著者
藤田 直也
出版者
近畿大学英語研究会
雑誌
近畿大学英語研究会紀要 = Kinki University English Journal (ISSN:18827071)
巻号頁・発行日
no.2, pp.51-60, 2008-08-01

本稿は米国において人権擁護の立場からいわゆる「不適切な」表現やことばの是正を謳ったポリティカル・コレクトネス現象の社会的・文化的要因を考察し、この運動が「人権」という権利を擁護する一方で、米国社会が最も尊重する「表現の自由」という権利に大きな打撃を与えたことを論じる。また、米国と比較し、日本におけることば狩りと呼ばれる言論抑圧はポリティカル・コレクトネスに類似してはいるが、社会形態そして文化背景の違いにより異なったものであることを示す。 (英文)This paper (i) considers social and cultural factors of political correctness, a phenomenon in the United States in which "inappropriate" words or expressions are banned and replaced based on the standpoint of the protection of fundamental human rights, and (ii) points out that while this social movement has contributed to protection of human rights, it has ironically exhibited serious damage to the freedom of expression, one of the most fundamental rights in the country. The Japanese society exhibits a similar phenomenon known as kotoba-gari "word hunt"; however, the present study argues that it differs from political correctness due to its unique social and cultural backgrounds.記事区分:原著
著者
勝田 優 小阪 直史 村田 龍宣 舩越 真理 井上 敬之 山下 美智子 杉田 直哉 勝井 靖 澤田 真嗣 大野 聖子 清水 恒広 藤田 直久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.354-361, 2015 (Released:2015-12-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2

病棟での輸液調製では,調製時の汚染防止により注意を払う必要がある.病棟での輸液調製の現状把握のため,空気清浄度,調製環境,輸液メニューについて血液内科と外科病棟を対象に多施設間調査を実施した.空気清浄度調査は,5施設9部署にて実施し,パーティクルカウンターとエアーサンプラーを用いて浮遊粒子数と浮遊菌の同定・コロニー数を測定した.環境と輸液メニューの調査は,9施設13部署を対象に,調製現場の確認と10日間の注射処方箋(7,201処方)を集計した.空気清浄度は,0.5 μm以上の粒子数が,最も多い部署で3,091×103,少ない部署で393×103個/m3であった.浮遊菌は,黄色ブドウ球菌は3部署のみの検出であったが,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Micrococcus属,Corynebacterium属やBacillus属は全部署より検出された.調製台は,9部署で空調吹き出し口の直下にあり,10部署でスタッフの動線上に設置されていた.混合のあった4,903処方のうち,3時間以上の点滴が31%を占めた.病棟での輸液調製マニュアルを整備していたのは,9施設中3施設のみであった.調査から,輸液調製台エリアの空気清浄度は低く,3時間を超える点滴が3割以上を占めるなど,細菌汚染が生じるリスクが高い可能性が示唆された.輸液汚染リスク軽減のため,日本版の病棟での輸液調製ガイドラインの策定が望まれる.
著者
藤田 直子 熊谷 洋一
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-21, 2007-12-15 (Released:2011-08-17)
参考文献数
50
被引用文献数
4 4 2

近年, 空間配置やネットワーク概念によって都市緑地を捉えようとする動きが活発化している.このようなアプローチは, 従来の都市緑地の分析・評価に対して行われてきた緑被率や面積による判定では評価されない部分に対して価値を与えることを可能とし, 元来見逃されてきた緑地の潜在性を明らかにすることも可能であるため, 今後の緑地計画上大きな意義があると考えられる.このような視点で緑地の特徴を理解し, 都市緑地計画上に位置づけるためには, それらが各々の価値観に応じて配置されてきたことを理解し, それらの分布の特徴を把握する必要がある.その際, 緑地を画一的に取り扱うのではなく, 文化や歴史を培う基盤であり, 実際の空間と歴史性や場所性との間に連動性があることを理解した上で, 各々の配置されている特徴を空間的に理解する視点が重要である.以上をふまえ, 本研究では各々の歴史性や場所性を考慮して緑地を空間計画に生かすことを念頭に置き, 各々の立地場所そのものがそれらを示す指標であると考え, 各々の立地地点を比較してそれらの差異を明らかにし, それぞれの特性に応じた緑地の在り方や関係性を検討することを目的として研究を行った.研究対象地は東京都23区部とし, 「神社」「寺院」「公園」の分布形態の特徴と相違点を平面的分布形態と立体的分布形態から分析することにより, 3者の分布形態の特性及び地形との関係を明らかにした.その結果, 各々の立地分布の特徴は, 平面的分布形態では神社及び公園はランダム分布の傾向があり, 寺院は集中分布の傾向があることが明らかになった.一方地形との係わり合いを求めた立体的地形的特徴では, 神社が斜面地部に沿って線上に分布し, 寺院が斜面の下部の低地上や上部の台地上に集塊性を持って分布する特徴が認められた.このように神社・寺院・公園のタイプごとの分布形態の特徴と相違点を平面的分布形態と立体的分布形態から分析することにより, 神社の立地は凝集性を持たず全域にわたってランダムに分布しながら, 寺院や公園に比べて地形との結びつきが強いことが明らかになった.従って, 神社が集塊性を持たず局所的な分布の偏りが無くどの地域にも存在するため, あらゆる地域において緑地空間になり得る潜在的特性を持ち, なお且つ公園の立地と異なり, 地形の変化や自然性を考慮した緑地空間として評価できる空間に成り得る潜在的特性を持つことが示唆された.
著者
坂本 裕規 村上 慎一郎 近藤 浩代 村田 伸 武田 功 藤田 直人 藤野 英己
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1306-Ab1306, 2012

【はじめに、目的】 骨格筋量は30歳を頂点として加齢と共に減少する。また、筋力低下による活動量の減少は生活習慣病発症の危険因子である肥満を助長する。一方、筋力や体型は運動や食事などの環境要因だけでなく遺伝的要因も関与する。運動能力に関する遺伝子は200以上、肥満に関しても127以上の遺伝子の関連が報告されている。これらは筋力やBMI、体脂肪量に関連する。しかし、筋力低下や肥満に関係する遺伝子多型の情報は臨床応用には未だ至っていない。高齢者における遺伝子のこれらの遺伝子多型を解明し、筋力低下や肥満を生じやすい対象を特定できれば、予防的な早期介入が可能になると考える。本研究では高齢者における筋力や体型に関係すると考えられる遺伝子の多型が筋力や体組成に及ぼす影響について検証した。【方法】 対象は地域在住の健常女性164名(72.8±7.08歳)とした。体型や筋力に関係すると考えられる成長ホルモン受容体(GHR)、毛様体神経栄養因子(ZFP91-CNTF)、アクチニン3(ACTN3)、インスリン様成長因子受容体(IGFR-1)に関する遺伝子多型の解析のため口腔粘膜から得た細胞を用い、核DNAを抽出(Gentra Puregene Buccal Cell Kit,QIAGEN)した。TaqmanプローブによるリアルタイムPCR法でアレルの検出を行い、遺伝子多型(SNP)を同定した。筋力と体型を評価するため、握力、膝伸展力、足把持力の等尺性筋力を測定した。さらに、超音波機器を用いて大腿遠位部内側における内側広筋の筋厚を計測した。体組成の測定は、BMI、脂肪量、体脂肪率とした。測定結果の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当該施設における倫理委員会の承諾を得て行った。また対象者には実験の目的と方法を詳細に説明し、同意を得た上で実施した。【結果】 GHRにおけるSNP頻度はAA型20%、AG型50%、GG型30%であった。内側広筋の筋厚では、GG型はAG型に比べて有意に高値を示した。また膝伸展力と足把持力は、GG型がAA型に比べて有意に高値を示した。さらに握力でも同様に、GG型はAA型とAG型に比べて有意に高値を示した。この結果からGHRのGG型においては筋力や筋量が高く、A型アレルを持つ高齢女性は筋力や筋量が有意に低くなることが明らかとなった。次にZFP91-CNTFのSNP頻度はAA型44%、AT型38%、TT型18%であった。足把持力は、AT型はTT型に比べて有意に高値を示した。また脂肪量は、TT型がAA型に比べて有意に高値を示した。同様にBMIと体脂肪率においてもTT型はAA型とAT型に比べて有意に高値を示した。この結果よりTT型のSNPを持つ高齢女性では筋力が低く、肥満傾向が高いことが明らかになった。一方ACTN3とIGFR-1の遺伝子に関しては、各SNP間に有意差を認めなかった。【考察】 健常高齢女性において、GHR遺伝子多型は筋厚と筋力に、ZFP91-CNTF遺伝子多型は筋力と体組成に関与することが明らかになった。GHR遺伝子多型は筋厚と筋力の両方に影響を及ぼしていたことから、GHR遺伝子多型は筋肥大による筋力に関連することが明らかとなった。またZFP91-CNTF遺伝子多型は筋厚には影響を及ぼさなかったことから、ZFP91-CNTF遺伝子多型は神経系が関与する筋力に関係すると示唆された。先行研究ではGH投与によって青年の除脂肪体重が増加するとしている。またCNTF遺伝子多型は成人の筋力に影響を及ぼすとされている。以上のことから、健常高齢女性においてもGHR遺伝子多型は筋量に、ZFP91-CNTF遺伝子多型は筋力に関与すると考えられる。ACTN3遺伝子に関して、持久力を要するスポーツ選手と瞬発力を要するスポーツ選手の間で遺伝子型が異なるとの報告がある。一方、ACTN3遺伝子多型は筋力に影響を及ぼさないとする報告もある。本研究では、高齢女性におけるACTN3遺伝子多型は骨格筋量や筋力に影響を及ぼさなかった。異なるスポーツ特性間では差異を認めるが、地域在住の健常女性のような一般的な対象者では差異を認めなかったため、ACTN3遺伝子はトレーニングへの反応性に影響を及ぼすものと思われる。また本研究ではIGFR-1遺伝子多型は筋力と体組成の両方に影響を及ぼさなかった。先行研究ではIGF-1遺伝子多型が筋力に影響を与えるとされているが、その先行研究では対象が白人と黒人に限定されている。本研究の対象は日本人のみであったため、人種の違いによって異なる研究結果がもたらされた可能性がある。今後は対象集団を拡大することと、理学療法介入の効果を検討することが課題であると考える。【理学療法学研究としての意義】 GHRとZFP91-CNTFの遺伝子多型が高齢女性の筋力や体組成に影響を及ぼす事が明らかになったことから、筋力低下や肥満を生じやすい者を特定し、早期から理学療法士が介入できるようになる可能性が示唆された。
著者
藤田 直子 熊谷 洋一 下村 彰男
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.591-596, 2007-03-30
参考文献数
59
被引用文献数
3

The objective of this study is to make clear the difference of spatial conceptions of open spaces of Shinto shrines between "Shasoh" and its synonyms "Chinjyuno-mori" and "Shaji-rin". We approached the sides of qualitative changes and quantitative changes. By both side of research, we could make clear the meanings and their contexts considered with the social background of their words. As a result, we can mention similarities and differences between "Shasoh", "Chinjyuno-mori" and "Shaji-rin". From 1975 onward, the spaces of forest of Shinto shrines were attentioned for study site by various kinds of scientific fields. The spatial conception of "Shasoh" was intended for the space of forests only in Shinto shrines. This word was taken the Shintoism into their consideration. The spatial conception of "Chinjyuno-mori" was intended for image for gods or spiritual spaces "Geniusu Loci" in origin, and then intended for the valuable site for ecological and botanical study as space of native forest. The spatial conception of "Shaji-rin" was used by political stance at first, and then it was intended for the spaces involved in politics of forests and fields. This word wasn't distinguished between the space and image of Shinto shrine and Buddhism temple.
著者
藤田 直子
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.116, pp.193-251, 2006

本論文は,2006 年に東京大学に提出した学位論文の前半部分であり,後半における現状の実態分析及び評価のための概念整理と位置づけることができる。本研究の立脚点は「緑地」という視点を通して時間的な軸と空間的な軸から社叢空間を捉えようとするところにある。本論文は五章で構成されており,各章は以下の通りに位置づけられる。第1章においては,本研究の背景と目的ならびに位置づけを明らかにした。まず,問題の所在,本研究に反映させる問題意識を述べ,関連する研究の流れや位置づけを通覧し,それぞれの研究のアプローチ及び方法論を整理することによって,本研究の位置づけを試み,その目的及び方法を明らかにした。設定した本研究の目的は,社叢を緑地という視点で評価することの意義と妥当性を明らかにすることとし,具体的には①空間に対する認識の変遷を「自然」との位置づけの関係から分析することで,日本人の自然に対する空間概念形成を明らかにすること②“神社の屋外空間”を指して用いられる「社叢」「鎮守の森」「社寺林」といった類義語を比較して各々の言葉の意味や意義を分析することにより,同一の空間に対して複数の言葉が用いられる原因とその背景にある意図を明らかにし,神社のオープンスペースに対する緑地の空間概念の差異と特徴を明らかにすること③法の成立・運用における「社叢」の概念及び位置づけを明らかにすることにより,“神社の屋外空間”と“社叢”の空間概念を明確にすること以上の3点を研究目的とした。第2章においては,文献資料調査によって自然・神道・社寺など社叢に関連する歴史や事象及び語彙を明らかにし,本研究において『社叢』を対象とする意図を明らかにした。まず,自然に対する神道の空間認識と日本人の自然に対する空間概念との関係を明らかにするために,分析対象記事(該当記事4,159)を文献(該当文献555)から選出し,神道の空間認識における「自然」の位置づけの変遷や日本人の自然に対する空間の認識の関連を言葉の解釈の変遷や西欧との比較を踏まえて分析した。その結果,日本における自然の概念と神道の精神や空間認識は通じるものが多く,自然に対する神道の空間認識が日本人の自然に対する空間概念の形成に関与していたことが明らかになった。第3章においては,“神社の屋外空間”を指して用いられる類義語に対し,語彙自体の使用の変遷を明らかにするための書籍・論文出現頻度に関する分析と語彙が想定する対象を広く収集分析する語彙の概念に関する分析を組み合わせることによって,量的側面と質的側面の双方から実態を明らかにし,神社のオープンスペースに対する緑地の空間概念の差異と特徴を明らかにした。その結果,数値分析処理による包括的な傾向として「社叢」「鎮守」「社寺」と「森」や「林」といった語が組み合わされる傾向が強まったのは1970 年代中盤以降であり,この時期を契機として“神社の屋外空間”を「緑」の空間として認識しようとする見方が形成された事が示唆された。また,「鎮守の森」や「社寺林」が,元々“聖なる場”や“神社や寺院”などの意味をもつ「ある空間」に対して自然や緑地といった概念を加えることで成立してきた空間概念であるのに対し,「社叢」は元来からそれ自体に自然や緑地といった概念を含む空間概念であることが分かった。また,各々の言葉が対象とする空間概念の範囲に関しては,「社叢」が指し示す空間概念には神社境内内森林の生物生息空間,特に植物生態学的側面に着目するという空間概念が強いこと,「鎮守の森」が指し示す空間概念には古来から地霊をまつる聖なる空間やその神に対して用いられてきた語が生態学的研究対象として地域の本来の潜在自然植生が顕在化している場所として着目されたことなどにより,神社の空間のみならず精神的・文化的な拠り所という広範囲な解釈として捉えられている空間概念が強いこと,「社寺林」が指し示す空間概念には明治期の土地政策・林野政策の中での位置付けに対して用いられた歴史を経て,機能面や制度に着目した場合や現物の空間を表現する場合の対象となる空間に対して求められた空間概念が強いことが示された。第4章においては,「社叢」という言葉の意味や使用されてきた意義を明らかにするために,雑誌史蹟名勝天然紀念物における全記事中,社叢・神社・社寺・及び関連記事を選出して分析対象とし,史蹟名勝天然紀念物保存法の成立・運用の過程における社叢というものの位置づけや,社叢という言葉の使われ方の変遷を分析した。その結果,「社叢」が史蹟名勝天然紀念物保存法の要目の筆頭に採用されたのは,単に植物学・生態学上優れた森林としてのみならず,社叢を複合された価値を有する場として保存していく必要があるという意識と,当時巻き起こった神社合祀令への反対とが相まった結果であることが明らかになった。更には,その後時代を経るにつれ「社叢」という言葉に含まれる意味は変化してゆき,それに対する複合的な意味合いは消え忘れられ,次第に原始林に準ずる森林かつ神社に所属するものを「社叢」として指すようになったことが明らかになった。第5章では,第2章から第4章の結果をまとめるとともに本研究の結論を述べた。以上の研究から本論文では,神社の屋外空間に対する空間概念を明確化しその空間を表現するに相応しい語彙が示されたことで,意味的側面から神社の空間を緑地という視点で評価することの意義と妥当性を明らかにした。なお次報においては,都市における社叢の実態を明らかにするために,東京都区部を対象にマクロ・メソ・ミクロの異なる3つの空間スケールを設定し,現地調査と数値情報をもとにGIS を用いて定量的に都市の社叢を分析した研究結果を著すると共に,本研究における結論を述べる。
著者
小林 聖幸 鎌田 英紀 中林 良太 小野 正大 河野 寿明 波間 大輔 藤田 直樹 山名 浩喜 徳毛 誠樹 國土 泰孝
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.747-753, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
18

近年,内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージ術は急性胆嚢炎に対して行われるドレナージ方法の一つとして普及しているが,bridge to surgery(BTS)におけるドレナージとしての報告は少ない.今回,急性胆嚢炎のBTSとして内視鏡的経乳頭的胆嚢ステント留置術(EGBS)を行った20例を経験したため報告する.166例の急性胆嚢炎症例の内,BTSとしてEGBSを施行した20例を対象とし,有用性と安全性について検討した.EGBSの手技的成功率は100%(20/20例),手技関連偶発症は5%(1/20例)に認め,軽症急性膵炎であり,保存的加療で改善した.術前待機期間のステントトラブルは5%(1/20例)にみられ,経乳頭的にステントを交換し,その後胆嚢摘出術が施行された.急性胆嚢炎診断時に早期胆嚢摘出術が困難な症例に対して,EGBSはBTSにおけるドレナージ法として有用かつ安全な治療法と考えられた.
著者
伊藤 俊彦 橋爪 克己 藤田 直子
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

A. luchuensisが生成するグルコアミラーゼは、生デンプン結合ドメインを有するグルコアミラーゼの働きにより超高アミロース米を消化することを明らかにした。また、難消化性米を原料米とし、A. oryzaeで作成した麹は超高アミロース米を消化することを明らかにした。さらに、A. oryzaeが生成する難消化性デンプン分解酵素は、α-アミラーゼ及びグルコアミラーゼであることを明らかにした。しかし、グルコアミラーゼはpIの異なる3種の酵素が見出されており、これらの詳細な検討は今後の課題である。
著者
藤田 直樹 西田 健志 寺田 努
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2023-EC-67, no.10, pp.1-2, 2023-03-09

一体感はライブ鑑賞における体験価値の向上などに重要だと考えられており,一体感を得るために同じ動きや発声をするなど集団がまとまりをもって振る舞う文化が存在する.一方で,公共の映画館のように発声などがためらわれる場面では,周囲に一体感を感じづらいことがある.このような場面において,能動的な振る舞いに代わり,互いの感覚を共有する方法があれば一体感を創出できると考えた.本研究では,集団が互いの心拍数を視認しあえるように情報提示することで,発声のような能動的な感覚共有行動なしに,受動的な一体感を創出する手法を提案する.本稿では,提案手法の可能性を探索するために開発した,コンテンツ視聴中に互いの心拍数やその一致度合いを視認することができるシステムのプロトタイプについて報告する.
著者
糸井 隆夫 良沢 昭銘 潟沼 朗生 岡部 義信 洞口 淳 加藤 博也 土屋 貴愛 藤田 直孝 安田 健治朗 五十嵐 良典 後藤田 卓志 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.337-365, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
227

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「EPLBD診療ガイドライン」を作成した.EPLBDは近年普及している総胆管結石に対する治療法の一つである.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないものが多かった.本診療ガイドラインは「EST診療ガイドライン」に準じて,定義と適応,手技,特殊な症例への対処,偶発症,治療成績,術後経過観察の6つの項目に分け,現時点での指針とした.
著者
藤田 直也 山田 拓司 野村 孝泰 牧野 泰子 村田 水紀 竹中 学 村田 浩章 竹内 幸 長崎 理香 金子 幸栄 伊藤 剛 柴田 麻千子 小山 典久 鈴木 賀巳
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-31, 2004 (Released:2006-12-15)
参考文献数
12

新生児の急性腎不全に対する腹膜透析 (PD) ではしばしば除水が困難である。我々は過去に, 腹腔内に少量の腹膜灌流液を貯留した状態を維持しつつ持続的に注排液を行う手法で, 新生児の急性腎不全例を良好に管理できる可能性があることを報告してきた。しかし注液側も排液側も流量を機械的に調節する手法では, 腹腔内に常時適当な量の腹膜灌流液を貯留しておくことが困難であった。今回は新たな試みとして, 排液側の回路をやや挙上することによって腹腔内に常時一定量の腹膜灌流液を貯留した状態を維持しつつ, 持続的に灌流する方法でPDを施行した。すべて既存の物品を用いて実施が可能であり, より簡便に一定の貯留液量を保ちながら持続灌流が可能で, しかも大量の透析液を灌流しても, 全く問題なく治療が可能であった。新生児のPDは, その手法にまだ改善の余地があり, 改良することで, より良好な治療ができる可能性があるものと考えられた。
著者
安田 将 杉本 元一 後藤田 直人
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.314-321, 2021-12-15 (Released:2022-01-07)
参考文献数
33

【目的】大量肝切除術前のリハビリ栄養療法(リハ栄養)による骨格筋指数(Skeletal muscle index,SMI)変化および術後経過への影響を検討した。【方法】2008年9月から2019年5月までに門脈塞栓術後に大量肝切除を施行された全99症例のうち,術前待機期間中にリハ栄養を行った症例群(リハ栄養群)と対照群で臨床的特徴およびSMI変化率を比較した。また,リハ栄養群においてSMI増加群と減少群の術後合併症発生率を比較した。SMIは門脈塞栓術前後の腹部CT画像で評価した。【結果】リハ栄養群30例では対照群69例と比較し,SMIの有意な増加を認めた(中央値+1.8% vs. +0.1%,P=0.038)。リハ栄養群30例において,SMI増加群21例では減少群9例と比較し,術後に手術部位感染(臓器体腔)(14% vs. 56%,P=0.032)と肝不全(14% vs. 56%,P=0.032)の発生率が低く,術後在院日数(17日 vs. 24日,P=0.033)が短かった。【結論】術前待機期間中のリハ栄養により骨格筋量が増加し,術前の骨格筋量増加は術後合併症軽減に有用であると考えられた。
著者
洞口 淳 藤田 直孝
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.698-702, 2009 (Released:2009-11-27)
参考文献数
18
被引用文献数
2

要旨: USやEUSといった超音波検査は,胆嚢病変の存在診断や質的診断を行う上で重要な検査法の一つである.特にEUSは胆嚢病変の詳細な観察が可能であるため,腫瘍の形態と胆嚢壁層構造の関係から癌の壁深達度診断が可能である.EUSで有茎性の病変であることが確認されれば,深達度は粘膜内にとどまる早期癌と診断できる.一方,病変が広基性の場合には病変部の胆嚢壁の詳細な観察を行い,外側高エコー層に変化が生じているか否かで深達度診断を行う.外側高エコー層に不整がみられる場合には漿膜下浸潤が考えられるが,外側高エコー層に影響のない症例では癌浸潤が粘膜層,粘膜固有筋層,漿膜下層までのいずれの場合も存在するため,鑑別には他のモダリティの併用が必要である.最近ではUSでドプラ法や造影法を用いて腫瘍部の血流解析を行うことで,深達度を診断する試みがなされており,今後EUSでの応用が期待される.
著者
田中 雅侑 福留 千弥 藤田 直人 藤野 英己
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1353, 2012

【はじめに、目的】 肺高血圧症は進行性の肺動脈リモデリングを特徴とし,右心室の後負荷を増加させ,右心不全を惹起する.また,肺高血圧症の進行により顕著な運動制限を来す.その原因として骨格筋の運動耐容能の低下が指摘されており,運動耐容能の低下による身体活動量の減少は骨格筋の萎縮をさらに進めるとされている.近年,肺高血圧症に対する運動療法は運動耐容能の低下を改善させるとの報告がみられる.一方で,肺高血圧症における運動は肺動脈圧を上昇させ,右心室への負荷を高くするとされており,心筋への過剰な負荷は筋萎縮を誘発する炎症性サイトカインを発現させるという報告もある.このような報告から重度な肺高血圧症への運動療法は右心室に過負荷を与え,骨格筋の萎縮を助長する可能性も考えられる.本研究では,増悪期の肺高血圧症に対する運動が骨格筋の萎縮に及ぼす影響を遅筋と速筋で検証した.【方法】 4週齢のWistar系雄ラットを対照群(Con群),肺高血圧症群(PH群),肺高血圧症に運動を行った群(PHEx群)の3群に区分した.肺高血圧症はモノクロタリンの腹腔内投与(30mg/kg)によって惹起した.運動はトレッドミルを用いたランニング(速度;13.3m/min,30分間/日)を実施した.運動はモノクロタリンを投与した翌日から開始し,週5回の頻度で,4週間継続した.実験期間中は1週間毎に体重を測定した.4週間の実験期間終了後,ヒラメ筋及び前脛骨筋,並びに心臓を摘出し,湿重量を測定した.得られた骨格筋試料は急速凍結し,10µm厚の横断切片を作製した後にATPase染色(pH 4.5)を行った.ATPase染色の光学顕微鏡所見を用いて筋線維をタイプI線維,タイプIIA線維,及びタイプIIB線維に分別し,筋線維タイプ別の横断面積を測定した.また,体重に対する心重量比率を算出し,心肥大の指標とした.測定値の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い,有意水準は5 %未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全ての実験は,所属機関における動物実験に関する指針に従い,動物実験委員会の許可を得たうえで実施した.【結果】 モノクロタリン投与4週目にPH群とPHEx群は体重減少を認めた.体重に対する心重量比率は,PH群及びPHEx群がCon群に比べて有意に高値を示し,PHEx群はPH群に比べて高値を示した.ヒラメ筋の湿重量及び全ての筋線維タイプにおける筋線維横断面積で,PH群とPHEx群はCon群に比べて有意に低値を示したが,PH群とPHEx群の間には有意差を認めなかった.前脛骨筋の湿重量はPH群とPHEx群はCon群に比べて有意に低値を示した.さらにPHEx群における前脛骨筋の湿重量はPH群に比べて有意に低値を示した.前脛骨筋の筋線維横断面積はタイプI線維では3群間に有意差を認めなかった.一方,速筋線維であるタイプIIA及びIIB線維では,PH群とPHEx群がCon群に比べて有意に低値を示した.さらにタイプIIB線維はPHEx群ではPH群に比べて有意に低値を示した.【考察】 肺高血圧症に対する運動は,遅筋であるヒラメ筋の萎縮には影響を及ぼさなかったにもかかわらず,速筋である前脛骨筋に対しては萎縮を進行させた.先行研究では,モノクロタリン投与後4週間で右心不全が惹起され,心臓悪液質によって骨格筋の萎縮を誘発するとされている.本研究でもモノクロタリン投与4週目に体重の減少を認めたため,ヒラメ筋と前脛骨筋の萎縮は肺高血圧症モデル動物が心臓悪液質に陥った事が原因であると考えられる.また,肺高血圧症の増悪期における運動は右心室への負荷を増大することで炎症を惹起するとされ,その炎症は腫瘍壊死因子などのサイトカインを過剰発現するとされている.本研究では運動に伴う心肥大を認めたため,運動によって心臓への負荷が増大し,右心室で炎症性サイトカインが過剰発現していた可能性がある.炎症性サイトカインは心臓悪液質に関与するとされ,悪液質による骨格筋異化作用は,遅筋線維に比べて速筋線維で大きいとされる.その理由の一つとして,遅筋と比較して速筋では,悪液質による骨格筋異化作用の抑制に関わっているとされるNO産生が少ないことが報告されている.本研究では肺高血圧症の増悪期においても運動療法を実施したことで,心臓悪液質による影響が増し,速筋である前脛骨筋の萎縮を助長した可能性がある.【理学療法学研究としての意義】 増悪期の肺高血圧症に対する運動は,心臓に過度な負荷を与えるだけでなく,主として速筋の萎縮を助長することが明らかになった.このことから肺高血圧症に対する理学療法は,介入時期,及び心臓への負荷を考慮し,運動療法等の介入は慎重に行うべきであると考えられる.
著者
福留 千弥 田中 雅侑 藤田 直人 藤野 英己
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab1101, 2012

【はじめに、目的】 心不全患者の特徴の一つに運動耐容能の低下が挙げられる。運動耐容能が低下する原因には心機能の低下だけでなく、骨格筋における退行性変化も関与しているとされている。心不全患者における骨格筋の退行性変化の一つに、骨格筋線維周囲における毛細血管数の減少がある。心不全患者は活性酸素種(ROS)の過剰発現によって酸化ストレスが亢進しているとされており、血管内皮細胞の機能不全や毛細血管の退行性変化をきたす。多くの栄養素は酸化ストレスを除去する能力を持つが、心不全患者は食欲不振による低栄養を伴うことが報告されており、心不全患者では酸化ストレスを除去する栄養素が欠乏していると考えられる。本研究では、心不全における骨格筋と心不全を伴わない低栄養のみの骨格筋を比較することで、心不全と低栄養が骨格筋内毛細血管の退行性変化に及ぼす影響の差異を検証した。また、心不全患者では速筋よりも遅筋において筋萎縮が起きやすいという報告から筋線維タイプによる違いも存在すると考え、速筋と遅筋の比較も併せて実施した。【方法】 4週齢のWistar系雄ラットにモノクロタリン(30mg/kg)を投与することで心不全を惹起した(CHF群)。また、同一週齢のWistar系雄ラットを用い、給餌量を自由にした対照群(Con群)と、給餌量をHF群と一致させた群(PF群)を設定した。4週間の実験期間終了後、ペントバルビタール(50mg/kg, <i>i.p.</i>)による深麻酔下で心臓、肺、足底筋およびヒラメ筋を摘出し、急速凍結した。組織切片のエラスチカ・ワンギーソン(EVG)染色所見を用いて、心臓の線維化と肺動脈壁の厚さを観察した。足底筋とヒラメ筋はアルカリホスファターゼ染色にて毛細血管を可視化し、筋線維あたりの毛細血管比率(C/F比)を算出した。さらに、足底筋とヒラメ筋はジヒドロエチジウム染色にてROSを可視化し、その発現量を測定した。得られた測定値の統計処理には一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い、動物実験委員会の許可を得たうえで実施した。【結果】 心臓と肺のEVG染色所見では、CHF群にのみ心筋線維の肥大と膠原線維の増殖、および肺動脈における中膜の肥厚を認めた。足底筋のC/F比は、CHF群ではCon群とPF群に比べて有意に低値を示したが、PF群とCon群間には有意差を認めなかった。一方、ヒラメ筋のC/F比は、PF群ではCon群に比べて有意に低値を示したが、CHF群とPF群の間には有意差を認めなかった。足底筋とヒラメ筋のROS発現量は、PF群ではCon群に比べて有意に高値を示し、CHF群はPF群に比べて有意に高値を示した。【考察】 速筋における骨格筋内毛細血管の退行性変化は主として心不全に起因するが、遅筋における骨格筋内毛細血管の退行性変化は、心不全だけでなく低栄養の影響を受けることが明らかになった。足底筋では低栄養によるROSの過剰発現を認めたものの、低栄養による骨格筋内毛細血管の退行性変化は生じていなかった。一方、ヒラメ筋では心不全によって低栄養以上にROSが発現していたにも関わらず、骨格筋内毛細血管の退行性変化は心不全を伴わない低栄養のみの状態と変わらなかった。このことから、心不全や低栄養によるROSの過剰発現だけで骨格筋内毛細血管の退行性変化が誘導されるわけではないということが示唆された。一方、心不全では血清中にTNF-αが過剰発現するとされている。TNF-αは血管内皮細胞の機能不全を誘発し、血管内腔の狭小化を引き起こすことで骨格筋への血液供給を減少させる。このことから、CHF群の速筋と遅筋における骨格筋内毛細血管の退行性変化にはTNF-αが関与していたのではないかと考えられる。また、PF群の遅筋における骨格筋内毛細血管の退行性変化には、低栄養に由来するROS以外の経路が関与していたと考える。しかし、足底筋とヒラメ筋における低栄養由来のROSの過剰発現に対する両筋の反応はそれぞれ異なっていた。この点については不明であるため、低栄養に由来するROSの発現に対する筋線維タイプによる反応については今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 心不全患者における骨格筋内毛細血管の退行性変化には、心不全による因子だけではなく、栄養状態も関係していることが明らかになった。本結果より心不全患者における骨格筋の退行性変化を予防するには栄養状態のコントロールも重要であると考える。
著者
宍戸 俊英 榎本 香織 藤田 直之 鈴木 敦 林 建二郎 野村 昌史 板谷 直 多武保 光宏 渡辺 和吉 野田 治久 桶川 隆嗣 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.543-550, 2008-03-20
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

(目的) 前立腺肥大症患者に対して実施した, ホルミウムレーザー前立腺核出術 (HoLEP) と経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) による治療効果を比較検討した.<br>(対象と方法) 2004年4月から2006年3月までの間にTUR-Pを施行した患者41人 (平均年齢69.2±7.3歳) と, 2005年12月から2007年2月までの間にHoLEPを施行した患者46人 (平均年齢68.2歳±7.5歳) の計87人を対象とした.<br>(結果) 両群間に患者年齢, 術前のIPSS, QOL index, 残尿量, 最大尿流率, 平均尿流率, 推定前立腺容積に有意差はなかった. ヘモグロビンの低下はTUR-P群1.91±1.3, HoLEP群1.15±1.2 (P<0.05) とHoLEP群で有意に少なかった. 手術時間はTUR-P群で118.3±369分, HoLEP群161.9±65.0分とHoLEP群で有意に長かった (p<0.001). 切除重量はTUR-P群が29.3±13.3g (10~55), HoLEP群34.8±33.4g (5~148) で有意差はなかった (p=0.337). カテーテル留置期間 (115.2±27.5vs52.1±29.6時間p<0.001) および入院期間 (9.4±2.2vs6.6±2.3日p<0.001) はHoLEP群で有意に短かった. また, 術後3ヵ月目のIPSS, QOL index, 残尿量, 最大尿流率, 平均尿流率に有意差を認めなかった.<br>(結論) HoLEPはBPHによる下部尿路閉塞に対し, TUR-Pと同等の治療効果を認めた. またTUR-Pに比べ出血が少なく, カテーテル留置期間や入院期間も短かった. HoLEPはTUR-Pの代替治療になり得る有力な治療選択肢であると考えられた.
著者
安東 竜一 影嶋 富美 高田 正保 中村 保典 藤田 直子
出版者
一般社団法人 日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.168-174, 2015

米澱粉における変異遺伝子と澱粉の利用特性との相関を解明することを目的として,既報のモチ性変異体米系統に続き,澱粉生合成関連アイソザイム(スターチシンターゼIIIa(SSIIIa),SSIVb,枝作り酵素IIb(BEIIb))が欠損したウルチ性変異体米系統(<i>ss3a</i>, <i>be2b</i>, <i>ss3a</i>/<i>ss4b</i>, <i>ss3a</i>/<i>be2b</i>)から得た澱粉の食品への利用特性について分析し,ウルチ性の野生型である日本晴と比較した。日本晴≪<i>be2b</i><<i>ss3a</i>≪<i>ss3a</i>/<i>ss4b</i>≒<i>ss3a</i>/<i>be2b</i>の順で糊化・膨潤し難い物性を示し,特に二重変異による糊化・膨潤の抑制が顕著であった。be2bの消化率は,未糊化状態では48.4%と難消化性を示したが,糊化状態では日本晴と同等であった。鶏唐揚げ衣への利用適性評価では,日本晴と比較して,変異体米澱粉の食感は調理直後では好ましかったものの,保存後では劣る傾向にあった。しかしながら,澱粉にまで精製せずに,米粉として用いることで,二重変異体米において保存後の食感が改善された。
著者
三木 貴弘 藤田 直輝 竹林 庸雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.116-124, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
29

【目的】近年,症状ごとに患者を分類し,対応する特異的介入を行う方法が提言されており,頸部痛において,Treatment Based Classification(以下,TBC)と呼ばれる分類法が提唱されている。今回,頸部痛に対しTBC を基に臨床推理を行い,生物心理社会的モデルに基づいた介入を行ったので報告する。【症例と経過】安静時・夜間の頸部痛が主訴であり,些細なことでも頸部痛が増強するのではないかと不安になることが多い70 歳代男性であった。患者情報および客観的評価よりExercise and conditioning に分類し,「患者教育」「頸部筋および肩甲骨周囲筋の筋持久力および協調性改善」「有酸素運動」を中心とした介入を約5 週間行った。【結果】愁訴は軽減し,さらに痛みに対して前向きに捉える発言が多くなった。【結語】頸部痛をTBC を基に分類し,多面的な介入を行うことで効果を上げることが可能であった。