシブ教育のモザイク的理解に陥ることになる。こうして、インクルーシブ教育とは、社会的・経済的・教育的格差、文化的・宗教的差異、エスニシティの相違によって生じる社会からの排除を解消し、社会への完全な参加を促進し、民主制社会を充実・実現するために、通学者が生活する近隣コミュニティに立地する通常の学校において共通の教育課程に基づき、すべての青少年を同年齢集団において教育することである。またインクルーシブ教育は、これらの目的を達成するための方法開発も併せて追求している点にも特徴がある。このように、教育改革運動としてのインクルーシブ教育は、差異やそれに基づく排除を解消するための、政治・経済・宗教・文化等、広範囲に及ぶ社会改革運動であり、画期的な理念を提起していて成果もみられるが、既成の枠組みを打破するまでに至っていない。同時に、理念の普遍化が実現方法の画一化に陥っていて、理念とは裏腹の排除を生んでいる例など、今後の課題も多い。
著者
窪田 知子
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.233-245, 2007-03-31

本稿では、今日のイギリスにおいて、ディスレクシアの子どもへの教育的対応をめぐって異なる2つの系譜があることについてまずその動向を整理し、その実態を明らかにすることを目的とする。その上で、一見矛盾するように見える2方向の動きについて、インクルージョンの視点からどのようにとらえることができるか、すなわち、それらが対立するものであるのか、あるいは通底する課題を見出すことができるのかどうかについて考察する。