著者
劉 建 辺 嘉賓 塩津 文隆 GHOSH Subhash Chandra 豊田 正範 楠谷 彰人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.326-332, 2008-07-05
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

日本型水稲4品種の幼植物を50mMのNaClストレス下で16日間水耕栽培し, 品種の耐塩性を調査した. 生育にはグロースポーチを使用し, 画像解析を用いて根の直径別の根長と根表面積を測定し, 根系形態と耐塩性との関係を解析した. 対照に対する塩処理の全重と相対成長率の低下程度から, 農林18号の耐塩性が最も高いと判断された. 処理別, 両処理込みにかかわらず相対成長率は葉面積比ではなく純同化率に一義的に規定されていた. 純同化率は個体当たり根長および根表面積と正の, 茎葉部Na含有率および葉面積/根表面積比(LA/RA比)と負の相関関係にあった. 茎葉部のNa含有率は個体当たり根長や根表面積が増加するほど指数関数的に減少し, LA/RA比とは正の相関関係にあった. 塩ストレス下において農林18号は直径0.169mm以下の2次根や3次根, および直径0.5mm程度の冠根の減少程度が少なかったため, 個体当たり根長と根表面積は他品種よりも多かった. 塩ストレス下において農林18号の根系の減少程度が小さく, LA/RA比が低いことは他の品種より吸水能力に優れていることを示唆している. このことから, 農林18号は塩ストレス下でも蒸散速度が高く, 蒸散流中のNa排除機構が効率的に作用したために茎葉部のNa含有率が低く抑えられたと推察される. また, 体内の水分含有率の低下を抑えたことにより高いNARを維持し, その結果高いRGRを達成したと推察された.
著者
小林 宏行 武田 博明 渡辺 秀裕 太田見 宏 酒寄 享 齋藤 玲 中山 一朗 富沢 麿須美 佐藤 清 平賀 洋明 大道 光秀 武部 和夫 村上 誠一 増田 光男 今村 憲市 中畑 久 斉藤 三代子 遅野井 健 田村 昌士 小西 一樹 小原 一雄 千葉 太郎 青山 洋二 斯波 明子 渡辺 彰 新妻 一直 滝沢 茂夫 中井 祐之 本田 芳宏 勝 正孝 大石 明 中村 守男 金子 光太郎 坂内 通宏 青崎 登 島田 馨 後藤 元 後藤 美江子 佐野 靖之 宮本 康文 荒井 康男 菊池 典雄 酒井 紀 柴 孝也 吉田 正樹 堀 誠治 嶋田 甚五郎 斎藤 篤 中田 紘一郎 中谷 龍王 坪井 永保 成井 浩司 中森 祥隆 稲川 裕子 清水 喜八郎 戸塚 恭一 柴田 雄介 菊池 賢 長谷川 裕美 森 健 磯沼 弘 高橋 まゆみ 江部 司 稲垣 正義 国井 乙彦 宮司 厚子 大谷津 功 斧 康雄 宮下 琢 西谷 肇 徳村 保昌 杉山 肇 山口 守道 青木 ますみ 芳賀 敏昭 宮下 英夫 池田 康夫 木崎 昌弘 内田 博 森 茂久 小林 芳夫 工藤 宏一郎 堀内 正 庄司 俊輔 可部 順三郎 宍戸 春美 永井 英明 佐藤 紘二 倉島 篤行 三宅 修司 川上 健司 林 孝二 松本 文夫 今井 健郎 桜井 磐 吉川 晃司 高橋 孝行 森田 雅之 小田切 繁樹 鈴木 周雄 高橋 宏 高橋 健一 大久保 隆男 池田 大忠 金子 保 荒川 正昭 和田 光一 瀬賀 弘行 吉川 博子 塚田 弘樹 川島 崇 岩田 文英 青木 信樹 関根 理 鈴木 康稔 宇野 勝次 八木 元広 武田 元 泉 三郎 佐藤 篤彦 千田 金吾 須田 隆文 田村 亨治 吉富 淳 八木 健 武内 俊彦 山田 保夫 中村 敦 山本 俊信 山本 和英 花木 英和 山本 俊幸 松浦 徹 山腰 雅弘 鈴木 幹三 下方 薫 一山 智 斎藤 英彦 酒井 秀造 野村 史郎 千田 一嘉 岩原 毅 南 博信 山本 雅史 斉藤 博 矢守 貞昭 柴垣 友久 西脇 敬祐 中西 和夫 成田 亘啓 三笠 桂一 澤木 政好 古西 満 前田 光一 浜田 薫 武内 章治 坂本 正洋 辻本 正之 国松 幹和 久世 文幸 川合 満 三木 文雄 生野 善康 村田 哲人 坂元 一夫 蛭間 正人 大谷 眞一郎 原 泰志 中山 浩二 田中 聡彦 花谷 彰久 矢野 三郎 中川 勝 副島 林造 沖本 二郎 守屋 修 二木 芳人 松島 敏春 木村 丹 小橋 吉博 安達 倫文 田辺 潤 田野 吉彦 原 宏起 山木戸 道郎 長谷川 健司 小倉 剛 朝田 完二 並川 修 西岡 真輔 吾妻 雅彦 前田 美規重 白神 実 仁保 喜之 澤江 義郎 岡田 薫 高木 宏治 下野 信行 三角 博康 江口 克彦 大泉 耕太郎 徳永 尚登 市川 洋一郎 矢野 敬文 原 耕平 河野 茂 古賀 宏延 賀来 満夫 朝野 和典 伊藤 直美 渡辺 講一 松本 慶蔵 隆杉 正和 田口 幹雄 大石 和徳 高橋 淳 渡辺 浩 大森 明美 渡辺 貴和雄 永武 毅 田中 宏史 山内 壮一郎 那須 勝 後藤 陽一郎 山崎 透 永井 寛之 生田 真澄 時松 一成 一宮 朋来 平井 一弘 河野 宏 田代 隆良 志摩 清 岳中 耐夫 斎藤 厚 普久原 造 伊良部 勇栄 稲留 潤 草野 展周 古堅 興子 仲宗根 勇 平良 真幸
出版者
Japanese Society of Chemotherapy
雑誌
日本化学療法学会雜誌 = Japanese journal of chemotherapy (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.333-351, 1995-07-31
被引用文献数
2

新規キノロン系経口合成抗菌薬grepafloxacin (GPFX) の内科領域感染症に対する臨床的有用性を全国62施設の共同研究により検討した。対象疾患は呼吸器感染症を中心とし, 投与方法は原則として1回100~300mgを1日1~2回投与することとした。<BR>総投与症例525例のうち509例を臨床効果判定の解析対象とした。全症例に対する有効率は443/509 (87.0%) であり, そのうち呼吸器感染症432/496 (87.1%), 尿路感染症11/13 (84.6%) であった。呼吸器感染症における有効率を疾患別にみると, 咽喉頭炎・咽頭炎19/22 (86.4%), 扁桃炎17/18 (94.4%), 急性気管支炎53/58 (91.4%), 肺炎104/119 (87.4%), マイコプラズマ肺炎17/19 (89.5%), 異型肺炎5/5, 慢性気管支炎117/133 (88.0%), 気管支拡張症48/63 (76.2%), びまん性汎細気管支炎17/19 (89.5%) および慢性呼吸器疾患の二次感染35/40 (87.5%) であった。<BR>呼吸器感染症における細菌学的効果は233例で判定され, その消失率は単独菌感染では154/197 (78.2%), 複数菌感染では22/36 (61.1%) であった。また, 単独菌感染における消失率はグラム陽性菌48/53 (90.6%), グラム陰性菌105/142 (73.9%) であり, グラム陽性菌に対する細菌学的効果の方が優れていた。呼吸器感染症の起炎菌のうちMICが測定された115株におけるGPFXのMIC<SUB>80</SUB>は0.39μg/mlで, 一方対照薬 (97株) としたnornoxacin (NFLX), onoxacin (OFLX), enoxacin (ENX) およびcipronoxacin (CPFX) はそれぞれ6.25, 1.56, 6.25および0.78μg/mlであった。<BR>副作用は519例中26例 (5.0%, 発現件数38件) にみられ, その症状の内訳は, 消化器系18件, 精神神経系13件, 過敏症3件, その他4件であった。<BR>臨床検査値異常は, 490例中49例 (10.0%, 発現件数61件) にみられ, その主たる項目は, 好酸球の増多とトランスアミナーゼの上昇であった。いずれの症状, 変動とも重篤なものはなかった。<BR>臨床効果と副作用, 臨床検査値異常の安全性を総合的に勘案した有用性については, 呼吸器感染症での有用率422/497 (84.9%), 尿路感染症で10/13 (76.9%) であり, 全体では432/510 (84.7%) であった。<BR>以上の成績より, GPFXは呼吸器感染症を中心とする内科領域感染症に対して有用な薬剤であると考えられた。
著者
戸谷 彰宏 中島 健一郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.84-92, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2

Our purpose is to examine the affect-free claim in terror management theory. Lambert et al. (2014) reported findings that disconfirm the claim that mortality salience (MS) manipulation does not produce any changes in self-reported affect including negative affect, which is the affect-free claim. As a conceptual replication of their findings, we conducted three studies to examine whether MS manipulation influences self-reported mood. Participants in Study 1 were college students, while Studies 2 and 3 included individuals in their 20s and 50s who were recruited using a web survey. Multiple-choice questions (Studies 1 and 2) and open-ended questions (Study 3) were used as experimental manipulation. Through these three studies, it was shown that MS manipulation elevated negative mood regardless of the experimental manipulation type and participants’ age. In these studies, participants did not demonstrate a cultural worldview defense. Results suggest that we should reconsider the affect-free claim in terror management theory.
著者
小川 潔 山谷 慈子 石倉 航 芝池 博幸 保谷 彰彦 大右 恵 森田 竜義
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-44, 2011-05-30 (Released:2018-01-01)
参考文献数
34

東京湾岸地域の造成地に1998年に人工的に播種されて成立したセイヨウタンポポ個体群を対象として、外部形態、生育密度の増減、実生の死亡・生残状況、倍数性構成を観察・測定し、移入されたばかりのセイヨウタンポタンポポ個体群の特徴を明らかにした。本個体群は、人工土壌の上で高密度の個体群を形成したが、2006年現在、個体密度が減少しつつある。現地での自然発生実生および播種実験による実生の生残調査では、実生出現期は主として初夏であるが、実生のほとんどは当年の秋までに死亡した。また秋発生実生は、1年後まで生き残るものがあったが絶対数は少なかった。本州の大都市では純粋のセイヨウタンポポが稀で多くは在来種との雑種であるのに対して、プロイディアナライザーによる痩果および生葉の核DNA量相対値測定の結果、本個体群では2006年現在、純粋のセイヨウタンポポの割合が高く。周辺からの雑種と考えられる個体の侵入は少ない。さらに、日本で初めて2倍体のセイヨウタンポポが個体数割合で約15%検出された。
著者
柴田 重信 古谷 彰子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.1, pp.34-40, 2018 (Released:2018-01-10)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

哺乳類において1997年に初めて体内時計遺伝子Clock,Periodが見出され,体内時計の分子基盤を追及する研究が盛んに行われ続けている.全ての生物のリズム現象を調べる学問として「時間生物学」が生まれるとともに,薬物の吸収,分布,代謝,排泄に体内時計が関わることから「時間薬理学」という学問領域が台頭してきた.薬と同様に,栄養の吸収,代謝などには体内時計が深く関わる可能性があるため,「薬」を「食品・栄養」に置き換え,体内時計との関係を研究する「時間栄養学」の領域が確立されている.ヒトを含む動物では,体内時計を24時間に合わせるために外界の光刺激に合わせて体内時計を同調させるリセット機構をもつ.最近の研究において,繰り返しの給餌刺激で形成される末梢臓器の体内時計のリセット効果は,光刺激による視交叉上核を介さないことも明らかになってきており,時間栄養学の研究の発展は著しい.肝臓の体内時計の位相変動作用は食餌内容の血糖上昇指数が高く,インシュリンを分泌しやすいほどリセットしやすいことがわかっている.一方,近年様々な疾患予防の観点から脂質の摂取が見直されている.その中でもn-3系脂肪酸は抗肥満をはじめとする様々な疾患に関わり,体内時計が関与する疾患との相関がみられている.筆者らはn-3系脂肪酸を豊富に含む魚油が,肝臓時計に位相変動作用を引き起こすことを明らかにした.魚油は大腸でGPR120レセプターを介するGLP-1分泌を通してグルコース濃度が上昇,さらにインシュリン分泌を強化することで体内時計の同調機構が確立することもわかっている.また,飽和脂肪酸で見られた体内時計の乱れや肥満に関わる炎症反応がDHAで予防されるほか,魚油の摂取時刻違いにより血中EPA・DHA濃度が変わるなどの知見も明らかとなり,今後さらなる発展が期待されている.
著者
福留 広大 藤田 尚文 戸谷 彰宏 小林 渚 古川 善也 森永 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.183-196, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
34
被引用文献数
3 6

本研究の目的は, 自尊感情尺度(Rosenberg Self-Esteem Scale; RSES)において, 逆転項目に対する否定的反応(Negative Self-Esteem; NSE)と順項目に対する肯定的反応(Positive Self-Esteem; PSE)がそれぞれ異なる心理的側面を持つことを提案することである。研究Iでは, 様々なサンプルの計5つのデータセットを分析した。確認的因子分析の結果, RSESにPSEとNSEの存在が示唆された。研究IIでは, 中学生に調査を行い, 因子構造の検証とそれらの弁別性について検討した。中学生においてもPSEとNSEの構造が支持され, NSEはPSEよりもストレス反応と強い負の相関関係にあった。つまり, RSESの否定的な項目に対して否定的な回答をするほどストレス反応が低い傾向にあった。研究IIIでは, 中学生を対象にして, RSES2因子の弁別性の基準として攻撃性尺度を検討した。その結果, NSEがPSEよりも敵意と強い負の相関関係にあった。これらの結果は, RSESに「肯定的自己像の受容」と「否定的自己像の拒否」の存在を認めるものであり, この解釈と可能性について議論した。
著者
泉 千尋 藤森 一真 金森 貴洋 桑原 洋平 西谷 彰紘 鈴木 学 菅原 誠一 太田 真之 佐藤 宏行 林 健太郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.173-182, 2021-12-23 (Released:2021-12-24)
参考文献数
11

心房性頻脈性不整脈(AT/AF)のburdenを減少させる機能として,第2世代心房抗頻拍ペーシング(A-ATP)の有用性が報告されているが,導入後に治療が有効となる症例の特徴は明らかでない.そこでわれわれは,A-ATP(Reactive ATP, メドトロニック社製)作動症例22名の患者背景,心内心電図,12誘導心電図,エコー所見,BNPから治療が有効となる因子を検討した.AT/AF burdenの50%以上減少をA-ATP有効と定義し, AT/AF burden<5%の症例とAT/AFのエピソードが1件のみの症例は治療有効性の判断が困難なため,10名を除外した.有効群(5名)は無効群(7名)と比較して,心内AT/AF average tachycardia cycle length(AvCL)>300ms(28.6% vs 5.2%,p<0.05)および規則的なAT/AF(71.9% vs 48.5%,p<0.05)が多く,AT/AFに対するカテーテルアブレーション(CA)またはMaze手術既往が多かった(80% vs 14%,p<0.02).また,12誘導心電図において有効群はf波のCLが無効群より延長していた(220.5ms vs 141.4ms,p<0.05).A-ATPは延長したAT/AF AvCL,または規則的なAT/AF症例で有効であり,CAやMaze手術の既往,12誘導心電図のf波CL延長が植込み前に観察可能な有効性の予測因子として有用な可能性がある.
著者
後藤 道彦 植松 裕子 斎藤 英雄 仙田 修司 池谷 彰彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.28, pp.1-6, 2010-05-06

Augmented Reality(AR)技術を利用した作業支援は,ユーザに対して直感的な支援が可能である.一般に,ARシステムを構築するためには,重畳するコンテンツを用意する必要があり,従来はそのコンテンツを用途に合わせてCGなどで新たに作り出していた.本論文で提案するARシステムでは,そのコンテンツを新たに作るのではなく,既に多く存在しているビデオをお手本となる教師ビデオとして利用し,ユーザの視点に合わせて教師ビデオを変換して重畳表示することで,情報提示を行う.このとき,ユーザの作業と教師ビデオ映像が視覚的に混同しやすい問題を解決するために,教師ビデオに対して透明度変化や輪郭線の強調表示などの様々な加工を施す.また,作業内容に合わせて教師ビデオをいくつかの手順に分割し,ユーザ側の作業が完了してから次の手順へと進めるようなインタラクティブ性を持たせることで,ユーザが各自のペースで作業を行うことのできるシステムとなっている.本システムの有効性を検証するためのユーザ評価実験では,折り紙を折る作業とブロックを配置する作業の2つの状況を想定し,本システムでの教師ビデオの提示方法について評価を行った.その結果,本システムで提案するようにユーザの視点に合わせてビデオを提示することで,ユーザの視認性が向上するということが分かった.また,教師ビデオに施すエフェクトについての評価では,作業内容ごとに適したエフェクトを分類することができ,今後さらに他の作業へと適用する際の指標を得ることができた.
著者
廉田 浩 若谷 彰良
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.230, pp.9-16, 2006-09-02
被引用文献数
4

横顔を含む被検査画像中の顔をテンプレートマッチングにより検出する手法の検討を行う.顔部品を含むセグメントに分かれた顔テンプレートを作成し,これと被検査画像双方に対して二次元Harr-like変換の特徴抽出を行い,相関強度と顔検出率および検出正誤率との関係を評価する.顔テンプレート集合は,正面向き左右45°左右90°の5方向を作成する.テンプレート枚数を減らし処理時間を短縮するため,テンプレート集合のグルーピングを行い,各グループ代表を選ぶことで元の約1/4のコンパクト集合を生成する.これを使って各方向単独の検出特性と,5方向を統合したテンプレートによる検出特性と顔の向きの識別特性を測定する.各方向単独の検出特性では,正面向き,左右45°に関しては適切な閾値を設定すれば比較的高い顔検出率と低い誤検出率が実現できるが,左右90°ではこの特性が劣っている.また,顔の向きの識別に関しては,1〜数%の誤り率の範囲で識別可能である.処理時間の更なる短縮や総合的な顔検出系の性能についても議論する.
著者
田中 伸明 水足 邦雄 塩谷 彰浩
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (ISSN:09143491)
巻号頁・発行日
vol.86, no.13, pp.1097-1101, 2014-12-20

はじめに 頭内爆発音症候群(exploding head syndrome:EHS)は,主に入眠時や覚醒時に突然爆発音を感じる良性の疾患であり1),器質的疾患や神経疾患,てんかんの検索を含めた各種精査を行っても異常がないことが特徴とされており,一般に痛みは伴わない。EHSは睡眠関連疾患国際診断分類第3版(International Classification of Sleep Disorders-Third Edition:ICSD-3)においては睡眠時随伴症群に分類されており,診断基準も示されている(表1)2)。本疾患は,下丘が関与している聴覚原性発作(audiogenic seizure)と病態が類似していることが指摘されているほか3),音の振幅を圧縮する蝸牛または聴覚中枢における自動利得制御の破綻によって生じると推測されているが4),その原因や発症機序はいまだ不明である5)。 わが国におけるEHSの報告は睡眠学の分野を中心に散見されるが,耳鼻咽喉科領域での文献的報告はない。今回われわれは,耳漏を主訴に来院した患者でEHSを診断・治療する機会を得たので,考察を加えて報告する。
著者
中谷 彰宏
出版者
社団法人溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.489-494, 2003-09-05
被引用文献数
3

「構造解析」という用語は様々な分野で,様々な意味に用いられているが,ここでは,変形体の力学問題に対し,内部に適切な幾何学的構造を記述するモデルを導入して行なう解析方法の総称をこう呼ぶことにする.連続体力学に基礎をおくモデル化を行ない,有限要素法(Finite Element Method; FEM)に代表されるシミュレーションによって,変形体の力学問題にアプローチする構造解析手法は,今や固体力学分野のインフラストラクチャとして定着している.一方,分子動力学(Molecular Dynamics; MD)シミュレーションは,変形体の内部に原子構造モデルを仮定して実施される構造解析手法の一つと位置付けることができる(例えば,MD法の原子レベル構造解析への具体的応用の一例として最近の報告を参照願いたい).MD法は,統計力学の理論やモデルの検証を目的として始まり,今でも,それが基礎となっていることに変わりはないが,ミクロ構造を設計することによる新しいデバイスの開発が進んでいる昨今,ミクロ材料の強度・健全性評価,機能設計,製造プロセスの提案,実装方案の獲得を目指した構造解析手法として,従来のマクロ機械設計においてFEMが果たしているのと同様な役割を原子/分子レベルで担うことが期待されている.ここでは,材料力学分野,特に,構造健全性評価に関わる原子系シミュレーションについて展望する.なお,本稿は,既に報告した資料を再構成し,加筆したものである.
著者
藤井 洋泉 大谷 彰一郎 倉迫 直子 石津 友子 田中 利明 香曽我部 義則 時岡 宏明 大野 貴司
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.49-53, 1998-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(staphylococcal scalded skin syndrome; SSSS)は一般的に乳幼児の疾患とされており,成人発症型はきわめて稀である。今回,椎体・膝関節炎を契機として発症した成人型SSSSを経験した。68歳,男性,腰痛,膝関節腫脹のため当院整形外科に入院し,第3病日より頸部,前胸部,四肢にびまん性紅斑,弛緩性水疱が出現した。Nikolsky現象は陽性であった。高熱,意識障害が出現し,呼吸・循環動態が悪化したためICU入室となった。膝関節液,動脈血より黄色ブドウ球菌を検出し,組織像は皮膚顆粒層の切断による表皮剥離であり,表皮剥脱性毒素(exfoliative toxin; ET)の産生能を認めたため成人型SSSSと診断した。乳幼児では予後良好だが,成人型は死亡率が高く予後不良であり,早期よりの強力な抗生剤投与と集中治療により救命できた。多くの成人型SSSSは免疫能低下患者に発生するが,本症例は明らかな基礎疾患の合併なく発症した稀な1症例である。
著者
壁谷 彰慶
出版者
学校法人 植草学園短期大学
雑誌
植草学園短期大学紀要 (ISSN:18847811)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.77-82, 2019 (Released:2019-03-28)

フランツ・カフカの短編「断食芸人」の終幕で、断食を続ける芸人が、見世物小屋の監督に対し、自らの 生き方は世間からの「感心」に値しないことを吐露するやりとりがある。彼が死に際に残したこの言葉は、 読み手にいくつかの解釈の余地を残しており、その多義性は、「よい/悪い」や「幸福/不幸」などの価値 に関わる倫理的概念について、哲学的な示唆を与えるように思われる。以下では、「断食芸人」の終幕から 読み取れる「感心」の多義性を整理し、この作品が価値や「幸福」に関して示唆することを確認する。
著者
壁谷 彰慶
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SITE, 技術と社会・倫理 : IEICE technical report (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.244, pp.21-26, 2008-10-10

Googleが提供した高機能な検索エンジンは、インターネットの利用法を根本から変えるほど多大なインパクトを世間に与えている。しかし、この企業の情報の扱い方に対して、たびたび良識を欠いているとの非難がされることがある。Googleが非常に優れた技術集団であることは疑い得ないが、倫理的な問題についての配慮が欠如しているのも事実である。そこで、じっさいにGoogleが行った「検閲」の事例を参考に、「検索エンジンにおける検閲」のあり方について、「検索」と「検閲」の関係とともに考察する。結語として、この企業が作業ポリシーを確立し、それを明示することの必要性を述べる。
著者
谷合 信一 前新 直志 田中 伸明 栗岡 隆臣 冨藤 雅之 荒木 幸仁 塩谷 彰浩
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.192-198, 2015 (Released:2015-05-21)
参考文献数
14

高齢で突発した心因性吃音の症例を経験した.症例は70歳男性,肺炎で他院入院中に突然吃音を発症.当科初診時,口腔・咽喉頭に器質的異常なく,構音障害や失語症も認めなかった.語頭音のくり返しを主症状とする吃音を認め,随伴症状を認めた.訓練は,発話速度低下訓練とカウンセリングを併用した.訓練実施後から吃音症状は徐々に軽減し,訓練開始3ヵ月半でほぼ消失した.本例の特徴は,吃音が獲得性で突然発症している,発話は語頭音のくり返しが多い,随伴症状がある,数ヵ月の訓練で著明に改善している,画像所見で突発した吃音を説明できる病変がない,発症誘因と推察される入院に伴う強いストレスがある,吃音の原因となる他疾患の可能性がないことがある.これらの特徴から,本例は心因性吃音であると考えられた.
著者
馬 燕 福田 宏之 牧野 克己 酒向 司 塩谷 彰浩 神崎 仁
出版者
The Japan Broncho-esophagological Society
雑誌
日本気管食道科学会会報 (ISSN:00290645)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.339-343, 1992-08-10 (Released:2010-06-11)
参考文献数
16

The therapeutic method for laryngeal papilloma is still not definitely established. It is a general principle that the laryngeal papilloma should be surgically removed as much as possible. For the purpose, laser surgery has been used and therapeutic potency could be expected to some extent. However, since this disease is a high recurrence, especially in case of infant or child, it is easily induced to papillomatosis, resulting in the tracheal invasion.Here, in this paper a case of laryngeal papillomatosis is reported. The patient is 10 years old, and received frequent surgical operations without any success. For this case, medication with the traditional Chinese medicine has been performed, resulting in no recurrence.
著者
熊埜御堂 浩 塩谷 彰浩
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.37-42, 2000-02-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
17

ネクタイによる絞頸での閉鎖性喉頭外傷2例を経験した。絞頸による喉頭外傷は, 交通事故によるハンドルでの頸部損傷や, スポーツ事故などの瞬時の強い圧力を受ける場合と同じ様に, 損傷程度として「内腔粘膜」「周囲組織」「枠組み」の状態により, 挫傷から軟骨骨折, 急性呼吸困難など様々な病態をとり得る。閉鎖性喉頭外傷には, 治療方針として一定されるものがないことから, 初期治療においての確実な病態把握と対処が極めて重要であり, 急激な呼吸障害への対応のみならず, 一見軽症と考えられるような外傷においても, 十分に慎重な経過観察と治療が行われるべきと考えられた。